乳幼児痔瘻
大切なお子さんのおしりの周りに、赤みや腫れ、膿を見つけて、不安な気持ちでいらっしゃる親御さんも多いのではないでしょうか。これは「乳幼児痔瘻」と呼ばれる、赤ちゃんから幼児に多く見られるデリケートな病気です。男の子に多い傾向がありますが、決して珍しいことではありません。
この病気の原因は、おしりの小さな穴からばい菌が入ること。親御さんにとってはとても心配な症状ですが、実は、その「最も良い治療法」については今も専門家の間で議論が続いています。実際、薬で様子を見る保存的治療と手術とで、治癒率に大きな差がないという報告もあります(それぞれ約75%と約73%)。
この記事では、乳幼児痔瘻の基礎知識から、お子さん一人ひとりに合った最適な治療法を見つけるためのヒントまで、詳しく解説します。
乳幼児痔瘻の概要
小さなお子さんのおしりの周りにできる病気を、正式には「乳幼児肛門周囲膿瘍(のうよう)」や「乳幼児痔瘻(じろう)」と呼びます。特に赤ちゃんから幼児のお子さんに多く見られる症状です。大切なお子さんのデリケートな部分のことなので、親御さんにとっては、とても心配なことでしょう。
この病気は、おしりのうんちの出口近くにある、小さな穴(肛門腺)からばい菌が入ることで起こります。ばい菌が入り込むと、その場所が炎症を起こし、膿(うみ)がたまって腫れてしまうことがあります。この膿がたまった袋が「肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)」です。
さらに、たまった膿が皮膚の外に破れて出てしまうと、おしりの皮膚と直腸の間にトンネルのような道ができてしまうことがあります。このトンネルが「痔瘻(じろう)」と呼ばれる状態です。
乳幼児痔瘻は、男の子によく見られる傾向がありますが、女の子にも起こることがあります。多くの場合、お子さんの成長とともに自然と良くなることも期待できます。ですが、中には膿が出たり引っ込んだりを繰り返したり、なかなか完治しなかったりするケースもあります。
実のところ、乳幼児の肛門周囲膿瘍や痔瘻に対する「最も良い治療法」については、まだ専門家の間で結論が出ていません。世界中の医師たちが、どのような治療が最適かについて議論を続けている状況です。
最近の研究報告によると、乳幼児痔瘻の治療には、薬で様子を見る「保存的治療」と、手術で膿を出す「外科的治療」があります。どちらの治療を選んだとしても、治る割合や、再び膿が出てくる再発の割合には、大きな違いがないことが示唆されています。具体的には、保存的治療を受けたお子さんの約75%が治癒し、外科的治療を受けたお子さんの約73%が治癒したと報告されています。失敗する割合も、それぞれ約25%と約27%と、大きな差はありませんでした。
このことから、お子さんの年齢や病気の状態、再発しているかどうかなどによって、最適な治療法が変わってきます。もし、お子さんのおしりに心配な症状を見つけたら、不安に感じることがたくさんあると思います。小児科や小児外科の専門医が、お子さん一人ひとりに合った診断と治療を行いますので、ご安心ください。早めに専門の医療機関を受診することが、お子さんの負担を減らし、適切なケアへとつながります。
乳幼児痔瘻の種類
小さなお子さんのおしりにできる痔瘻には、主に二つのタイプがあります。 大切なお子さんのデリケートな部分の症状は、ご家族にとってとても心配なことでしょう。
一つ目は「肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)」です。 これは、おしりのうんちの出口近くにばい菌が入り、膿がたまって赤く腫れる状態を指します。 熱を持つこともあり、触るとお子さんが痛がったり、不機嫌になったりすることもあります。 膿瘍ができたばかりのときは、皮膚を切開して膿を出す処置をすることもあります。 また、清潔を保ちながら経過を見ることもあります。
