ペルテス病

お子さんの足の痛みが長引いたり、歩き方が気になったりしていませんか。ペルテス病は、主に4歳から9歳の男の子に多く、股関節の骨への血流が一時的に途絶える病気です。発生頻度は1万人に1.5人ほどとされています。

この記事では、ペルテス病の原因や症状、治療法について詳しく解説します。特に、症状が長引く股関節痛のお子さんのうち36.3%が後にペルテス病を発症したというデータもあり、見過ごせないサインや診断のポイントも紹介します。

病気への正しい理解は、お子さんの将来の股関節機能を守るための第一歩といえます。本記事を読み進めることで、現在の状態を客観的に把握し、専門医と相談しながら適切な治療法を考えるための知識を得られます。

ペルテス病の概要

ペルテス病は、お子さんの股関節の付け根にある骨(大腿骨頭:だいたいこっとう)へ一時的に血液が届かなくなり、骨の一部が弱ってしまう病気です。

主に4歳から9歳(特に7歳前後)の、小柄で活発な男の子に発症しやすい傾向があります。発生頻度は1万人に1.5人ほどで、女の子に比べて男の子の発症率は4〜5倍高いとされています。

この病気は、時間とともに壊死した骨が自然に修復される「自己限定的疾患」に分類されます。しかし、何もしないでいると、骨が修復される過程で問題が起こります。

壊死によって弱くなった大腿骨頭は、体重がかかるとボールのように丸い形を保てずに潰れてしまうことがあります。そして、変形したまま固まってしまうと、将来的に股関節の痛みを引き起こしたり、動きが悪くなったりする「変形性股関節症」という後遺症につながる可能性があるのです。

そのため、治療における最大の目標は、骨が再生するまでの間、大腿骨頭が変形するのを最小限に食い止め、できるだけ元の球形を保つことにあります。

どのような治療法を選ぶかは、お子さんの年齢が重要な判断材料となります。近年の研究報告でも、年齢によって治療法の有効性が異なることが示唆されており、6.5歳未満の低年齢で発症した場合は保存的治療で、8歳以上で発症した場合は手術的治療で、それぞれ良好な結果が得られやすいと報告されています※。

ペルテス病の種類

ペルテス病は、病気の進行段階を示す「病期」と、骨の壊死範囲などから判断する「重症度」という2つの軸で分類します。

この分類は、お子さんの今の状態を正確に見極め、今後の治療方針を決めるための大切な羅針盤の役割を果たします。

ペルテス病は、骨が壊死してから再生するまで、数年の時間をかけてゆっくりと進行します。その経過は、主に以下の4つのステージ(病期)に分けられます。

病期 | 時期 | 大腿骨頭の主な状態

初期 | 滑膜炎期 | ・股関節に炎症が起きる ・レントゲン写真では異常が見つかりにくい

硬化期 | 壊死期 | ・血流が途絶えた部分の骨が硬くなる ・レントゲンで白く写って見える ・体重で骨頭が潰れ(扁平化)、変形しやすい最も注意が必要な時期

分節期 | 修復期 | ・壊死した骨に新しい血管が入り込む ・古い骨の吸収と新しい骨の形成が同時に起こる「工事中」の段階

再生期 | 遺残期 | ・新しい骨によって骨頭の形が固まる ・この時期の骨頭の形が将来の股関節の機能を左右する

これらの病期に加えて、骨頭の壊死がどのくらいの範囲に及んでいるか、どの程度潰れているかによって「重症度」も評価します。

こうした病期や重症度の分類、そして発症した年齢は、治療法を選ぶうえで非常に重要です。

実際に、複数の研究データを分析した報告では、6.5歳未満の低年齢で発症したお子さんは装具などを使う保存的治療で、8歳以上で発症したお子さんは手術による治療で、それぞれ良好な結果が得られやすいことがわかっています※。

