胃潰瘍

みぞおちの痛みや食後の胃もたれ。単なるストレスや食べ過ぎのせいだと、つい軽く考えてしまっていませんか?その不調、もしかしたら胃の壁が深く傷つく「胃潰瘍」のサインかもしれません。特に40代から50代の方に多く見られる病気です。

胃潰瘍と聞くとストレスを思い浮かべがちですが、実は患者さんの約7割が「ピロリ菌」の感染が原因とされています。放置すると、胃に穴が開いたり、命に関わる出血を起こしたりすることもあるため、正しい知識を持つことが大切です。

この記事では、胃潰瘍の本当の原因から、胃がんとの違い、最新の治療法までを詳しく解説します。ご自身の症状と照らし合わせ、体を守るための第一歩としてお役立てください。

胃潰瘍の概要

私たちの胃は、食べ物を溶かすほど強力な胃酸で満たされています。 それなのに胃自身が溶けないのは、粘液のバリアで守られているからです。

しかし、この「攻撃(胃酸)」と「防御(粘液)」のバランスが崩れると、 胃の壁が傷つき、「胃潰瘍(いかいよう)」という病気になります。 胃にできる傷は、その深さによって呼び方が変わります。

傷の状態

名称

説明

浅い傷

胃びらん

胃の表面(粘膜)が少し荒れて、ただれている状態です。

深い傷

胃潰瘍

粘膜の下にある筋肉の層まで、深くえぐれてしまった状態です。

胃潰瘍は特に40代から50代の方に多く見られますが、 近年は良いお薬が登場し、治療しやすくなっています。

また、より良い治療法を見つけるための研究も世界中で進んでいます。 例えば、Evodiamine(EVO)という成分が、動物実験の段階で 胃潰瘍に良い影響を与える可能性が報告されています。

一方で、昔から消化器の不調に使われるウコン(ターメリック)は、 多くの研究結果をまとめて分析した報告によると、 消化性潰瘍への効果は、まだはっきりと証明されていません。 安全で有効な治療法を確立するため、様々な角度から検証が続いています。

胃潰瘍の種類

胃潰瘍とひと口に言っても、実はいくつかの種類に分けられます。 主に「期間」と「性質」という、2つの見方で分類します。

まず、潰瘍ができた期間による分け方です。

種類

特徴

急性胃潰瘍

強いストレスなどが原因で、急に胃の粘膜に浅い傷が複数できます。

慢性胃潰瘍

ピロリ菌感染や薬の影響で、長い時間をかけてできるのが特徴です。円い深い傷が一つだけでき、治っても再発をくり返すことがあります。

そして、もう一つが性質による分け方で、こちらが非常に重要です。 潰瘍には、がんではない「良性潰瘍」と、胃がんが原因の「悪性潰瘍」があります。 悪性潰瘍は、がんの一部が崩れて潰瘍のように見えている状態です。

見た目だけでは区別が難しいこともあり、必ず検査で確かめる必要があります。

また、世界中で新しい治療法の研究が進められています。 例えば、ある植物由来のEvodiamineという成分が、動物実験の段階で 胃潰瘍に良い影響を与える可能性が報告されています。

一方で、昔から消化に良いと言われるウコン(ターメリック)は、 多くの研究を分析した結果、胃潰瘍への効果はまだはっきりと証明されていません。 気になる症状があれば、自己判断で対処せず、まずは医師に相談しましょう。

胃潰瘍の原因

胃潰瘍は、胃を守る力と攻撃する力のバランスが崩れて起こります。 攻撃する力が強まったり、守る力が弱まったりする原因は、 主に次の3つが知られています。

原因の種類

具体的な内容

ピロリ菌の感染

胃潰瘍の最も多い原因で、患者さんの約7割が感染していると言われます。

薬の副作用

痛み止めや、血液をサラサラにする薬などが原因となることがあります。

生活習慣など

過度なストレスや喫煙、飲酒なども胃に負担をかけ、原因になり得ます。

ピロリ菌の感染

ピロリ菌は、胃酸から自分を守るバリアを作りながら胃に住み着く細菌です。 この菌が胃の粘膜に長く居座って炎症を起こし続けることで、 胃を守る力が弱まり、やがて潰瘍ができてしまいます。