この肛門周囲膿瘍に対する治療は、医師の間でも、何が一番良いかまだ話し合われています。 最新の研究報告では、膿を出すだけの「保存的治療」を選んだお子さんの約25%で、症状が再び出てくることが示されています。 あるいは、後のタイプの痔瘻になってしまうこともあると報告されています。
二つ目は「肛門痔瘻(こうもんじろう)」です。 これは、肛門周囲膿瘍が一度できて膿が出た後にできるものです。 おしりの皮膚と直腸(うんちの通り道)の間に、トンネルのような細い道が残ってしまった状態です。 このトンネルから、膿や透明な液体が少しずつ出てくることがあります。
肛門痔瘻の場合も、手術で治療しても、約7%のお子さんで再び症状が出てくることがあります。 どちらの治療法を選んだとしても、完全に治るまでに時間がかかることがあります。 また、再び症状が出てしまうことも珍しくありません。 お子さんの年齢や症状の進み具合によって、最適な治療法は一人ひとり異なります。 心配なときは、小児科や小児外科の先生とよく相談しましょう。 お子さんに合った治療を一緒に考えていくことが大切です。
乳幼児痔瘻の原因
小さなお子さんのおしりにできる痔瘻(じろう)は、親御さんにとって、とても心配な病気でしょう。私たち医師は、その原因を丁寧に探り、お子さんの症状を改善するために努めています。
多くの乳幼児痔瘻は、おしりのうんちの出口近くにある、とても小さなポケットのような部分(肛門陰窩(こうもんいんか)と呼びます)に、うんちの残りカスやばい菌が入り込んで炎症を起こすことが主な原因です。この肛門陰窩には、粘液を出す腺がたくさんあり、ばい菌がとても繁殖しやすい環境になっています。
炎症がさらに進むと、その場所に膿(うみ)がたまり、おしりが赤く腫れる「肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)」という状態になります。そして、このたまった膿が外に出ようと皮膚を破るときに、おしりの皮膚と直腸(うんちの通り道)の間に、トンネルのような細い道ができてしまいます。これが痔瘻と呼ばれる状態です。
なぜ男の子に多く見られるかというと、これは体の成長に関わる男性ホルモンの影響が関係していると考えられています。また、赤ちゃんの体はまだ発達の途中です。腸や肛門の機能が未熟であることや、おむつの中が蒸れてばい菌が繁殖しやすい環境であることも、痔瘻になりやすい一因と言えるでしょう。
ほとんどの乳幼児痔瘻は、このような理由で起こります。しかし、ごくまれに、生まれつき体の構造に異常があるお子さんもいらっしゃいます。たとえば、直腸(うんちの通り道)と膣(ちつ)が異常につながってしまう「直腸膣瘻(ちょくちょうちつろう)」という先天性の病気です。
最近の医学の報告では、日本人のお子さんで、この直腸膣瘻という生まれつきの異常に加えて、「Sweet病(スウィートびょう)」という皮膚に炎症を起こす珍しい病気が、同時に見つかったケースも報告されています。このような先天的な原因は非常に稀で、私たち医師が診察する際も、一般的な痔瘻と区別して慎重に診断を進めます。
お子さんのおしりの症状は、親御さんにとって大きな心配の種です。私たち医師は、お子さん一人ひとりの状態を丁寧に診察し、正確な原因を見極めることで、お子さんにとって最も適切な治療へとつなげていきます。
乳幼児痔瘻の症状
大切なお子さんのおしりに何か異変があると、親御さんにとっては、とても心配なことでしょう。乳幼児痔瘻の症状は、お子さんのデリケートな部分に現れるため、どんなサインに気づいたら良いか、私たち医師が詳しくお伝えします。
まず、お子さんのおしりの穴の周りが、赤く腫れてくるのが最初のサインになることが多いです。触ってみると、少し熱を持っているように感じることもあります。この状態は、「肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)」と呼ばれています。お子さんは、この痛みや不快感のために、いつもより機嫌が悪くなることがあります。また、おむつを替えるときやうんちをする際に、泣いて痛がるようなしぐさを見せるかもしれません。
