COVID-19後遺症(Long COVID)

コロナ感染後、原因不明の倦怠感や思考力の低下といった不調が長引き、不安を感じていませんか。COVID-19後遺症は世界で感染者の約6%が発症するとされ、その症状は200種類以上ともいわれています。決して珍しい状態ではなく、多くの人が悩みを抱えています。

この記事では、COVID-19後遺症で多く見られる症状や、現在有力と考えられている原因について、研究報告を交えながら詳しく解説します。また、どのような検査が行われるのか、症状を和らげるための治療法はどのように進められるのかについても紹介します。

ご自身の状態と照らし合わせることで、後遺症に対する漠然とした不安が和らぎ、客観的な理解が深まります。つらい症状と向き合い、適切な医療機関へ相談するための次の一歩を見つける手助けとなるはずです。

COVID-19後遺症(Long COVID)の概要

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から回復した後も、関連する症状が長引いたり、新たに現れたりする状態をCOVID-19後遺症(Long COVID)と呼びます。「罹患後症状」や「ポストコロナ」とも呼ばれ、その定義の目安は複数あります。

・一般的な目安: 感染から4週間以上、症状が続く状態

・世界保健機関(WHO)の目安: 感染から3カ月以内に発症し、少なくとも2カ月以上持続する症状

これは決して珍しいものではなく、世界的にはCOVID-19に感染した方の約6%が発症するとされています。症状は200種類以上報告されていますが、あるシステマティックレビューでは、特に多い症状の発生率と平均的な持続期間が下表のように報告されています。※

主な症状 | 発生率 | 平均持続期間

認知・記憶・注意力の低下(ブレインフォグ) | 36% | –

疲労感・倦怠感 | 34% | 5.5カ月

不安やうつ病などの精神的な不調 | 31% | 3.5~3.8カ月

呼吸困難(息苦しさ) | 24% | 6.5カ月

胸の痛み | 23% | 2カ月

これらの症状は、感染急性期のものがそのまま続くこともあれば、一度回復した後に再び現れることもあります。どのような症状が、どのくらいの強さで、どれくらいの期間続くかは一人ひとり異なり、日常生活に大きな支障をきたすケースも少なくありません。

COVID-19後遺症(Long COVID)の種類

COVID-19後遺症の症状は、人によって驚くほどさまざまです。これは、症状の現れ方によっていくつかの「種類(サブタイプ)」に分類できるためです。

後遺症は、一つの症状だけが単独で現れるよりも、複数の症状がまとまり(クラスター)となって現れる傾向があります。そして、どの症状のクラスターが見られるかは、年齢や性別、もともと持っている病気などによっても異なるとされています。

多くの研究データを統合・分析した信頼性の高い報告では、後遺症によく見られる代表的な症状クラスターとして、以下の5つが示されています。※

代表的な症状のまとまり(クラスター) | 発生率 | 平均持続期間

認知・記憶・注意力の低下(ブレインフォグ) | 36% | 不明

疲労感 | 34% | 約5.5カ月

不安やうつ病などの精神的な不調 | 31% | 約3.5~3.8カ月

息苦しさなどの呼吸困難 | 24% | 約6.5カ月

胸の痛み | 23% | 約2カ月

このように症状のまとまりを把握することは、後遺症の原因を解明したり、一人ひとりに合った診断や治療の方針を立てたりする上で、重要な手がかりとなります。※

もちろん、ここに示した発生率や期間はあくまで平均的なデータです。症状の現れ方や続く期間には大きな個人差があることを、心に留めておいてください。ご自身の症状がどのタイプに近いか、またどのような症状が組み合わさっているかを整理しておくことが、適切な診断と治療への第一歩となります。

COVID-19後遺症(Long COVID)の原因

COVID-19後遺症(Long COVID)がなぜ起こるのか、その決定的な原因はまだ特定されていません。しかし、世界中の研究から、原因は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発症する可能性が高いとわかってきました。

