血栓性外痔核

ある日突然、おしりにパチンコ玉のような硬いしこりができ、座るのもつらいほどの激痛が走る。それは「血栓性外痔核」かもしれません。専門的には「急性痔核危機」とも呼ばれるこの症状は、デスクワークやストレスなど、日常生活の些細なきっかけで誰にでも起こりうる身近な病気です。

激しい痛みを前に「手術が必要なの?」「薬だけで治る?」と不安に思う方も多いでしょう。実際、851人を対象とした研究では、手術によって再発リスクが約半分に抑えられたという報告もあります。しかし、症状によっては薬で様子を見る「保存療法」という選択肢もあり、どちらを選ぶべきか迷ってしまいますよね。

この記事では、血栓性外痔核の詳しい原因から、ご自身の症状に合わせた最適な治療法の選び方までを分かりやすく解説します。つらい痛みを一日でも早く和らげ、再発を防ぐための知識として、ぜひ最後までお読みください。

血栓性外痔核の概要

ある日突然、おしりに激しい痛みを感じ、パチンコ玉くらいの硬いしこりができることがあります。これは血栓性外痔核(けっせんせいがいじかく)という病気で、おしりの出口近くの血管に血豆(血栓)ができた状態です。

そもそも「痔核」という組織は、病気ではなく誰にでもある正常な部分です。おしりをクッションのように柔らかく閉じる役割を担っています。しかし、この部分の血の流れが悪くなることで血栓ができると、急に強い症状が現れます。

このように、著しい血栓によって激しい痛みや腫れが起きる状態は、専門的に「急性痔核危機」と呼ばれることもあります。患者さんにとって、日常生活に支障が出るほどの、非常につらい状態となることがあります。

この病気の主な特徴は以下のとおりです。

  • できる場所
  • 痛みを感じる神経が多い、肛門の出口すぐ外側の皮膚です。
  • できるもの
  • 血の流れが滞ってできる、血のかたまり(血栓)です。
  • 主な症状
  • 何の前触れもなく現れる激しい痛み、腫れ、硬いしこりです。

血栓性外痔核はいわゆる「いぼ痔」の一種ですが、痛みを感じにくい内側の痔とは異なります。痛みを感じる神経が豊富な皮膚の部分にできるため、強い痛みを伴う場合が多いのが特徴です。

血栓性外痔核の種類

血栓性外痔核の治療法は、大きく2つの考え方に分けられます。 薬で様子を見る「保存療法」と、原因を取り除く「手術療法」です。 どちらの治療法を選ぶかは、症状の強さや患者さんのご希望で決まります。

保存療法

痛みが比較的軽く、我慢できる場合に選ばれることが多い方法です。 薬を使ったり生活習慣を見直したりすることで、体がもつ力で血栓が溶けて吸収されるのを待ちます。 体への負担が少なく、ゆっくりと回復を目指す治療法といえます。

手術療法

痛みが非常に強い場合や、早く症状を和らげたい場合に手術を検討します。 近年の研究では、手術は再発のリスクを減らす上で効果的とされています。 例えば851人を対象とした研究では、手術によって再発リスクが約半分に抑えられたと報告されました。

手術の方法にも、主に2つの種類があります。

手術の種類

内容

特徴

血栓摘出術

小さく切開し、中の血の塊だけを取り出します。

痛みを早く取り除けますが、原因は残ります。ある研究では、再び血栓ができた人が38%いたと報告されています。

局所切除術(根治手術)

血の塊ができた部分を、原因の血管ごと取り除きます。

再発の可能性を大きく下げられます。同じ研究で、再発率は7%まで抑えられていました。

このように、手術は痛みを速やかに和らげ、再発を防ぐ効果が期待できます。 妊娠中の方でも、手術は安全に行えることが多く、痛みを早く取り除けるという利点があります。 どちらの治療がご自身に合っているか、医師としっかり相談して決めましょう。

血栓性外痔核の原因

血栓性外痔核は、おしりの血管に強い圧力がかかり、血の流れが滞ることが主な原因です。 専門的には「急性痔核危機」と呼ばれるほど、突然の激痛を伴うこともあります。 おしり周りの血流が悪くなると、血管の中で血液が固まり、血豆(血栓)ができてしまうのです。

では、なぜおしりに圧力がかかると、血の流れが悪くなるのでしょうか。 これは、骨盤の中の圧力が高まることで、肛門周りの細い血管が圧迫されてしまうためです。 血管が押しつぶされると、その部分の血流が遅くなり、血液が固まって血栓を形成します。

日常生活の中には、おしりに強い圧力をかけてしまう原因が数多く潜んでいます。

  • トイレでの習慣 便秘で強くいきむ、下痢で何度もトイレに行くといった行為は、直接おしりの血管を圧迫します。
  • 同じ姿勢を続けること デスクワークや車の運転などで長時間座りっぱなしだと、おしりが圧迫され続けます。 飛行機での長時間の移動も同様に、血流が滞る原因となります。
  • 体に負担をかける動作 重いものを持ち上げるスポーツや力仕事は、お腹に力が入り腹圧が上昇します。 この腹圧の上昇が、おしりの血管への負担につながるのです。
  • その他の要因 妊娠や出産による体への負担、過労やストレス、体の冷えも血行不良を引き起こします。 アルコールや香辛料など刺激物の摂りすぎも、おしりの血管に負担をかける要因です。

このように、血栓性外痔核は特別な病気ではありません。 日々の生活習慣がきっかけとなり、誰にでも起こりうる可能性があるのです。

血栓性外痔核の症状

血栓性外痔核は、ある日突然、おしりにこれまで経験したことのないような激しい痛みをもたらします。イスに座ることはもちろん、歩くことさえつらくなるほどの痛みで、日常生活に大きな支障をきたします。