しばらくすると、この腫れていた部分が自然に破れて、そこから膿(うみ)が出てくることがあります。膿が出ると、一時的に腫れや痛みが和らぎ、お子さんが少し楽になったように見えるかもしれません。しかし、これは病気が治ったわけではありません。膿の出口がおしりの皮膚にできて、うんちの通り道(直腸)とおしりの皮膚の間にトンネルのような細い道ができてしまった「痔瘻(じろう)」という状態になっている可能性が高いのです。痔瘻になってしまうと、膿が出たり止まったりを繰り返したり、おしりにしこりのように残ったりすることがあります。
もし膿の袋(膿瘍)が大きくなってしまったり、ばい菌の感染が体の中に広まってしまったりした場合には、お子さんに熱が出ることもあります。熱がある場合は、より注意が必要です。
また、ごく稀なケースとして、生まれつきの体の構造に異常があるお子さんもいらっしゃいます。これは、おしりのうんちの通り道と、女の子のデリケートな部分(膣)が異常につながってしまう「直腸膣瘻(ちょくちょうちつろう)」というものです。最近の報告では、新生児の時期に、この直腸膣瘻という生まれつきの異常に加えて、「Sweet病(スイートびょう)」という皮膚に炎症を起こす珍しい病気が同時に見つかったケースがあります。
実際に報告されたケースでは、生後4週の日本人女児で、体中に広がる赤みや腫れが皮膚に出現し、Sweet病と診断されました。同時に直腸膣瘻も合併していたのです。このような、新生児のSweet病で直腸膣瘻を合併する例は非常に珍しく、これまでの医学の報告は日本人のお子さんに限られています。私たち医師は、このような特殊な病気も視野に入れて、お子さん一人ひとりの状態を丁寧に診察し、適切な診断へとつなげていきます。お子さんのおしりの周りに気になる症状が見られたら、自己判断せずに、早めにお医者さんに相談して、適切な診断と治療を受けるようにしてくださいね。
乳幼児痔瘻の検査・診断
大切なお子さんのおしりの周りに、できものや赤み、腫れを見つけると、親御さんはとても心配になることと思います。私たち医師は、その不安に寄り添い、お子さんが一日も早く楽になるよう、正確な診断を目指します。乳幼児痔瘻は、小さなお子さんに特有の病気です。早期に適切な診断を受けることが、お子さんの心と体の負担を減らすために非常に重要となります。
まずは、じっくりお話を聞かせていただきます(問診)
お子さんの診察では、まず保護者の方から詳しくお話を伺います。いつごろから、どのような症状が始まったのか。うんちの様子や、普段のおむつ交換、ご家庭でのケアについてお聞かせください。お子さんはまだ言葉で症状を伝えられません。そのため、保護者の方からの情報は、病気のきっかけや経過を把握するための大切な手がかりとなります。
おしりの状態を丁寧に確認します(視診・触診)
次に、お子さんのおしりの周りを丁寧に見て(視診)、やさしく触れて(触診)、状態を確認します。赤みや腫れの有無、膿(うみ)が出ている場所、しこりがないか、お子さんが痛がる様子はないかなどを注意深く観察します。お子さんが不安にならないよう、安心させながら慎重に診察を進めますのでご安心ください。
必要に応じて、体の負担が少ない検査も(エコー検査)
多くの場合、問診と視診、触診で診断がつきます。しかし、より詳しく病状を把握するために、エコー(超音波)検査を行うこともあります。エコー検査は、お子さんの体に負担をかけることなく、皮膚の下に膿がたまっていないか、痔瘻のトンネルがどこまでつながっているかなどを詳しく見ることができます。これにより、外からは見えない部分の病状も正確に把握することが可能になります。
診断のその先へ、最適な治療のために