薬の副作用

次に多いのが、お薬の副作用によるものです。 痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬)や、血液をサラサラにする薬の長期使用が 原因となることがあります。 自己判断で薬をやめると、元の病気が悪化する恐れがあり大変危険です。 胃の不調を感じたら、必ず処方した医師に相談してください。

ストレスや生活習慣

強いストレスは胃酸の分泌を増やし、胃の粘膜の血流を悪くさせます。 これにより防御力が落ち、潰瘍の引き金になることがあります。 その他、喫煙や過度な飲酒、香辛料の多い食事も胃には大きな負担です。

民間療法や健康食品について

胃の不調にウコン(ターメリック)を試す方もいるかもしれません。 しかし、多くの研究をまとめて分析した報告によると、 胃潰瘍に対するウコンの有効性は、まだはっきりと証明されていません。

また、ある植物由来のEvodiamineという成分は、動物実験の段階で 胃潰瘍に良い影響を与える可能性が報告されています。 しかし、人での効果や安全性が確かめられるには、さらなる研究が必要です。 気になる症状があれば、自己判断で対処せず、まずは医師に相談しましょう。

胃潰瘍の症状

胃潰瘍で最も多い症状は、みぞおちのあたりの痛みです。 特に食事をして少し時間が経った頃や、お腹が空いた時に痛みます。 これは食べ物がなくなり、胃酸が直接、傷口を刺激するためです。

その他にも、胃からのサインとして次のような症状が現れます。

  • 胃もたれや胸やけ
  • 吐き気や酸っぱいげっぷ
  • 食欲がなくなる
  • 背中の痛み

ただし、痛み止めのお薬を飲んでいる方は注意が必要です。 お薬が痛みの信号を抑えてしまうため、はっきりした症状がないまま 病気が悪化してしまうことがあるので、油断は禁物です。

注意すべき危険なサイン

胃潰瘍が進行すると、命に関わる危険な状態になることもあります。 以下のチェックリストに当てはまる場合は、すぐに病院を受診してください。

【危険なサインのチェックリスト】

  • □ 便がのりのように真っ黒になる(タール便)
  • 潰瘍から出た血が、胃酸で黒く変化して便に混ざるサインです。
  • □ 赤い血や、コーヒーかすのような黒いものを吐く(吐血)
  • 潰瘍から直接出血している、非常に危険な状態です。
  • □ お腹に突き刺すような、急で激しい痛みが走る
  • 胃に穴が開いてしまう「穿孔(せんこう)」の可能性があります。
  • □ めまい、立ちくらみ、動悸がする(貧血)
  • 出血で体の中の血液が足りなくなっているサインです。

これらのサインは、大人だけでなくお子さんにも起こり得ます。 お子さんの治療で使うお薬(プロトンポンプ阻害薬など)は、 胃酸をしっかり抑えますが、まれに副作用が起こることもあります。

76万人以上のお子さんを調べたある研究では、このお薬を使った子の約7%に、 もとの病気とは違う消化器や呼吸器の合併症などがみられました。 気になる症状があれば、自己判断せずに必ず医師に相談しましょう。

胃潰瘍の検査・診断

胃の痛みや不快感が続く場合、その原因を正確に知ることが大切です。 胃潰瘍をきちんと調べるために、いくつかの検査が行われます。 中でも最も重要で確実な方法が、胃カメラと呼ばれる検査です。

胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)

