好酸球性食道炎
食べ物が飲み込みにくい、胸につかえる感じが続くなど、原因のわからない症状に悩んでいませんか。好酸球性食道炎は、アレルギー反応で食道に慢性的な炎症が起こる病気で、近年診断される方が増えています。
この記事では、厚生労働省の指定難病でもある好酸球性食道炎について、その原因や症状、診断から治療法までを詳しく解説します。胃カメラでの発見率は近年200〜1,000件に1件程度にまで増加したとの報告もあります。
ご自身の症状と照らし合わせることで病気への理解が深まり、適切な検査や治療へ繋がる、次の一歩を踏み出すきっかけになります。
好酸球性食道炎の概要
好酸球性食道炎とは、主に食べ物に対するアレルギー反応によって、食道の粘膜に慢性的な炎症が起こる病気です。
この炎症は、白血球の一種である「好酸球」が食道に異常に集まることで引き起こされます。
この病気が関わるアレルギーは、原因となる食べ物を口にしてから数時間から数日経って症状が出る「遅延型」に分類されます。※
すぐに反応が出ないため、ご自身で原因の食べ物を特定するのは困難です。
かつては非常にまれな病気と考えられていましたが、近年は病気の認知度が高まり、診断される方が急増しています。そのため、現在では厚生労働省の指定難病(指定難病98)にも認定されています。
この病気の主な特徴を下記に整理します。
・患者数の動向
胃内視鏡検査(胃カメラ)での発見率は、かつての5,000件に1件程度から、近年では200〜1,000件に1件程度にまで増加したとの報告があります。
・発症しやすい方
30〜50代の男性に多い傾向がありますが(男女比 約3:1)、お子さまからご高齢の方まで、どの年代でも発症する可能性があります。
好酸球性食道炎の種類
好酸球性食道炎は、アレルギー反応による炎症が消化管のどこで起きているかによって分類される「好酸球性消化管疾患」という病気グループの一員です。
好酸球性消化管疾患とは、食べ物などへのアレルギー反応によって好酸球(白血球の一種)が消化管の粘膜に異常に集まり、慢性的な炎症を引き起こす病気の総称です。炎症が起きる場所によって、主に以下の2つに分けられます。
病名 | 炎症の主な場所
好酸球性食道炎 | 食道のみに炎症が限定されている状態
好酸球性胃腸炎 | 胃や小腸、大腸など、食道以外の消化管にも炎症が広がっている状態
アレルギーのタイプで見ると、好酸球性食道炎は「非IgE媒介型(遅延型)食物アレルギー」というグループに分類されています。
このタイプのアレルギーは、原因となる食べ物を口にしてから数時間から数日経って症状が現れるのが特徴です。※
すぐに反応が出ないため、ご自身で原因の食べ物を特定するのは非常に難しいといえます。
また、好酸球性食道炎と症状や内視鏡の所見がよく似た状態に、「PPI反応性食道好酸球浸潤(PPI-REE)」があります。
これは、胃カメラで食道に好酸球が見つかる点は同じですが、胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬:PPI)を服用することで症状や炎症が改善するものです。
治療の第一歩としてまずPPIを試すことが多く、その反応を見ることで好酸球性食道炎なのか、PPI-REEなのかを判断するため、治療方針を決める上で重要な区別となります。
好酸球性食道炎の原因
好酸球性食道炎は、食べ物や環境中の物質に対する特殊なアレルギー反応を主体としながら、遺伝的な体質も加わって発症すると考えられています。
この病気の引き金となるのは、一般的な食物アレルギー(即時型)とは少しタイプが異なります。
原因となる食べ物を口にしてから数時間から数日経って症状が現れる「遅延型(非IgE媒介型)」と呼ばれるアレルギー反応が主役です。※
すぐに反応が出ないため、「昨日食べたアレが原因かも?」とご自身で原因を突き止めるのは非常に難しいのが特徴といえます。
原因となりうるアレルゲン(アレルギーの原因物質)は、食べ物から環境中のものまで多岐にわたります。主な原因として考えられるものを下記に整理します。
・食物アレルゲン
・牛乳・乳製品
・卵
・小麦
・大豆
・環境アレルゲン
・花粉(スギ、ヒノキなど)
・ハウスダスト、ダニ
なぜアレルギー反応で食道に炎症が起きるのか、その仕組みも少しずつ解明されてきました。
アレルゲンが食道に侵入すると、食道の細胞から「IL-33」という情報伝達物質が放出されます。
このIL-33が、アレルギー反応の実行部隊である「好酸球」を食道に呼び寄せる“指令”となり、集まってきた好酸球が炎症を引き起こすと考えられているのです。※
これらに加え、アレルギー反応だけでなく、遺伝的な体質も発症に影響すると考えられています。
ご家族に同じ病気の方がいる場合や、ご自身がアトピー性皮膚炎、気管支ぜんそくなどのアレルギー疾患をお持ちの方に発症しやすい傾向があります。
好酸球性食道炎の症状
好酸球性食道炎では、食べ物の飲み込みにくさや胸の痛みといった症状がみられ、大人と子どもでその現れ方が異なります。
これらの症状は、原因となる食べ物を口にしてから数時間から数日経って現れる「遅延型」のアレルギー反応によるものです。※
すぐに反応が出ないため、「昨日の食事が原因かも」とご自身で特定するのは非常に難しいといえます。