とはいえ、どのような場合に手術を選ぶべきかについては、専門家の間でもまだ議論が続いているのが現状です。

そのため、現在も外科的治療と非外科的治療のどちらがより良い結果をもたらすかを明らかにするための比較研究が進められています※。

治療法を選ぶ際は、これらの分類や年齢だけでなく、個々のお子さんの状態を総合的に判断することが何よりも大切になります。

ペルテス病の原因

ペルテス病のはっきりとした原因は、まだわかっていません。

しかし、股関節の付け根にある骨(大腿骨頭:だいたいこっとう)への血流が悪くなることが、病気の引き金になると考えられています。

栄養や酸素が届かなくなった骨は、一部が壊死(えし)してもろくなり、強度が低下します。その結果、歩いたり走ったりする日常的な動作で体重がかかるだけで、ボールのように丸い形を保てずに潰れてしまうことがあるのです。

なぜ特定のお子さんで血流が悪くなるのか、その根本的なメカニズムについては、現在も世界中で研究が続けられています。

また、ペルテス病の発症には、別の病気が関わっている可能性も指摘されています。

お子さんが急に股関節を痛がる「股関節一過性滑膜炎(こかんせついっかせいかつまくえん)」という病気があります。これは、風邪などをきっかけに発症することが多い一時的な股関節の炎症で、多くは自然に治ります。

しかし、この股関節一過性滑膜炎の症状が長引いたり、何度も痛みを繰り返したりする場合には、特に注意が必要です。

実際に複数の研究データを分析した報告によると、症状が長引く、あるいは再発する股関節一過性滑膜炎のお子さんのうち、実に36.3%がペルテス病を発症していたとされています※。

この数値は、症状がすぐに治まる一般的なケース(2.7%)と比べても著しく高く、見過ごすことのできない重要なサインといえます※。

そのため、お子さんの足の痛みがなかなか治らない、または一度良くなってもぶり返すような場合は、「よくあること」と自己判断せずに、必ず小児整形外科などの専門医に相談するようにしてください。

ペルテス病の症状

ペルテス病の最も特徴的な症状は、股関節の痛みと、痛みをかばうことで生じる「跛行(はこう)」と呼ばれる足を引きずる歩き方です。

しかし、痛みは数カ月かけてゆっくりと現れることが多く、お子さんによっては痛みをはっきりと訴えず、「歩き方がおかしい」という見た目の変化だけで保護者の方が気づくことも少なくありません。

お子さんの様子に、以下のようなサインがないか注意深く観察してみてください。

・歩き方の変化:痛い方の足に体重をかける時間が短くなり、びっこを引くように歩く。

・痛み:股関節だけでなく、太ももや膝にだけ痛みを感じることがあります。これは「関連痛」と呼ばれる現象で、股関節の異常が、脳への信号の通り道が近い別の場所の痛みとして感じられるために起こります。

・動きの制限:股関節の動きが悪くなり、特に足を開いたり(開排制限)、内側にひねったり(内旋制限)する動作がしにくくなります。

お子さんが急に股関節を痛がる場合、多くは「股関節一過性滑膜炎」と診断されます。これは「股関節の風邪」のようなもので、通常は安静にしていれば自然に良くなります。

しかし、この症状が長引いたり、一度治ったのに痛みを繰り返したりする場合は、ペルテス病の可能性を考える必要があります。

実際に、症状が長引く、あるいは再発する股関節一過性滑膜炎のお子さんのうち、実に36.3%が後にペルテス病を発症していたという研究報告があります※。これは、症状がすぐに改善する一般的なケース(2.7%)と比べて著しく高い数値であり、見過ごすことのできない重要なサインといえます※。

病気が進行すると、骨の変形や成長への影響から、患側の足が少し短くなったり、あまり使わないことで太ももの筋肉が細くなったりすることもあります。

「また痛くなっただけ」「よくあること」と自己判断せず、お子さんの歩き方や痛みの訴えに少しでも気になる点があれば、必ず小児整形外科などの専門医に相談してください。

ペルテス病の検査・診断

ペルテス病の診断は、問診や診察でお子さんの状態を丁寧に把握し、レントゲンやMRIといった画像検査で骨の状態を詳しく調べることで、総合的に判断します。

まず、お子さんの症状や痛みの経緯を詳しくお伺いし、股関節の動き、特に足を開いたり内側にひねったりする動作(開排・内旋制限)がスムーズにできるかを確認します。

診断の中心となるのは画像検査です。レントゲン検査とMRI検査を使い分けることで、病気の状態を正確に捉えることができます。

検査方法 | 目的と特徴

レントゲン検査 | ・骨の形や硬さの変化を調べる基本的な検査 ・大腿骨頭の変形や扁平化、硬化(白く写る)の有無を確認します。 ・ただし、病気の初期段階では異常が見られないこともあります。

