肺炎

私たちが毎日行う「呼吸」に関わる大切な臓器、肺。そこに細菌やウイルスが入り込み炎症を起こす「肺炎」は、決して他人事ではありません。体が疲れていたり、免疫力が低下していたりする時、誰もが発症する可能性があり、特に小さなお子さんやお年寄りは注意が必要です。

冬に流行するインフルエンザウイルスも肺炎の原因となり、重症化すると命にかかわるケースも。実際、65歳以上を対象とした研究では、特別なインフルエンザワクチンが通常のワクチンと比べて、インフルエンザ感染を約24%減らす効果が示されており、予防の重要性が浮き彫りになっています。

咳や痰、熱が続くなど「いつもと違う」と感じたら、それは肺炎のサインかもしれません。重症化を防ぐためにも、早めの受診が何よりも大切です。この記事では、肺炎の基礎知識から種類、原因、症状、そして適切な検査・治療法まで、あなたの健康を守るために知っておくべき情報を詳しく解説します。

ぜひこの記事を参考に、大切な体を守る一歩を踏み出しましょう。

肺炎の概要

肺炎は、私たちが毎日している「呼吸」に関わる大切な肺の病気です。息を吸う肺の奥にある、とっても小さな空気の袋(「肺胞」と言います)に、悪いばい菌が入って体が戦っている状態のことです。このばい菌は、空気中にいる細菌やウイルスなどが肺に入り込み、そこで増えることで肺炎が起こります。

特に、体が少し疲れていたり、病気と戦う力(「免疫力」と言います)が弱まっている人は、肺炎にかかりやすいので注意が必要です。例えば、小さなお子さんやお年寄りは、体がまだ弱かったり、守る力が落ちていたりするため、肺炎になりやすい傾向があります。

肺炎の原因となるばい菌はたくさんありますが、冬によく流行るインフルエンザウイルスもその一つです。インフルエンザにかかって、さらに肺炎になってしまうと、症状がとても重くなり、命にかかわる場合もあります。だからこそ、インフルエンザにかからないように予防することは、肺炎を防ぐためにもとても大切なのですね。

お医者さんたちは、どうすれば肺炎からみんなを守れるか、いつも研究しています。たとえば、世界中のたくさんのお医者さんたちが、65歳以上のお年寄り向けに、いつものインフルエンザワクチンよりもちょっと特別なワクチンが、どれくらい病気を防ぐのに役立つか、副作用はないか、を調べてくれました。この研究では、たくさんの病院のデータを使って、2020年の2月まで調べられています。

その研究によると、65歳以上のお年寄りが特別なインフルエンザワクチンを打つと、いつものワクチンと比べて、インフルエンザにかかるのを約24%も減らすことができたのです。さらに、インフルエンザや肺炎で入院する人を減らせる可能性も示されています。ただし、この特別なワクチンを打つと、注射したところが少し痛くなったり、腫れたりするほか、頭が痛くなったり、体がだるくなったりすることが、いつものワクチンより少し多いという報告もあります。

肺炎は、もし早く治療を始められないと、どんどん症状がひどくなってしまうことがあります。だから、もし咳や痰、熱が続くなど、いつもの風邪と違うと感じたら、お家の人に相談して、早めにお医者さんに見てもらいましょう。私たちのお医者さんは、皆さんの体の変化に早く気づき、適切な治療を始めることが、重い病気から体を守るために最も大切だと考えています。

肺炎の種類

肺炎は、肺の中に入り込む「悪いばい菌」の種類によって、いくつかのタイプに分けられます。私たちお医者さんは、患者さんの肺炎がどのタイプかを見極めて、一人ひとりに合った治療を選ぶことが大切だと考えています。

主な肺炎の種類は、次のとおりです。

  • 細菌性肺炎(さいきんせいはいえん)
  • 体の中にいる細菌が原因で起こる肺炎です。
  • 体が疲れて病気と戦う力(免疫力)が弱っている時や、
  • 高齢者の方、持病がある方によく見られます。
  • ウイルス性肺炎(ういるすせいはいえん)
  • インフルエンザウイルスや風邪の原因となるウイルスなどが原因です。
  • 特にインフルエンザウイルスによる肺炎は、高齢者の方や、
  • 心臓や肺に持病がある方だと重い症状になりやすいので注意が必要です。
  • このため、インフルエンザの予防接種は肺炎を防ぐ上でとても大切です。

世界中の専門家による詳しい調査では、特別なインフルエンザワクチンが、インフルエンザや肺炎が原因で入院する人を減らす効果も期待できることが示されています。これは、重い肺炎になるのを防ぎ、病院での治療を避ける助けになるということです。ただし、この特別なワクチンは、注射した場所の痛みや腫れ、頭痛などの症状が、通常のワクチンより少し多く出ることも報告されていますので、気になる場合はお医者さんに相談してください。

