ひどい便秘やお腹の張りに、長年悩まされていませんか。その不調、単なる体質だと諦めてしまうのは危険かもしれません。実はその背後には、大腸が異常に膨らんでしまう「巨大結腸症」という病気が隠れている可能性があります。
巨大結腸症には、約5000人に1人の割合で発生する先天性のものから、他の病気や薬が原因で起こる後天性のものまで様々です。ある研究では、手術をしても最大3分の1の方に不調が残るとも報告されており、決して軽視できない病気です。
この記事では、巨大結腸症の詳しい原因や種類、そして最新の治療法までを分かりやすく解説します。ご自身の症状と照らし合わせ、正しい知識を得るための一歩としてお役立てください。
巨大結腸症の概要
私たちの体の中にある大腸は、便を肛門まで運ぶ大切な役割を担っています。 これは大腸が「ぜん動運動」という、うねうねと波打つような動きをするためです。
しかし、何らかの原因でこの動きが鈍くなると、便やガスがうまく排出されません。 その結果、大腸の中に便などがたまり、風船のように大きく膨らんでしまいます。 この状態が「巨大結腸症」です。
原因は、大きく2つのタイプに分けられます。
- 病気や薬の副作用など、生まれた後の原因で起こるタイプです。
先天性の代表的な病気に「ヒルシュスプルング病」があります。 これは、大腸の動きをコントロールする神経が生まれつきない病気です。 約5000人に1人の割合で発生し、重度の便秘や腸閉塞を引き起こします。
現在の主な治療法は手術ですが、手術後も課題が残ることがあります。 ある研究では、手術を受けた方の最大3分の1が、胃腸の不調を抱え続けると報告されています。 そのため、細胞移植など、より根本的な治療法の開発が世界中で進められています。
巨大結腸症の種類
巨大結腸症は、原因や大腸が大きくなる速さによって、いくつかの種類に分けられます。 正しく自分の状態を知ることが、治療への大切な一歩になります。
主に、次の4つのタイプに分類されます。
- 先天性巨大結腸症 生まれつき、大腸の動きを操る神経の働きに問題があるタイプです。 代表的な病気に「ヒルシュスプルング病」があります。
- 後天性巨大結腸症 生まれた後に、他の病気や薬の影響で大腸の動きが悪くなるタイプです。 原因となる病気の治療が重要になります。
- 中毒性巨大結腸症 腸の強い炎症が原因で、急に大腸が膨らんでしまう危険な状態です。 命に関わることもあるため、すぐに医療機関での対応が必要です。
- 特発性巨大結腸症 詳しい検査をしても、はっきりとした原因が見つからないタイプです。
また、巨大結腸症は、他の病気の一つの症状として現れることもあります。 例えば、大腸の壁にできた小さなくぼみ(憩室)が、風船のように大きく膨らんでしまう「巨大結腸憩室」という珍しい状態があります。
さらに、特に成人の場合、大きく膨らんだ大腸が肺の下にある横隔膜を押し上げてしまうことがあります。 この状態を「横隔膜挙上」と呼び、息苦しさなど呼吸の症状を引き起こす原因にもなります。 このように、巨大結腸症には様々な種類があり、原因や緊急性が異なります。
巨大結腸症の原因
巨大結腸症がなぜ起こるのか、その原因は大きく2つに分けられます。 生まれつきの「先天性」と、生まれた後の「後天性」です。 それぞれ詳しく見ていきましょう。
先天性の原因
生まれつきの原因で最も代表的なのが「ヒルシュスプルング病」です。 これは、大腸の動きをコントロールする神経の細胞が、生まれつきない病気です。
神経がない部分は、便を送り出すための「ぜん動運動」ができません。 そのため、便やガスがたまってしまい、重い便秘や腸閉塞を引き起こします。
治療には手術が必要ですが、手術後も課題が残ることがあります。 ある研究では、手術を受けた方の最大3分の1が、胃腸の不調を抱え続けると報告されています。
後天性の原因
生まれた後に起こる原因は、非常にさまざまです。 何がきっかけになっているか、正確に調べることが治療の第一歩になります。
- 腸の病気 潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症が原因となることがあります。 また、大腸の壁にできた小さなくぼみ(憩室)の炎症も原因の一つです。
- 全身の病気 糖尿病や甲状腺の病気、パーキンソン病など、腸以外の病気が影響することもあります。
- その他の原因 一部の薬の副作用や、お腹の手術がきっかけになることもあります。 詳しい検査をしても、はっきりとした原因が見つからない場合もあります。
巨大結腸症の症状
巨大結腸症になると、お腹の不調から全身に及ぶサインが現れます。 大腸が大きく膨らむことで、便やガスがうまく外に出せなくなるためです。 自分で気づきやすい、お腹の代表的な症状から見ていきましょう。
