十二指腸がん
胃がんの100分の1以下。これは、胃と小腸をつなぐ十二指腸に発生する「十二指腸がん」の発生率です。すべてのがんの中でも極めてまれな「希少がん」ですが、近年患者数は増加傾向にあり、決して他人事とは言えない病気になっています。
このがんの最も厄介な点は、初期症状がほとんどなく「静かながん」として進行することです。さらに、スウェーデンの研究では、胆石や胆のう炎といった一見無関係に思える病気を経験した方は、その後のリスクが高まるという意外な事実も報告されています。
この記事では、発見が難しく治療も複雑とされる十二指腸がんについて、その原因から症状、最新の治療法までを詳しく解説します。まれな病気だからこそ、正しい知識でご自身と大切な人を守りましょう。
十二指腸がんの概要
十二指腸は、胃で消化された食べ物が次に送られる場所です。 胃と小腸をつなぐ、長さ25cmほどのCの字の形をした臓器です。 食べ物をさらに細かく消化するための大切な役割を持っています。 この十二指腸に発生するがんを「十二指腸がん」と呼びます。
十二指腸がんは、すべてのがんの中でも非常にまれなものです。 「希少がん」と呼ばれ、胃がんの100分の1以下しかいません。 年間で人口10万人あたり6人未満と、とても少ないがんです。 しかし、近年は患者さんの数が少しずつ増える傾向にあります。
十二指腸には、診断や治療を難しくする特徴があります。
- 場所の複雑さ 体の奥深くにあり、膵臓(すいぞう)や肝臓からの管がつながっています。
- 壁の薄さ 壁の厚さはわずか2~3mmしかなく、がんが広がりやすいです。
また、胆嚢(たんのう)の病気をした方は注意が必要です。 スウェーデンの研究では、胆嚢炎や胆石症を経験した後、 特に最初の2年間は十二指腸がんのリスクが高まるとされます。 まれな病気ですが、正しい知識を持つことがとても大切です。
十二指腸がんの種類
十二指腸にできるがんは、いくつかの種類に分けられます。 がん細胞の顔つき(組織型)や、がんができた場所で分類します。 どの種類かによって治療法が変わるため、正確な診断が重要です。
顕微鏡で見たときのがん細胞の種類によって、主に4つに分けます。
- 腺がん(せんがん) 十二指腸がんの中で最も多いタイプです。 食べ物の消化を助ける粘液を出す細胞から発生します。
- 神経内分泌腫瘍(しんけいないぶんぴつしゅよう) ホルモンを作る細胞ががんになったものです。 お腹の痛みや下痢などの症状が出ることがあります。
- GIST(ジスト) 十二指腸の壁にある筋肉の層からできる腫瘍です。
- 悪性リンパ腫 血液細胞の一種であるリンパ球ががんになったものです。
がんができた場所も、治療法を決める上でとても大切です。 特に、肝臓や膵臓からの消化液の出口である「十二指腸乳頭部」。 ここにできるがんは「十二指腸乳頭部がん」と呼ばれます。 このがんは、胆道がんの一種として扱われることもあります。
また、スウェーデンで行われた研究では、胆石や胆のう炎を経験した方は、 その後の最初の2年間、十二指腸がんになる可能性が少し高まると報告されました。 胆のうの病気を経験した方は、体調の変化に注意しましょう。
十二指腸がんの原因
十二指腸がんができる、はっきりとした原因はまだわかっていません。 多くのがんと同じように、生まれ持った体質(遺伝的な要因)と、 食生活などの毎日の暮らし(環境要因)が関係すると考えられます。
しかし、最近の研究から、十二指腸がんになりやすくなる要因が 少しずつ明らかになってきました。 特に注意が必要なのは、以下の2つのケースです。
- 胆嚢(たんのう)の病気をしたことがある 胆石や胆嚢炎など、がんではない胆嚢の病気のことです。
- 特定の遺伝的な病気を持っている 家族性大腸腺腫症(FAP)という病気が知られています。
スウェーデンで行われた大規模な研究では、胆嚢の病気を経験後、 特に最初の2年間は十二指腸がんのリスクが高まると報告されました。 これは、胆嚢と十二指腸がとても近い場所にあるため、 胆嚢の炎症が、隣にある十二指腸に影響するためと考えられます。
また、家族性大腸腺腫症(FAP)という遺伝性の病気がある方は、 十二指腸にポリープ(いぼのようなできもの)ができやすく、 そこからがんが発生するリスクが高いことがわかっています。
喫煙や飲酒、食生活との直接の関係はまだはっきりしていませんが、 他のがんと同じように、リスクを高める可能性は否定できません。 原因は一つではなく、複数の要因が重なって発症すると考えましょう。
十二指腸がんの症状
