多胎妊娠

ふたごやみつごを授かる「多胎妊娠」。日本ではおよそ80~90組に1組がふたごといわれており、ご自身や周りの方にとっても決して珍しいことではないかもしれません。複数の新しい命を同時に迎える喜びは、何物にも代えがたい特別なものでしょう。

しかし、その大きな喜びの裏には、単胎妊娠とは異なる注意深い管理が必要になります。実は、多胎妊娠では予定日より早く生まれてしまう「早産」のリスクが、単胎妊娠の約9倍にもなると報告されていることをご存知でしょうか。

この記事では、多胎妊娠の原因から、リスク管理に欠かせない妊娠の種類の違い、お母さんと赤ちゃんの安全を守るための最新の治療法までを詳しく解説します。大切な命を守るために、ぜひご自身の状況と照らし合わせてみてください。

多胎妊娠の概要

多胎妊娠(たたいにんしん)とは、お母さんのお腹の中で、同時に2人以上の赤ちゃんを育てる妊娠のことです。ふたご(双胎)や、みつご(三胎)などがこれにあたります。これに対して、1人の赤ちゃんを妊娠することは単胎妊娠(たんたいにんしん)といいます。

日本では、およそ80~90組の出産に1組がふたごといわれており、決して珍しくありません。ちなみに、みつごの場合は約3,000組に1組の割合でみられます。

種類 | 妊娠する赤ちゃんの数

単胎妊娠 | 1人

多胎妊娠 | 2人以上(ふたご、みつごなど)

多胎妊娠は単胎妊娠に比べて、お母さんや赤ちゃんの体に大きな負担がかかりやすいです。そのため、より慎重な健康管理が必要になります。特に、予定日より早く生まれてしまう「早産」のリスクは、単胎妊娠の約9倍と高くなることが知られています。

早産を防ぐ治療の一つに、子宮の出口をしばる「子宮頸管縫縮術(しきゅうけいかんほうしゅくじゅつ)」という手術があります。ある研究では、妊娠24週以降に子宮頸管が短くなった単胎妊娠の方を対象としています。その結果、この手術で早産が減るという、統計的にはっきりとした差はありませんでした。しかし、早産が約22%減少する傾向も示されており、今後の研究に期待が寄せられています。

このように、多胎妊娠では様々なリスクに備えることが重要です。妊娠がわかった時点から専門の医療機関で定期的に健診を受け、母子の健康をしっかり見守っていきましょう。

多胎妊娠の種類

ふたごやみつごの妊娠とひとことで言っても、実はいくつかの種類に分けられます。

この分類は、赤ちゃんの安全な成長を見守る上で、非常に大切な情報です。

主に「卵の数」と「赤ちゃんを包む膜のつくり」という2つの観点から分類されます。

卵の数による違い:一卵性と二卵性

まず、もとになる受精卵の数によって、大きく2つに分けられます。

・一卵性(いちらんせい)

1つの受精卵が、成長の途中で2つに分かれて育つタイプです。

もとの遺伝情報が同じであるため、性別や血液型は必ず同じになります。

・二卵性(にらんせい)

2つの卵子が、それぞれ別の精子と受精して同時に育つタイプです。

同時に生まれた「きょうだい」のようなもので、性別や顔つきが違うこともあります。

赤ちゃんを包む膜による違い:膜性(まくせい)