これらの診察や検査の結果を総合的に見て、最終的な診断をいたします。乳幼児痔瘻は、症状の現れ方や進み具合が一人ひとり異なるため、私たち医師は慎重に判断します。実は、乳幼児の肛門周囲にできる病気に対する「最も良い治療法」については、まだ専門家の間でも議論が続いているテーマなのです。
手術による治療も、薬などで様子を見る「保存的治療」も、どちらも安全に行うことができます。しかし、残念ながら、治療の方法に関わらず、症状が再び出てくる可能性(再発)は一般的であることが報告されています。だからこそ、お子さん一人ひとりの状態や病気の進み具合を正確に診断し、その子に最も合った治療法を慎重に選ぶことが、私たち医師の大切な役割となります。もしお子さんのおしりに気になる症状が見られたら、自己判断せずに、早めに小児科や小児外科を受診してください。私たち医師が、お子さんに寄り添い、最善の選択を一緒に考えていきます。
乳幼児痔瘻の治療
大切なお子さんのおしりの症状は、親御さんにとって大きな心配事です。私たち医師は、その不安に寄り添いながら、お子さんにとって最善の治療法を一緒に考えていきます。乳幼児痔瘻の治療法には、大きく分けて二つのアプローチがあります。
一つは、手術をせずに病気の回復を待つ「保存的治療」です。もう一つは、手術で直接原因を取り除く「外科的治療」です。どちらの治療法を選ぶべきか、お子さんの状態を詳しく診察し、慎重に判断することが大切です。
保存的治療:やさしく見守るケア
保存的治療では、お子さんの体に負担の少ない方法を優先します。
- おしりを清潔に保つこと
- 毎日のうんちの後や入浴時に、やさしく丁寧に洗ってあげましょう。
- ぬるま湯に浸かる「坐浴(ざよく)」
- おしりの炎症を落ち着かせ、清潔に保つ効果が期待できます。
- お薬を使うこと
- 炎症を抑えたり、ばい菌を減らしたりする「抗菌薬(こうきんやく)」というお薬を使うこともあります。
もし膿(うみ)がたまっている場合は、針を刺したり小さく切開したりして、膿を出してあげる処置を行うこともあります。最新の研究報告によると、保存的治療を受けたお子さんの約75%が治癒するとされています。しかし、残念ながら約25%のお子さんでは、また膿が出たり、痔瘻というトンネルができてしまったりすることもあります。別の報告では、非手術的治療の初期段階で症状が改善しない割合が約37.5%であったり、治療がうまくいった後でも約21〜24%で再発したりすることが示されています。
外科的治療:根本的な解決を目指す手術
外科的治療は、痔瘻の原因となっている「ばい菌の通り道(トンネル)」を手術で取り除く方法です。
この治療は、症状が重い場合や、保存的治療を続けてもなかなか治らない場合に検討されます。最近の研究では、外科的治療を受けたお子さんの約73%が治癒したと報告されています。しかし、この場合でも約27%のお子さんでは、治療がうまくいかなかったり、再び膿が出たりすることもあります。肛門痔瘻(おしりのトンネル)に対して手術を行った場合でも、約7%のお子さんで再発が見られることがあります。
治療の選択と大切なこと
実のところ、乳幼児の痔瘻に対する「最も良い治療法」については、今も世界中の医師たちが議論を続けているテーマです。どちらの治療を選んだとしても、治る割合や、再び症状が出てしまう再発の割合に、大きな違いは少ないことが多くの研究からわかっています。手術も保存的治療も、お子さんの体に安全に行うことができます。
大切なのは、お子さん一人ひとりの状態をよく見極めることです。
- お子さんの年齢
- 痔瘻の種類や症状の重さ
- 再発を繰り返しているか
といった点を総合的に考慮し、親御さんのご希望も伺いながら、最適な治療法を慎重に選んでいきます。また、完全に治るまでの期間は、治療戦略に関わらずお子さんによって大きく異なります。私たち医師は、お子さんの将来を見据えながら、一人ひとりに合った治療計画を一緒に立てていきますので、ご安心ください。不安なことや疑問なことがあれば、いつでもご相談くださいね。