十二指腸がんは、初期の段階では症状が出ないことがほとんどです。 そのため「静かながん」とも呼ばれ、気づかれにくい特徴があります。 健康診断の胃カメラなどで、偶然見つかるケースも少なくありません。
しかし、がんが大きくなると様々なサインを体に送ってきます。 食べ物の通り道が狭くなったり、周りの臓器に影響したりするためです。 以下のような症状に注意し、見過ごさないことが大切です。
<十二指腸がんの症状チェックリスト>
- お腹の不快感や痛み がんが大きくなることで、食べ物の通り道が狭くなります。 そのため、みぞおちの痛みやお腹の張り、吐き気が生じます。
- 貧血や黒い便(黒色便) がんの表面から少しずつ出血することで、貧血が進みます。 めまいや立ちくらみが起こり、便が黒っぽくなることもあります。
- 皮膚や白目が黄色くなる(黄疸) 肝臓からの消化液(胆汁)の出口が、がんで塞がれると起こります。 胆汁が体にたまり、皮膚や白目が黄色く見えるようになります。
- 激しい腹痛や嘔吐(腸閉塞) がんが十二指腸を完全に塞いでしまうと、腸閉塞になります。 食べ物が流れなくなり、激しいお腹の痛みや嘔吐が起こります。
スウェーデンの研究では、胆石や胆のう炎を経験した方は、 その後の早い段階で十二指腸がんのリスクが高まると報告されました。 特に治療後の2年間は、体調の変化に注意深くあることが大切です。 気になる症状があれば、消化器内科の受診を検討しましょう。
十二指腸がんの検査・診断
十二指腸がんが疑われる場合、いくつかの検査を行います。 目的は大きく2つ、「がんの存在を確かめる」ことと、 「がんの広がりや深さを正確に知る」ことです。 これらの情報をもとに、最適な治療法を決めていきます。
まず、がんがいるかどうかを直接確認する検査が基本です。
- 胃カメラ(上部消化管内視鏡検査) 口や鼻から細いカメラを入れ、十二指腸の粘膜を観察します。 怪しい部分があれば、その組織を少しだけ採って(生検)、 顕微鏡で詳しく調べ、がん細胞の有無を確定させます。
がんであることが確定したら、次に進行度を調べる検査をします。 がんがどこまで広がっているかを知る、大切な検査です。
- CT検査 X線を使い、体の内部を輪切りの画像にして詳しく調べます。 がんが周りの臓器に広がっていないか、リンパ節や肝臓など、 離れた場所へ転移していないかを確認します。
- 超音波内視鏡検査(EUS) 胃カメラの先端に超音波装置がついており、より近くから、 がんが十二指腸の壁のどの深さまで達しているかを見ます。 治療方針を決める上で、とても重要な情報になります。
スウェーデンの研究では、胆石や胆のう炎を経験した方は、 その後、特に最初の2年間は十二指腸がんのリスクが高まるとされます。 お腹に気になる症状があれば、早めに検査を受けることが大切です。
十二指腸がんの治療
十二指腸がんの治療法は、がんの進み具合によって決まります。 がんが十二指腸の壁のどこまで深く入り込んでいるか、 周りの臓器にまで広がっているかなどを詳しく調べて判断します。 治療の選択肢は主に3つあり、これらを組み合わせて進めます。
治療計画を立てる際は、がんの状態だけをみるわけではありません。 患者さんご自身の体の状態や、これまでの病気の経験も大切です。 例えばスウェーデンの研究では、胆石や胆のう炎を経験した後、 特に最初の2年間は十二指腸がんのリスクが高まるとされます。 このような背景もふまえ、一人ひとりに最適な治療を考えます。
主な治療法は、以下の3つです。
- 内視鏡治療 ごく早期のがんで、がんが粘膜という浅い部分にある場合に行います。 口から入れたカメラを使い、お腹を切らずにがんを切り取ります。 そのため、体への負担が少なく、回復が早いのが特徴です。
- 手術 内視鏡での治療が難しい場合や、がんが進行している場合に選びます。 がんの状態に合わせて、いくつかの手術方法があります。 膵頭十二指腸切除術 がんが周りに広がっている可能性がある場合に行う大きな手術です。 十二指腸と、隣にある膵臓の一部などを一緒に取り除きます。 腹腔鏡手術 お腹に小さな穴をいくつか開けて行う、体への負担を減らす手術です。
- 抗がん剤治療(化学療法) 手術でがんを取りきれないほど広がっている場合などに行います。 手術後に、がんが再び現れる(再発)のを防ぐ目的でも使われます。 点滴や飲み薬を使い、がん細胞が増えるのを抑える治療法です。
どの治療法が最適なのかは、専門の医師とよく相談して決めることが、 何よりも大切です。