次に、お腹の中で赤ちゃんを包む膜のつくり(膜性)による分類です。

これは赤ちゃんの健康に直接関わるため、医師が特に重要視するポイントです。

赤ちゃんは「羊膜(ようまく)」という部屋に入っており、

その外側を「絨毛膜(じゅうもうまく)」という膜が覆い、胎盤の一部となります。

膜性の種類 | 胎盤のもと(絨毛膜) | 赤ちゃんの部屋(羊膜) | 特徴と注意点

二絨毛膜二羊膜(DD) | 2つ | 2つ | 胎盤も部屋もそれぞれ独立しており、比較的リスクが低いタイプです。二卵性のほとんどがこのタイプになります。

一絨毛膜二羊膜(MD) | 1つ | 2つ | 胎盤を共有するため、赤ちゃん同士で栄養や血液の流れに差が出るリスクがあり、慎重な管理が必要です。

一絨毛膜一羊膜(MM) | 1つ | 1つ | 胎盤も部屋も共有するため、お互いのへその緒が絡まるリスクがあり、最も厳重な管理が求められます。

この膜性の診断は、妊娠14週ごろまでの妊娠初期に超音波検査で行います。

どのタイプかによって、健診の頻度や注意すべき合併症が大きく変わります。

そのため、妊娠がわかったらできるだけ早く産婦人科を受診することが、お母さんと赤ちゃんの安全にとって非常に重要です。

多胎妊娠の原因

ふたごやみつごを妊娠する「多胎妊娠」は、いくつかの理由が重なって起こることがあります。

なぜ複数の赤ちゃんを同時に授かるのか、その主な原因をみていきましょう。

1. 不妊治療の影響

近年、不妊治療の技術が進んだことも、多胎妊娠の背景の一つです。

特に、以下の2つの治療法が関係しています。

・排卵誘発薬(はいらんゆうはつやく)の使用

卵子が育ちにくい場合に、卵巣を刺激して排卵を促すお薬です。

このお薬の影響で、一度に複数の卵子が排卵されることがあります。

その結果、それぞれの卵子が受精し、多胎妊娠につながりやすくなります。

・体外受精(たいがいじゅせい)などの生殖補助医療

体の外で卵子と精子を受精させ、育った受精卵をお母さんの子宮に戻す治療法です。

以前は妊娠の確率を上げるため、複数の受精卵を戻すことがありました。

その受精卵がそれぞれ着床すると、多胎妊娠となります。

2. 遺伝的な要因

ご家族や親戚に、二卵性のふたごがいる場合、遺伝的に多胎妊娠になりやすいことがあります。

これは、「一度の排卵で複数の卵子を排卵しやすい」という体質が、お母さんに受け継がれることがあるためです。

あくまで二卵性の場合であり、一卵性のふたごは遺伝とは関係ないと考えられています。

3. お母さんの年齢

お母さんの年齢が高くなることも、多胎妊娠の一つの要因です。

年齢が上がると、脳から卵巣に排卵の指令を出すホルモンのバランスが変化します。

特に、「卵胞刺激ホルモン(FSH)」というホルモンの分泌量が増える傾向があります。

このホルモンは卵子を育てる働きがあるため、その量が増えることで卵巣が強く刺激され、複数の卵子が排卵されやすくなるのです。

多胎妊娠の症状

お母さんのお腹の中で2人以上の赤ちゃんを育てる多胎妊娠では、単胎妊娠よりも体に様々な変化が現れやすくなります。

体に現れる変化

赤ちゃんの人数が増える分、お母さんの体への負担も大きくなります。

具体的には、以下のような症状がみられることが多いです。

・強い吐き気や嘔吐(つわり)

ホルモンの影響が強く出たり、大きくなった子宮が胃を圧迫したりすることが原因です。

・おなかが早く大きくなる

赤ちゃんの人数が多いため、子宮の拡大スピードも速くなります。

それに伴い、皮膚が急激に伸びることで妊娠線もできやすくなります。

・腰痛やこむら返り

大きなおなかが骨盤に負担をかけ、腰痛を引き起こします。

また、子宮が足の血管を圧迫して血の巡りが悪くなり、こむら返りや静脈瘤の原因にもなります。

・便秘や頻尿

子宮が腸や膀胱を圧迫することで、便秘になったりトイレが近くなったりします。

特に注意したい合併症

多胎妊娠では、単胎妊娠に比べて様々な合併症のリスクが高まるため、より慎重な健康管理が求められます。

最も頻度が高い合併症は早産で、そのリスクは単胎妊娠のおよそ9倍にもなると報告されています。

早産の兆候として、子宮の出口(子宮頸管)が短くなることがあります。

この対策として、子宮頸管を糸でしばる手術(子宮頸管縫縮術)が検討されることがあります。

しかし、ある研究では、妊娠24週以降に子宮頸管が短くなった単胎妊娠の方を対象とした場合、この手術で早産が減るという統計的にはっきりとした差はなかったと報告されています。

一方で、早産が約22%減少する傾向も示されており、今後のさらなる研究が期待されます。

その他にも、以下のような合併症に注意が必要です。

・妊娠高血圧症候群

・妊娠糖尿病

・貧血

・HELLP症候群

(血液や肝臓に重い異常が起きる危険な状態)

