「最近、足がむくみやすい」「食欲がなく、お腹が張る」。その原因不明の不調、もしかしたら心臓の「右側」の機能が弱る「右心不全」のサインかもしれません。右心不全は、心臓のポンプ機能が衰え、全身から戻る血液が渋滞(うっ血)することで起こる病気です。
特に突然発症する「急性右心不全」は命に関わることもあり、重い心臓病の治療後に合併症として現れるケースも報告されています。しかし、ある研究では専門的な治療によって6割以上の方が助かるとも言われており、正しい知識が命を救う鍵となります。
この記事では、見過ごされがちな右心不全の症状から原因、そして最新の治療法までを詳しく解説します。ご自身の体のサインを見逃さないためにも、ぜひ最後までご覧ください。
右心不全の概要
心臓は、血液を全身に送り出すポンプの役割をしています。 このポンプは4つの部屋に分かれて動いています。
そのうち、全身を巡って二酸化炭素を多く含んだ血液が、 心臓に戻ってくる場所が「右側」の部分(右心)です。 右心は、その血液をきれいにするため肺へ送り出します。
右心不全とは、この右心のポンプ機能が弱ってしまう状態です。 うまく血液を肺に送り出せなくなり、問題が起こります。
ポンプの力が弱まると、全身から戻るはずの血液が渋滞します。 この血液の渋滞を「うっ血」と呼び、体に様々な影響が出ます。
- 足のすねなどを指で押すとへこんだままになる(むくみ)
- お腹が張って苦しい
- 食欲がなくなる
右心不全は、心臓の左側の機能が落ちる左心不全に続いて、 起こることが多いとされています。
また、重い心臓病の治療で「左心室補助装置(LVAD)」という、 機械を使うことがあります。 ある研究では、この装置をつけた方の主な合併症が、 右心不全であったと報告されています。
特に、急に心臓の機能が悪化する「急性右心不全」は、 命に関わることもある深刻な状態です。 その場合、薬の治療だけでは不十分なこともあります。 機械で心臓の働きを助ける特別な治療が必要になることもあります。
右心不全の種類
右心不全は、症状の現れ方や進む速さによって、 主に2つの種類に分けられます。 この違いを理解することは、適切な治療につながります。
1. 急性右心不全
急に心臓の右側のポンプ機能が弱まり、 症状が突然現れる、とても危険な状態です。
主な原因は、肺の血管に血の塊が詰まる病気などです。 急な息切れや胸の痛み、血圧の低下などが起こります。 命に関わるため、一刻も早い治療が必要です。
急性右心不全は、命を落とす危険性も高い病気です。 そのため、薬だけでは治療が難しいことも少なくありません。
その場合、心臓の働きを助ける特別な機械を使うことがあります。 これは「機械的循環補助装置(RVAD)」と呼ばれるものです。 ある研究では、この治療で助かる方が6割以上いると報告されています。
2. 慢性右心不全
長い時間をかけて、ゆっくりと心臓の機能が弱まる状態です。 心臓の左側の不調(左心不全)や肺の病気が原因で起こります。
足のむくみや体のだるさといった症状が少しずつ現れます。 変化がゆっくりなため、ご自身では気づきにくいのが特徴です。
治療は、お薬で体にたまった余分な水分を減らします。 同時に、原因となっている病気の管理を続けることが大切です。
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種類
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発症の仕方
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主な原因
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特徴
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急性右心不全
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突然、急激に
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肺の血管が詰まる病気など
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命に関わるため緊急の治療が必要
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慢性右心不全
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ゆっくり、時間をかけて
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左心不全、肺の病気など
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症状に気づきにくいことがある
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右心不全の原因
右心不全は、何らかの理由で心臓の右側に負担がかかり、 ポンプの力が弱ってしまうことで起こります。
その原因は一つではなく、大きく3つに分けられます。 ご自身の生活と関わる病気がないか、確認してみましょう。
1. 心臓の病気が原因の場合
心臓の左側の機能が落ちる「左心不全」が、 最も多い原因とされています。 左側の不調のしわ寄せが、右側に来てしまうイメージです。
その他にも、心臓自体に問題が起こる病気があります。
- 心筋梗塞 心臓の筋肉に血液が届かなくなり、筋肉が壊れてしまう病気です。
- 心臓弁膜症 血液が逆流しないようにする「弁」がうまく働かない病気です。
- 心筋症、心筋炎 心臓の筋肉そのものに異常が起こる病気です。
また、重い心臓病の治療が、原因になることもあります。 ある研究では、左心の働きを助ける機械を取り付ける際に、 同時に弁の手術を行うとかえって右心不全のリスクを高める、 という可能性が報告されています。
2. 肺の病気が原因の場合
心臓の右側は、肺に血液を送る役目を担っています。 そのため、肺の病気は右心に直接、大きな負担をかけます。
- 急性肺塞栓症 足などにできた血の塊が、肺の血管に詰まる病気です。 急に右心に負担がかかり、命に関わる急性右心不全を起こします。 この病気は、心臓や血管の病気による死亡原因の、 上位に入るほど危険なものです。
- 肺高血圧症 肺の血管の圧力が、異常に高くなる病気です。
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD) 長年の喫煙などが原因で、肺の機能が落ちる病気です。
3. その他の病気や状態
心臓や肺以外にも、全身に影響する病気が原因となります。
これらのように、右心不全の原因は様々です。 もとになる病気を正確に見つけ、治療することが大切になります。
右心不全の症状
