食欲不振

「お腹がすかない」「食べたいと思えない」と感じることはありませんか。疲れやストレスによる一時的なものだと軽く考えがちですが、もしその状態が長く続くなら注意が必要です。それは、あなたの体が発している見過ごしてはいけない重要なSOSサインかもしれません。

食欲不振の原因は、胃腸の不調や心のストレスだけではありません。ある研究では新型コロナに感染した子どもは食欲不振のリスクが14%高かったという報告もあり、感染症の後遺症や、がんなどの病気が隠れている可能性も考えられます。

この記事では、食欲不振を引き起こす様々な原因を種類別に解説し、自分でできるチェックリストや医療機関での治療法までを詳しく紹介します。食べる喜びを取り戻すための第一歩として、ぜひご自身の状態と照らし合わせてみてください。

食欲不振の概要

「お腹がすかない」「食べたいと思えない」という状態を食欲不振といいます。

私たちの体は、エネルギーが足りなくなると脳の司令塔が感知します。 そして「食事をとりなさい」という指令を出し、空腹を感じる仕組みです。 しかし、心や体の不調などで、この仕組みがうまく働かなくなるのです。

疲れやストレスによる一時的な食欲不振は、誰にでも起こり得ます。 しかし、食欲がない状態が何日も続く場合は、注意が必要なサインです。

食欲不振が続くと、体に必要な栄養が足りず、体重が減ってしまいます。 特に、がんなどの病気では、食欲不振と体重減少が問題となります。 これは「がん悪液質症候群」と呼ばれ、生活の質を大きく下げます。 患者さんの体重や筋肉量を増やし、生活の質を高める治療も研究されています。

食欲不振は、体が発している重要なSOSサインかもしれません。 長く続く場合は自分で判断せず、医療機関に相談しましょう。

食欲不振の種類

ひとことで「食欲がない」といっても、その原因はさまざまです。 原因によって、主に3つの種類に分けることができます。

種類の名前

原因の例

内臓性食欲不振

胃や腸、肝臓など、食べ物の消化に関わる臓器の病気や不調が原因です。

中枢性食欲不振

脳にある食欲の司令塔の異常や、精神的なストレスなどが原因で起こります。

欠乏性食欲不振

ビタミンやミネラルなど、体に必要な特定の栄養素が足りないことが原因です。

これらの原因のほかに、特定の病気が引き起こす深刻な食欲不振もあります。 その一つが「がん悪液質症候群」と呼ばれる状態です。 これは、がんが原因で食欲不振と体重減少が起こるものです。

単に体重が減るだけでなく、筋肉も落ちてしまうのが特徴です。 それにより生活の質(QOL)が大きく下がるため、治療が研究されています。 体重や筋肉量を増やし、生活の質を高める薬(アナモレリンなど)もその一つです。

ご自身の食欲不振がどの程度か、以下のチェックリストで確認してみましょう。

  • 軽症 食事の回数は変わらないが、食べたい気持ちが減っている
  • 中等症 食べる量が明らかに減っている
  • 重症 ダイエットをしていないのに、半年で体重が5%以上減っている

もし重症にあてはまる場合や、どの種類かわからない場合は、自己判断せず、必ず医療機関へ相談してください。

食欲不振の原因

「お腹がすかない」と感じる原因は、決して一つではありません。 体の病気、心の不調、そして普段の生活習慣や薬の影響など、 さまざまな要因が複雑に絡み合って起こることがほとんどです。

食欲不振の主な原因は、大きく以下の3つに分けられます。

  • 体の病気
  • 心の不調
  • 生活習慣や薬の影響

体の病気

胃や腸といった消化器の病気や、風邪などの感染症は食欲不振の代表例です。 最近では、新型コロナウイルス感染症の後遺症としても注目されています。 ある研究では、感染した子どもはそうでない子に比べ、食欲がなくなる危険性が14%高かったという報告もあります。

また、がんが原因で「がん悪液質症候群」という状態になることもあります。 これは、がん細胞の影響で食欲がなくなり、体重や筋肉が減ってしまう状態です。 さらに、がん治療で使うお薬(化学療法)の副作用として、吐き気や食欲不振が起こることも少なくありません。

心の不調

強いストレスやうつ病などの心の不調も、食欲に大きく影響します。 これは、脳にある食欲をコントロールする司令塔の働きが鈍くなるためです。 心が疲れているというサインが、体の症状として現れることがあります。

生活習慣や薬の影響

不規則な生活や過労、夏の暑さによる夏バテも原因の一つです。 また、痛み止めや抗がん剤など、特定の薬の副作用で食欲が落ちることもあります。 このように原因は多岐にわたるため、食欲がない状態が長く続く場合は、背景に何らかの病気が隠れている可能性も考えられます。 自己判断せず、早めに医療機関へ相談することが大切です。

食欲不振の症状

「お腹が空かない」「食べたい気持ちがわかない」というのが基本の状態です。 しかし、食欲不振のサインはそれだけではありません。 体は、ほかにもさまざまな形でSOSを出していることがあります。

