前立腺結石
50歳を過ぎた男性の約半数に、ある共通点が見つかることをご存知でしょうか。それは「前立腺結石」という、男性特有の臓器にできる小さな石の存在です。年齢を重ねれば、ほとんどの人が持つとも言われるほど、決してめずらしいものではありません。
「体に石がある」と聞くと、強い痛みを想像して不安になるかもしれません。しかし、前立腺結石の多くは無症状で、治療も不要なことがほとんどです。一方で、時に排尿時の痛みや頻尿、慢性的な骨盤周りの痛みなど、生活の質を大きく下げる原因となることもあります。
この記事では、前立腺結石の基礎知識から、最近の研究で注目されている「おしっこにすむ細菌」との意外な関係、そして症状が出た場合の治療法までを詳しく解説します。ご自身の状態を正しく理解するために、ぜひ最後までご覧ください。
前立腺結石の概要
前立腺結石とは、男性だけが持つ「前立腺」という臓器に、カルシウムなどが固まってできる小さな石のことです。
決してめずらしいものではなく、50歳を過ぎた男性の約半数に、この結石が見つかると報告されています。年齢を重ねると、ほとんどの男性が持っているとも言われるほど、ごく一般的な状態なのです。
多くの場合、前立腺結石は特に症状を引き起こしません。体に悪影響をおよぼすことも少ないため、治療せずに様子を見ることがほとんどです。健康診断の超音波検査などで、別の目的で調べている時に偶然発見されることが大半を占めます。
最近の研究では、新しい視点から前立腺結石が注目されています。それは、おしっこの通り道にすむ様々な細菌の集まりである、「尿路マイクロバイオーム」との関連性です。
ある研究では、前立腺結石のような良性の泌尿器の病気と、尿の中にいる特定の細菌の種類やバランスが関係している可能性が示されました。この細菌のバランスが、病気の発症や症状の重さに関わるのではないかと考えられています。
将来的には、この尿路マイクロバイオームの知識を活かして、病気の診断や治療を行うアプローチが確立されるかもしれません。
前立腺結石の種類
前立腺にできる石は、その作られ方の違いによって、大きく2つの種類に分けられます。 どこで、何から作られたかによって、石の呼び方や性質が少し変わるのです。 ご自身の石がどちらのタイプかを知ることは、原因を考える上で役立ちます。
一般的に、前立腺結石は「真性結石」と「仮性結石」に分類されます。
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種類 |
できる場所 |
材料になるもの |
特徴 |
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真性結石 |
前立腺の内部 |
前立腺から出る分泌液 |
・前立腺の中で作られる本来の石 ・年齢とともに自然にできやすくなる |
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仮性結石 |
前立腺の尿道に近い部分 |
尿の成分 |
・おしっこが逆流して入り込み固まる ・前立腺肥大症などが関係することも |
「真性結石」は、前立腺自身が作り出す分泌物が固まってできる、いわば「本物」の前立腺結石です。 一方で「仮性結石」は、おしっこの成分が前立腺の中に入り込んで固まってできた石を指します。
さらに最近では、石のできやすさにおしっこの中の細菌が関わる可能性もわかってきました。 ある研究では、尿路結石の一種であるシュウ酸カルシウム結石と、特定の細菌との間に関連があることが報告されています。
前立腺結石も、前立腺の炎症が原因となることがあるため、細菌が関与するタイプの結石があると考えられます。 おしっこの中の細菌の種類やバランスが、結石の形成に関わっているのかもしれません。
前立腺結石の原因
前立腺結石ができる原因は、一つだけではありません。 いくつかの要因が複雑に関わり合って作られると考えられています。 主な原因は、前立腺で作られる液体の流れが悪くなることです。
年齢とともに起こりやすい前立腺肥大症や、細菌感染による炎症は、 前立腺液を出す管を狭くしたり、詰まらせたりします。 行き場を失った液体が前立腺の中に溜まってしまうのです。 その結果、液体に含まれるカルシウムなどの成分が固まり、石になります。
その他にも、以下のような原因が考えられています。
- おしっこの逆流 排尿の機能に何らかの問題があると、 おしっこが前立腺の中に逆流することがあります。 尿に含まれる成分が前立腺の中で固まり、結石になるのです。
- おしっこにすむ細菌のバランス 最近の研究で、おしっこの通り道にすむ細菌の集まりである、 「尿路マイクロバイオーム」のバランスが注目されています。 ある研究では、前立腺肥大症や結石のできやすさが、 特定の細菌の種類やバランスと関連する可能性が示されました。 症状の重さも、この細菌バランスが関係するかもしれません。
これらの原因が一つだけ、あるいは複数重なることで、 前立腺結石がゆっくりと作られていくと考えられています。
前立腺結石の症状
前立腺結石は、多くの場合、体に何も症状を感じさせません。 健康診断や他の病気の検査で、偶然見つかることがほとんどです。
しかし、結石が大きくなったり、炎症の原因になったりすると、 体は様々なサインを送ってきます。 ご自身の状態と比べてみてください。
【おしっこに関するサイン】
- おしっこをする時の痛み 排尿の際に、しみるような痛みを感じることがあります。
