食道狭窄

食事の際、お肉やパンなどが胸のあたりでつかえる感じがしたり、食べた後に胸が焼けるような不快感を覚えたりしたことはありませんか?「少し食べ過ぎただけ」「疲れているから」と、つい見過ごしがちなその症状は、食べ物の通り道である食道が狭くなる「食道狭窄」のサインかもしれません。

食道狭窄は、胃酸の逆流から食道がんまで、様々な原因で起こります。しかし、近年では治療法も進歩しており、特に食道がんの内視鏡治療後に起こる狭窄については、ある研究で8種類もの有効な予防法が安全に行えると報告されています。この記事では、食道狭窄の原因や種類、そして最新の治療法まで詳しく解説します。ご自身の症状と照らし合わせ、適切な対処法を知るきっかけにしてください。

食道狭窄の概要

食事をすると、食べ物は口からのどを通り、胃へと運ばれます。 このとき食べ物が通る、胸のあたりにある管を「食道」といいます。

食道狭窄とは、この食べ物の通り道である食道が、何らかの理由で狭くなってしまう病気のことです。 トンネルが狭くなると車が通りにくくなるように、食道が狭くなると食べ物や飲み物がスムーズに通過できなくなります。

食道が狭くなる原因は、大きく分けて2つあります。

  • 生まれつき(先天性)
  • お母さんのお腹の中にいるときに、食道がうまく作られなかった場合に起こります。
  • 生まれた後(後天性)
  • 病気やケガが原因で、もともと正常だった食道が狭くなってしまう状態です。

後天性の原因で特に多いのが、胃酸が食道に逆流する「逆流性食道炎」です。 強い酸である胃酸によって食道の粘膜が傷つけられ、その傷が治る過程で硬くなり、内側が狭くなってしまいます。

また、食道がんなどの病気を治療した後に、合併症として食道が狭くなることもあります。 しかし最近の研究では、食道がんの内視鏡治療の後に起こる狭窄を予防する、有効な方法が複数報告されています。 例えば、ステロイドというお薬を飲んだり、内視鏡を使って注射したり、特殊なシートを貼り付けたりする方法です。 ある研究では、8種類もの介入が狭窄予防に有効で、合併症を増やすことなく安全に行えることが示されています。 これにより、治療後の生活の質を保つための取り組みが進んでいます。

食べ物がつかえる感じや、胸やけなどの症状があれば、早めに専門の医療機関に相談しましょう。

食道狭窄の種類

食道が狭くなる「食道狭窄」には、大きく分けて2つの種類があります。 お母さんのお腹の中にいる時から狭い「先天性(せんてんせい)」と、生まれた後に病気などが原因で狭くなる「後天性(こうてんせい)」です。

1. 先天性食道狭窄

生まれつき食道の一部が狭くなっている状態で、赤ちゃんがお腹の中で成長する過程で、食道がうまく作られなかったために起こります。 主に、次の3つのタイプに分けられます。

  • 気管原基迷入型狭窄(きかんげんきめいにゅうがたきょうさく) 息をするための「気管」になるはずの一部が、間違って食道に入り込んでしまったものです。
  • 筋線維性狭窄(きんせんいせいきょうさく) 食道の壁にある筋肉が、一部分だけ特別に分厚くなってしまったものです。
  • 膜様狭窄(まくようきょうさく) 食道の中に、食べ物の通り道をじゃまする薄い膜ができてしまったものです。

特に重い状態として、食道が途中で完全に途切れている「先天性食道閉鎖症」があります。 このうち、途切れた部分の距離が長い「長間隙食道閉鎖症」は、非常に難しい手術が必要です。 例えば、胃を持ち上げて食道につなぐ手術や、食道を時間をかけて伸ばしてからつなぐ手術が行われます。

ある複数の研究をまとめた報告によると、どちらの手術も赤ちゃんへの負担が大きく、合併症が起こりやすいことがわかっています。 胃を持ち上げる手術では約40%で呼吸のトラブルが、食道を伸ばす手術では約64%でつないだ部分のトラブルが報告されています。 そのため、どちらの方法が良いかについては、まだ結論が出ていません。

