自然流産

妊娠の喜びも束の間、予期せぬ兆候に「もしかして…」と不安を抱えていませんか。自然流産は、決して特別なことではありません。医学的に確認された全妊娠の10〜20%で起こるとされ、その原因のほとんどは赤ちゃん側の偶然によるものです。決して、ご自身を責めないでください。

しかし、その経験が心に残す傷は深く、ある研究では流産を繰り返す女性はうつ病のリスクが約4倍にもなる、という報告もあります。このつらい経験を乗り越えるためには、まずご自身の体と心に何が起きているのかを正しく知ることが不可欠です。

この記事では、自然流産の原因や種類、そしてあなた自身を守るための対処法について詳しく解説します。一人で抱え込まず、正しい知識を今後のための第一歩としてお役立てください。

自然流産の概要

自然流産とは、妊娠22週よりも前に、お腹の赤ちゃんの成長が自然に止まってしまうことです。これは決して珍しいことではなく、医学的に確認された妊娠のうち、10%から20%で起こるとされています。特に妊娠の早い時期である、妊娠12週未満に起こることが多いです。

原因のほとんどは、赤ちゃん自身の染色体が偶然うまく作られなかったことによるものです。お母さんの生活習慣や行動が原因となることは、まずありません。ですから、決してご自身を責めないでください。

しかし、流産を経験することは心と体に大きな負担をかけます。特に、流産を2回以上繰り返す「習慣性流産」の状態では、心の不調につながりやすいことがわかっています。ある研究では、習慣性流産を経験した女性は、そうでない方と比べてうつ病になる危険性が約4倍も高くなる、という報告があります。

自然流産について正しく知ることは、ご自身の状態を理解し、適切に対処するための第一歩です。

自然流産のポイント

  • いつ起こるの?
  • 妊娠22週未満に起こります。
  • どのくらいの割合?
  • 全ての妊娠の10〜20%で起こる、誰にでも起こりうることです。
  • 主な原因は?
  • 赤ちゃん側の染色体の問題がほとんどで、お母さんのせいではありません。
  • 大切なことは?
  • つらい気持ちを一人で抱え込まず、専門家に相談することです。

自然流産の種類

ひとことで「自然流産」といっても、状態や症状で種類が分かれます。 お腹の赤ちゃんの様子や、出血などの症状から判断し、対応を決めます。

主に、お腹の中の赤ちゃんの状態によって、以下のように分けられます。

種類

状態

切迫流産

流産が始まりかけている状態です。出血やお腹の張りがありますが、赤ちゃんの心臓は動いていて、妊娠を続けられる可能性があります。

進行流産

子宮の出口が開き、流産を止められない状態です。出血や痛みが強くなることが多く、赤ちゃんが子宮の外に出てこようとしています。

稽留(けいりゅう)流産

赤ちゃんの成長が止まっていますが、出血やお腹の痛みといった症状がまだ出ていない状態です。妊婦健診でわかることが多いです。

不全流産

赤ちゃんや胎盤の一部が子宮の中に残っている状態です。出血や痛みが続くことがあります。

完全流産

赤ちゃんや胎盤がすべて子宮の外に出た状態です。出血や痛みは次第におさまっていきます。

また、流産を繰り返す回数によっても、以下のように呼ばれることがあります。

  • 反復流産
  • 自然流産を2回以上繰り返す場合です。
  • 習慣流産
  • 自然流産を3回以上繰り返す場合で、全体の約1%とされています。

これらの原因の多くは赤ちゃん側の偶然によるものですが、母体側の要因も考えられます。最近では、妊娠を考える時期や妊娠初期に接種した特定の子宮頸がんワクチン(2価、9価HPVワクチン)が、自然流産のリスクと関連する可能性も報告されました。

しかし、この関連性がはっきりと証明されたわけではなく、さらなる研究が必要です。ご自身の状態がどの種類にあたるかは、診察を受けなければわかりません。心配な症状があれば、自己判断せず、必ず医療機関へ相談してください。

自然流産の原因

流産を経験すると、「私の何かが悪かったのかな」とご自身を責めてしまう方が少なくありません。しかし、原因のほとんどは、お母さんの生活習慣や行動とは関係のないところで起こります。

最も多い原因は、赤ちゃん自身の「体の設計図」である染色体が、受精の段階で偶然うまく作られなかったことです。これは妊娠のとても早い時期に起こる流産の約8割を占めており、誰にでも起こりうることで、防ぐことは難しいのです。

その他、原因として考えられるものを以下に示します。

  • お母さん側の要因
  • 甲状腺の病気などでホルモンのバランスが乱れている場合や、コントロールされていない重い糖尿病などの持病がある場合です。
  • 子宮の問題
  • 子宮筋腫や生まれつきの子宮の形など、赤ちゃんが育つお部屋に問題がある場合です。
  • 免疫の異常
  • 自分の体を攻撃してしまう自己免疫疾患などが影響することもあります。

また、サイトメガロウイルスなどの特定のウイルス感染や、大きなけがが原因となることもあります。最近では、妊娠を考える時期や妊娠のごく初期に受けた、一部の子宮頸がんワクチン(2価、9価HPVワクチン)が、自然流産のリスクと関係するかもしれない、という研究報告もありました。

ただし、このワクチンとの関係がはっきりと証明されたわけではなく、さらなる研究が必要です。原因は様々ですが、多くは偶然によるもので、特定できないことも少なくありません。決してご自身を責めず、まずは心と体を休めることが大切です。