・血栓症

(血の塊が血管に詰まる病気)

・胎児発育不全

(おなかの赤ちゃんの成長がゆっくりになること)

これらの症状には個人差がありますが、気になる変化を感じた場合は、自己判断せずに早めに医師へ相談することが大切です。

多胎妊娠の検査・診断

多胎妊娠の診断は、お母さんと赤ちゃんの安全を守るための大切な第一歩です。

主に、おなかに超音波をあてる「エコー検査」によって行われます。

この検査は、今後の妊娠生活の計画を立てる上で欠かせない情報を教えてくれます。

超音波検査では、特に以下の2点を詳しく確認します。

・赤ちゃんの人数

おなかにいる赤ちゃんの人数を正確に数えます。

これが、多胎妊娠の診断の基本となります。

・赤ちゃんの部屋(膜性)の確認

赤ちゃんを包む膜の状態を調べ、どのタイプの多胎妊娠かを診断します。

この「膜性診断」は、合併症のリスク予測に直結するため非常に重要です。

妊娠14週ごろまでが診断に適した時期なので、早めの受診が大切です。

また、多胎妊娠では早産のリスクが高まるため、妊婦健診ではその兆候がないか慎重に確認します。

その一つが、子宮の出口(子宮頸管)の長さを測る検査です。

この子宮頸管が短くなると、早産のサインである可能性があります。

もし子宮頸管が短くなってきた場合、子宮の出口を糸でしばる「子宮頸管縫縮術」という手術が検討されることがあります。

ただし、ある研究では、赤ちゃんが1人の単胎妊娠の方が対象でした。

妊娠24週以降にこの手術を行っても、早産がはっきりと減るという統計的な差は見られませんでした。

一方で、早産が約22%減少する傾向も示されており、今後のさらなる研究が期待されています。

このように、妊娠初期の検査は、その後の安全な妊娠生活を送るための道しるべとなります。

多胎妊娠の治療

多胎妊娠の治療は、お母さんと赤ちゃんの安全な出産を一番に考えて進められます。

単胎妊娠よりも体に負担がかかりやすいため、専門的な管理がとても大切です。

合併症に早く気づき対応できるよう、設備が整った病院と連携して進めていきます。

合併症の予防と管理

多胎妊娠で最も多い合併症は、予定日より早く赤ちゃんが生まれる「早産」です。

その兆候が見られる「切迫早産」と診断された場合は、入院して安静にすることがあります。

子宮の出口(子宮頸管)が短くなるなど、早産の危険性が高まった場合には、

子宮の出口を糸でしばる「子宮頸管縫縮術(しきゅうけいかんほうしゅくじゅつ)」という手術を検討することがあります。

ただし、この手術の効果については、様々な状況で研究が進められています。

例えば、妊娠24週以降に子宮頸管が短くなった「単胎妊娠」の方を対象とした複数の研究をまとめた報告があります。

その報告では、この手術で早産がはっきりと減るという、統計的な差はないと結論づけられました。

一方で、早産が約22%減少する傾向も示されており、今後の研究が待たれます。

治療法は、妊娠週数やお母さんと赤ちゃんの状態を総合的にみて慎重に判断されます。

安全な分娩方法の選択

出産は、万が一に備えて専門的な設備が整った病院で行うことが望ましいです。

・NICU(新生児集中治療室)

小さく生まれた赤ちゃんや、特別なケアが必要な赤ちゃんを専門的に治療する場所です。

・M-FICU(母体・胎児集中治療室)

お母さんや赤ちゃんの状態を24時間体制で慎重に管理する場所です。

分娩方法は、お母さんと赤ちゃんの状態を最優先に考えて決定されます。

分娩方法 | 主な選択肢の例

帝王切開 | ・みつご以上の妊娠 ・ふたごで、先に出てくる赤ちゃんが逆子の場合 ・お母さんや赤ちゃんに緊急の対応が必要な場合

経腟分娩 | ・ふたごで、先に出てくる赤ちゃんの頭が下を向いている場合 ・お母さんと赤ちゃんの状態が安定している場合

条件が整えば経腟分娩も可能ですが、安全を第一に考えて帝王切開が選ばれることが多いです。

特にみつご以上の妊娠では、帝王切開で出産するのが一般的です。