MRI検査 | ・レントゲンでは見えない骨内部の状態を詳しく調べる検査 ・骨への血流が途絶えている範囲(壊死の広がり)を正確に把握できます。 ・病気の早期発見や、重症度を判断するために不可欠です。

これらの検査と並行して、最も注意を払うのが「股関節一過性滑膜炎(単純性股関節炎)」との鑑別です。

股関節一過性滑膜炎は「股関節の風邪」のようなもので、安静にしていれば自然に治ることがほとんどです。しかし、この症状が長引いたり、一度良くなっても痛みを繰り返したりする場合は、ペルテス病が隠れている可能性を強く疑う必要があります。

実際、症状が長引く、あるいは再発する股関節一過性滑膜炎のお子さんのうち、実に36.3%が後にペルテス病を発症していたという衝撃的な研究報告があります※。これは、症状がすぐに治まる一般的なケース(2.7%)と比べて格段に高い数値です※。

この事実から、専門家の間では、症状が持続的または再発するお子さんに対して、6週間後にレントゲンで再検査を行うことが推奨されています※。

「また痛くなっただけ」と自己判断せず、症状の経過を慎重に見守ることが、ペルテス病の早期発見・早期治療には何よりも大切です。

このほか、必要に応じて血液検査や超音波検査を行い、化膿性股関節炎や若年性リウマチといった他の病気の可能性も除外しながら、最終的な診断に至ります。

ペルテス病の治療

ペルテス病の治療における最大の目標は、弱くなった大腿骨頭の変形を最小限に抑え、将来にわたって良好な股関節機能を維持することです。治療の柱は、手術をしない「保存的治療」と、手術を行う「手術的治療」の2つに大別されます。

しかし、「どちらの治療法が絶対的に優れている」という画一的な答えは、まだ出ていないのが現状です。実際に、外科的治療と非外科的治療のどちらがより良い結果をもたらすかを明らかにするため、現在も世界中で比較研究が進められています※。

そうした中で、治療方針を決めるうえで最も重要なカギを握るのが、発症したときのお子さんの年齢です。複数の研究データを分析した報告でも、年齢によって治療法の有効性が異なることが示唆されています。

・6.5歳未満で発症した場合:装具などを用いる保存的治療で良好な結果が得られやすい

・8歳以上で発症した場合:手術による治療の方が比較的良好な結果をもたらす

これは、一般的に年齢が低いほど骨が自ら再生・修復する能力が高いためと考えられています※。

保存的治療

保存的治療の基本は、骨が修復されるまでの間、大腿骨頭に体重をかけないこと(免荷)と、骨頭を正しい位置に保つこと(コンテイメント)です。

具体的には、特殊な装具を使ったり、入院して足を引っ張る「牽引(けんいん)」を行ったりします。これにより、骨頭が骨盤の受け皿である臼蓋(きゅうがい)にすっぽりと収まった状態を保ち、できるだけきれいな球形に再生するよう導きます。

手術的治療

骨の変形が強い場合や、8歳以上など比較的高齢で発症した場合に検討されます。代表的な手術は、大腿骨や骨盤の骨を切って角度を変え、骨頭が臼蓋にしっかりと収まるようにする「骨切り術」です。

また、近年は体への負担が少ない関節鏡を用いた手術も進歩しています。

例えば、ペルテス病の進行に伴って股関節に嚢胞(のうほう)という袋状の病変ができてしまうことがありますが、これに対して関節鏡を使いながら骨を移植する手術で、良好な結果が得られたとの報告もあります※。

治療法を選ぶ際は、こうした年齢や病気の進行度に加え、骨頭の壊死がどのくらいの範囲に及んでいるかなどを総合的に評価し、慎重に方針を決定します。お子さんの将来の股関節機能を守るためにも、専門医とよく相談し、納得のいく治療計画を立てることが重要です。