前立腺肥大症
夜中に何度もトイレで目が覚める、おしっこの勢いが弱くなった…。そんな変化を「年のせい」と諦めていませんか?そのお悩み、実は男性特有の臓器「前立腺」が大きくなる「前立腺肥大症」のサインかもしれません。
この病気は決して他人事ではなく、ある報告によれば70歳以上の男性の約7割が罹患するとも言われています。命に直接関わるわけではありませんが、症状を放置すれば、日々の生活の質を大きく下げてしまう可能性があります。
当記事では、前立腺肥大症の詳しい症状や原因から、体への負担が少なく性機能への影響も抑えた新しい治療法までを解説します。ご自身の状態と照らし合わせ、一人で悩まずに向き合うための第一歩としてお役立てください。
前立腺肥大症の概要
前立腺肥大症は、男性だけが持つ「前立腺」という臓器が、年齢とともに大きくなってしまう病気です。おしっこの悩みを引き起こす代表的な病気として知られています。
前立腺は、おしっこをためる膀胱のすぐ下にあります。おしっこの通り道である尿道を取り囲むように位置しています。健康な状態ではクルミや栗ぐらいの大きさ(約20cc以下)で、精液の一部を作る大切な役割を担っています。
この前立腺が年齢を重ねて大きくなると、真ん中を通る尿道を圧迫してしまいます。通り道が狭くなるため、以下のようなおしっこのトラブルが起こりやすくなります。
- おしっこの勢いが弱い
- トイレの回数が増える(特に夜間)
- 急に強い尿意を感じて我慢がむずかしい
- おしっこをした後も、まだ残っている感じがする
前立腺肥大症は、命に直接関わる病気ではありません。しかし症状を放置すると、生活の質を大きく下げてしまう可能性があります。最近では、体への負担が少なく、射精などの性機能への影響を抑えやすい新しい治療も開発されています。気になる症状があれば、一人で悩まずに専門のクリニックへ相談することが大切です。
前立腺肥大症の種類
前立腺肥大症によって起こるおしっこの悩みは、内容によって大きく3つの種類に分けられます。これらの症状は、医学的には「下部尿路症状(LUTS)」と呼ばれています。ご自身の症状がどれにあたるか、確認してみましょう。
1. 排尿症状(尿を出すときの悩み) 肥大した前立腺が尿道を圧迫することで、尿をスムーズに出せなくなる状態です。
- 尿の勢いが弱い
- お腹に力を入れないと尿が出にくい
- 尿が出始めるまでに時間がかかる
- 尿が途中で途切れてしまう
2. 蓄尿症状(尿をためるときの悩み) 前立腺が膀胱を刺激することで、膀胱が過敏になってしまう状態です。
- トイレに行く回数が多い(頻尿)
- 急に強い尿意が起こり、我慢するのが難しい
- 夜中に何度もトイレのために目が覚める
3. 排尿後症状(尿を出し終わった後の悩み) 尿を出し切ることができずに、膀胱の中に尿が残ってしまう状態です。
- 排尿後も、まだ尿が残っている感じがする(残尿感)
- 排尿が終わったと思ったのに、下着に尿が少しもれてしまう
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症状の種類 |
いつの悩み? |
具体的な症状の例 |
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排尿症状 |
尿を出すとき |
勢いが弱い、時間がかかる、途切れる |
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蓄尿症状 |
尿をためるとき |
トイレが近い、急な尿意、夜間頻尿 |
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排尿後症状 |
尿を出した後 |
残尿感、尿もれ |
近年では、これらの症状を改善する新しい治療法も登場しています。特にRezum(レジューム)やPUL(前立腺尿道リフト)といった体への負担が少ない低侵襲手術は、症状の改善効果が期待できます。また、射精機能への影響が少ない点も注目されています。
前立腺肥大症の原因
前立腺肥大症がなぜ起こるのか、その原因はまだ完全には解明されていません。しかし、いくつかの要因が深く関係していることがわかっています。
最も大きな原因と考えられているのが「加齢」です。年齢を重ねると、男性ホルモンのバランスに変化が起こります。このホルモンバランスの乱れが影響して、前立腺が大きくなってしまうと考えられているのです。
