シックハウス症候群

「特定の建物に入ると頭痛がする」「家にいるとなぜか咳が止まらない」そんな原因不明の不調に悩んでいませんか?その不調は、あなたが多くの時間を過ごす「住まい」の空気に原因が潜んでいるかもしれません。

研究によると、私たちは1日の約80%もの時間を室内で過ごしており、その空気の質は私たちの健康を大きく左右します。目に見えない化学物質などが引き起こす「シックハウス症候群」は、風邪やアレルギーに似た症状で現れるため、気づかれにくいのが特徴です。

この記事では、シックハウス症候群の正体から具体的な原因、そしてご自身とご家族を守るために今日からできる対策までを、分かりやすく解説していきます。

シックハウス症候群の概要

特定の建物に入ると体調が悪くなる、と感じたことはありませんか。 研究によると、私たちは1日の時間の約80%を室内で過ごしています。 そのため、お部屋の空気の質は、私たちの健康に大きく影響します。

シックハウス症候群とは、建材や家具などから出る化学物質が原因で、 様々な健康トラブルが起こることです。 その建物から離れると、症状が良くなるのが大きな特徴といえます。

主な原因は、目に見えない化学物質である揮発性有機化合物(VOCs)です。 最近の住宅は気密性が高く、化学物質が室内にこもりやすい環境です。 このVOCsが呼吸器の病気と関連することも研究で示唆されています。

症状は人によって様々ですが、主に以下のようなものがあります。

  • 目 チカチカする、かゆい、涙が出る
  • 鼻 くしゃみ、鼻水、鼻づまり
  • のど・呼吸器 乾燥、痛み、咳
  • 全身 頭痛、めまい、吐き気、だるさ

もし学校で同じような症状が出る場合は「シックスクール症候群」と呼ばれます。 現在、国も対策を進めており、2003年からは法律によって、 原因物質の使用制限や換気設備の設置が義務付けられています。

シックハウス症候群の種類

シックハウス症候群は、場所によって呼び方が変わることがあります。 しかし、原因や体に起こる症状は、基本的には同じものと考えてよいでしょう。 どの場所でも、その建物の中にいる時だけ症状が出るのが特徴です。

原因となる化学物質は、呼吸を通じて体に入り込むことが多いです。 そのため、咳や鼻水といった呼吸器の症状との関連が、研究で示されています。 主に、問題が起きる場所によって以下の3つに分けられます。

呼び方

発生する場所の例

シックハウス症候群

一般的な住宅(一戸建て、マンションなど)

シックビルディング症候群

オフィスビル、商業施設、公共施設など

シックスクール症候群

学校、幼稚園、保育園など

このように呼び方が違うのは、それぞれの場所で対策をとる人が異なるためです。 例えば、学校で起きた場合は、生徒の健康を守るために特別な対策が必要です。 どの呼び方でも「特定の建物で体調が悪くなる」という点は共通しています。

シックハウス症候群の原因

シックハウス症候群は、室内の空気に含まれる様々な物質が原因です。 新築やリフォーム後の家で症状が出やすいのはよく知られています。 これは、建材や家具から化学物質が多く放出されるためと考えられます。

原因となる物質は、大きく3つのグループに分けられます。 それぞれの特徴と、どこから発生するのかを詳しく見ていきましょう。

1. 化学物質(揮発性有機化合物:VOCs)

シックハウス症候群の主な原因として、最も知られているものです。 「揮発性(きはつせい)」とは、常温で気体になりやすい性質を指します。 目に見えないガスとなって、お部屋の空気中に広がっていきます。

研究によると、このVOCsが呼吸器の病気と関連することが示されています。 私たちは1日の大半を室内で過ごすため、空気の質は健康に直結します。 特に、以下の化学物質は厚生労働省が室内濃度の指針値を定めています。

物質名

主な発生源の例

ホルムアルデヒド

合板、壁紙の接着剤、家具

トルエン

塗料、接着剤

キシレン

塗料、接着剤、インク

パラジクロロベンゼン

防虫剤、トイレの芳香剤

これらは建材や家具だけでなく、普段使う日用品からも発生します。 そのため、知らないうちに体内に取り込んでいる可能性があるのです。

2. 生物が由来の物質

化学物質だけでなく、カビやダニなども原因になることがあります。 これらは、湿度が高い場所や、掃除が行き届かない場所に発生しやすいです。 アレルギー体質の人は、特に注意が必要な原因物質といえるでしょう。

  • カビ 浴室やキッチン、結露しやすい窓際などに発生します。
  • ダニ 布団やカーペット、ぬいぐるみなどに潜んでいます。
  • ハウスダスト ホコリの中に、ダニの死骸やフン、カビの胞子などが混ざったものです。