ご自身の状態に当てはまるものがないか、一緒に確認してみましょう。

【食欲不振に伴う主な症状のチェックリスト】

  • お腹の不調 胃が痛んだり、気持ち悪くなったり、吐いてしまうことがある 少し食べただけですぐにお腹がいっぱいになる感じがする お腹を下したり、逆に便が出にくかったりする
  • 全身の不調 ダイエットをしていないのに、体重が自然に減ってしまう なんとなく体がだるくて、疲れやすい めまいや立ちくらみがする 熱っぽい感じがする
  • 感覚の変化 食べ物の味がしない、またはいつもと違う味がする 口の中がピリピリとしみる感じがする

これらの症状は、病気やその治療が原因で現れることが少なくありません。 例えば、がんの治療で使うお薬(化学療法)の副作用として、 吐き気とともに強い食欲不振が出ることがあります。 ある研究では、肺がんの患者さんが化学療法と漢方薬を一緒に使うと、 食欲不振などの症状が和らいだという報告もあります。

また、がんそのものが原因で、体重や筋肉が減る「がん悪液質」という状態になることも。 心の不調であるうつ病や、その治療薬が食欲に影響することもあります。 最近では、新型コロナウイルス感染症の後遺症として食欲不振が続く例も増えています。 ある研究では、感染した子どもはそうでない子に比べ、食欲がなくなる危険性が14%高かったと報告されています。

食欲の悩みは多様で、食べられなくなることとは逆に、 食べ過ぎてしまう「過食性障害」で悩む方もいます。 いずれにしても、食欲の異常が続く場合は、その裏に何らかの原因が隠れているサインです。 自己判断せず、早めに医療機関へ相談しましょう。

食欲不振の検査・診断

食欲不振が続くのは、体からの大事なSOSサインかもしれません。 原因を見つけるため、病院ではまず丁寧にお話を聞くことから始めます。 次に、体の中の状態を詳しく調べる検査を行います。

問診で原因の手がかりを探します

医師が、あなたの体の状態を詳しくお伺いします。 原因を探るための大切な情報になるので、思い出せる範囲で教えてください。

  • いつから食欲がありませんか?
  • 吐き気や胃の痛み、体重減少など、他に気になる症状はありますか?
  • 最近、大きなストレスを感じることはありましたか?
  • 現在、飲んでいるお薬はありますか?
  • 最近、新型コロナウイルスなどの感染症にかかりましたか?
  • がんなどの大きな病気の治療を受けていませんか?

最近の研究では、新型コロナウイルスに感染した子どもは、 そうでない子に比べて食欲がなくなる危険性が14%高かったと報告されています。 感染症の後に心の不調が食欲に影響することもあるため、問診はとても重要です。

また、がん治療の副作用で食欲が落ちることも少なくありません。 生活の質(QOL)を保つためにも、どんな治療を受けているか教えてください。

体の中を調べる主な検査

お話の内容から、必要に応じて次のような検査を行います。 それぞれの検査で、食欲不振の原因となっているものがないかを探します。

検査の種類

この検査でわかること

血液検査・尿検査

体の栄養状態や、炎症、肝臓や腎臓などの臓器の働きを調べます。

上部内視鏡検査(胃カメラ)

食道や胃の粘膜を直接見て、炎症やがんがないかを確認します。

腹部超音波(エコー)検査

お腹の中にある肝臓やすい臓などに、異常がないかを調べます。

これらの検査結果を総合的に見て、食欲不振の原因を診断します。 そして、一人ひとりの状態に合わせた治療方針を決めていきます。

食欲不振の治し方:原因に合わせたアプローチが大切

食欲不振の治療は、その原因を見つけて取り除くことが基本です。 原因は人それぞれ違うため、一人ひとりに合った治療法を選びます。 治療法は主に以下の3つの方法を組み合わせて行います。

  • 原因となっている病気の治療
  • 生活習慣の見直しと心のケア
  • お薬によるサポート治療

1. 原因となっている病気の治療

体に隠れている病気が食欲不振を引き起こしている場合は、 その病気を治すことが、食欲を取り戻すための最優先事項です。 例えば、胃の不快感が原因なら、胃の働きを整える治療を行います。 原因の病気が良くなるにつれて、食欲も自然と回復していきます。

2. 生活習慣の見直しと心のケア

ストレスや疲れ、不規則な生活が原因のことも少なくありません。 まずは生活リズムを整え、ゆっくり休む時間を作ることが大切です。 また、ストレスに対する考え方を見直す「認知行動療法」という心のケアも、 食欲を回復させるのに役立つことがあります。

3. お薬によるサポート治療

つらい症状を和らげ、少しでも食事がとりやすくなるよう、 お薬を使ってサポートすることもあります。

【主なお薬の種類】

  • 胃腸の働きを助ける薬 消化を助けたり、胃の動きを活発にしたりします。
  • 吐き気を抑える薬 気持ち悪さを軽くして、食事への抵抗感を減らします。
  • 漢方薬 体全体のバランスを整え、食欲不振の改善を目指します。 ある研究では、がん治療の副作用で食欲が落ちた患者さんが、 漢方薬を一緒に使うと症状が和らいだ、という報告もあります。
  • 食欲を増やす薬 がんなどが原因で体重が大きく減る「がん悪液質」という状態には、 「アナモレリン」という食欲を増やすお薬が使われることがあります。 このお薬は体重や筋肉を増やし、生活の質(QOL)を高める効果が期待されています。

食欲不振が続く場合は、自己判断せず、必ず医療機関にご相談ください。 原因に合った正しい治療で、食べる喜びを取り戻しましょう。