主な症状を大人とお子さまで比較してみましょう。
大人(成人)の主な症状 | お子さまの主な症状
・固形物が飲み込みにくい(嚥下困難) ・食べ物が食道に詰まる(食片圧入) ・胸の痛みや焼けるような感覚 ・胃酸が逆流するような感覚 | ・食事を嫌がる、食欲がない ・繰り返す嘔吐やお腹の痛み ・体重がなかなか増えない(成長の遅れ)
症状はゆっくりと進行するため、はじめのうちは「体調のせいかな?」「少し食べ過ぎただけかな?」と見過ごされることも少なくありません。
しかし、食道の炎症が続くと、壁が硬く厚くなって食べ物の通り道が狭くなる可能性があります。そうなると症状はさらに悪化するため、気になる症状があれば放置せずに消化器内科へご相談ください。
好酸球性食道炎の検査・診断
好酸球性食道炎の診断は、胃内視鏡検査(胃カメラ)で食道の状態を直接観察し、その際に採取した組織を調べる「組織検査(生検)」を組み合わせて確定します。
食べ物のつかえ感や胸の痛みといった症状からこの病気が疑われる場合、まずは胃カメラを用いて食道の粘膜に炎症のサインがないかを詳しく観察します。
その際、好酸球性食道炎に特徴的な、以下のような所見がみられることがあります。
・縦走溝(じゅうそうこう)
食道に縦方向の深いシワ(溝)が入っている状態。
・白色滲出物(はくしょくしんしゅつぶつ)
粘膜の表面に、白いポツポツとした斑点が多数付着している状態。
・輪状溝(りんじょうこう)
木の年輪のように、食道の内側が同心円状の溝で狭くなっている状態。
・食道の狭窄(きょうさく)
炎症が長く続いた結果、食道全体が硬く狭くなっている状態。
ただし、胃カメラでこれらの所見がみられるだけでは、診断は確定しません。
診断を確定させるためには、内視鏡検査の際に食道の組織をごく少量つまみ取り(生検)、顕微鏡で「好酸球」というアレルギー細胞が異常に集まっていないかを確認する組織検査が不可欠です。
食道の粘膜に、顕微鏡の1つの視野あたり15個以上の好酸球が確認されると、好酸球性食道炎と診断されます。
一般的な食物アレルギーとは異なり、この病気は血液検査だけでは診断できません。食道の組織を直接確認する組織検査こそが、診断における最も信頼性の高い方法といえます。※
また、内視鏡検査は診断を確定するだけでなく、治療方針を決める上でも欠かせない、非常に有益な検査です。
特に、生まれつき食道に病気があるお子さんは好酸球性食道炎を合併するリスクが高く、内視鏡検査による定期的な確認が重要になる場合があります。※
アレルギーの体質や炎症の程度を調べるために血液検査を補助的に行うことはありますが、確定診断には胃カメラと組織検査がセットで必要になる、とご理解ください。
好酸球性食道炎の治療
好酸球性食道炎の治療は、食道の炎症を鎮めてつらい症状を和らげ、将来的な食道の狭窄などを防ぐことを目指します。
治療の柱は「食事療法」「薬物療法」「内視鏡的治療」の3つで、患者さん一人ひとりの状態に合わせてこれらを組み合わせていきます。
1. 食事療法:アレルギー反応の根本を断つ
アレルギーの原因と考えられる食べ物を食事から取り除く治療法です。原因となりやすい牛乳・乳製品、卵、小麦、大豆などを中心に、医師や管理栄養士の指導のもとで計画的に進めていきます。
2. 薬物療法:段階的に炎症をコントロールする
薬物療法では、効果を見ながら治療をステップアップしていくのが基本です。
・プロトンポンプ阻害薬(PPI)
胃酸の分泌を強力に抑える薬で、まず初めに試されることが多い治療法(第一選択薬)です。胃酸の逆流による刺激を減らすだけでなく、食道の炎症そのものを抑える効果も期待できます。
・ステロイドの局所(嚥下)治療
PPIで十分な効果が見られない場合に検討します。ステロイド薬を飲み込み、食道の粘膜に直接作用させることで、強力に炎症を抑えます。
この治療中に、副作用として食道にカビ(カンジダ)が生じることがあります。しかし、これは薬がしっかりと食道に届いている証拠とも考えられ、治療がうまくいっている目安になる可能性が報告されています。※
・生物学的製剤
従来の治療で改善が難しい難治性のケースでは、アレルギー反応に関わる特定の物質の働きをピンポイントで抑える「生物学的製剤(デュピルマブなど)」を使用します。
特に、生まれつき食道の病気があるお子さんなど、PPIだけでは改善が難しく、ステロイドや生物学的製剤への治療強化が必要になる場合があることもわかっています。※
3. 内視鏡的治療:物理的に食べ物の通り道を広げる
長年の炎症で食道が硬く狭くなってしまい(狭窄)、食べ物の通過が著しく妨げられている場合に行う治療です。
内視鏡の先端につけたバルーン(風船)を使って、物理的に狭くなった部分を広げる「食道拡張術」を行います。
【重要】症状が良くなっても自己判断で治療を中断しないでください
治療によって食べ物のつかえ感などの症状が消え、胃カメラでも見た目がきれいになっても、安心してはいけません。
近年の研究では、症状が落ち着いている状態でも、食道粘膜のバリア機能が完全には回復していない可能性が指摘されています。※
ここで治療をやめてしまうと、再び炎症がぶり返し、食道の狭窄が進行するリスクがあります。医師と相談しながら、根気強く治療を続けていくことが大切です。









