根管治療

「歯の神経をぬきましょう」と歯科医師に告げられ、ズキズキする痛みだけでなく、治療そのものに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。根管治療は、深い虫歯やケガによって歯の内部に侵入した細菌を取り除き、大切なご自身の歯を残すための重要な治療です。

痛みが一時的に消えたからと安心はできません。放置すると、細菌は歯の根で静かに繁殖し、歯を支える骨を溶かしてしまう危険性もあります。しかし、治療法は進化しており、ある再生をうながす治療法では約88%という高い成功率も報告されています。

この記事では、根管治療が必要になる原因や症状、そして従来の方法から最新の治療法までを詳しく解説します。ご自身の歯を1本でも多く守るために、ぜひ正しい知識を身につけてください。

根管治療の概要

根管治療は、「歯の神経をぬく」「歯の根っこの治療」とも呼ばれます。 歯の内部には、神経や血管が通っている「根管」という細い管があります。

深い虫歯によって、この根管の中に細菌が入り込んでしまうことがあります。 そうなると、歯がズキズキと激しく痛んだり、歯ぐきが腫れたりします。 この痛みの原因となる細菌や、汚染された神経などを取り除くのが根管治療です。

根管治療の主な目的は、以下のとおりです。

  • 歯の内部の細菌を取りのぞき、痛みや腫れをおさえる
  • 細菌がさらに広がるのを防ぎ、ご自身の歯をできるだけ長く使えるようにする

治療では、専用の器具で根管の中を丁寧に掃除し、薬液で洗浄・消毒します。 近年、超音波の振動を利用して薬液を洗浄する方法が注目されています。

ある複数の信頼性の高い研究をまとめた分析報告があります。 その報告によると、この超音波を使った洗浄方法は従来の方法に比べ、細菌を減らす効果が非常に高いことがわかっています。 この結果は偶然とは考えにくく、治療の精度を高める上で重要です。 根管の中がきれいになったら、再び細菌が入りこまないように薬剤を詰めて治療は完了となります。

根管治療の種類

根管治療は、歯の神経(歯髄)がどのような状態かによって種類が変わります。 主に、神経がまだ生きているか、すでに死んでしまったかで治療法が異なります。

主な根管治療の種類

根管治療は、大きく分けて以下の2種類があります。

  • 抜髄(ばつずい) 虫歯が神経まで届き、「ズキズキ」と脈打つように痛む時に行います。 これは、まだ生きているものの、細菌で炎症を起こした神経を取り除く治療です。 痛みの原因を取り去り、大切なご自身の歯を残すことを目指します。
  • 感染根管治療(かんせんこんかんちりょう) 神経がすでに死んでしまい、歯の根の先に細菌が繁殖して膿がたまっている時に行います。 死んで腐ってしまった神経や、細菌に汚染された根管の内部をきれいに掃除・消毒します。

治療の種類

どのような歯に行うか

抜髄

歯の神経がまだ生きていて、虫歯などで炎症を起こし痛んでいる歯

感染根管治療

歯の神経がすでに死んでしまい、根の先が細菌に感染している歯

その他の治療法と新しい考え方

上記のほかに、一度治療した歯が再び悪くなった場合の「再根管治療」もあります。 また、近年の研究により、治療の選択肢はさらに広がっています。

例えば、歯を削る量をできるだけ少なくするアプローチが注目されています。 歯の強度を保ち、治療後に歯が割れてしまう危険性を減らすためです。 ある研究の分析では、この方法が特に小臼歯や大臼歯の強度を高めることがわかっています。

また、特に若い方で、事故などが原因で神経が死んでしまった場合も選択肢があります。 歯の神経の再生をうながす「歯髄再生療法」という治療法です。 この治療法は、約88%という高い成功率が報告されている有望な方法です。

どの治療法がご自身の状態に最も合っているか、歯科医師とよく相談して決めることが大切です。

根管治療の原因

根管治療が必要になるのは、歯の内部にある「歯髄」が原因です。 歯髄とは、歯の神経や血管が集まる、歯の生命線ともいえる組織です。 この歯髄に細菌が感染してしまうことが、治療の始まりとなります。

最も多い原因は、やはり「虫歯」です。 虫歯を放置すると、歯の表面から内部へと深く進行してしまいます。 そして歯髄にまで達すると、細菌が感染し炎症を起こします。 この状態になると、ズキズキとした激しい痛みを感じるようになります。

しかし、原因は虫歯だけではありません。 以下のような、意外なことがきっかけで根管治療が必要になることもあります。

  • 歯のケガ(外傷) 転んだりぶつかったりして、歯が折れたりひびが入ったりした場合です。 その傷口から細菌が歯の内部に侵入し、歯髄が感染することがあります。 特にまだ成長途中の若い方の歯が外傷を受けた場合、注意が必要です。 ある複数の研究をまとめた報告では、外傷で神経が死んでしまった若い方の歯に対し、歯の再生をうながす治療法で約88.3%という高い成功率が示されています。
  • 歯の根が溶けること(根吸収) ケガや歯の矯正治療などがきっかけで、歯の根が溶けることがあります。 これを「根吸収(こんきゅうしゅう)」と呼びます。 根吸収が歯髄にまで影響すると、根管治療の対象となります。 この根吸収に対しても、歯の再生をうながす治療が有効な場合があります。 ある研究報告では、この治療で根の吸収が止まり、症状がなくなったとされています。
  • 過去の治療の再発 以前に治療した歯でも、油断はできません。 被せ物や詰め物が古くなると、目に見えない隙間ができてしまいます。 その隙間から再び細菌が入り込み、根管治療が必要になるケースです。

