結核(こども)

「結核」と聞くと、ひと昔前の病気だと思っていませんか?しかし、日本では今でも毎年1万人以上もの大人が新たに発症しており、決して過去の病気ではありません。そして、その影響は私たちの大切な子どもたちにも及ぶ可能性があります。

子どもの結核は年間50人ほどと稀ですが、その感染源のほとんどはご家族や先生など、身近な大人です。長引く咳や微熱、なんとなく元気がない…その症状、実は結核のサインかもしれません。特に、受動喫煙はお子さんの免疫力を弱め、発症リスクを高めることがわかっています。

この記事では、お子さんを重い合併症から守るため、結核の正しい知識と対処法を詳しく解説します。ご自身の状況と比較しながら、ぜひ最後までご覧ください。

結核(こども)の概要

結核は、「結核菌」という種類のばいきんが原因で起こる病気です。 昔の病気と思われがちですが、今でも身近に存在する感染症です。

日本では予防接種や良いお薬のおかげで、結核になる人は減りました。 しかし、今でも毎年おとなを中心に1万人以上の人が発症しています。

子どもの結核はとても少なく、1年間で50人ほどです。 これは世界的に見ても少ない数字ですが、ゼロというわけではありません。

感染する主な原因は、結核にかかっているご家族や、 学校や塾の先生など、身近な大人からうつることです。

特に気をつけたいのが、周りの人が吸うタバコの煙です。 煙を吸い込むと、体を病気から守る力が弱くなってしまいます。

研究によると、タバコの煙を吸う時間が長いほど、 症状のない状態から、咳などが出る状態へ進みやすくなります。 お子さんを守るため、ご家族の禁煙はとても大切です。

結核(こども)の種類

結核は、体の中に結核菌がいるかどうかだけでなく、 その菌がどんな状態でいるかによって種類が分かれます。

大きく分けると、菌がおとなしくしている「潜在性結核」と、 菌が活動を始めている「活動性結核」の2つの状態があります。 お子さんの状態を正しく知ることが、とても大切です。

種類

どんな状態?

人にうつる?

潜在性結核感染症

体の中に結核菌がいますが、おとなしく眠っていて症状はありません。

うつりません

活動性結核

眠っていた結核菌が活動を始め、体のどこかで病気を起こしている状態です。

うつる可能性があります

潜在性結核感染症(せんざいせいけっかくかんせんしょう)

結核菌に感染したものの、体の免疫の力で活動が抑えられ、 菌が体の中で眠っている状態を指します。 この段階では咳などの症状はなく、他の人にうつす心配もありません。

しかし、体の抵抗力が落ちると、菌が再び活動を始めることがあります。 特に、周りの大人が吸うタバコの煙は、お子さんの免疫力を弱めます。 煙を吸う時間が長いほど、活動性の結核に進む危険性が高まります。 そのため、活動性の結核へ進むのを防ぐお薬の治療が必要になることがあります。

活動性結核

眠っていた結核菌が活発に増え始め、体のどこかに病巣をつくっている状態です。 病気が起きた場所によって、さらにいくつかの種類に分けられます。

  • 肺結核 肺に病巣ができる、最も一般的な結核です。 咳や熱、たんなどの症状が出ることがあります。
  • 肺外結核(はいがいけっかく) 肺以外の場所に病気が起こるもので、特に小さいお子さんは注意が必要です。 お子さん、特に乳幼児は免疫の働きがまだ未熟なため、 菌が血液やリンパの流れに乗って、全身に広がりやすいためです。
  • リンパ節結核 首やわきの下などにあるリンパ節が腫れます。 お子さんの肺外結核では、よく見られるタイプです。
  • 結核性髄膜炎(けっかくせいずいまくえん) 菌が脳や脊髄(せきずい)を包む膜に入りこむ、非常に重い病気です。 命に関わるだけでなく、後遺症が残ることもあります。 お薬が脳までしっかり届くため、早期からの確実な治療が重要です。
  • 粟粒結核(ぞくりゅうけっかく) 菌が血液の流れに乗り、粟(あわ)の粒のような小さな病巣が、 全身のさまざまな臓器に広がってしまう、最も重い状態の一つです。

