MERS
MERS(マーズ)という感染症について、具体的な症状や感染経路がわからず、漠然とした不安を感じていませんか。2012年に中東で初めて確認されたこの病気は、不確かな情報も多く、正しい知識を持つことが重要です。
この記事では、MERSの概要から原因となるウイルス、主な症状、そして検査や治療法まで詳しく解説します。世界では2,628人の患者が報告されており(2025年8月時点)、致死率の高さも指摘されています。
感染症に関する正しい知識、いわゆる「健康リテラシー」を高めることは、ご自身と周りの人を守る第一歩です。この記事を読めば、不確かな情報に惑わされず、万が一の際に取るべき適切な行動がわかります。
MERSの概要
MERS(マーズ)は、「中東呼吸器症候群」の略称で、MERSコロナウイルスによって重い呼吸器症状が引き起こされる感染症です。2012年に中東地域で初めてその存在が確認されました。
2025年8月の報告によると、世界での確定患者数は2,628人、そのうち死者数は948人にのぼります。日本国内では、MERSは感染症法上の「二類感染症」に指定されています。これは結核やSARS(重症急性呼吸器症候群)と同じ分類であり、診断した医師は直ちに保健所へ届け出ることが義務付けられています。
MERSのような新しい感染症が流行した際には、その症状や感染経路を正しく理解し、予防に努めることが重要です。しかし、過去のパンデミックを振り返ると、感染症に関する知識や予防行動といった「健康リテラシー(健康や医療の情報を正しく理解し、活用する力)」が、必ずしも十分ではなかったことが研究で指摘されています※。不確かな情報に惑わされることなく、公的機関などが発信する信頼できる情報で知識を深め、ご自身と周りの人々を守る行動を心がけましょう。
MERSの種類
MERS(中東呼吸器症候群)を引き起こす病原体は、「MERSコロナウイルス(MERS-CoV)」という1種類のウイルスです。
このウイルスは生物学的に「コロナウイルス科」の「ベータコロナウイルス属」に分類され、遺伝情報として1本鎖のRNA(リボ核酸)を持っています。
「コロナウイルス」と聞くと、さまざまな感染症を思い浮かべるかもしれませんが、MERSコロナウイルスは以下のウイルスと同じ「コロナウイルス科」の仲間です。
・一般的な風邪の原因となるウイルス
・重症急性呼吸器症候群(SARS)を引き起こす「SARSコロナウイルス」
・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こす「SARSコロナウイルス2」
このように、MERSの原因は「MERSコロナウイルス」という特定のウイルスであり、他の病気とは明確に区別されます。
過去のパンデミックに関する研究では、感染症の症状や感染経路についての知識、つまり「健康リテラシー」が、必ずしも十分ではなかったことがわかっています※。原因となるウイルスを正しく特定し、その特性を理解することは、不確かな情報に惑わされず、的確な予防策を講じるための第一歩といえます。
MERSの原因
MERS(中東呼吸器症候群)は、「MERSコロナウイルス(MERS-CoV)」という特定のウイルスに感染することで発症します。
このウイルスの自然宿主(ウイルスが自然界で普段から生息している動物)はヒトコブラクダであり、特に若いラクダが主な感染源と考えられています。
ヒトへの感染は、主に以下の経路で起こります。
・動物からの感染
・ウイルスを持つヒトコブラクダ(特に幼若ラクダ)との濃厚な接触
・殺菌されていないラクダの乳(未殺菌乳)や、加熱が不十分な肉の摂取
・ヒトからヒトへの感染
・感染者の咳やくしゃみなどのしぶき(飛沫)を吸い込むことによる「飛沫感染」
・ウイルスが付着した物を触った手で、目・鼻・口に触れることによる「接触感染」
MERSのような新しい感染症が流行した際には、どのような経路でうつるのか(伝播)といった知識、すなわち「健康リテラシー」が身を守る上で極めて重要です。
しかし、過去のパンデミックに関する調査研究では、感染経路に関する人々の知識レベルが必ずしも十分ではなかったことがわかっています※。不確かな情報に惑わされず、まずは原因と感染経路を正しく理解することが、的確な予防の第一歩といえます。
MERSの症状
MERSコロナウイルスに感染すると、2日から14日間(平均5日程度)の潜伏期間を経て、主に発熱や咳、息切れといった呼吸器系の症状が現れます。
具体的な症状は以下のとおりです。