実際に、70歳以上の男性の約7割が前立腺肥大症になっているという報告もあります。このことからも、多くの男性にとって決して他人事ではない病気といえるでしょう。
加齢のほかにも、以下のような要因が関係している可能性が指摘されています。
- 遺伝的な要因 血縁の近いご家族に前立腺肥大症の方がいる場合、ご自身もなりやすい可能性があります。
- 食生活 脂肪や肉類を中心とした食生活は、発症のリスクを高める可能性が指摘されています。
- 高血圧や高血糖(糖尿病) これらの生活習慣病は血管に負担をかけ、ホルモンバランスにも影響を与えると考えられています。
- 肥満や脂質異常症 体重の増加や血液中のコレステロールなどの異常も、前立腺の健康に影響を及ぼす可能性があります。
特に、肥満や高血圧などが重なった「メタボリックシンドローム」との関連も注目されています。生活習慣の乱れが、前立腺肥大症のリスクを高めるのです。
一方で、大豆製品や野菜などに含まれるイソフラボノイドという成分を多く摂ることは、発症の予防につながる可能性も報告されています。
このように前立腺肥大症は、加齢を主な背景としながらも、日々の生活習慣が複雑に関係して発症すると考えられています。
前立腺肥大症の症状
前立腺が大きくなると、その中心を通る尿道が圧迫されます。 これにより、おしっこに関する様々な悩みが出てきます。 これらの症状を医学的には「下部尿路症状(LUTS)」と呼びます。 症状は生活の質を大きく下げるため、見過ごすことはできません。
おしっこの悩みがいつ起こるかによって、症状は3つに分けられます。 ご自身の状態と照らし合わせてみてください。
- 1. 尿を出すときの悩み(排尿症状) 肥大した前立腺で尿道が狭くなり、尿をスムーズに出せなくなります。
- 尿の勢いが弱い
- おしっこが出始めるまでに時間がかかる
- お腹に力を入れないと尿が出ない
- 尿が途中で途切れてしまう
- 2. 尿をためるときの悩み(蓄尿症状) 肥大した前立腺が膀胱を刺激し、膀胱が過敏になることで起こります。 前立腺肥大症の方の約7割が「過活動膀胱」を併発するとも言われます。
- トイレに行く回数が多い(頻尿)
- 夜中に何度もトイレに起きる
- 急に強い尿意を感じ、我慢が難しい(尿意切迫感)
- 3. 尿を出し終わった後の悩み(排尿後症状) 尿を出し切れずに、膀胱の中に尿が残ってしまうことで起こります。
- 排尿後も尿が残っている感じがする(残尿感)
- ズボンを上げた後に尿がもれてしまう(排尿後尿滴下)
これらの症状は病気の進行とともに変化し、放置すると尿が全く出せなくなる「尿閉」に至ることもあります。 医療機関では「国際前立腺症状スコア(IPSS)」という世界共通の質問票で症状の程度を客観的に評価し、治療方針を決定します。 気になる症状があれば、一人で悩まず専門医に相談しましょう。
前立腺肥大症の検査・診断
前立腺肥大症が疑われる場合、まずはお困りの症状を詳しくお聞きします。 その上で、診断を確定し、最適な治療法を見つけるための検査を進めます。 検査は、患者さんの体に大きな負担がかからないものが中心ですのでご安心ください。 検査の目的は主に3つあります。
- 症状の原因が本当に前立腺肥大症なのかを確かめる
- 症状がどのくらい重いのかを客観的に評価する
- よく似た症状を起こす前立腺がんなどの病気がないかを確認する
問診と質問票による症状の評価
診察では、まずどのような症状で悩んでいるかを丁寧にお聞きします。 その際、世界共通で使われている「国際前立腺症状スコア(IPSS)」を用います。 これは、ご自身の症状がどの程度かを点数で客観的に評価するための質問票です。
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質問項目(この1ヶ月について) |
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1. 排尿後、尿が残っている感じがありましたか |
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2. 排尿後、2時間以内にもう一度トイレに行きたくなりましたか |
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3. 排尿の途中で尿が途切れることがありましたか |
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4. 尿意を我慢するのが難しいことがありましたか |