根管治療の症状

「歯が痛い」と感じる以外にも、根管治療が必要なサインはいくつかあります。 歯は体の大切な一部であり、ささいな変化が重要なサインであることも少なくありません。 ご自身の歯の状態に当てはまるものがないか、一度チェックしてみましょう。

【こんな症状はありませんか?根管治療のサイン】

  • 何もしなくてもズキズキ痛む 心臓の鼓動に合わせて脈を打つように痛むのは、歯の神経が悲鳴を上げている証拠です。
  • 温かいものや冷たいものが強くしみる 虫歯が神経に近づき、過敏になっているサインかもしれません。
  • 食べ物を噛むと特定の歯が痛い 歯の根の先に膿がたまり、噛んだ圧力で痛みを感じることがあります。
  • 歯ぐきがぷくっと腫れている 根の先にたまった膿が、出口を求めて歯ぐきを風船のように膨らませている状態です。
  • 歯ぐきから膿(うみ)が出ている 腫れた歯ぐきから、白や黄色の膿が出てくることがあります。
  • 歯の色が黒っぽく変わってきた 歯の神経が死んでしまい、歯に栄養が行き届かなくなった可能性があります。

これらの症状は、虫歯が歯の内部にある神経(歯髄)にまで達し、炎症を起こしているサインです。 放置すると、やがて神経が死んでしまい、一時的に痛みが消えることがあります。 しかし、これは治ったわけではありません。

細菌は歯の根の先でさらに繁殖し、歯を支える骨や歯の根そのものを溶かしてしまうこともあります。 この状態を「根吸収(こんきゅうしゅう)」と呼びます。 ある研究の分析では、このような根吸収が起きた歯でも、適切な治療で吸収が止まり、症状がなくなったと報告されています。

また、これらの症状は、大人の永久歯だけでなく、お子さんの乳歯でも起こります。 ある研究では、お子さんの乳歯の虫歯が進行すると、歯の神経に炎症が起きたり、神経が死んでしまったりして、大人と同じように治療が必要になることが示されています。

少しでも気になる症状があれば、ご自身の歯を守るために、放置せずに歯科医院へ相談することがとても大切です。

根管治療の検査・診断

根管治療を始める前には、まず歯の内部がどうなっているかを知る必要があります。 歯の根の中は、まるで迷路のように細かく複雑な形をしています。 そのため、治療を成功させるには、精密な検査と診断が欠かせません。

検査では、主に以下の方法で歯の状態を詳しく調べます。

  • 問診・視診 まず「いつから、どのように痛みますか?」といった質問をします。 患者さんのお話は、原因を探るための大切なヒントになります。 その後、歯や歯ぐきの色、腫れなどを直接目で見て確認します。
  • レントゲン検査 歯やあごの骨の「健康診断写真」を撮る、基本的な検査です。 虫歯の深さや、歯の根の先に膿がたまっていないかを確認できます。
  • CT検査 レントゲンが平面の写真なのに対し、CTは歯を立体的に見られます。 根の数や曲がり具合など、レントゲンでは分かりにくい部分も把握可能です。 より詳しい情報が得られるため、診断の精度が高まります。

また、根管治療では細菌をいかに減らすかが成功のカギとなります。 そのための新しい消毒方法として、特殊な光と薬を使う方法も研究されています。 これは「光線力学療法(PDT)」と呼ばれるものです。

しかし、複数の研究をまとめた最近の報告があります。 それによると、この方法の効果はまだはっきりと分かっていません。 特にお子さんの乳歯の治療での有効性は、まだ研究段階にあります。

これらの検査結果を総合的に判断し、あなたに合った治療計画を立てていきます。

根管治療の治療

根管治療は、歯の内部をきれいにして、ご自身の歯を残すための大切な治療です。 治療はいくつかの段階に分けて、丁寧に進められます。

治療の基本的な流れは、以下のようになっています。

  1. 麻酔と虫歯の除去 まず、治療中に痛みを感じないように麻酔をします。 その後、虫歯に侵された部分を削って取り除きます。 このとき、歯を削る量をできるだけ少なくすることが、歯の寿命に関わります。 歯を削る範囲が小さいほど、治療後の歯の強度を保ちやすくなります。 ある研究の分析では、特に奥歯などでこの方法が有効だと報告されています。
  2. 汚染された歯髄(しずい)の除去 「ファイル」や「リーマー」と呼ばれる、まち針のような細い器具を使います。 この器具で、細菌に感染してしまった神経や血管(歯髄)をきれいに取り除きます。
  3. 根管内の洗浄・消毒 薬液を使って、歯の根の中(根管)をすみずみまで洗浄・消毒します。 この洗浄の際に、超音波の細かな振動を利用する方法があります。 複数の信頼できる研究をまとめた報告によると、この方法は従来の方法よりも、細菌を減らす効果が非常に高いことが分かっています。
  4. 根管充填(こんかんじゅうてん) 根管の中が完全にきれいになったら、薬を詰めてすき間なく封鎖します。 これにより、再び細菌が歯の内部に入り込むのを防ぎます。
  5. 土台と被せ物 最後に、歯の機能を補うために土台を作り、その上から被せ物を装着します。 これで歯を守り、しっかり噛むことができるようになります。

治療中は、唾液に含まれる細菌が根管内に入るのを防ぐことも重要です。 そのため「ラバーダム」というゴムのシートを使うことがあります。 根管治療は途中でやめると、細菌が増えて悪化することがあるため、最後まで通院を続けましょう。