・38℃以上の発熱
・咳
・息切れ
人によっては下痢などの消化器症状を伴うこともあります。一方で、感染しても症状が全く出ない「無症候性感染」の例も報告されているため注意が必要です。
特に、高齢の方や糖尿病、慢性の心臓病・肺疾患、腎不全といった基礎疾患をお持ちの方は重症化するリスクが高いと考えられています。
重症化すると肺炎や、肺に重い炎症が起きる急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に進行することがあります。さらに、多臓器不全(特に腎不全)や敗血症性ショックを引き起こす危険性もあり、まれに脳炎や腎炎を発症したという報告もあります。
MERSのような新しい感染症の流行に備えるには、どのような症状が出るのかを正しく知っておくことが、ご自身と周りの人を守るために重要です。
過去のパンデミックを分析した研究では、感染症の症状に関する知識(健康リテラシー)が、マスク着用や手洗いといった適切な予防行動につながる一方で、その知識レベルは必ずしも十分ではなかったことが指摘されています※。
万が一の際に迅速に医療機関へ相談するためにも、MERSの典型的な症状を正しく把握しておきましょう。
MERSの検査・診断
MERSの検査・診断は、ウイルスの遺伝子を検出するPCR検査が基本ですが、感染が疑われるすべての方がすぐに検査を受けられるわけではありません。
MERSは感染症法上の「二類感染症」に指定されており、医師が症状や海外渡航歴などを総合的に判断し、検査の必要性を決定します。具体的には、「疑似症患者」の定義に当てはまる場合に検査が進められます。
検査対象となる可能性が高いのは、主に以下のような条件を満たす方です。
・症状: 38℃以上の発熱と、咳を伴う急性の呼吸器症状がある
・行動歴・接触歴(発症前14日以内):
・MERSが流行している中東地域などに滞在、または旅行していた
・MERSの確定患者と接触した可能性がある
・感染源とされるヒトコブラクダと濃厚な接触があった
これらの条件を満たす場合、医師の判断のもとでPCR検査が実施されます。痰(たん)や鼻の奥の粘液(鼻咽頭ぬぐい液)などを採取し、検体に含まれるMERSコロナウイルス特有の遺伝子を検出することで、感染の有無を確定診断します。
過去のパンデミックに関する研究では、感染症の症状や感染経路に関する知識、いわゆる「健康リテラシー」が、人々の間で必ずしも十分ではなかったことが指摘されています※。どのような場合に検査が必要になるのかを正しく知っておくことは、不要な心配を減らし、いざという時に迅速な行動をとるために不可欠です。
もしご自身の症状や状況に不安を感じる場合は、自己判断で医療機関を直接受診するのではなく、まずは最寄りの保健所や医療機関に電話で連絡し、指示を仰いでください。
MERSの治療
MERS(中東呼吸器症候群)を直接治すための特異的な治療薬や、感染を予防するワクチンは、現時点では確立されていません。
そのため治療は、現れている症状を和らげ、ご自身の体がウイルスと戦う力をサポートする「対症療法」が主体となります。
具体的な治療は、患者さんの状態に合わせて以下のように行われます。
・発熱や体の痛みに対して
医師の判断のもと、解熱鎮痛薬を使い、体力の消耗を防ぎます。
・咳に対して
咳を鎮める薬(鎮咳薬)を使用し、呼吸を楽にします。
・呼吸困難に対して
症状に応じて酸素を投与します。重症化し、肺炎や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)によって自力での呼吸が著しく困難になった場合には、人工呼吸器による集中治療管理が必要になることがあります。
・合併症への対応
MERSは腎臓の機能が急激に低下する「腎不全」をはじめ、複数の臓器の働きが悪くなる「多臓器不全」を引き起こす危険性があります。その場合は、透析治療など、それぞれの臓器の機能を補助する治療が行われます。
このように特効薬がないからこそ、感染しないための予防、そして万が一感染した際に重症化を防ぐための早期対応が何よりも重要です。
過去のパンデミックに関する研究では、症状や感染経路に関する正しい知識(健康リテラシー)を持つことが、適切な予防行動につながる一方で、その知識レベルは必ずしも十分ではなかったことがわかっています※。
不安な症状や渡航歴がある場合は、自己判断で行動せず、まずは最寄りの保健所や医療機関へ電話で相談し、指示を仰ぐようにしてください。









