低栄養
毎日3食きちんと食べているのに、なぜか疲れやすい、風邪をひきやすいと感じていませんか?その不調、もしかしたら体に必要な栄養素が不足する「低栄養」が原因かもしれません。自分ではしっかり食べているつもりでも、栄養のバランスが崩れ、気づかないうちに陥っていることがあります。
低栄養は、単に体重が減るだけではありません。筋力や免疫力の低下、むくみといったサインとして現れます。近年の研究では、栄養状態の悪化が体内の見えない「炎症」や心臓への負担を示す血液検査の数値と関連することも報告されており、健康を脅かす重要なサインなのです。
この記事では、気づかぬうちに進行する低栄養のサインや原因、ご自身でできる簡単なチェック方法から治療法までを詳しく解説します。あなたの不調の原因を突き止め、健康な毎日を取り戻すために、ぜひご自身の状態と照らし合わせてみてください。
低栄養の概要
「低栄養」とは、体の活動に必要な栄養が足りなくなり、健康を保てなくなった状態を指します。毎日3食きちんと食べているつもりでも、栄養のバランスが崩れて、気づかないうちに低栄養になっていることがあります。
特にご高齢の方は食事の量が減ったり、消化する力が弱まったりするため、注意が必要です。低栄養は、主に2つの要素が不足することで起こります。
・エネルギー不足
・体を動かしたり、体温を保ったりするためのガソリンが足りない状態です。
・たんぱく質不足
・筋肉や血液、皮膚、髪の毛といった体を作るための材料が足りない状態です。
低栄養の影響は、単に体重が減るだけではありません。近年の研究では、栄養状態が悪いと体の中で起きている「炎症」の程度や、心臓への負担を示す血液検査の数値と関連することが報告されています。
つまり、栄養が足りない状態は、目に見えない体の内側にも影響を及ぼします。知らないうちに体の様々な場所で不調を引き起こしている可能性があるのです。このように、低栄養は誰にでも起こりうる、健康を脅かす大切なサインといえます。
低栄養の種類
「低栄養」とひとことで言っても、主に不足している栄養素によって、いくつかの種類に分けられます。ご自身の状態がどれに近いかを知ることで、対策を考えやすくなります。
主に、以下の2つのタイプと、それが合わさった混合型があります。
種類 | 主な特徴 | 不足している栄養素
エネルギー不足型 | 体重が大きく減り、全体的にやせ細った見た目になるのが特徴です。 | 体を動かすための「ガソリン」となるエネルギー(カロリー)
たんぱく質不足型 | 体重はあまり変わらないのに、むくみ(浮腫)が出やすいのが特徴です。 | 筋肉や血液などの体を作る「材料」となるたんぱく質
たんぱく質不足型でむくみが起きるのは、血液中のたんぱく質が血管の中に水分を保つ働きをしているためです。たんぱく質が減ると、その力が弱まり水分が血管の外へ漏れ出し、むくみとして現れます。
また、低栄養は見た目の問題だけではありません。体の内部で起きている「炎症」と深く関わっている可能性が指摘されています。炎症とは、体の中で小さな火事が起きているような状態です。
実際に、栄養状態が悪化すると、体内の炎症を示す血液検査の数値(CRP)が高くなることがあるという研究報告もあります。体の中で炎症が続くと、免疫力が落ちて風邪をひきやすくなるなど、様々な不調につながります。
低栄養の原因
低栄養になってしまう原因は、一つだけではありません。体の変化や生活環境、心の状態など、いくつかの要因が複雑に絡み合って起こります。
主な原因は、大きく分けて4つに分類されます。ご自身の生活を振り返りながら、当てはまるものがないか確認してみましょう。
1. 体の変化によるもの
年を重ねることで、食事に関わる体の機能が自然と変化します。
・食事をとる力の低下
歯が弱くなったり、飲み込む筋肉が衰えたりして、硬いものや量の多いものが食べにくくなります。
・消化・吸収する力の低下
胃や腸の働きが弱まることで、食べたものをうまく栄養として吸収できなくなります。
・筋力や体力の低下
買い物で重いものを持つことや、料理で立ち続けることが難しくなり、食事の準備自体がおっくうになります。
2. 社会的な問題
一人暮らしのご高齢の方など、生活環境の変化も栄養状態に大きく影響します。
・社会的な孤立
一人で食事を摂ることが増えると、食事の楽しみが減り、簡単なもので済ませがちになります。
・経済的な問題
収入が減ることで、肉や魚、野菜といった栄養価の高い食材を買うのをためらってしまうことがあります。
3. 心の問題
心の健康状態も、食欲と深く関係しています。
・精神的なストレス
大切な人との別れによる悲しみや、体力が落ちたことへの不安は、食欲をなくす原因になります。
・認知機能の低下
食事の準備や管理が難しくなったり、食事を摂ったこと自体を忘れてしまったりすることがあります。
4. 病気の影響
特定の病気が、低栄養の引き金になることもあります。例えば、心臓のポンプ機能が弱くなる心不全を抱えている方は、栄養状態が悪化しやすいことがわかっています。
