カンジダ性食道炎

食べ物や飲み物が胸でつかえる感じがする、飲み込むときにしみるような痛みがある。そんな不快な症状に心当たりはありませんか。多くの人が胃酸の逆流などを疑いますが、実はその原因は食道で増殖した「カビ」かもしれません。

カンジダ性食道炎は、食道に起こる感染症の中で最も一般的なものです。特別な菌ではなく、もともと私たちの口の中にいる常在菌「カンジダ菌」が、疲れやストレスによる免疫力の低下をきっかけに異常増殖して発症します。

無症状で胃カメラ検査で偶然見つかることも多く、誰にでも起こりうる身近な病気です。この記事では、カンジダ性食道炎の詳しい症状や原因、そして正しい治療法について解説します。ご自身の状態を理解し、不安を解消するためにお役立てください。

カンジダ性食道炎の概要

カンジダ性食道炎とは、食道にカビの一種が増える病気です。 この原因となる「カンジダ菌」は、特別な菌ではありません。 普段から私たちの口の中や腸に住み着いている常在菌です。

健康なときは、体を病気から守る力(免疫力)が働きます。 この免疫力によって、カンジダ菌は増えすぎないよう抑えられています。 しかし、免疫力が低下すると菌が異常に増殖してしまいます。 そして、食道の粘膜で炎症を引き起こすのがカンジダ性食道炎です。

免疫力が低下する原因には、以下のようなものがあります。

  • 疲れやストレス、加齢 体の抵抗力が自然と弱まっている状態です。
  • 糖尿病などの病気 病気自体やその治療が免疫力に影響します。
  • お薬の影響 ステロイドや抗がん剤、抗生物質の長期服用などが挙げられます。
  • ステロイド吸入薬の使用 ぜんそく治療などで使われるお薬です。

食道に起こる感染症を「感染性食道炎」と呼びます。 感染性食道炎は、ウイルスや細菌が原因となることもあります。 その中でも、カンジダ菌が原因となるケースが最も一般的です。

症状がないほど軽い場合は、治療せず様子を見ることもあります。 しかし、飲み込みにくさなどの症状がある場合は治療が必要です。 お薬(抗真菌薬)を使って、増えすぎた菌を退治します。

カンジダ性食道炎の種類

食道に炎症が起きる病気を「感染性食道炎」と呼びます。 これは原因となる病原体の違いによって、いくつかの種類に分けられます。

原因となる病原体は、主に次の3つのタイプに分けられます。

  • 真菌(しんきん) カビの仲間です。
  • ウイルス とても小さな病原体です。
  • 細菌(さいきん) 体の中にもともといる菌などです。

この中でカンジダ性食道炎は、真菌によって起こる病気です。 感染性食道炎の中では、最もよく見られるタイプになります。

それぞれの特徴を、もう少し詳しく見ていきましょう。

種類

主な原因

特徴

真菌性食道炎

カンジダ菌

感染性食道炎の中で最も一般的です。<br>治療にはカビを抑えるお薬(抗真菌薬)を使います。

ウイルス性食道炎

・単純ヘルペスウイルス<br>・サイトメガロウイルス

カンジダによるものの次にみられます。<br>治療にはウイルスに効くお薬(抗ウイルス薬)が必要です。

細菌性食道炎

口の中や呼吸器の細菌など

非常にまれなタイプです。<br>体の守る力が著しく低下した方に見られます。

このように、原因によって治療に使うお薬が全く異なります。 そのため、胃カメラ(内視鏡検査)で原因を正確に調べることが大切です。 正しい診断が、適切な治療への第一歩となります。

カンジダ性食道炎の原因

カンジダ性食道炎は、外から特別な菌が入って起こる訳ではありません。 原因の「カンジダ菌」はカビの一種で、もともと口の中にいる常在菌です。

普段は体の免疫力によって、カンジダ菌は大人しくしています。 しかし、体の抵抗力が弱まると、このバランスが崩れてしまいます。 潜んでいた菌が再び活発になり、食道で異常に増えて炎症を起こします。

免疫力が低下する原因には、主に以下のようなものがあります。

  • 生活習慣の乱れ 疲れやストレスの蓄積、栄養不足は免疫力を下げます。 また、喫煙や過度な飲酒も原因の一つです。
  • 病気による影響 糖尿病やがん(悪性腫瘍)の治療中の方に多く見られます。 HIV感染症など、免疫機能が直接低下する病気も要因です。
  • お薬の影響 ステロイドや免疫抑制剤、抗がん剤は免疫力を抑えます。 抗生物質を長く飲むと、体内の良い菌まで減ってしまいます。 胃酸を抑える薬で、胃の殺菌作用が弱まることもあります。

