胃アニサキス症

お寿司やお刺身を美味しく食べた数時間後、突然みぞおちをえぐられるような激痛に襲われたことはありませんか?その我慢できないほどの痛みの正体は、寄生虫が原因の「胃アニサキス症」かもしれません。

この病気は、サバやアジ、鮭などの魚介類を生で食べることで発症します。ある研究では、患者の年齢の中央値が40歳であったと報告されており、特に働き盛りの世代にとって決して他人事ではないのです。重症化すると腸閉塞などを引き起こす可能性もあります。

この記事では、胃アニサキス症の具体的な症状や原因、そして最も効果的とされる内視鏡(胃カメラ)を用いた治療法について詳しく解説します。大切な体を守るため、ぜひご自身の状況と照らし合わせてみてください。

胃アニサキス症の概要

お寿司やお刺身などを美味しく食べた数時間後に、 突然、みぞおちをえぐられるような激痛が走ることがあります。 これは「胃アニサキス症」という病気のサインかもしれません。

胃アニサキス症は、寄生虫「アニサキス」の幼虫が、 生の魚介類と一緒に体内に入ることで発症します。 アニサキスが胃の壁にかみつくと、体はこれを異物と判断します。 その結果、かみつかれた場所で強いアレルギー反応が起こり、 胃の粘膜が腫れあがることで、激しい痛みや吐き気が生じるのです。

この病気には、以下のような特徴があります。

  • 発症しやすい年代 ある研究によると、胃アニサキス症患者の年齢の中央値は40歳でした。 これは胃潰瘍の患者(中央値64.5歳)よりも若い傾向にあります。
  • 原因となりやすい魚 サバ、アジ、イカ、サンマ、鮭などの生食が原因となります。
  • 症状 食事から数時間~十数時間後に、突然の激しい腹痛や吐き気が起こります。

多くの場合、胃カメラ(内視鏡)で胃の中を直接観察し、 原因のアニサキスを摘出することで、速やかに症状が改善します。

胃アニサキス症の種類

アニサキス症は、虫が体のどこにいるかで主に4つの種類に分けられます。 場所によって症状の現れ方や危険度が違うので、知っておくことが大切です。

胃アニサキス症

アニサキス症の中で、最も多く見られるのがこのタイプです。 アニサキスが胃の壁にかみつくことで、激しい痛みが起こります。 ある研究では、患者さんの年齢の中央値は40歳でした。 これは胃潰瘍の患者さん(中央値64.5歳)より若い傾向にあります。 働き盛りの世代でも、お刺身を食べた後の激痛には注意が必要です。

腸アニサキス症

アニサキスが胃を通り過ぎて、小腸や大腸にたどり着くこともあります。 胃の場合より症状が出るのが遅く、食後十数時間から数日後に痛みます。 重症化すると腸が詰まる「腸閉塞(ちょうへいそく)」を起こす危険もあります。

消化器外アニサキス症

非常に稀ですが、アニサキスが胃や腸の壁を突き破るタイプです。 お腹の中にアニサキスが飛び出してしまい、より専門的な治療が必要になります。

アニサキスアレルギー

アニサキスそのものではなく、その成分にアレルギー反応を起こすタイプです。 アニサキスがいた魚を食べるだけで、じんましんや息苦しさが出ます。 重い場合は命に関わるアナフィラキシーショックを起こすこともあります。

種類

主な特徴

胃アニサキス症

・最も多いタイプ<br>・食後数時間で激しいみぞおちの痛み<br>・比較的若い世代に多い

腸アニサキス症

・胃よりは稀<br>・食後十数時間〜数日で強い下腹部痛<br>・重症化で腸閉塞のリスクがある

消化器外アニサキス症

・非常に稀なタイプ<br>・アニサキスが胃や腸の外へ飛び出す

アニサキスアレルギー

・アニサキスの成分に反応する<br>・じんましんや呼吸困難などが起こる

胃アニサキス症の原因

胃アニサキス症は、「アニサキス」という寄生虫が原因です。 アニサキスは、長さ2〜3cmほどの白い糸のような見た目をしています。 この虫は、もともと魚介類の内臓にひそんでいます。

アニサキスは、自然界の食物連鎖の中で生きています。 プランクトンを魚が食べ、その魚を人間が食べることで、 私たちの体内に入り込んでしまうのです。

魚が死んで鮮度が落ちてくると、アニサキスは内臓から、 私たちが食べる「身」の部分へと移動する習性があります。 そのため、新鮮な魚のお刺身でも注意が必要です。 実際に、鮭やマグロの刺身を食べた後に発症した例もあります。