2. 後天性食道狭窄

生まれたときは問題がなくても、その後の病気やケガが原因で食道が狭くなる状態です。 原因はさまざまですが、大きく3つのパターンに分けられます。

原因のパターン

具体的な病気や状態

食道が傷ついて硬くなる

・胃酸が逆流して食道を傷つける「逆流性食道炎」

・薬やカビ、ウイルスが原因の食道炎

・強い薬品を飲んでしまう

食道そのものの病気

・食道がん

・食道の動きが悪くなる「食道アカラシア」

周りの臓器に押される

・甲状腺の病気や腫れたリンパ節など

この中で特に多いのは、胃酸が食道に逆流する「逆流性食道炎」です。 強い酸で食道が繰り返し傷つけられると、その傷が治る時に硬い組織に置き換わり、内側が狭くなってしまうのです。

食道狭窄の原因

食べ物の通り道である食道が狭くなる原因は、一つではありません。 生まれつき食道が狭い「先天性」の場合と、生まれた後に何らかの理由で狭くなる「後天性」の場合に分けられます。

先天性の原因

赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる時に、食道がうまく作られなかったことで起こります。 具体的には、以下のような状態があります。

  • 筋肉が分厚くなる 食道の壁にある筋肉の一部が、生まれつき特別に厚くなっている状態です。
  • 食道に膜ができてしまう 食べ物の通り道をじゃまするような、薄い膜が食道の中にできてしまう状態です。
  • 食道閉鎖症の手術後 生まれつき食道が途中で途切れている病気の手術後に、つないだ部分が狭くなることがあります。

後天性の原因

生まれた後で食道が狭くなる原因で最も多いのは、胃酸が食道に逆流する「逆流性食道炎」です。 その他にも、様々な原因が考えられます。

主な後天性の原因

どのような状態か

逆流性食道炎

強い酸である胃酸が繰り返し食道を傷つけます。

その傷が治る時に硬い組織(瘢痕:はんこん)になり、食道の内側が狭くなります。

食道がんやその治療

がん自体が大きくなって道をふさぐことがあります。

また、がんの治療、特に内視鏡手術の後に食道が狭くなることもあります。

お薬の影響

飲んだお薬が食道に長くとどまると、食道の壁を傷つけて炎症を起こし、狭くなる原因になります。

その他

強い薬品を間違って飲んでしまったり、周りの臓器が大きくなって食道を外から押したりすることも原因です。

特に食道がんの内視鏡治療の後に起こる狭窄は、患者さんの生活の質を大きく下げる問題でした。 しかし最近の研究では、この狭窄を予防する有効な方法が複数報告されています。 例えば、ステロイドというお薬を飲んだり、内視鏡で注射したり、特殊なシートを貼り付けたりする方法です。 ある研究では、8種類もの予防法が有効で、いずれも合併症を増やすことなく安全に行えるとされています。 これにより、がんの治療後も食事が楽しめるよう、様々な工夫が進められています。

食道狭窄の症状

食道が狭くなると、食べ物や飲み物が通りにくくなります。 体はそれに気づいて、様々なサインを送ってくれます。

最も代表的な症状は、食事中の「つかえ感」です。 パンやお肉といった固形のものが、胸のあたりで止まる感じがします。 最初は固いものだけでも、だんだんと症状が進みます。 おかゆのような柔らかいものや、水分さえも通りにくくなることがあります。

他にも、次のような症状が現れることがあります。

  • 胸の痛みや不快感 食べ物を飲み込んだときに、胸の奥が痛んだり、焼けるような感じがしたりします。
  • 吐き気や嘔吐 食べたものが胃にうまく送られず、逆流して吐いてしまうこともあります。
  • 体重の減少 食事が十分に摂れなくなるため、自然と体重が減ってしまうことも少なくありません。

特に食道がんが原因の場合、食べ物と関係なく胸が痛むこともあります。 出血して黒い便(タール便)が出たり、血を吐いたりすることもあります。 がんによる痛みや飲み込みにくさは、生活の質を大きく下げる深刻な問題です。 ある研究でも、がんによる痛みは心と体に重大な影響を及ぼすと報告されています。

▼こんなサインはありませんか? ご自身の状態を確認してみましょう。 □ 食事のとき、食べ物が喉や胸につかえる □ 食べた後に胸が痛んだり、焼ける感じがする □ 食べたものを吐いてしまうことがある □ 特に理由がないのに体重が減ってきた □ 便が黒っぽい色をしている