結核(こども)の原因

結核は、「結核菌」という目に見えない小さなばいきんが、 体の中に入り込むことで起こる病気です。

結核にかかっている人が咳やくしゃみをすると、 菌がふくまれた細かいしぶきが、空気中に飛び散ります。 周りにいる人がその空気を吸い込むことで感染してしまいます。

体の中に入った結核菌は、主に肺やその近くで増え始めます。 特に小さなお子さんは、体をばいきんから守る力(免疫)が、 まだ十分に発達していないため、特に注意が必要です。

体の抵抗力が弱いと、結核菌が血液の流れに乗ってしまい、 全身に広がって重い病気を引き起こすことがあるからです。

また、次のような場合は、結核を発症しやすくなると考えられています。

  • 体の抵抗力が弱まる病気にかかっている 体の守る力が弱まり、菌と戦うことが難しくなります。
  • 免疫の働きを抑えるお薬を使っている ステロイドなどのお薬は、体の守る力を抑えることがあります。
  • 周りの大人が吸うタバコの煙を吸っている これを「受動喫煙(じゅどうきつえん)」といいます。

特にご家族など、身近な方のタバコの煙を吸ってしまうことは、 お子さんの結核発症リスクを高めることが研究でわかっています。 タバコの煙は、菌と戦う体の防御システムを弱めてしまうのです。

煙を吸う時間が長ければ長いほど、おとなしい菌が目を覚まし、 活動性の結核へと進む危険性が高くなることも報告されています。 お子さんが結核と診断された場合、感染源は周りの大人がほとんどです。 誰からうつったのかを特定し、感染の連鎖を止めることが大切です。

結核(こども)の症状

結核菌に感染しても、すぐに咳などの症状が出るとは限りません。 体の抵抗力(免疫)が菌の活動を抑えている間は無症状です。 この状態を「潜在性結核(せんざいせいけっかく)」といいます。

しかし、菌が活発に動き出すと、体のあちこちで悪さを始めます。 これを「活動性結核」といい、さまざまな症状が出てきます。 症状は、菌がどの場所で増えているかによって大きく異なります。

主な症状の例

結核の症状は、感染した場所によって変わるのが大きな特徴です。 お子さんで最も多いのは肺の結核ですが、特に小さいお子さんは、 菌が全身に広がりやすいので注意深く様子を見ることが大切です。

肺に感染した場合(肺結核)

お子さんでも、大人と同じように肺に感染することが一番多いです。 風邪の症状と似ていますが、なかなか治らず長引くのが特徴です。

  • 長引く咳やたん 2週間以上、たんがからむような湿った咳が続くときは注意が必要です。
  • 熱が出る 高い熱が出たり、なんとなく微熱がだらだらと続いたりします。
  • 体重が増えない・減る しっかり食べているのに体重が増えない、むしろ減ることもあります。
  • 寝汗をかく 夜、眠っている間にパジャマがぐっしょり濡れるほどの汗をかきます。

肺以外に感染した場合(肺外結核)

小さいお子さんは体を守る力(免疫)がまだ十分に発達していません。 そのため、菌が血液に乗って全身に広がり、重い病気を起こすことがあります。

  • リンパ節が腫れる(リンパ節結核) 首の周りやわきの下、足の付け根にあるリンパ節が腫れてきます。 多くの場合は痛みを伴いません。
  • 脳や脊髄(せきずい)をおおう膜の病気(結核性髄膜炎) 菌が脳をおおう膜に入り込む、非常に重い病気です。 命に関わるだけでなく、後遺症が残る危険性もあります。
  • なんとなく元気がない、ぐったりしている
  • 原因がわからない熱が続く
  • けいれんを起こす
  • 目の動きがおかしくなる
  • 全身に菌が広がる病気(粟粒結核:ぞくりゅうけっかく) 菌が血液の流れに乗り、粟(あわ)の粒のような小さな病巣が、 全身の臓器に広がってしまう、最も重い状態の一つです。
  • 食欲がなくなる
  • 体重が増えない
  • なんとなく機嫌が悪い、元気がない
  • おなかの病気(腸結核) おなかが痛くなったり、下痢や血の混じった便が出たりします。