その他には、次のような肺炎もあります。

  • 誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)
  • 食べ物や唾液が誤って気管に入り、肺に炎症が起こる肺炎です。
  • 飲み込む力が弱くなってきた高齢者の方によく見られます。
  • 非定型肺炎(ひていけいはいえん)
  • マイコプラズマなど、特殊な細菌が原因で起こる肺炎です。
  • 若い世代にも見られることがあり、咳が長く続くのが特徴です。

このように肺炎には様々な種類があるため、ご自身の体調や生活状況に合わせて、どんな肺炎にかかりやすいのかを知り、心配な症状があれば早めにお医者さんに相談してください。

肺炎の原因

肺炎は、肺に炎症が起きることで、咳や熱、息苦しさを感じる病気です。この炎症は、様々な理由で発生します。

肺炎の主な原因は、体の中に悪いばい菌が入ってしまうことです。空気中にいる細菌やウイルス、カビなどが肺の奥深くに入り込み、そこで増えることで肺が炎症を起こします。風邪やインフルエンザのウイルスが長引いて、さらに肺炎につながることも少なくありません。

特に、飲み込む力が弱くなっている高齢者の方には、「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」という肺炎に注意が必要です。食べ物や飲み物、唾液が誤って気管に入り、それが肺に達して炎症を起こしてしまいます。

また、肺炎は、体全体に関わる他の病気が原因で起こることもあります。例えば、「結合組織病(けつごうそしきびょう)」という病気があります。これは、体中の細胞や組織をつなぎ合わせる「結合組織」という部分に、なぜか自分の免疫が攻撃してしまう病気です。

この結合組織病を持っている方の中には、肺に「間質性肺疾患(かんしつせいはいしっかん)」という特別な肺炎を合併しやすいことがわかっています。間質性肺疾患は、肺の空気の袋(肺胞)とその周りの組織が硬くなる病気です。

私たち医師が行った多くの研究から、結合組織病の種類によって、この間質性肺疾患が起きる確率は大きく違うことが分かっています。例えば、混合性結合組織病では約56%の方に、全身性強皮症では約47%の方に、関節リウマチでは約11%の方に見られます。

また、血液検査で特定の「抗体(こうたい)」という体のサインが見つかったり、体の中の「炎症マーカー」と呼ばれる数値が高い人は、間質性肺疾患になりやすい傾向があります。これは、体が炎症を起こしていることを示すサインです。

このように、肺炎の原因は一つではなく、年齢や体の状態、持病によって多岐にわたります。ご自身の肺炎がどのような原因で起こっているのかを知ることは、適切な治療を受けるためにとても大切です。私たちは、患者さん一人ひとりの状態を丁寧に診察し、最適な治療を見つけるお手伝いをしたいと考えています。

肺炎の症状

肺炎になると、体には普段と違うさまざまなサインが現れます。これらのサインに早く気づくことが、体を守るためにとても大切です。

まず、風邪と似たような症状が出ることが多いです。急に高い熱が出たり、咳が止まらなかったりします。咳は「コンコン」と乾いたものから、「ゴホンゴホン」と粘り気のある痰が絡むものまでさまざまです。

さらに、息苦しいと感じたり、胸に痛みを感じたりすることもあります。体がだるくて元気が出ない、食欲がないといった全身の症状も、肺炎のサインかもしれません。いつもの風邪と違うな、と感じることが大切です。

特に、お年寄りの方は、少し注意が必要です。肺炎になっても、熱があまり出なかったり、咳がひどくなかったりして、症状が分かりにくいことがあります。

その代わりに、なんとなく元気がなく、ぼんやりしているように見えたり、ご飯をなかなか食べようとしなかったりといった変化が見られることがあります。周りのご家族が、普段と違うと感じたら、すぐに私たち医師に相談してください。

肺炎の中には、少し特別なタイプもあります。たとえば、「結合組織病(けつごうそしきびょう)」という、体の免疫のバランスが崩れる病気を持っている方には、「間質性肺疾患(かんしつせいはいしっかん)」という肺炎が起こりやすいことがわかっています。

この間質性肺疾患の症状の現れ方は、持っている結合組織病の種類によってかなり違うことがわかっています。そのため、一つの病気として単純に捉えることはできません。

例えば、関節リウマチという病気では、息切れや、痰が出ない乾いた咳が主な症状として見られます。このように、肺炎の症状は一人ひとりの体の状態や持病によって本当にさまざまです。

私たち医師は、患者さんのどんな小さな変化も見逃さないよう、注意深く診察しています。もし、気になる症状があれば、どうか迷わず私たちに相談してください。

肺炎の検査・診断

肺炎は、肺に悪いばい菌が入り込んで炎症を起こす病気です。これを早く見つけて治療を始めることが、体を守るためにとても大切です。私たち医師は、皆さんのどんな小さな変化も見逃さないよう、丁寧に診断を進めます。