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5. 尿の勢いが弱いと感じることがありましたか |
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6. 排尿を始めるにあたって、いきむ必要がありましたか |
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7. 夜、寝てから朝起きるまでに何回くらいトイレに行きましたか |
これらの質問の合計点数によって、症状の重症度を把握し治療方針の参考にします。
体の状態を調べる検査
問診の後は、体の状態をより詳しく調べるための検査を行います。
- 直腸内指診 肛門から指を入れ、直腸の壁越しに前立腺を直接触診する検査です。 前立腺の大きさや硬さ、表面の状態を確かめることができます。 前立腺がんがあると、ゴツゴツとした硬いしこりが触れることがあります。 他の病気との区別をつけるために、とても重要な診察です。
- 超音波(エコー)検査 お腹にゼリーを塗り、超音波の出る機械をあてて内部の状態を画像で見ます。 前立腺の正確な大きさや形を測定できます。 また、排尿後に膀胱内にどれくらい尿が残っているか(残尿量)もわかります。
- 尿流量測定(ウロフロメトリー) 専用のトイレで、普段と同じように排尿していただく検査です。 尿の勢いや量、排尿にかかる時間などを機械が自動で測定します。 「おしっこの勢いが弱い」といった自覚症状を、客観的な数値で確認できます。
- 血液検査(PSA検査) 血液を少量採取し、PSA(前立腺特異抗原)という数値を測定します。 この数値は、前立腺がんの早期発見に役立つ重要な腫瘍マーカーです。 前立腺肥大症でも数値が上がることがありますが、がんの可能性を調べるために欠かせません。
これらの基本的な検査結果を総合的に判断して、診断を確定します。 必要に応じて、尿道や膀胱の状態をさらに詳しく調べる検査を追加することもあります。
前立腺肥大症の治療
前立腺肥大症の治療は、おしっこの悩みの強さや生活スタイルに合わせて選びます。 治療法は、大きく「お薬での治療」と「手術での治療」の2つに分かれます。 症状が比較的軽い場合は、まずお薬で症状を和らげることから始めるのが一般的です。
お薬での治療
お薬にはいくつかの種類があり、症状に合わせて使い分けたり組み合わせたりします。
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薬の種類 |
主な働き |
特徴 |
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α(アルファ)遮断薬 |
前立腺や尿道の筋肉の緊張をゆるめ、おしっこの通り道を広げる |
比較的早く効果を感じやすいとされています。まず最初に試されることが多いお薬です。 |
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抗男性ホルモン剤 |
前立腺が大きくなる原因の一つである男性ホルモンの働きを抑え、前立腺自体を小さくする |
効果を実感するまでには数ヶ月かかることがあります。前立腺が大きい方で特に有効です。 |
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漢方薬・植物製剤 |
頻尿の改善や、前立腺の炎症を抑える効果が期待される |
作用が穏やかで、副作用が少ないとされています。他の薬と組み合わせて使うこともあります。 |
手術での治療
お薬で十分な効果が得られない場合や、症状が重い場合には手術が考えられます。 最近では、体への負担や副作用をできるだけ少なくした手術が中心になっています。
体への負担が少ない新しい手術(低侵襲治療) 尿道から細いカメラを入れ、水蒸気のエネルギーで前立腺を小さくする治療法(Rezumなど)があります。 この手術は、おしっこの悩みを改善する効果が期待できる新しい選択肢です。 ある研究では、この治療でおしっこの悩みが半分近く減り、勢いも良くなったと報告されています。 従来の手術と比べて、射精など性機能への影響が少ないことも大きな特徴です。 治療後の生活の質も考えられているため、安心して受けやすい治療といえるでしょう。
どの治療法が一番合っているかは、一人ひとりの状態によって異なります。 まずは専門の医師とよく相談し、ご自身に最適な治療法を一緒に決めていきましょう。