3. その他の原因

住宅のつくりも、シックハウス症候群の発症に大きく関係します。 最近の住宅は、冷暖房の効率を上げるために気密性が高くなっています。 すきま風が入りにくく快適ですが、換気が不十分になりがちです。 汚れた空気が外に出にくく、室内にこもりやすい環境といえます。

また、同じ環境にいても、症状が出る人と出ない人がいます。 これは、年齢や元々の健康状態、アレルギーの有無などが影響するためです。 特に子どもは、大人より化学物質の影響を受けやすいと考えられています。 体重あたりの呼吸量が多く、床に近い場所で生活するためです。 ご家族の健康を守るためにも、原因を正しく理解することが大切です。 気になる症状があれば、まずは原因物質から離れることを考えましょう。

シックハウス症候群の症状

シックハウス症候群の症状は、風邪やアレルギーの症状とよく似ています。 そのため、すぐには気づきにくいことがありますが、体からの大切なサインです。 症状は一つだけでなく、いくつか同時にあらわれることも少なくありません。

ご自身の体調と比べて、当てはまるものがないか確認してみましょう。

  • 目の症状 目がチカチカする、かゆい、理由もなく涙が出る
  • 鼻の症状 くしゃみや鼻水が止まらない、鼻がつまる
  • のど・呼吸器の症状 のどが乾燥して痛む、咳が出る、息苦しさを感じる
  • お肌の症状 皮膚が赤くなる、かゆみが出る、湿疹ができる
  • 全身の症状 頭痛、めまい、吐き気、体がだるく疲れやすい

特に、咳や鼻水といった呼吸器の症状は、注意が必要なサインです。 多くの研究で、室内の化学物質が喘息などの病気と関係することがわかっています。 私たちの健康は、お部屋の空気の質に大きく影響されるのです。

これらの症状には、はっきりとした特徴があります。 それは「特定の建物にいると症状が悪化し、離れると良くなる」ことです。 もし新しいお家や学校でだけ症状が出るなら、注意深く観察しましょう。

シックハウス症候群の検査・診断

シックハウス症候群を特定する、特別な検査はありません。 血液検査やレントゲン写真だけでは、診断を確定できないのです。 そのため、医師が最も大切にするのは、患者さんのお話を聞くことです。 これを「問診(もんしん)」といい、診断の重要な手がかりとなります。

研究によると、私たちは1日の約80%を室内で過ごしています。 だからこそ、生活環境について詳しくお伺いすることが大切なのです。 問診では、まるで探偵のように症状のヒントを一緒に探していきます。

  • いつから症状が始まりましたか? (例:引っ越しやリフォームの後、新しい家具を買った後など)
  • どんな場所にいる時に症状が強く出ますか? (例:自宅のリビング、会社のオフィスなど特定の部屋)
  • その場所を離れると症状は軽くなりますか? (例:外出すると楽になる、学校にいる時は症状がないなど)

また、症状が似ている他の病気ではないか、見分けることも必要です。

似た症状があらわれる病気の例

自律神経失調症

更年期障害

化学物質過敏症

特に「化学物質過敏症」は、原因の建物から離れても症状が続きます。 ごくわずかな化学物質にも反応してしまうことがあるのが特徴です。 このように丁寧な問診で、他の病気の可能性を慎重に除外します。 そして総合的に判断し、診断が行われるのです。

シックハウス症候群の治療

シックハウス症候群には、病気を根本から治す特効薬がありません。 そのため治療は、原因から離れることと症状を和らげることの二本柱です。 最も大切なのは、原因となる住まいや職場の環境を良くすることです。

研究によると、私たちは1日の約80%もの時間を室内で過ごしています。 だからこそ、お部屋の空気の質をきれいに保つことが健康に直結します。 原因となる化学物質などから離れることが、一番の治療になるのです。

環境を良くするための具体的な方法には、以下の3つがあります。

  • 換気をする 最も手軽で重要な対策です。 定期的に窓を開けて、お部屋の汚れた空気を外に出しましょう。
  • 原因のものを減らす 原因と思われる家具や日用品を使わないようにすることも大切です。 化学物質の放出が少ない製品に買い替えるのも一つの方法です。
  • 専門家に相談する 自分での対策が難しい場合は、専門家へ相談しましょう。 リフォームなどで原因物質の少ない建材に変えることも考えます。

これらの環境改善とあわせて、今出ているつらい症状を薬で和らげます。 これを「対症療法(たいしょうりょうほう)」といいます。 例えば、目のかゆみには目薬、鼻水にはアレルギーを抑える薬を使います。 ただし薬は一時的に症状を抑えるものなので、環境改善が不可欠です。