アニサキスがいる可能性のある主な魚介類

  • サバ 特に多く見られます。
  • アジ
  • サンマ
  • カツオ
  • イワシ
  • サケ
  • イカ

これらの魚介類を、加熱や冷凍が不十分な状態で食べると、 生きたアニサキスが体内に入り、胃の壁にかみつきます。 すると、体はアニサキスを異物と判断し、アレルギー反応を起こします。 この反応で胃の壁が急激に腫れ上がることが、激痛の正体です。

胃アニサキス症の症状

お刺身などを食べてから数時間~十数時間後に症状が現れるのが一般的です。 最も多いのは、お腹、特にみぞおちの辺りに起こる激しい痛みです。 キリキリと刺すような、我慢するのが難しいほどの痛みが突然現れます。

胃潰瘍の患者さんと比べた研究では、胃潰瘍が出血を伴いやすい一方、 胃アニサキス症は出血よりも強い痛みが主な症状だと報告されています。 この痛みには波があり、急に強くなったり、少し和らいだりします。

胃腸に現れる主な症状は、以下のとおりです。

  • 突然の激しい腹痛 特にみぞおちの辺りが、えぐられるように痛むことがあります。
  • 吐き気やおう吐 強い痛みとともに、吐き気をもよおすことがよくあります。
  • 発熱 アレルギー反応によって、熱が出る場合もあります。

胃腸の症状だけでなく、全身にアレルギー反応が出ることもあります。 実際に、鮭やマグロのお刺身を食べた後に、じんましんが出たり、 血圧が下がって息が苦しくなったりするケースもみられます。 これは「アナフィラキシーショック」という危険な状態で、命に関わります。 このような症状があれば、すぐに医療機関を受診してください。

胃アニサキス症の検査・診断

お刺身などを食べた後に急な激痛が起きたら、とても不安になりますよね。 病院では、まず詳しいお話を聞くことから診断が始まります。 これが、原因を突き止めるための最も大切な第一歩です。

重要なカギは「問診」

医師は、以下のような質問をします。

  • いつ、どのような魚介類を生で食べましたか? サバやアジ、鮭などを食べた後の発症が多いため、重要な情報です。
  • どのような痛みですか? 突然始まった、えぐられるような激しい痛みが特徴です。

ある研究では、胃アニサキス症になる方は胃潰瘍の方より若い傾向にあり、 年齢の中央値は40歳だったと報告されています。 こうした情報も、診断の大きなヒントになるのです。

確定診断のための検査

問診で胃アニサキス症が強く疑われた場合、検査で診断を確定します。

  • 胃カメラ(内視鏡検査) 胃アニサキス症の診断で、最も確実な方法です。 口から細いカメラを入れ、胃の中を直接観察します。 胃の壁に食らいついている、白い糸のようなアニサキスを見つけます。 診断と治療を同時に行えるのが最大の利点です。 見つけ次第、その場で小さな器具を使って取り除くことができます。 原因であるアニサキスを取り除くと、激しい痛みが速やかに和らぎます。
  • 画像検査(CT検査など) CT検査では、アニサキスにかみつかれて炎症を起こした結果、 胃の壁が分厚くなっている様子が確認できることがあります。 腸アニサキス症など、他の病気との見分けが必要な時に役立ちます。
  • 血液検査 体の中でアレルギー反応や炎症が起きていないかを調べるために、 補助的に行われることがあります。

これらの検査の中で、中心となるのは胃カメラです。 原因を直接見つけて取り除くことで、つらい症状から解放されるのです。

胃アニサキス症の治療

胃アニサキス症の治療は、原因を直接取り除くことが基本です。 激しい痛みの元となっているアニサキスを体の中から追い出すことが、 つらい症状から解放されるための一番の近道となります。

治療の中心となるのは、胃カメラ(内視鏡)を使った摘出術です。 口から入れたカメラで胃の中を観察し、胃の壁にかみついている、 白い糸のようなアニサキスを探し出して直接取り除きます。

実際に、鮭やマグロのお刺身を食べた後に激しい腹痛で受診された方が、 胃カメラでアニサキスを摘出したところ、速やかに症状が改善した、 という報告は数多くあります。 原因であるアニサキスを取り除くと、アレルギー反応が鎮まり、 うそのように痛みが和らぐことがほとんどです。

何らかの理由でアニサキスの摘出が難しい場合もあります。 例えば、すでにアニサキスが死んでいたり、胃カメラでは届かない、 小腸まで進んでしまっていたりするケースです。 このような場合は、症状を和らげるための薬による治療を行います。

  • 痛み止め 激しい胃の痛みを抑えるために使います。
  • 抗アレルギー薬 痛みの原因であるアレルギー反応や、胃の壁の腫れを鎮めます。

これらの薬は、あくまで症状を軽くするための対症療法です。 アニサキスを殺すための薬ではないことを知っておいてください。 アニサキスは人の体内では長く生きられず、1週間ほどで死んでしまいます。 しかし、症状が強い場合は我慢せず、医療機関で適切な治療を受けましょう。