現在、特に有力とされている仮説は以下の3つです。

・体内にウイルスが残存する

感染後もウイルスが体内から完全には排除されず、組織の奥深くに潜伏し続けることで、長期間にわたって微弱な炎症を引き起こすという説です。

・免疫システムの異常

ウイルス感染をきっかけに免疫システムに異常が生じ、過剰に反応したり、自分自身の体を誤って攻撃する「自己免疫」という状態に陥ったりする可能性があります。具体的には、以下のようなメカニズムが考えられています。

・抗体の不足:感染初期に作られるウイルスへの抗体(抗SARS-CoV-2スパイク抗体)のレベルが低いと、後遺症のリスクが高まる可能性が報告されています。十分な抗体が作られないことでウイルスを効率的に排除できず、免疫反応が長引いてしまうためではないかと考えられています。※

・自己免疫疾患の誘発・悪化:ウイルス感染が引き金となり、甲状腺を標的とする自己免疫反応が起こることがあります。その結果、橋本病やバセドウ病といった自己免疫性の甲状腺疾患を発症したり、もともとあった病気が悪化したりする可能性も指摘されています。※

・微小な血栓の形成

ウイルスによって血管の内側の壁が傷つけられ、目に見えないほど小さな血液の塊(微小血栓)が作られるという説です。この微小血栓が全身の毛細血管に詰まることで血流が悪化し、各臓器に十分な酸素や栄養が届かなくなり、さまざまな機能不全を引き起こすと考えられています。

また、これらの原因に加えて、どのような人が後遺症を発症しやすいか、その「危険因子」についても研究が進んでいます。以下の特徴を持つ方は、後遺症のリスクが比較的高まる可能性が報告されています。

・女性

・高齢の方

・喫煙者

・肥満(BMIが高い)

・糖尿病などの持病がある

・COVID-19の急性期に症状が重かった

もちろん、これらに当てはまらない方でも後遺症を発症することはあります。しかし、複数の因子が重なるほどリスクが高まる傾向があるため、ご自身の状態を把握する上での一つの目安となります。

COVID-19後遺症(Long COVID)の症状

COVID-19後遺症で現れる症状は、全身のあらゆる場所に及ぶ可能性があり、その種類は200以上とも報告されています。

症状の現れ方は一人ひとり異なりますが、複数の研究データを統合・分析した信頼性の高い報告によると、特に多く見られる症状の発生率と平均的な持続期間は以下のとおりです。※

主な症状 | 発生率 | 平均持続期間の目安

認知・記憶・注意力の低下 (ブレインフォグ) | 36% | 不明

疲労感・倦怠感 | 34% | 約5.5カ月

不安やうつ病などの精神的な不調 | 31% | 約3.5~3.8カ月

呼吸困難(息苦しさ) | 24% | 約6.5カ月

胸の痛み | 23% | 約2カ月

このほかにも、頭痛、関節痛、筋肉痛、睡眠障害、動悸、嗅覚・味覚の異常、脱毛など、多彩な症状が認められます。

これらの症状は、感染中からずっと続くこともあれば、一度は回復したように見えてから新たに現れることもあります。また、日によって症状の強さが変わったり、良くなったり悪くなったりを繰り返したりする「波がある」ことも、この後遺症の大きな特徴です。

さらに、見過ごされがちな症状として、甲状腺機能への影響も挙げられます。ウイルス感染が引き金となり、免疫システムが自分自身の甲状腺を誤って攻撃してしまう「自己免疫」という現象が起こるためです。

その結果、以下のような状況につながる可能性があります。※

・もともと甲状腺に病気がなかった方に、橋本病やバセドウ病といった自己免疫性の甲状腺疾患が新たに発症する

・すでに甲状腺の病気を持っている場合、症状が悪化する

原因不明の倦怠感や動悸、気分の落ち込みなどが続く際には、背景に甲状腺の問題が隠れている可能性も念頭に置く必要があります。

COVID-19後遺症(Long COVID)の検査・診断

COVID-19後遺症(Long COVID)を特定する、たった一つの確定的な検査は今のところ存在しません。

診断は、まず症状が似ている他の病気の可能性を一つひとつ丁寧に取り除いていく「除外診断」というアプローチが基本です。

血液検査や画像検査だけで「これが後遺症の原因です」と断定できないのが現状であり、だからこそ診断で最も重要になるのが、患者さんご自身の言葉で症状を詳しくお話しいただく「問診」です。

