胃ポリープ

健康診断などで「胃にポリープがあります」と告げられ、もしかしてがんではないかと不安に思っていませんか?胃ポリープは胃の粘膜にできる“できもの”のことで、そのほとんどは命に別状のない良性のものです。

しかし、その一方で放置してはいけないポリープも存在します。例えば、ある種のポリープは2cmを超えるとがん化のリスクが高まり、遺伝が関わる特殊な病気では、患者の約3割が胃がんを発症したという衝撃的なデータもあります。

この記事では、胃ポリープの種類や原因、そして切除が必要な危険なポリープの見分け方まで詳しく解説します。ご自身の状態を正しく理解し、適切な対処法を知るためにも、ぜひ最後までご覧ください。

胃ポリープの概要

健康診断などで「胃にポリープがあります」と言われると、 がんではないかと、とても心配になるかもしれません。

胃ポリープとは、胃の壁の内側をおおう粘膜(ねんまく)にできる、 きのこやイボのような形をした「できもの」のことです。 多くは胃カメラ(内視鏡検査)で偶然見つかります。

ほとんどの胃ポリープは、がんになる心配のない「良性(りょうせい)」です。 そのため、すぐに命に関わることはなく、症状もほとんどありません。 しかし、まれに注意が必要なポリープも存在します。

【胃ポリープの主な特徴】

  • 胃の粘膜にできる、もりあがり 多くは無症状で、胃カメラで偶然発見されます。
  • ほとんどは良性 しかし、種類や大きさによっては注意が必要です。
  • まれに遺伝が関係することも 特定の遺伝子の変化でポリープが多発し、 がんのリスクが高まることがあります。

ごくまれですが、体の設計図である「APC遺伝子」という部分の変化が原因で、 胃にたくさんのポリープが発生する病気も報告されています。 ある研究では、この病気の患者さんの約9割に胃ポリープが見つかり、 そのうち約3割が胃がんを発症したとされています。

このように、ほとんどは心配いらない一方で、 ごく一部にがん化したり、遺伝が関わったりするものもあります。 そのため、ポリープが見つかった際は自己判断で放置せず、 一度専門の医療機関でしっかり調べてもらうことが大切です。

胃ポリープの種類

胃のポリープと一言で言っても、実はいくつかの種類があります。 見た目や性質、がんになる可能性がそれぞれで全く異なります。 そのため胃カメラ検査でポリープが見つかった際は、 どの種類かを正確に調べることが非常に大切です。

一般的に見られるポリープは、主に次の3つに分けられます。

種類

特徴

がんになる可能性

過形成性(かけいせいせい)ポリープ

・最もよく見つかるポリープです<br>・ピロリ菌で荒れた胃にできやすいです<br>・表面は赤く、ザラザラしています

まれです。<br>しかし、2cmを超えるとがん化の恐れがあり、注意が必要です

胃底腺(いていせん)ポリープ

・ピロリ菌のいない、きれいな胃にできます<br>・周りと同じ色で、表面はなめらかです<br>・女性に多い傾向があります

ほとんどありません

腺腫(せんしゅ)

・がんになる可能性を持つポリープです<br>・「前がん病変」とも呼ばれます<br>・高齢の男性に多く見られます

あります

これらに加え、ごくまれに遺伝が関係するポリープもあります。 例えば「胃腺がんおよび近位ポリポーシス症候群(GAPPS)」です。 これはAPCという、体の設計図である遺伝子の異常が原因で起こります。 ある研究では、この病気の患者さんの約9割に胃ポリープが見つかり、 そのうち約3割が胃がんになったと報告されています。

また、「家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)」という病気では、 胃や大腸にたくさんのポリープができてしまいます。 このような病気の重症度を評価するための世界共通の基準は、 まだ確立されておらず、現在も研究が進められています。

このようにポリープの種類によって、対応は大きく異なります。 ただ様子を見るだけでよいものから、ピロリ菌の除菌や切除が必要なもの、 遺伝が関わるものまで様々です。自己判断は決してしないでください。

胃ポリープの原因

胃ポリープができる原因は一つではありません。 いくつかの原因が複雑にからみ合って発生します。 主な原因として考えられているものをみていきましょう。

  • ピロリ菌の感染 胃の中にピロリ菌がいると、粘膜が長期間炎症を起こします。 傷ができては治る、ということを繰り返すうちに、 粘膜の細胞がイボのように盛り上がることがあります。 これが「過形成性ポリープ」の主な原因です。
  • 加齢や生活習慣 年齢を重ねることによる胃の粘膜の変化も、 ポリープが発生する一因と考えられています。 また、ピロリ菌がいないきれいな胃にできる 「胃底腺ポリープ」は、体質的な要因も大きいです。
  • 胃酸を抑える薬の影響 逆流性食道炎などで使う胃酸を抑える薬(PPI)について、 長く使うとポリープが増えるという報告があります。 しかし、複数の研究をまとめた信頼性の高い分析では、 薬がポリープのリスクを高める強い証拠はないとされています。
  • 腸内環境と体の防御システム(免疫) 最近の研究で、腸内細菌のバランスも注目されています。 お腹の細菌が、体を守る「免疫」の働きに影響し、 ポリープができやすくなる可能性が指摘されているのです。 遺伝情報を用いた信頼性の高い研究でも、 腸内細菌と胃ポリープの間に因果関係があることが わかってきています。