- お腹がパンパンに張って苦しい 便やガスがたまり、風船のように膨らんだ大腸が周りを圧迫します。
- ひどい便秘が続く 大腸の動きが悪くなっているため、便をうまく送り出せません。
- お腹の痛み 腸が無理に伸びたり、炎症が起きたりすることで痛みを感じます。
- 吐き気や、実際に吐いてしまう 腸にたまったものが逆流し、気持ち悪さや嘔吐につながります。
これらの症状は、体が送る大切なSOSサインです。 状態が悪化すると、お腹だけでなく全身に症状が広がることもあります。 例えば、腸の壁から菌や毒素が体の中に入り、熱が出たりします。
特に、強い炎症をともなう「中毒性巨大結腸症」は危険な状態です。 急激な腹痛や高熱、脱水などが起こり、命に関わることもあります。 重症化すると、腸に穴が開いてしまう(腸管穿孔)危険もあります。
また、巨大結腸症の症状は、原因によって現れ方が異なります。 ある研究では、憩室炎のように原因となる病気によって症状の範囲が広がり、診断が難しくなる場合があると報告されています。 いつもと違うお腹の不調や、気になるサインが続く場合は、自己判断せずに専門の医療機関に相談することが大切です。
巨大結腸症の検査・診断
巨大結腸症が疑われる場合、まずはお腹の中で何が起きているか調べます。 原因を正確に突き止めることが、適切な治療への大切な第一歩です。 いくつかの検査を組み合わせて、慎重に診断を進めていきます。
詳しい検査内容は、主に次のとおりです。
- 画像検査(レントゲン検査、CT検査) まずはお腹の写真を撮り、大腸が異常に膨らんでいないか確認します。 ガスがどれくらいたまっているかなど、お腹全体の様子を把握します。 体を輪切りにしたような詳しい画像が見られるCT検査も有効です。
- 注腸造影検査 おしりからバリウムというお薬を入れ、大腸の形を詳しく見る検査です。 腸が狭くなっている部分や、動きが悪い部分がないかなどを調べます。
- 大腸内視鏡検査 おしりから細いカメラを入れ、大腸の内側を直接観察する検査です。 炎症の有無を確認したり、原因を特定するために腸の壁の一部を採って調べます。
- 血液検査 体の中で炎症が起きていないか、栄養状態などを確認するために行います。 全身の状態を把握するための大切な検査です。
これらの検査で原因を特定し、一人ひとりに合った治療方針を決定します。 特に生まれつきの病気などで手術が必要と判断された場合、施設選びも重要です。
ある研究では、技術的に似ている大人の大腸の手術において、年間の手術件数が多い施設の方が治療成績が良い傾向にあると報告されています。 そのため、正確な診断に基づいて、適切な治療を受けられる施設を選ぶことが大切です。
巨大結腸症の治療
巨大結腸症の治療は、原因や症状の重さに合わせて慎重に選びます。 大きく分けて、まずは手術をしない方法から試すのが一般的です。 状態が改善しない場合や、緊急時には手術を検討します。
手術をしない「保存的治療」
保存的治療の目的は、まず大きく膨らんだ腸を休ませることです。 体力を回復させながら、腸への負担をできるだけ減らしていきます。
- 絶食と点滴 食事を一時的にお休みし、口から食べ物が入らないようにします。 その間、必要な水分や栄養は点滴でしっかりと体に補給します。
- ガスや便の排出 お腹にたまって苦しい原因のガスや便を、体の外に出します。 鼻やおしりから細くて柔らかいチューブを入れ、優しく吸い出します。
- 原因の治療 感染症や腸の炎症など、巨大結腸症の原因となっている病気があれば、 その治療も並行して進めていきます。
手術をする「外科的治療」
保存的治療で良くならない場合や、腸に穴が開く危険があるときは手術を考えます。 生まれつきの「ヒルシュスプルング病」も、手術が主な治療法となります。
手術の方法には、患者さんの負担が少ない選択肢があります。
- 腹腔鏡(ふくくうきょう)手術 お腹に数か所、小さな穴を開けて行う手術です。 そこからカメラや細い道具を入れ、お腹の中を見ながら治療します。 ある研究では、手術後に食事が始まるまでの時間が短い傾向が示されています。
- ロボット支援手術 医師がロボットアームを操作して行う、より精密な手術です。 出血量が少ないという報告がある一方で、入院費用が高くなる傾向もあります。 どちらも安全な治療法ですが、明確な優位性はまだ確立されていません。
どの治療を選ぶかは、一人ひとりの状態によって異なります。 例えば、技術が似ている大人の腸の手術では、年間の手術件数が多い施設ほど治療成績が良い傾向があると報告されています。 担当の医師とよく相談し、納得のいく治療法を選ぶことが大切です。