- おしっこの勢いが弱い おしっこを出すまでに時間がかかったり、 勢いが弱かったりします。
- トイレが近くなる(頻尿) 日中も夜中も、何度もトイレに行きたくなります。
- 急な強い尿意(尿意切迫感) 突然おしっこがしたくなり、我慢するのが難しくなります。
- おしっこが残っている感じ(残尿感) 出し切ったはずなのに、まだ残っているような不快感があります。
- おしっこに血が混じる(血尿) 見た目が赤っぽくなることや、検査で血が混じることがあります。
【痛みや不快感のサイン】
- 下腹部や股間の重い感じ お腹の下の方や足の付け根、股間のあたり(会陰部)に、 重い感じや不快な痛みが出ることがあります。
- 慢性的な骨盤周りの痛み 前立腺結石が原因で、慢性的な前立腺の炎症や、 骨盤の周りがずっと痛む「慢性骨盤疼痛症候群」を 引き起こすことがあります。
このような長引く痛みは、生活の質(QOL)を大きく下げてしまいます。 痛みのせいで仕事や趣味に集中できないなど、 日常生活に影響をおよぼすことも少なくありません。
もし、38度以上の高熱や寒気を伴う場合は、 細菌感染による「急性前立腺炎」の可能性があり、 早めの対応が必要です。 これらのサインは他の病気でも見られるため、 自己判断せずに専門のクリニックへ相談しましょう。
前立腺結石の検査・診断
前立腺結石は、ほとんどの場合で症状がないのが特徴です。 そのため、ご自身で「結石があるかも」と気づくことはまれです。 前立腺がん検診や他の病気の検査の際に、偶然見つかります。
前立腺結石の診断は、主に体の内部を見る画像検査で行います。 どのような検査で、どのように結石が見つかるのか見てみましょう。
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検査の種類 |
検査の概要 |
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超音波検査(エコー) |
特におしりから細い器具を入れて調べる方法で、 結石をはっきりと確認できます。 結石は、画像上で白く光って映し出されます。 |
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レントゲン検査 |
お腹のレントゲン写真で、カルシウムを含む結石が 白い影として写ることがあります。 |
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CT検査 |
体を輪切りにしたような詳しい画像が撮れる検査です。 結石の正確な位置や大きさ、数などを 詳しく調べることができます。 |
これらの画像検査が、現在の主な診断方法です。 さらに近年の研究では、新しい診断の可能性が探られています。 それは、おしっこにすむ細菌の集まり(尿路マイクロバイオーム)です。
ある研究では、前立腺の病気と特定の細菌の種類やバランスが 関係している可能性が示されました。 症状の重さにも、この細菌のバランスが関わるかもしれません。
将来的には、おしっこの検査で細菌のバランスを調べるだけで、 病気の診断につながる新しい方法が生まれる可能性があります。 検査で結石が見つかっても、症状がなければ治療は不要です。
前立腺結石の治療
前立腺結石が見つかっても、ほとんどの場合は治療の必要がありません。 症状がなく、体に悪影響をおよぼさない「おとなしい石」だからです。 そのため、基本的には特別な治療はせず、定期的に様子を見ていきます。 これを「経過観察」と呼び、石に変化がないかを確認するのです。
しかし、石が原因で次のようなサインが出た場合は治療を考えます。
- おしっこをする時の痛みや、出にくさ
- おしっこが残っているような不快感
- 下腹部や股間の重い感じや痛み
- 前立腺の炎症を何度も繰り返す
これらの症状は、日常生活の質(QOL)を大きく下げてしまいます。 ご自身の状態に合わせて、適切な治療法を選んでいきましょう。
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治療法 |
対象となる状態 |
治療の概要 |
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薬による治療 |
細菌感染や炎症がある場合 |
細菌を抑える抗生物質や、 炎症を鎮めるお薬を使います。 |
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手術による治療 |
症状の原因となる大きな石がある場合 |
おしっこの通り道から細いカメラを入れ、 石を取り除きます。 |
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新しい痛みの治療 |
長引く骨盤周りの痛みがある場合 |
体の外から特殊な弱い衝撃波を当て、 痛みを和らげます。 |
特に、前立腺結石が原因で骨盤周りの痛みが長引くことがあります。 この痛みには、「低強度体外衝撃波治療(Li-ESWT)」が有効です。 ある研究では、この治療法は安全で、効果が高いことが示されました。 さらにお薬と一緒に治療を行うことで、痛みを和らげる効果がより高まり、 その効果が長く続くことも期待できると報告されています。
どの治療法が最適かは、一人ひとりの状態によって大きく異なります。 気になる症状があれば、自己判断せずに必ず医師へ相談しましょう。










