胎便吸引症候群

出産を控え、赤ちゃんと会える日を心待ちにしていることでしょう。しかし、お腹の中の赤ちゃんが自分のうんち(胎便)を吸い込んでしまい、呼吸が苦しくなる「胎便吸引症候群」という病気があるのをご存知でしょうか。

すべてのお産の約4〜22%で羊水が胎便で濁ることがあり、決して稀なことではありません。特に妊娠期間が長くなるとリスクは高まり、妊娠41週では発症率が4.8%に達するという報告もあります。不安に感じるかもしれませんが、正しい知識を持つことが大切です。

この記事では、胎便吸引症候群の詳しい原因や症状、そして最新の治療法について解説します。大切な赤ちゃんを守るために、万が一の時に備えておきましょう。

胎便吸引症候群の概要

赤ちゃんがお腹の中にいるとき、羊水という水に包まれています。 この羊水に赤ちゃんのうんち(胎便)が混ざってしまうことがあります。 それを赤ちゃんが吸い込むと、呼吸が苦しくなるのが胎便吸引症候群です。 主に、予定日近く(妊娠37週〜42週未満)に生まれる赤ちゃんに起こります。

すべてのお産の約4〜22%で羊水が胎便で濁ることがあります。 しかし、実際にこの病気を発症するのは、その中の3〜12%程度です。 人種による違いもあり、アフリカ系やアジア系の方で少し多いとされます。

妊娠期間が長くなるほど、発症率は高くなる傾向にあります。

  • 妊娠38週
  • 発症する確率は1.3%です。
  • 妊娠41週
  • 発症する確率は4.8%まで上がります。

このように、お産が予定日を過ぎるとリスクが上がるため、 お母さんと赤ちゃんの状態を見て、計画的にお産を進めることがあります。 ある研究では、計画的なお産が胎便吸引症候群などのトラブルを、 減らす可能性があると報告されています。

幸い、近年の周産期医療の進歩は目覚ましいものがあります。 そのため、先進国ではこの病気を発症する赤ちゃんの数は減ってきています。

胎便吸引症候群の種類

胎便吸引症候群と一言でいっても、赤ちゃんにあらわれる症状はさまざまです。 基本的には、呼吸の状態によって3つの段階に分けられます。

赤ちゃんの状態を正しく見極め、適切な治療を選ぶことがとても大切です。

種類(重症度)

赤ちゃんの主な状態

軽症

・呼吸が少し速い程度です。

・保育器の中で様子を見たり、少し酸素を補ったりすることで自然に良くなることが多いです。

中等症

・呼吸が苦しそうで、胸をへこませる「陥没呼吸」が見られます。

・人工呼吸器という機械で呼吸を助ける治療が必要になることもあります。

重症

・重い呼吸困難があり、体に十分な酸素を取り込めません。

・肺の血管がうまく広がらない合併症を起こすことがあります。

・より専門的な治療が必要になります。

このように赤ちゃんの状態はさまざまですが、 そもそも病気が起こるリスクを減らすための研究も進んでいます。

ある研究では、お母さんが少し体重が多め(肥満)の場合、 自然に陣痛が来るのを待つよりも、計画的にお産を進めるほうが、 胎便吸引症候群などのトラブルを減らせる可能性が報告されています。

胎便吸引症候群の原因

赤ちゃんがお腹の中で苦しい状態になることが、一番の原因です。 これは専門的に「低酸素状態」といい、酸素が足りない状態を指します。

では、なぜ赤ちゃんが苦しくなると、うんちを吸ってしまうのでしょうか。 赤ちゃんの体の中では、次のようなことが順番に起こっているのです。

  1. ストレスで腸が動く 酸素が足りなくなると、赤ちゃんはとても強いストレスを感じます。 そのストレスへの反応で、腸の動きが普段より活発になります。
  2. おしりの筋肉がゆるむ 腸の動きが活発になると、おしりの筋肉が自然とゆるんでしまいます。 その結果、お腹のなかでうんち(胎便)が出てしまうのです。
  3. あえぐような呼吸をする 苦しさから、赤ちゃんは息をしようとあえぐような呼吸をします。 この時に、うんちが混ざってしまった羊水を肺に吸い込んでしまいます。

吸い込まれたうんちは、赤ちゃんの肺で2つの悪いことをします。 一つは、空気の通り道である気道を物理的にふさいでしまうことです。 もう一つは、うんちの成分が肺の中で炎症を起こすことです。

赤ちゃんがこのような苦しい状態に陥りやすい状況は、いくつかあります。

  • 出産予定日を大きく過ぎてしまった
  • お母さんから酸素を送る「胎盤」の働きが弱っている
  • 赤ちゃんの命綱である「へその緒」が圧迫されている

また、お母さんの状態が影響することもあります。 ある研究では、お母さんの体重が少し多め(肥満)の場合、 自然に陣痛が来るのを待つよりも計画的にお産を進めるほうが、 胎便吸引症候群のリスクを減らせる可能性が報告されています。

