40歳以下の突然死、その原因の約2割が「心筋炎」という病気に関係していることをご存知でしょうか。心筋炎は心臓の筋肉に炎症が起きる病気で、多くはウイルス感染をきっかけに発症します。初期症状が風邪や胃腸炎とよく似ているため、見過ごされてしまうことも少なくありません。
しかし、息切れや胸の痛みといった心臓からのSOSサインが現れ、数時間で命に関わる「劇症型」に悪化する危険性も潜んでいます。実際、心筋梗塞が疑われた患者の約3割は急性心筋炎だったという研究報告もあり、誰にでも起こりうる身近で危険な病気なのです。
この記事では、心筋炎の知られざる原因や見逃してはいけない症状、そして最新の治療法について詳しく解説します。ご自身の体調と照らし合わせながら、ぜひ最後までご覧ください。
心筋炎の概要
心筋炎とは、心臓を動かしている筋肉(心筋)に炎症が起きてしまう病気です。心臓は、血液を全身に送り出すポンプの役割をしています。心筋に炎症が起きると、このポンプの働きが悪くなります。
その結果、血液をうまく送り出せなくなる「心不全」や、脈が乱れる「不整脈」などを引き起こすことがあります。症状は、軽い胸の痛みや息切れだけのこともあります。しかし、急に悪化して命に関わる場合もあるため注意が必要です。
特に、急激に症状が進む「劇症型心筋炎」という状態になると、突然死に至ることもあります。実際に40歳以下の突然死の原因のうち、約20%は心筋炎が関係しているといわれています。
原因の多くはウイルス感染ですが、細菌や薬、あるいはトキソプラズマのような原虫の感染でも起こります。免疫力が正常な人でも、これらの感染が原因で重い病気になる可能性があり、命を落とすこともまれに報告されています。
多くの場合、心筋炎は数週間で回復に向かいます。しかし、一部は長引いてしまうこともあります。このように、心筋炎は誰にでも起こりうる病気です。原因がはっきりしない重い病気の場合には、心筋炎も考えられるため、迅速な診断と治療の開始がとても重要になります。
心筋炎の種類
心筋炎と一言でいっても、実はいくつかの種類に分けられます。どの種類の心筋炎かによって、治療の方法や病気の進み方が異なります。そのため、正確に診断することがとても重要になります。
心筋炎は、主に「病気が進むスピード」と「原因」の2つの視点で分類されます。
病気が進むスピードによる分類
病気の症状が現れてから悪化するまでの時間で分けられます。
- 風邪のような症状が出た後、数日から数週間で心臓の症状が現れる、最も一般的なタイプです。多くは数週間で回復に向かいます。
- 症状が数時間から数日の単位で急激に悪化し、命の危険がある状態です。心臓のポンプ機能が極端に低下するため、迅速な対応が求められます。
- 心臓の筋肉の炎症が数ヶ月以上にわたって長く続きます。心臓の機能が徐々に低下していき、心不全が進行することがあります。
原因による分類
何が原因で心臓の筋肉に炎症が起きているかによっても分けられます。
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分類
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主な原因の例
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感染性
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・ウイルス(インフルエンザ、新型コロナウイルスなど)
・細菌
・原虫(トキソプラズマなど)
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非感染性
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・薬剤(がん治療薬など)
・全身の病気(関節リウマチなどの膠原病)
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原因が特定できないことも少なくありません。例えば、トキソプラズマという寄生虫は、加熱が不十分な肉を食べることで感染し、心筋炎を引き起こすことがあります。
心筋梗塞のような胸の痛みで病院を受診した方を詳しく調べると、約3割は急性心筋炎だったという研究報告もあります。このように、心筋炎は様々な顔を持っているため、原因を突き止めることが適切な治療への第一歩となります。
心筋炎の原因
心筋炎は、さまざまなことがきっかけで心臓の筋肉に炎症が起きる病気です。その原因の中で最も多いのは、ウイルスへの感染です。
風邪の原因となるウイルスやインフルエンザウイルスが代表的です。喉の痛みや咳、発熱といった普段よく経験する症状から始まることもあります。
しかし、心筋炎の原因はウイルスだけではありません。以下のように、感染症からお薬まで、さまざまな原因が知られています。
- 細菌が原因になることもあります。また、トキソプラズマという小さな寄生虫も原因の一つです。十分に火を通していないお肉を食べたり、殺菌処理されていない水を飲んだりすることで感染する可能性があります。健康で免疫力が十分にある人でも、特殊なタイプのトキソプラズマが原因で重い心筋炎になり、命に関わることもあるため注意が必要です。
- 一部のがん治療で使うお薬や、特定のワクチンがきっかけで心筋炎が起こることも報告されています。
- 関節リウマチなど、体の中で広く炎症が起こる病気の一つの症状として、心筋炎が現れることもあります。
このように心筋炎の原因は多岐にわたります。そのため、検査をしても原因がはっきりとわからない場合も少なくありません。
心筋炎の症状