自然流産の症状

自然流産のサインは、体だけでなく心にも現れることがあります。 どちらもご自身の体からの大切なメッセージなので、見過ごさないことが重要です。

体に表れる主なサインは、出血とお腹の痛みです。 これらの症状は、流産の種類や妊娠週数によって現れ方が異なります。

体に表れるサインの具体例

  • 性器からの出血 茶色のおりもの程度の少量から、生理のように鮮やかな赤い出血まで様々です。 ときには、レバーのような血の塊が出ることがあります。 これは、赤ちゃんを包んでいた組織の一部(絨毛や胎嚢)である可能性があります。
  • お腹の痛み 生理痛に似たしくしくとした痛みや、お腹が張る感じが続くことがあります。 けいれんするような、キューッと締め付けられる強い痛みが起こることもあります。
  • その他の体の変化 今まで続いていたつわりの症状が、急に軽くなったり、なくなったりします。 週数が進んでいる場合は、破水して温かい液体(羊水)が流れ出ることもあります。

心に表れる影響 流産は、体に起こること以上に心に深い傷を残すことがあります。 悲しみや喪失感、そして「自分のせいだ」とご自身を責めてしまう気持ち。 このようなつらい感情を抱くのは、決して珍しいことではありません。

ある研究では、流産を2回以上繰り返す「習慣性流産」の方は、そうでない方と比べてうつ病になる危険性が約4倍も高くなる、という報告があります。 これは、決して気持ちが弱いからではありません。 つらい気持ちを一人で抱え込まず、パートナーやご家族、そして医師やカウンセラーといった専門家に相談することが大切です。

もし妊娠中にこれらのサインに気づいたら、どんなに些細なことでも自己判断せず、必ずかかりつけの医療機関へ連絡してください。

自然流産の検査・診断

自然流産が疑われる場合、まずは産婦人科で状態を正しく知ることが大切です。 医師は問診で最終月経や現在の症状を確認し、主に以下の検査を行います。

超音波(エコー)検査 子宮内の様子を直接見る、最も重要な検査です。 この検査で、赤ちゃんの状態を詳しく確認します。

  • 赤ちゃんの袋(胎嚢)の確認 子宮の中に、赤ちゃんを育てる袋がきちんとあるかを見ます。
  • 赤ちゃん(胎芽)の確認 袋の中に、赤ちゃんのもとになる姿が見えるかを確認します。
  • 心臓の動き(心拍)の確認 赤ちゃんの心臓が元気に動いているかを確認します。

血液検査・尿検査 妊娠を維持するために出るhCGというホルモンの量を測ります。 このホルモンの値が妊娠週数に対して適切か、また時間をおいて測った際に順調に増えているかで、妊娠が続いているかを判断します。

これらの検査結果を総合的にみて、診断を下します。 例えば、赤ちゃんの大きさが7mmを超えても心拍が確認できない場合などに、流産と診断されることがあります。

流産の原因は、お母さんの行動が原因となることは、まずありません。 例えば「妊娠中にインフルエンザワクチンを接種したからでは」と心配される方もいますが、多くの研究結果をまとめた報告では、ワクチン接種と自然流産に関係はないことが示唆されています。 決してご自身を責めず、まずは正確な診断を受けることが重要です。

自然流産の治療

自然流産の治療は、お母さんの体を守り、次の妊娠に備えるために行います。 流産の進み具合や体の状態、そして何よりご本人の気持ちを大切にしながら、一緒に治療法を決めていきます。

流産の種類によって、主に選ばれる治療法は以下のようになります。

流産の種類

主な治療法

切迫流産

安静にして、赤ちゃんの成長を見守ります。

進行流産・不全流産・稽留流産

・自然に排出されるのを待つ(経過観察)

・お薬を使う(薬物療法)

・手術で取り出す(子宮内容除去術)

完全流産

子宮の中がきれいになっていれば、特別な治療は必要ありません。

進行流産や稽留流産などでは、子宮の中に残った組織を外に出す必要があります。 これには、大きく分けて3つの選択肢があります。

  1. 経過観察 自然に組織が体の外へ出てくるのを待ちます。 手術を避けられるメリットがありますが、いつ出血や痛みが起こるか予測が難しいという側面もあります。
  2. 薬物療法 子宮がぎゅっと縮むのを助けるお薬(ミソプロストールなど)を使い、組織の排出を促します。 この方法も、手術をせずに済む可能性があります。
  3. 手術(子宮内容除去術) 専門の器具を使って、子宮の中をきれいにする方法です。 計画的に短時間で処置が終わり、出血などが早く落ち着くことが多いです。

残念ながら、流産そのものを防ぐための確立された治療法はまだ多くありません。 例えば、自分の体を攻撃してしまう自己免疫疾患を持つ方の研究があります。 その中で、ヒドロキシクロロキンという薬が、妊娠中の別のトラブルのリスクを下げることは分かりました。 しかし、この薬が自然流産そのものを防ぐという、はっきりした効果は確認されていません。

また、お母さんの血液型がRh(-)の場合、次の妊娠に影響が出ないように特別な注射(抗D人免疫グロブリン)をすることがあります。 体の治療とあわせて、心のケアも非常に重要です。 つらい気持ちを抱え込まず、医師やカウンセラーに相談することも大切な治療の一部です。