お子さんの結核は、はじめのうちは症状がはっきりしないことも多いです。 気になる症状が長く続く場合は、自己判断せずに、 できるだけ早く小児科などを受診するようにしてください。

結核(こども)の検査・診断

お子さんが結核にかかったかも、と心配なとき、 病院ではいくつかの検査をして、丁寧に調べていきます。 検査の目的は、大きく分けて2つあります。

  • 目的1:感染したかどうかを調べる 体の中に結核菌が入ってしまったかを確認します。
  • 目的2:病気を発症しているかどうかを調べる 菌が活動を始めて、体のどこかで悪さをしていないか見つけます。

これらの目的のために、次のような検査を組み合わせて診断します。

検査の目的

主な検査方法

どんなことを調べるの?

感染したかな?

血液検査(IGRA)

血を採って、結核菌に体が反応するかを調べます。

BCG予防接種の影響を受けにくいのが特徴です。

ツベルクリン反応

腕にお薬を注射して、皮膚が赤く腫れるか見ます。

日本ではBCGを打つので、判断が難しいことも。

病気になってる?

画像検査

胸のレントゲンやCT写真で、肺に病気の影がないか確認します。

菌の検査

たんや胃の中の液体(胃液)、つばなどから、

結核菌そのものがいないかを探します。

お子さんの場合、たんを自分で出すのはとても難しいです。 そのため、体への負担が少ない検査方法がとても大切になります。 最近では、唾液(つば)で結核を診断する研究が進んでいます。 世界保健機関(WHO)も、たんを使わない簡単な検査を推奨しており、 痛みがなく簡単に調べられる方法として、とても期待されています。

お子さんの結核の診断は、パズルのピースを組み合わせるように、 これらの検査結果を総合的に見て、慎重に判断します。 そのため、ご家族など周りの人に結核の人がいなかったか、 どのくらい一緒に過ごしたか、といったお話がとても大切です。

たとえ検査で異常が見つからなくても、状況から結核が強く疑われる場合は、 重い病気になるのを防ぐため、治療を始めることもあります。 気になることがあれば、どんなことでも医師に相談してください。

結核(こども)の治療

お子さんの結核の治療は、病気の状態によって目標が異なります。 菌がおとなしく眠っている状態か、活動しているかで治療法を選びます。

菌が活動している「活動性結核」の治療

咳や熱などの症状がある場合は、体の中の結核菌を退治し、 体を元の元気な状態に戻すことが治療の目標です。 治療の基本は、複数の薬を長い期間、毎日きちんと飲み続けることです。

  • なぜ複数の薬を飲むの? 結核菌は、薬が効きにくくなる「耐性」という力を持つことがあります。 これを防ぐため、通常3〜4種類の薬でチームを組んで戦います。
  • なぜ最後まで飲みきることが大切? 症状が良くなっても、菌が隠れていることがあります。 自己判断で薬をやめると、菌が再び暴れ出し、もっと治しにくくなります。 医師の指示通り、最後まで飲みきることが非常に重要です。

病気の状態

治療薬の組み合わせ(例)

治療期間の目安

病気の範囲がせまい場合

3種類の薬

約6ヶ月

病気の範囲が広い場合

4種類の薬

約6ヶ月

結核性髄膜炎など特に重い場合

4種類以上の薬

約12ヶ月

特に、菌が脳を包む膜に入る「結核性髄膜炎」は重い病気です。 しかし、お薬が脳までしっかり届くことが研究でわかっています。 治療に使うイソニアジドやピラジナミドという薬は、 血液中とほぼ同じ濃さで、脳を包む液体(髄液)に届きます。 これにより、脳に広がった菌にも効果が期待できるのです。

菌が眠っている「潜在性結核」の治療

体に結核菌がいても、症状がなく眠っている状態です。 将来、菌が活動を始めるのを防ぐため、お薬を飲みます。 主にイソニアジドという薬を、6ヶ月から9ヶ月ほど続けます。

治療中は、薬の副作用がないか定期的に確認しながら進めます。 疑問や不安なことがあれば、遠慮なく医師に相談してください。