このような強い痛みは、患者さんを心身ともに衰弱させることもあり、決して珍しいことではありません。主な症状は、おしりの出口近くの皮膚に、血のかたまり(血栓)ができることで引き起こされます。

具体的には、以下のような特徴があります。

  • 突然の激しい痛み 痛みを感じる神経が豊富な肛門の外側の皮膚に、血豆ができるため強い痛みを感じます。血栓が周りの組織を圧迫することに加え、痛みのせいで無意識におしりを締める筋肉(肛門括約筋)が過度に緊張することも、痛みをさらに悪化させる原因となります。
  • 腫れとしこり おしりの出口のすぐそばに、パチンコ玉くらいの硬さのしこりができます。このしこりは、血管の中で固まった血のかたまりそのものです。
  • 見た目の変化 血のかたまりであるため、しこりの部分は皮膚の上から青紫色に見えることがあります。

痛みや腫れのピークは、症状が現れてから最初の1〜2日であることが多いです。その後は、体の働きによって少しずつ血栓が溶けて吸収され、症状が和らいでいくこともあります。

こんな症状はありませんか?

ご自身の状態を確認するために、以下のリストをチェックしてみましょう。

  • □ おしりのまわりに、急に激しい痛みを感じるようになった
  • □ 痛くてイスに座っていられない
  • □ おしりをさわると、硬いしこりのようなものがある
  • □ しこりの部分が腫れていて、色が変わっている

これらの症状に一つでも当てはまる場合は、血栓性外痔核の可能性があります。痛みを我慢せず、早めに専門のクリニックを受診しましょう。適切な治療を受けることで、つらい痛みを和らげることができます。

血栓性外痔核の検査・診断

おしりに急な痛みやしこりができたとき、病院でどのような検査をするのか不安に思うかもしれません。 血栓性外痔核の診断は、主に医師がおしりの状態を見て、お話を聞くことから始まります。

まず、医師が患部を直接目で見て確認する「視診」を行います。 これは、診断に必要な多くの情報が、見た目の状態から得られるためです。

【視診で確認するポイント】

  • しこりの状態 肛門のふちに、青紫色をしたパチンコ玉のような硬いしこりがないか確認します。
  • 腫れの範囲 しこりの周りがどのくらい腫れているか、熱を持っているかなども観察します。
  • 皮膚の変化 ときに皮膚が薄くなって破れ、古い血液が出ていることもあります。

次に、症状について詳しくお聞きする「問診」を行います。 いつから痛むか、きっかけに心当たりはあるかなど、詳しく教えてください。 多くの場合、この視診と問診によって診断がつきます。

この病気は「急性痔核危機」と呼ばれるほど、患者さんに著しい苦痛を与えることがあります。 そのため、痛みが非常に強いときに、無理に詳しい検査を行うことはありません。 まずは痛みを和らげる治療を優先しますので、ご安心ください。

他の病気の可能性を調べる必要があるときには、次のような検査を行うことがあります。

  • 直腸診(ちょくちょうしん) 医師が指で肛門の中をそっと触り、内部の状態を確かめます。
  • 肛門鏡検査(こうもんきょうけんさ) 専用の小さな器具で、肛門の内部を直接観察します。

正確な状態の把握は大切ですが、何よりも患者さんの状態に合わせて慎重に診断を進めます。

血栓性外痔核の治療

血栓性外痔核の治療は、主に2つの方法から選びます。 薬で様子を見る「保存療法」と、原因を取り除く「手術療法」です。 どちらを選ぶかは、症状の強さや患者さんのご希望で決まります。

保存療法(薬や生活習慣で治す)

痛みが比較的軽く、手術に抵抗がある場合に選ばれる治療法です。 体への負担が少なく、ゆっくりと回復を目指すことができます。

【具体的な治療内容】

  • 安静にする おしりに負担がかからないよう、なるべく安静に過ごします。
  • 薬を使う 痛み止めの飲み薬や、炎症を抑える塗り薬で症状を和らげます。
  • 体を温める お風呂などで患部を温めて、血のめぐりを良くします。
  • 生活習慣を整える 水分や食物繊維を多く摂り、便を柔らかくして排便の負担を減らします。

ただし、保存療法は症状の改善に時間がかかることがあります。 また、手術療法に比べて再発する可能性が高いことも指摘されています。

手術療法(原因を取り除く)

痛みが非常に強い場合や、早く治したい方におすすめの治療法です。 多くの研究で、手術の有効性が示されています。

  • メリット①:痛みが早く和らぐ 研究によると、手術を受けた人は、受けなかった人に比べて術後4日以内の痛みが少ないことがわかっています。妊娠中の方でも、手術によってつらい痛みを速やかに和らげられる場合があります。
  • メリット②:再発のリスクが低い 複数の研究を分析した結果、手術は保存療法に比べて再発のリスクが約半分に抑えられると報告されています。出血などの合併症が起こるリスクは、手術をしても保存療法と大きな差はないとされています。

手術は局所麻酔を使い、クリニックで日帰りで行えることがほとんどです。

治療法

こんな方におすすめ

メリット

デメリット

保存療法

・症状が比較的軽い方

・体への負担を少なくしたい方

・体への負担が少ない

・治るまでに時間がかかる

・再発のリスクが高い

手術療法

・痛みが非常に強い方

・早く治したい方

・再発を防ぎたい方

・痛みが早く和らぐ

・再発しにくい

・費用がかかる

・ごくまれに合併症のリスクがある

どちらの治療がご自身に合っているかは、症状や生活スタイルによって異なります。 医師とよく相談し、納得のいく治療法を選んでいきましょう。