医師は、主に以下のような点について丁寧にお話を伺います。

・いつから、どのような症状で悩んでいるか

・症状の強さに波はあるか(日や時間帯によって変わるか)

・日常生活や仕事に、どのような支障が出ているか

これらの情報が、正確な診断と治療方針を立てるための大切な手がかりとなります。

その上で、症状に応じて他の病気が隠れていないかを確認するため、以下のような検査を組み合わせることがあります。

・息苦しさや胸の痛みがある場合:肺や心臓の状態を確認する胸部X線(レントゲン)検査、心電図検査

・強い倦怠感や気分の落ち込みが続く場合:甲状腺機能の異常などを調べる血液検査

現在、後遺症を客観的に評価できる指標(バイオマーカー)を見つけるための研究が世界中で進んでいます。

例えば、ウイルス感染の初期段階で作られる「抗SARS-CoV-2スパイク抗体」の量が少ないと、後遺症を発症するリスクが高まる可能性があるという報告があります。これは、十分な抗体が作られないことでウイルスを効率よく排除できず、免疫の反応が長引いてしまうためではないかと考えられています。※

このような研究は、将来的に後遺症のリスク予測や診断に役立つと期待されていますが、まだ研究段階であり、現時点の診断基準には含まれていません。

つらい症状が続く場合、「気のせいかもしれない」と一人で抱え込まず、かかりつけ医や後遺症の診療を行っている医療機関へご相談ください。

COVID-19後遺症(Long COVID)の治療

COVID-19後遺症(Long COVID)には、すべての症状に効くような特効薬がまだ存在しないため、治療は一人ひとりのつらい症状を和らげる「対症療法」が中心となります。

治療の目的は、倦怠感やブレインフォグ、咳、頭痛といった多彩な症状を一つひとつコントロールし、低下してしまった生活の質(QOL)を取り戻すことです。

治療はかかりつけ医が中心となり、症状に合わせて各分野の専門医と連携しながら、主に以下のようなアプローチを組み合わせて進めます。

・症状を和らげる対症療法

症状に応じた薬物療法や漢方薬の処方、生活指導などを行います。

・機能を取り戻すリハビリテーション

息切れが続く場合の呼吸リハビリテーションや、著しく低下した体力を無理のない範囲で回復させるための理学療法などを行います。

・新たな視点からのアプローチ

後遺症の原因に迫る研究も世界中で進んでおり、その知見を治療に応用する試みも始まっています。特に、免疫や内分泌(ホルモン)の異常に着目したアプローチが注目されています。

・甲状腺機能への着目

原因不明の強い倦怠感や気分の落ち込みの背景に、甲状腺機能の異常が隠れている可能性があります。ウイルス感染が引き金となり、免疫システムが自分自身の甲状腺を誤って攻撃する「自己免疫」という現象が起こることがあるためです。その結果、橋本病やバセドウ病といった甲状腺の病気を新たに発症したり、もともとあった病気が悪化したりする可能性が指摘されています。※

・抗体に着目した研究

感染初期に作られるウイルスへの抗体(抗SARS-CoV-2スパイク抗体)の量が少ないと、後遺症を発症するリスクが高まるという研究報告があります。これは、十分な抗体が作られないことでウイルスを効率よく排除できず、免疫の反応が長引いてしまうためではないかと考えられています。※

これらの研究は、将来的に後遺症のリスク予測や新たな治療法の開発につながるものと期待されていますが、まだ研究段階です。

現状では確立された治療法がないからこそ、つらい症状を「気のせいだ」と一人で抱え込む必要はまったくありません。まずはかかりつけ医や、後遺症を専門に診る医療機関へ相談することが、改善への大切な第一歩です。