心筋炎の症状は、軽い風邪のようなものから命に関わるものまで、非常に幅広いです。症状がほとんどない方もいれば、数日のうちに急激に悪化する方もいます。
心臓の症状が出る1〜2週間ほど前に、風邪や胃腸炎によく似た症状(前駆症状)が現れることがあります。これは、ウイルスなどが体に入ってきたサインです。
- 発熱、せき、のどの痛み
- 筋肉や関節の痛み
- 体がだるい、疲れやすい
- 吐き気、おう吐、下痢
その後、心臓の筋肉に炎症が広がると、心臓からのSOSサインとして次のような症状が現れます。ご自身の体調をチェックしてみましょう。
【心筋炎の主な症状チェックリスト】
- 心臓のポンプ機能が弱まり、体を動かしたときに特に息苦しく感じます。
- 胸が締め付けられるような痛みや、深呼吸で痛みが強くなることがあります。
- 脈が乱れる「不整脈」が原因で、脈が速くなったり飛んだり、意識が遠のいたりします。
- 心不全が進むと、足などに水分がたまり、むくみやすくなります。
健康で免疫力が十分にある方でも、重い心筋炎になる可能性はあります。例えば、トキソプラズマという寄生虫が原因となることがあり、これは加熱が不十分な肉を食べることなどで感染します。免疫力が正常な方でも、これが原因で命に関わる重い心筋炎が起こることが報告されています。
症状が急速に悪化し、血圧が下がってショック状態になる「劇症型心筋炎」という危険な状態になることもあります。風邪が長引く中で胸の症状が出てきた場合は、「ただの風邪」と自己判断せず、早めに医療機関を受診してください。
心筋炎の検査・診断
心筋炎が疑われる場合、風邪の症状や胸の痛みなど、詳しいお話をお伺いすることから診察が始まります。そのうえで、心臓の状態を正確に把握するために、いくつかの検査を組み合わせて診断を進めます。
主な検査には、以下のようなものがあります。
- 体の中で炎症が起きていないか、また心臓の筋肉が傷ついたときだけ血液中に出てくる特別な物質(心筋バイオマーカー)が増えていないかを調べます。
- 心臓が動くときに出す微弱な電気信号を記録します。これにより、脈が乱れる「不整脈」が起きていないか、心筋梗塞と似た波形の変化がないかなどを確認します。
- 超音波を使って、心臓の大きさや筋肉の動きをリアルタイムの映像で観察します。心臓のポンプ機能が弱っていないかを直接見ることができる、とても重要な検査です。
これらの基本的な検査に加えて、より詳しく調べるために次のような検査を行うことがあります。
- 磁気の力を利用して、心臓の断面を詳しく撮影します。心臓の筋肉が炎症でむくんでいる様子などを画像で捉えることができ、診断に非常に役立ちます。
- 実際、胸の痛みなどで心筋梗塞が疑われたものの、心臓の血管に異常がなかった方を詳しく調べた研究があります。
- この研究では、心臓MRI検査を行うことで74%の方で病気の原因が特定され、そのうち最も多かったのが急性心筋炎(29%)であったと報告されています。
- 診断を確定させるために、カテーテルという細い管を心臓まで進め、心臓の筋肉のごく一部を採取して顕微鏡で詳しく調べる検査です。
- 炎症の種類を特定し、治療方針を決めるための重要な情報が得られます。
これらの検査結果を総合的にみて、心筋炎かどうか、またどのような種類の心筋炎かを判断し、一人ひとりに合った治療計画を立てていきます。
心筋炎の治療
心筋炎の治療で最も大切な目標は、症状が悪化しやすい急性期を安全に乗り越えることです。そのため、心筋炎と診断された場合は入院し、心臓を休ませることが基本となります。
入院中は心電図モニターなどで心臓の動きを常に確認します。心不全や危険な不整脈といった変化にすぐ対応できるように備えます。治療は主に、今出ている症状を和らげる「対症療法」が中心です。
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症状や状態
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主な治療法
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心不全
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心臓のポンプ機能が弱り、体に余分な水分がたまっている状態です。尿の量を増やす「利尿薬」や、心臓の負担を軽くする「血管拡張薬」などを使います。
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不整脈
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脈が乱れる不整脈には、「抗不整脈薬」を投与します。また、一時的に心臓のリズムを整える「ペースメーカー」を入れることもあります。
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原因に対する治療
原因がはっきりしている場合は、それに対する治療も行います。例えば、特定の細菌感染が原因の場合、「トリムメトプリム・スルファメトキサゾール」などの抗菌薬が有効なことがあります。この薬を含む治療が死亡率の低下と関連するという研究報告もあります。
一方で、原因がウイルスの場合は、効果が確立された薬は少ないのが現状です。体の過剰な免疫反応を抑えるための治療を行うことがあります。
重症の場合
「劇症型心筋炎」のように重症で、お薬だけでは心臓の機能を維持するのが難しい場合もあります。その際は、特別な機械で一時的に心臓の働きを助ける「補助循環」という治療が必要です。心臓のダメージが非常に大きい場合は、補助人工心臓や心臓移植も検討されます。