近年の研究では、心不全の患者さんで栄養が足りなくなると、体の中で起きている「炎症」の強さを示す血液検査の数値(CRP)が高くなることが報告されています。
また、心臓への負担を示す数値(BNP、NT-proBNP)も高くなる傾向があることもわかっています。病気によって栄養が不足し、その栄養不足がさらに病状に影響を与えるという悪循環に陥る可能性があるのです。
低栄養の症状
低栄養のサインは、単に体重が減るだけではありません。体の中から発せられる様々なSOSサインに気づくことが大切です。自分では気づきにくい変化もあるため、以下の症状を確認してみましょう。
・体重の減少
食事量は変わらないのに、半年で2〜3kg以上体重が減る場合は注意が必要です。「最近ズボンがゆるくなった」などもサインの一つです。
・筋力・体力の低下
筋肉の材料であるたんぱく質が不足すると、瓶のフタが開けにくくなったり、階段を上るだけで息が切れたりします。
・免疫力の低下
栄養は、ウイルスや細菌と戦う免疫細胞のエネルギー源です。不足すると免疫力が落ち、風邪をひきやすく、治りにくくなります。
・皮膚や髪のトラブル
肌がカサカサする、小さな傷が治りにくい、床ずれができやすいといった症状が出ます。髪の毛のツヤがなくなり、細くなることもあります。
・むくみ(浮腫)
血液中のたんぱく質には、血管の中に水分を保つ働きがあります。たんぱく質が減ると水分が血管の外に漏れ出し、顔や足がむくみます。
こうした目に見える変化に加え、体の中では検査をしないとわからない変化も起きています。
例えば、栄養状態が悪くなると、体の中の炎症を示す血液検査の数値(CRP)が高くなることがあります。また、心臓の病気をお持ちの方では、栄養不足が心臓への負担を示す数値(BNP、NT-proBNP)に影響するという研究報告もあります。
これは、栄養が足りない状態が、体の中の見えない部分にも影響を及ぼしている証拠です。これらの症状は「体力が落ちて動かない→食欲がわかない→さらに栄養が不足する」という悪循環に陥りやすいため、早めに気づくことが重要になります。
低栄養の検査・診断
「もしかして栄養が足りていないかも?」と感じたら、ご自身でできる簡単なチェック方法と、病院で行う詳しい検査があります。
まずは、ご自身の体の状態を知ることから始めてみましょう。
【お家でできるセルフチェック】
・体重の変化を確かめる
特別なダイエットをしていないのに、ここ半年で2〜3kg以上体重が減っていないか確認します。ズボンがゆるくなったなども、大切なサインです。
・BMI(体格指数)を計算する
身長に見合った体重かを知るための世界共通の目安です。「体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)」で計算し、18.5未満は注意が必要です。
・指輪っかテストで筋肉量を調べる
両手の親指と人差し指で輪を作り、利き足ではない方のふくらはぎを囲みます。指と足の間に隙間ができる場合、筋肉が減っている可能性があります。
これらのチェックで気になる点があれば、医療機関で詳しく調べてもらうことをおすすめします。病院では、主に血液検査で栄養状態を数値で評価します。
血液中の「血清アルブミン」というたんぱく質の量を調べることで、体の栄養状態を客観的に把握できます。
また、最近の研究では、栄養が足りない状態が体の内部に影響を及ぼすこともわかってきました。例えば、心臓に持病がある方の場合、栄養が不足すると体内の炎症を示す数値(CRP)や、心臓への負担を示す数値(BNP、NT-proBNP)が高くなる傾向が報告されています。
このように、血液検査は目に見えない体のSOSサインを捉えるためにも非常に重要です。セルフチェックと合わせて、ご自身の健康状態を正しく知りましょう。
低栄養の治療
低栄養の治療は、まず「なぜ栄養が足りないのか」という根本的な原因を探すことから始まります。その上で、体に足りない栄養をしっかり補給していきます。
治療の基本は、毎日の食事を見直すことです。一人ひとりの状態に合わせて、次のような方法を組み合わせて行います。
・食事の工夫をする
一度にたくさん食べられない場合は、食事の回数を1日4〜5回に増やしてみましょう。間食に牛乳や果物、市販の栄養補助食品を取り入れるのも良い方法です。
・お口の状態を整える
食事の入り口であるお口の状態はとても大切です。入れ歯が合わないなど、かむ力や飲み込む力に問題があれば、歯科医師に相談して環境を整えましょう。
・栄養補助食品を利用する
食事だけで栄養を補うのが難しいときは、ドラッグストアなどで手に入る栄養補助食品を活用するのも一つの手です。
低栄養の改善は、体力をつけるだけでなく、目に見えない体の内側にも良い影響を与えます。
実際に、心臓に持病がある方を対象とした研究では、栄養状態が良くなることで、体内の炎症を示す数値(CRP)や心臓への負担を示す数値(BNP、NT-proBNP)が改善する傾向が報告されています。
このように、栄養をしっかり摂ることは、体の様々なSOSサインを減らすことにも繋がるのです。ご自身の状態に合った治療法を見つけるために、まずは医師や管理栄養士にご相談ください。