このように、胃ポリープの原因は多岐にわたります。 自己判断で放置せず、気になることがあれば、 専門の医療機関に相談することが大切です。

胃ポリープの症状

胃ポリープの最も大きな特徴は、ほとんど症状が出ないことです。 「サイレントな存在」とも言え、気づかないうちに育っています。 そのため、多くは健康診断などの胃カメラ検査で偶然見つかります。

しかし、ポリープの種類や大きさによっては症状が出ることがあります。 特に「過形成性ポリープ」は、まれに出血することがあります。 表面がイチゴのように赤くザラザラしており、とてももろいためです。 食べ物がこすれるなどの、ささいな刺激で出血を繰り返します。

出血が続くと、知らないうちに貧血が進んでいることもあります。 ポリープ自体が痛みを引き起こすことは、まずありません。 胃もたれや不快感は、ポリープの背景にある胃炎が原因です。

【こんな症状は貧血のサインかも?】 以下の症状があれば、ポリープからの出血も考えられます。 気になることがあれば、早めに医療機関へご相談ください。

  • 立ちくらみや、めまいがする
  • 少し動いただけなのに、動悸や息切れがする
  • 周りの人から「顔色が悪い」とよく言われる
  • 便がイカ墨のように黒っぽくなることがある

逆流性食道炎などで胃酸を抑える薬を飲んでいる方もいるでしょう。 「薬のせいでポリープができたのでは?」と心配になるかもしれません。 しかし、最近の信頼できる研究が、この疑問に一つの答えを示しています。

合計27,000人以上を対象とした複数の研究を分析した結果、 この薬を長く使っても、胃ポリープができる危険性が、 特別高まるわけではないことがわかっています。 自己判断で薬をやめることはせず、気になる点は主治医に相談しましょう。 症状がないからこそ、定期的な検査で胃の中を見ることが大切です。

胃ポリープの検査・診断

健康診断などで胃ポリープを指摘されたら、 まずその正体を詳しく調べる検査が必要です。 ポリープの種類によって対応が全く違うからです。

【最も確実なのは胃カメラ(内視鏡検査)】 ポリープの診断で最も基本となるのが胃カメラです。 口や鼻から細いカメラを入れ、胃の中を直接観察します。 これにより、ポリープの正確な情報が得られます。

<胃カメラでわかること>

  • ポリープの見た目 数や大きさ、形、色などを直接見ることができます。 この情報が、ポリープの種類を推測する手がかりです。
  • 組織の詳しい検査(生検) ポリープの一部を少しだけつまみ取り、 顕微鏡で調べる「生検(せいけん)」が可能です。 これにより、がん細胞がないかを確定できます。
  • ピロリ菌の検査 ポリープの原因となりうるピロリ菌の感染も、 同時に調べることができます。

【その他の検査方法】 胃カメラ以外にも、いくつかの方法があります。

検査方法

特徴

胃X線検査(バリウム検査)

バリウムを飲んでレントゲン撮影をします。<br>胃全体の形はわかりますが、小さなポリープや<br>場所によっては見つけにくいことがあります。

磁気制御カプセル内視鏡

体への負担が少ない新しい検査法です。<br>磁石で操作するカプセルカメラを飲みます。<br>複数の研究をまとめた信頼性の高い分析では、<br>胃の病気を見つける精度は87%と報告されています。<br>まだ広く普及はしていませんが、<br>将来が期待される技術です。

ごくまれに、遺伝が原因でポリープが多発する病気もあります。 このような病気では、ポリープの数や大きさで重症度を評価します。 しかし、その評価方法は世界中でまだ統一されておらず、 より良い診断基準を作るための研究が今も続けられています。

このように、ポリープを正確に診断するためには、 直接観察して組織も調べられる胃カメラが最も確実です。 どの検査が適切か、医師としっかり相談しましょう。

胃ポリープの治療

胃にポリープが見つかっても、すぐに切除するとは限りません。 治療するかどうかは、ポリープの種類や大きさで慎重に決めます。 主な治療方針は、大きく分けて3つあります。

1. 様子を見る(経過観察) がんになる可能性が極めて低い「胃底腺ポリープ」や、 小さなポリープは、特別な治療をしないことがほとんどです。 年に1回ほど胃カメラで、大きさや形に変化がないかを確認します。

胃酸を抑える薬(PPI)のせいでポリープができたのでは、 と心配になる方がいらっしゃるかもしれません。 しかし、信頼性の高い複数の研究をまとめた分析によると、 この薬でポリープができるリスクが特別高まるわけではない、 ということがわかっています。 自己判断で薬をやめず、必ず主治医に相談しましょう。

2. 胃カメラで切り取る(内視鏡切除) 「過形成性ポリープ」や「腺腫」が2cm以上の大きさになったり、 出血して貧血の原因になったりする場合に切除を検討します。 また、がんになる可能性が疑われる場合も対象となります。 胃カメラの先から「スネア」という金属の輪っかを出して、 ポリープの根元をしばって切り取る方法が一般的です。

3. ピロリ菌をやっつける(除菌治療) 「過形成性ポリープ」は、ピロリ菌感染と関係があります。 検査でピロリ菌が見つかった場合は、お薬で除菌します。 除菌に成功すると、ポリープが小さくなったり、 自然に消えたりすることが期待できます。

定期的な検査で、ご自身のポリープの状態を知ることが大切です。 将来的には、磁石で操るカプセル内視鏡のような、 より体に負担の少ない検査の活躍も期待されています。 ある研究では、胃ポリープを82%の精度で見つけたと報告されました。 ご自身にどの治療が合うか、担当医とよく相談してください。