右心不全の症状は、血液の渋滞(うっ血)が原因で起こります。 心臓の右側に戻れなくなった血液が、全身にあふれてしまうのです。 この影響で体に余分な水分がたまり、様々なサインが出ます。 ご自身の体が出すSOSを見逃さないようにしましょう。
代表的な症状には、以下のようなものがあります。
- 足のむくみ(浮腫) 重力の影響で、特にすねや足の甲に水分がたまります。 指で5秒ほど押したときに、へこんだ跡が残るのが特徴です。
- 急な体重の増加 食事の量は同じなのに、2〜3日で1〜2kg増えることがあります。 これは脂肪ではなく、体の中にたまった水分の重さです。
- お腹の症状 血液の渋滞が肝臓や胃腸にまで及ぶと起こります。 お腹が張って苦しくなったり、食欲がなくなったりします。
- だるさ、疲れやすさ 全身に十分な血液が巡らないため、体が重く感じられます。 少し動いただけでも、ひどく疲れてしまうことがあります。
特に注意が必要なのは、突然症状が現れる場合です。 例えば、肺の血管に血の塊が詰まる「急性肺塞栓症」は、 突然の息切れや胸の痛みを引き起こし、命に関わります。 この病気は、心臓や血管の病気による死亡原因の上位に入るほど危険です。
また、重い心臓病の治療がきっかけになることもあります。 ある研究では、左心の働きを助ける機械(LVAD)を入れる前から、 弁の逆流がある方は、手術後に右心不全を起こしやすいと報告されています。
これらの症状に気づいたら、早めに医療機関へご相談ください。
右心不全の検査・診断
右心不全が疑われる場合、まずはお話を聞く問診から始めます。 いつから、どんな症状があるのかを詳しく教えてください。 そして、体を直接見る診察で、重要なサインを探します。 特に、足のすねのむくみや首の血管の張りは大切な所見です。
そのうえで、心臓の状態をくわしく調べる検査を行います。 これらの検査を組み合わせ、総合的に判断することが重要です。
【右心不全で行われる主な検査】
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検査の種類
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この検査でわかること
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胸部X線検査
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心臓の影が大きくなっていないか、肺に水がたまっていないかを確認します。
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血液検査
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心臓に負担がかかると増えるBNPというホルモン値を測り、心不全の程度を評価します。
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心電図検査
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心臓が発する電気信号を記録し、筋肉への負担やリズムの乱れ(不整脈)がないか調べます。
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心臓超音波検査(心エコー)
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心臓の部屋の大きさや壁の動き、ポンプ機能、弁の働きなどを直接映像で見る、診断の中心となる検査です。
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特に心臓超音波検査は、心臓の動きをリアルタイムで見られます。 心臓の中にある「三尖弁」というドアのしまりが悪いと、 血液が逆流してしまい、右心不全の原因になります。
重い心臓病の治療で、左心の働きを助ける機械(LVAD)を、 取り付ける手術をすることがあります。 手術前にこの三尖弁の逆流がどの程度あるかを調べることは、 手術後の経過を予測するうえで非常に重要です。 ある研究では、手術前に三尖弁の逆流が強いと、 手術後に右心不全を起こしやすいことが報告されています。
さらに、原因を詳しく調べるため、より精密な検査も行います。 CT検査やMRI検査、心臓カテーテル検査などです。 これらの結果から、一人ひとりに合った治療方針を立てます。 例えば、LVADの手術と同時に三尖弁の手術を行うと、 かえって右心不全のリスクを高める可能性も報告されています。 そのため、様々な検査で心臓の状態を正確に把握することが、 安全な治療のために何よりも大切なのです。
右心不全の治療
右心不全の治療は、弱ってしまった心臓の負担を軽くし、 体にたまった余分な水分を取り除くことが大きな目標です。 原因となっている病気や症状の重さに合わせて、 いくつかの方法を組み合わせて治療を進めていきます。
治療の基本となるのは、お薬を使った「薬物療法」です。 心臓の負担を減らし、つらい症状を和らげることを目指します。
- 利尿薬 おしっこを出しやすくするお薬です。 むくみの原因となる体の中の余分な水分や塩分を、 体の外に出すことで、心臓の負担を軽くします。
- 強心薬 心臓が血液を送り出す力を直接助けるお薬です。 ポンプの働きを応援し、血圧が低い場合などに使われます。
- 血管拡張薬 血液が通る道である「血管」を広げるお薬です。 血液の流れがスムーズになり、心臓の負担を減らします。
右心不全は、他の病気が原因で起こることが少なくありません。 そのため、もとになっている病気の治療がとても重要になります。 しかし、治療法の選択は時に難しい判断を迫られることもあります。
例えば、左心臓の働きを助ける機械(LVAD)を入れる手術の際、 同時に弁の不具合を直す手術を行っても、 右心不全の発生を必ずしも減らせるわけではない、 という研究報告もあり、治療方針は慎重に決められます。
お薬だけでは改善が難しい重症なケースもあります。 その場合は、より専門的な治療を検討します。
- 機械的循環補助(MCS) 急に状態が悪化した場合などには、 機械で一時的に心臓のポンプ機能を助ける治療法があります。 「右室補助人工心臓(RVAD)」という装置はその一つです。 ある研究では、この治療によって6割から8割以上の方が、 回復に向かうと報告されており、命を救う大切な治療です。
- 腎代替療法(透析) 腎臓の働きも悪化してしまった場合に検討します。 お薬では水分を十分に排出できない時に、 機械を使って直接、体から余分な水分を取り除きます。
どの治療法を選ぶかは、様々な検査結果から総合的に判断します。 「肺動脈拍動指数(PAPi)」のような専門的な指標も参考にしますが、 ひとつの数値だけで治療方針が決まるわけではありません。 患者さん一人ひとりの体の状態に合わせて、 最も良いと考えられる治療法を慎重に選んでいきます。