胎便吸引症候群の症状

生まれたばかりの赤ちゃんが息苦しそうにしているのは、とても心配ですよね。 胎便吸引症候群の症状は、主に呼吸にあらわれます。 生まれてすぐに見られる、赤ちゃんからのSOSサインを知っておきましょう。

<呼吸でわかるSOSサイン>

  • 呼吸が速くなる
    肩で息をするように、ハッハッと浅く速い呼吸をします。
  • うめき声を出す
    息を吐くたびに「うーん」とうなるような声を出すことがあります。
  • 顔色が悪くなる(チアノーゼ)
    血液の中の酸素が足りなくなり、くちびるや皮膚が青紫色になります。
  • 胸がペコペコへこむ
    息を吸うたびに、胸の中心あたりがへこむ「陥没呼吸」が見られます。
  • 鼻をピクピクさせる
    鼻の穴を大きく広げて、一生懸命に空気を吸い込もうとします。

呼吸の苦しさだけでなく、赤ちゃんの見た目にも変化があらわれることがあります。 皮膚や爪、へその緒がうんちの色に染まり、黄色や緑色っぽく見えます。 また、うんちが混ざった羊水を飲んでいるため、おしっこが暗い緑色になることもあります。

これらの症状は、通常は数日で良くなっていきますが、注意深く見守る必要があります。 重症化すると、肺の血管がうまく働かなくなる合併症を起こすこともあります。

また、出生時の赤ちゃんの元気さを示す「アプガースコア」が、低くなることも少なくありません。 ある研究では、お母さんの体重が多めの場合、計画的なお産が、この病気やアプガースコアが低くなるリスクを減らす可能性を報告しています。

胎便吸引症候群の検査・診断

この病気の診断は、お産の時の状況と赤ちゃんの様子から始まります。 お母さんのお腹から出てきた羊水がうんちで濁っていて、 生まれた赤ちゃんの呼吸が苦しそうだと、この病気が強く疑われます。

お医者さんはまず、赤ちゃんのSOSサインを注意深く観察するのです。 最近の研究では、お母さんの状態によってお産の進め方を考えることも、 この病気を防ぐために大切だとわかってきました。

ある研究報告によると、お母さんの体重が少し多めの場合、 計画的にお産を進めることで、胎便吸引症候群のリスクを、 減らせる可能性があるとされています。

診断を確定し、赤ちゃんの状態をより詳しく把握するために、 次のような検査を行って、総合的に判断します。

検査の種類

どんなことを調べるの?

赤ちゃんの様子の観察

・呼吸の速さや、胸がペコペコへこんでいないかを見ます。

・うめき声や、くちびるの色が悪くないか(チアノーゼ)も確認します。

胸のレントゲン検査

・肺の写真を撮って、空気がたまりすぎていないかを調べます。

・うんちで空気の通り道がつまっていないかも確認できます。

血液検査

・血液の中に、十分な酸素があるかを調べます。

・ばい菌による肺炎など、他の病気ではないかの確認もします。

心臓の超音波検査

・心臓の動きを映像で見て、肺の血圧が高くなる合併症が、

起きていないかをチェックします。

これらの検査結果を総合的にみて、赤ちゃんに合った治療方針を決めます。

胎便吸引症候群の治療

この病気の治療で一番大切なのは、赤ちゃんの呼吸を楽にすることです。 赤ちゃん自身の力で十分に呼吸できるようになるまで、優しくサポートします。 まずは保育器という暖かいベッドで休み、点滴で栄養や水分を補給します。

治療は、赤ちゃんの呼吸の状態に合わせて、慎重にステップアップさせます。 症状の重さによって、主に3つの段階に分けて治療を進めていくのです。

症状の重さ

主な治療

軽症

・鼻につけたチューブやマスクから、少しだけ酸素を送ります。

・機械で呼吸の状態を注意深く見守ります。

中等症

・人工呼吸器という機械で、赤ちゃんの呼吸を助けます。

・肺が膨らみやすくなるお薬を使うこともあります。

重症

・より特別な人工呼吸器や、肺の血圧を下げる治療を行います。

・体の外に肺の代わりをする機械(ECMO)を使うこともあります。

特に重症の場合、肺の血管がうまく広がらない合併症を起こすことがあります。 体に酸素が十分に行き渡らないため、専門的な治療が必要になるのです。 一酸化窒素というガスを吸ったり、ECMOを使ったりして治療を進めます。

こうした治療が必要になる前に、リスクを下げる工夫も考えられています。 ある研究では、お母さんの体重が少し多め(肥満)の場合、 自然に陣痛を待つより計画的にお産を進めるほうがよいと報告されました。 胎便吸引症候群などのトラブルが減る可能性があるとされています。