口や鼻から細いカメラを入れ、食道や胃などを直接観察します。 胃カメラを使うと、次のような多くのことが分かります。

  • 潰瘍の状態を直接見る 潰瘍の大きさ、深さ、形などを正確に確認できます。
  • がんの可能性を調べる 胃潰瘍と胃がんは見た目が似ていることがあるため、 疑わしい部分の組織を少し採って詳しく調べます(生検)。
  • ピロリ菌を調べる 大きな原因であるピロリ菌がいるかどうかも検査できます。
  • 出血を止める もし出血している場合は、その場で止血処置が可能です。

特に、潰瘍からの出血を止める処置はとても重要です。 ある研究では、粘り気のある血のかたまりが付いた潰瘍に対し、 胃カメラで止血を行うと、お薬だけの治療よりも 再び出血するリスクが下がることが報告されています。 鎮静剤を使い、眠っている間に楽に検査を受けることもできます。

その他の検査

胃カメラの他に、必要に応じて以下の検査を組み合わせます。

検査の種類

内容

X線バリウム検査

バリウムという白い液体を飲んでレントゲンを撮ります。潰瘍の全体像はわかりますが、小さな変化は見つけにくいです。

ピロリ菌検査

胃カメラ以外にも、息や血液、便などを使って、ピロリ菌に感染しているかを簡単に調べることができます。

血液検査・腹部超音波検査

貧血の有無や、胃以外の病気(膵炎など)が痛みの原因でないかを確認するために行われることがあります。

これらの検査結果を総合的に見て、胃潰瘍の状態を正確に把握します。 その上で、一人ひとりに最適な治療方針を決めていきます。 気になる症状があれば、自己判断せずに医療機関へ相談しましょう。

胃潰瘍の治療

胃潰瘍の治療は、原因や傷の状態に合わせて行います。 目的は「症状を和らげる」「潰瘍を治す」「再発を防ぐ」の3つです。 治療の柱となるのは、主に以下の方法です。

治療の柱

内容

お薬での治療

胃酸を抑えたり、原因となるピロリ菌をやっつけます。

胃カメラでの治療

胃カメラを使い、出血している場所を直接止めます。

生活習慣の見直し

禁煙や、胃にやさしい生活を心がけることが大切です。

お薬での治療

胃潰瘍の治療は、お薬を使うことが基本となります。

  • 胃酸の分泌を抑えるお薬 胃酸の出すぎを抑え、傷ついた胃の粘膜が治るのを助けます。 プロトンポンプ阻害薬(PPI)などがよく使われます。 このお薬は、お子さんの治療でも使われることがあります。 76万人以上のお子さんを調べたある研究では、 このお薬を使った子の約7%に、もとの病気とは違う 消化器や呼吸器の不調などが見られたと報告されています。 効果が高いお薬だからこそ、医師は必要性を慎重に判断します。
  • ピロリ菌の除菌治療 ピロリ菌が原因の場合、抗菌薬と胃酸を抑える薬を飲みます。 1週間続けることで、ピロリ菌をやっつけます。 この治療で、潰瘍が再びできるのを大きく減らせます。
  • 他のお薬が原因の場合 痛み止めなどが原因なら、可能であればそのお薬を変えます。 しかし、心臓病などでやめられないお薬の場合もあります。 その際は胃を守るお薬と一緒に飲み、治療を進めます。 自己判断でお薬をやめず、必ず医師に相談してください。

胃カメラでの治療

潰瘍から血が出ている場合は、緊急で治療が必要です。 胃カメラの先から出る小さな器具で、出血を止めます。

例えば、血管をクリップでつまんだり、特殊な薬を注入します。 ある研究では、血のかたまりが付いた潰瘍に対し、 胃カメラで止血を行うと、お薬だけの治療よりも 再び出血するリスクが下がることが報告されています。 出血している場合は、とても大切な治療になります。

生活習慣の見直し

お薬や胃カメラの治療とあわせて、生活の見直しも重要です。 胃に負担をかける生活を続けると、再発しやすくなります。

  • 禁煙、お酒を控える
  • 辛いものや脂っこいものを避ける
  • ストレスを溜めすぎない
  • 十分な睡眠をとる

これらを心がけ、胃をいたわることが回復への近道です。