これらの症状に気づいたら、放置せずに早めに医療機関を受診しましょう。

食道狭窄の検査・診断

食べ物のつかえ感や胸の痛みなど、気になる症状がある場合、その原因を正確に突き止めるための検査を行います。 食道がどのくらい狭くなっているのか、なぜ狭くなったのかを詳しく調べることで、一人ひとりに合った治療法を見つけます。

主に、以下のような検査を組み合わせて診断します。

検査の種類

どのような検査か

この検査でわかること

内視鏡検査(胃カメラ)

口や鼻から細いカメラを入れ、食道の内部を直接観察します。

・食道が狭くなっている場所や程度

・粘膜が荒れていないか、がんがないか

・必要なら組織を少し採って詳しく調べる

食道造影検査(バリウム検査)

バリウムという白い液体を飲んで、レントゲン写真を撮ります。

・食道全体の形や食べ物の通り具合

・狭くなっている部分の長さや形

CT検査

X線を使って、体の輪切りの写真を撮ります。

・食道の周りの臓器が原因で押されていないか

・がんが疑われる場合に、どのくらい広がっているか

これらの検査の中で、食道の状態を直接見ることができる内視鏡検査は特に重要です。 検査では、飲み込みにくさの程度を点数(嚥下障害スコア)で客観的に評価することもあります。 点数が高いほど症状が重いことを示し、治療方針を決めるための大切な情報になります。

ある研究では、良性の食道狭窄に対してステントという筒状の器具を入れる治療を行った結果、このスコアが平均で1.8ポイント改善したと報告されています。 このように、検査で得られた客観的なデータは、治療の効果を確かめる上でも役立つのです。 検査と聞くと不安に感じるかもしれませんが、正確な診断と適切な治療のためにとても大切なステップです。

食道狭窄の治療

食道が狭くなったときの治療は、食べ物の通り道をしっかり確保し、安心して食事が楽しめるようにすることが目標です。 治療の大きな柱は、次の2つです。

  1. 狭くなった原因を取り除く治療
  2. 狭い場所を物理的に広げる治療

これらを組み合わせ、一人ひとりの状態に合わせた最適な方法を選びます。

1. 原因となっている病気の治療

まず、食道が狭くなった根本的な原因を治療することがとても大切です。 例えば、胃酸の逆流が原因の「逆流性食道炎」であれば、胃酸の分泌を抑えるお薬を使います。 食道がんが原因の場合は、がんそのものに対する治療を優先して行います。

2. 狭くなった食道を直接広げる治療

原因の治療と並行して、食べ物の通り道を確保するために、狭くなった部分を直接広げる治療も行います。

  • 内視鏡的バルーン拡張術 胃カメラ(内視鏡)を使い、風船のついた器具を狭い場所まで運びます。 そこで風船を膨らませることで、トンネルを内側から優しく広げる方法です。 多くの食道狭窄に対して行われる、基本的な治療法の一つです。
  • ステント留置術 金属やプラスチックでできた筒状の器具(ステント)を狭い場所に置きます。 トンネルの中に支えを入れるイメージで、食べ物の通り道を確保します。 最近では、体の中で自然に溶けてなくなる「生分解性ステント」もあります。 ある研究では、このステントで飲み込みにくさの点数が平均1.8ポイント改善したと報告されています。 しかし、約36%のケースで再び治療が必要になるという課題もわかっています。

食道がん治療後の新しい予防法

食道がんを内視鏡で治療した後、傷が治る過程で食道が狭くなることがあります。 しかし、これを防ぐための有効な方法が複数報告されています。 ある研究では、8種類もの予防法が、合併症を増やすことなく安全に行えるとされています。

▼狭窄を防ぐための工夫の例

  • ステロイドというお薬を飲んだり、内視鏡で注射したりする
  • 「ポリグリコール酸シート」という特殊なシートを貼り付ける
  • 「ボツリヌス毒素」という成分を注射する

特に、シートを貼る方法やボツリヌス毒素の注射は、後から風船で広げる治療の回数を減らす効果も期待されています。 どの治療法が最適かは、状態によって異なりますので、担当の医師とよく相談して決めていきましょう。