原因となるカンジダ菌は、ほとんどがCandida albicansという種類です。 持病がない健康な方でも、疲れをきっかけに発症することがあります。

カンジダ性食道炎の症状

カンジダ性食道炎の症状は、人によって大きく異なります。 炎症が軽ければ、まったく症状を感じないことも珍しくありません。 胃の不調などで胃カメラ検査を受け、偶然見つかるケースも多いです。

症状がある場合は、主に飲み込むときの違和感として現れます。 具体的には、以下のような症状がみられることがあります。

  • 飲み込みにくさ(嚥下困難) 食べ物や飲み物が、のどや胸でつかえるように感じます。
  • 飲み込むときの痛み(嚥下痛) 特に熱いものや固いものが、しみるように痛むことがあります。
  • 胸のあたりの不快感 胸の真ん中の骨の裏側あたりが、押されるように感じます。
  • 胸やけ 胃酸が逆流する時のような、胸が焼けるような感覚です。
  • のどの違和感 常に何かがのどに張り付いているような感じがします。

これらの症状は、軽いものから食事をとるのがつらいほどの痛みまで様々です。 時には、体の防御反応として熱が出ることさえあります。

通常、カンジダ菌による炎症は食道の表面にとどまります。 しかし、体の免疫力が著しく低下している場合は注意が必要です。 食道の症状が、菌が全身に広がる危険なサインの可能性もあります。 気になる症状があれば、自己判断せずに医師へご相談ください。

カンジダ性食道炎の検査・診断

のどの違和感や飲み込みにくさなどから、この病気を疑います。 しかし、似た症状は他の病気でも起こるため、検査は欠かせません。 正確な診断のために、主に2つの検査を行います。

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)

診断の中心は、上部消化管内視鏡検査、いわゆる「胃カメラ」です。 口や鼻から細いカメラを入れ、食道の粘膜を直接観察します。 カンジダ性食道炎では、食道の壁に特徴的な変化が見られます。

白い苔や酒粕のような付着物(白色プラーク)が点状に広がります。 この所見は、カンジダ性食道炎を強く疑う大切な手がかりです。 内視鏡による食道の観察は、診断の第一歩として非常に重要です。

生検検査

胃カメラで疑わしい部分を見つけたら、次に生検検査を行います。 これは、診断を確定させるための、とても大切な検査です。 内視鏡の先から小さな器具を出し、組織の一部を少しだけ採ります。

採取した組織を顕微鏡で詳しく調べ、カンジダ菌を探します。 菌が糸状に伸びた「菌糸(きんし)」という姿を確認します。 また、体を守る細胞が集まっているか(炎症)も確認できます。

この検査で菌の存在を証明し、カンジダ性食道炎と確定診断します。 原因を特定することで、最も効果的なお薬を選ぶことにつながります。

検査の種類

検査で何をするか

わかること

胃カメラ<br>(上部消化管内視鏡検査)

食道の粘膜を<br>直接カメラで観察する

白い苔のような付着物の有無や<br>炎症の広がり具合を確認する

生検検査

食道の組織の一部を採取し<br>顕微鏡で詳しく調べる

カンジダ菌がいることを証明し<br>診断を確定させる

カンジダ性食道炎の治療

カンジダ性食道炎の治療方針は、症状や体の状態によって決まります。 基本的には「経過観察」か「お薬による治療」のどちらかです。 それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。

経過観察でよい場合

胃カメラ検査で偶然見つかり、症状が全くない場合は治療は不要です。 特に、他に持病のない健康な方に見られたケースがこれにあたります。 疲れやストレスで、一時的に免疫力が落ちただけと考えられます。

多くの場合、生活習慣が整えばご自身の免疫力で自然に治ります。 そのため、特別な治療はせず、経過を観察することがほとんどです。

お薬による治療が必要な場合

一方で、カビの増殖を抑える「抗真菌薬」での治療が必要な場合もあります。 具体的には、以下のようなケースが当てはまります。

  • 症状がある場合 食べ物が飲み込みにくい、胸が痛いなどのつらい症状がある。
  • 免疫力が低下する病気がある場合 糖尿病やHIV感染症など、体の抵抗力が弱まる病気にかかっている。
  • お薬の影響がある場合 免疫の働きを抑えるステロイドなどのお薬を使っている。
  • 重症と判断された場合 胃カメラ検査で炎症がひどく、重症であると判断された。

治療の第一選択は、一般的に「フルコナゾール」という飲み薬です。 症状が非常に重い場合や、再発を繰り返すような手強いケースでは、別の抗真菌薬を点滴で投与することもあります。

治療は、つらい症状を和らげるだけでなく、重い状態を防ぐ目的もあります。 まれに食道から出血したり、食道に穴が開いたりするのを防ぎます。 背景に病気が隠れている場合は、その治療も並行して行うことが大切です。 医師の指示に従い、適切な治療を受けるようにしましょう。