まず、医師は患者さんの体調について詳しくお聞きします。咳や熱、息苦しさなど、どんな症状があるか、いつから普段と違うと感じるかなどを伺い、肺炎の可能性を探ります。次に、聴診器を使って胸の音を確認し、普段の呼吸の音と比べて異常がないかを探します。

肺炎が疑われたら、さらに詳しい検査を行います。

  • 胸部エックス線検査(レントゲン検査):
  • 肺に炎症があるかどうか、白い影で確認します。
  • 血液検査:
  • 体の中で炎症がどのくらい進んでいるか、どんなばい菌が原因かを調べます。
  • 痰の検査:
  • 痰が出る場合は、その中にあるばい菌を特定します。

手術後に肺炎になることもありますが、研究によると麻酔の種類(全身麻酔か部分麻酔か)で肺炎のなりやすさは変わりません。しかし、全身麻酔では息が苦しくなることや、体中にばい菌が広がるリスクが少し高くなることがあります。

入院中に人工呼吸器を使っている患者さんには、「人工呼吸器関連肺炎」という特別な肺炎に注意が必要です。最近の研究では、人工呼吸器を外した後に呼吸を助ける方法を使うと、この肺炎や、再び人工呼吸器をつけ直す「再挿管」ということを減らせる可能性が示されています。

気になる症状があれば、どうか迷わずに私たちに相談してください。早期発見こそ、体を守る第一歩です。

肺炎の治療

肺炎になってしまった時、体を守るために「治療」はとても大切です。治療の方法は、肺炎の原因となっている悪いばい菌の種類や、病気の重さによって一人ひとり違います。私たち医師は、皆さんの体の状態をしっかり診て、一番合った治療を選んでいきます。

治療の基本的な考え方は、大きく分けて3つあります。

  • 悪いばい菌と戦うお薬
  • 肺炎の原因となっている細菌やウイルスに合わせた薬を使います。
  • 呼吸を助けるサポート
  • 息苦しさを感じる場合に、呼吸を楽にするお手伝いをします。
  • 体を休ませて回復する力
  • しっかり休んで、体が本来持っている治る力を高めます。

1. 悪いばい菌と戦うお薬

肺炎が細菌のせいで起きていると分かれば、私たちは「抗生物質」というお薬を使います。このお薬は、体の中の悪い細菌を退治してくれる力を持っています。ウイルスが原因の場合は、ウイルスを抑える薬を使うこともありますし、熱や咳などのつらい症状を和らげるお薬を使います。

私たちが新しい肺炎の薬を開発するとき、その薬がどれくらい早く、そしてたくさん悪いばい菌を減らせるか(「早期殺菌活性」と呼びます)を調べることはとても大切です。しかし、世界中の専門家が行った研究では、このばい菌を測る方法や報告の仕方にたくさんの種類があり、薬同士を比べるのが難しいと分かっています。だからこそ、私たち医師は、もっと公平に薬の効果を調べられるように、研究のやり方を統一していく必要があると考えています。

2. 呼吸を助けるサポート

肺炎で息が苦しい時は、酸素マスクを使って、体に必要な酸素を補給します。もし肺炎がとても重くて、自分の力だけでは息をするのが難しい場合は、「人工呼吸器」という機械で呼吸を助けることもあります。

人工呼吸器を使った後、機械を外して自分で息をできるようになっても、すぐに完全に安心というわけではありません。ある研究によると、集中治療室(ICU)で人工呼吸器を外した患者さんには、「非侵襲的呼吸補助(NRS)」という特別な機械を使った呼吸のサポートを続けると良いことが分かっています。このNRSは、鼻や口を覆うマスクなどで、体の中に管を入れずに呼吸を楽にする方法です。

このサポートを行うことで、もう一度人工呼吸器が必要になること(「再挿管」と言います)や、人工呼吸器が原因で起きる肺炎を減らす効果が期待できます。入院する期間も短くなる可能性があります。ただし、このNRSは、少し不快に感じることがあるという報告もあります。私たち医師は、患者さんの状態をよく見て、一番良い方法を一緒に考えていきます。

3. 体を休ませて回復する力

どんな治療も、皆さんの体が元気を取り戻すための土台がなければ効果が半減してしまいます。だから、肺炎の治療では、しっかり休むことがとても大切です。水分をこまめにとり、栄養バランスの取れた食事をすることで、体の回復力を高めます。

熱が高くてつらい時には熱を下げるお薬を、咳が止まらない時には咳を抑えるお薬を使い、皆さんが少しでも楽に過ごせるようにサポートします。私たちは、皆さんが安心して治療を受け、一日も早く元気になることを願っています。