糖尿病足病変
糖尿病と診断された方、足のしびれや小さな傷を「いつものこと」と見過ごしていませんか?その油断が、取り返しのつかない事態を招くかもしれません。実は、糖尿病が原因で足を切断する方の約8割は、足の潰瘍がきっかけです。糖尿病でない方と比べ、足を失うリスクは最大で41倍にも跳ね上がると報告されています。
「糖尿病足病変」は、単に足が傷つくだけでなく、心臓病やうつ病のリスクも高める深刻な合併症です。しかし、正しい知識を持ち、日々のケアを徹底すれば重症化は防げます。この記事では、あなたの足を守るために知っておくべき原因から治療法までを詳しく解説します。手遅れになる前に、ご自身の足と向き合ってみませんか。
糖尿病足病変の概要
糖尿病の治療が十分でなく、血糖値が高い状態が続くと、全身に様々な合併症が現れることがあります。「糖尿病足病変」もその一つで、糖尿病が原因で足に起こる色々なトラブルをまとめた言葉です。
具体的には、神経の働きが鈍くなったり、血の流れが悪くなったりすることで、以下のような状態を引き起こします。
- 足に傷や潰瘍(かいよう)ができる
- 皮膚や粘膜が深くえぐれてしまう状態です。
- 組織が死んでしまう壊疽(えそ)を起こす
- 血が通わなくなり、組織が黒く腐ってしまう状態です。
- 細菌に感染しやすくなる
- 小さな傷から菌が入り、炎症が広がりやすくなります。
これらの症状を放置してしまうと、足を切断せざるを得なくなることもあります。実際に、糖尿病が原因で足を切断する方の約8割は、足にできた潰瘍がきっかけです。糖尿病でない方と比べると、足を切断するリスクは7倍から41倍にもなると報告されています。
また、足病変は足だけの問題ではありません。足に潰瘍がある方は、心臓や脳の血管の病気にかかるリスクや、うつ病などを合併するリスクも高くなることが知られています。
しかし、適切なケアで重症化は防げます。例えば、社会が混乱した時期でも、専門家による対面でのケアを続けた病院では、入院患者は増えたものの、足の切断に至るケースは増えなかったという研究報告があります。このことからも、足の小さな変化を見逃さず、早期に専門医へ相談することがいかに大切かがわかります。
糖尿病足病変の種類
「糖尿病足病変」と一言でいっても、その状態は様々です。 足の爪や皮膚の小さなトラブルから、足を失う危険がある深刻なものまで、いくつかの種類に分けられます。
代表的な足のトラブルを、段階を追って見ていきましょう。
- 皮膚のトラブル 水虫(足白癬)や細菌の感染、たこ(胼胝)、うおのめ(鶏眼)など、よく見られる症状です。
- 足の形の変化 指が「く」の字に曲がったり(ハンマートゥ)、土踏まずがなくなったり(扁平足)します。
- 潰瘍(かいよう) 皮膚が深くえぐれてしまい、ジクジクとした傷ができてしまう状態です。
- 壊疽(えそ) 血が通わなくなり、足の組織が死んで黒く変色してしまう、最も重い状態です。
これらの足病変は、何が主な原因かによっても分類されます。 この分類は、治療の方針を決める上でとても大切になります。
|
主な原因 |
具体的な状態 |
|
神経のトラブルが中心 |
感覚が鈍くなるため、靴ずれや小さなたこから深い傷(潰瘍)ができやすいのが特徴です。 |
|
血のめぐりのトラブルが中心 |
血流が悪いため、足の先に栄養や酸素が届きません。その結果、傷が治りにくく潰瘍になります。 |
|
感染が加わった状態 |
神経や血のめぐりのトラブルでできた傷に細菌が入り込み、炎症がひどくなった状態です。 |
どの種類の足病変も、放置すると悪化して入院が必要になります。 例えば、感染症の流行で社会が混乱した時期に、糖尿病の足病変による入院が増えたという報告があります。
しかし、そのような状況でも、専門家による丁寧な対面ケアを続けた病院では、足の切断に至るケースは増えなかったという研究結果も示されています。 このことからも、足のささいな変化に気づき、早めに相談することの重要性がわかります。
糖尿病足病変の原因
糖尿病で足のトラブルが起きるのには、主に2つの原因があります。 それは「神経のトラブル」と「血のめぐりのトラブル」です。 これらが別々に、または同時に起こることで、足の状態を悪化させます。
1. 神経のトラブル(神経障害)
血糖値が高い状態が長く続くと、神経細胞がダメージを受けます。 特に、心臓から遠い足先の感覚を伝える神経が影響を受けやすいです。
その結果、以下のようなことが起こります。
- 感覚が鈍くなる 熱さや痛みを感じる体のセンサーが鈍くなります。 そのため、靴ずれや小さなケガ、やけどをしても気づきにくくなります。
- 足の形が変わる 筋肉を動かす神経が弱ると、足の筋肉がやせてしまいます。 指が曲がったり、土踏まずがなくなったりして、特定の場所に圧力がかかりやすくなります。
2. 血のめぐりのトラブル(血流障害)
糖尿病は、血管が硬く、狭くなる「動脈硬化」を進めやすくします。 足の血管が狭くなると、足先まで十分な血液が届きにくくなります。
血液は、傷を治すために必要な酸素や栄養を運ぶ重要な役割を担っています。 そのため、血のめぐりが悪いと、たとえ小さな傷でも非常に治りにくくなるのです。
|
原因 |
どんなことが起きるか |
|
神経のトラブル |
・ケガをしても痛みを感じにくく、発見が遅れる ・足が変形し、タコなどができやすくなる |
|
血のめぐりのトラブル |
・傷を治すための酸素や栄養が届きにくい ・細菌と戦う体の力が弱まる |
このように「ケガに気づきにくい」上に「傷が治りにくい」という状態が重なります。 この状態が、小さなトラブルを深刻な潰瘍や壊疽へと進行させる大きな原因です。
実際に、社会が混乱し専門家による対面での足のケアが滞った時期に、糖尿病の足病変による入院が増えたという研究報告があります。 このことからも、自分では気づきにくい足の変化を定期的に確認することが、重症化を防ぐためにいかに重要かがわかります。
糖尿病足病変の症状
糖尿病による足の変化は、痛みなどの分かりやすいサインが出にくく、静かに始まることが多いです。 そのため、ご自身では気づきにくいことが多く、油断は禁物です。 毎日ご自身の足をよく見て、小さな変化を見逃さないようにしましょう。
【自分で気づける足のサイン:チェックリスト】
感覚のチェック
- 足がジンジン、ピリピリとしびれる感じがする
- 足の裏に紙が1枚貼り付いているような違和感がある
- 砂利の上を歩いているような、いつもと違う感じがする
- 熱さや冷たさを感じにくく、ケガややけどに気づきにくい
見た目のチェック
- 足の色が赤黒い、または血の気がないように白っぽい
- 皮膚がカサカサに乾燥し、ひび割れができている
- いつも同じ場所にタコや魚の目ができやすい
- 指が「く」の字に曲がるなど、足の形が変わってきた
その他のチェック
- 体の他の部分と比べて、足だけがいつも冷たい
- 小さな靴ずれや切り傷が、なかなか治らない
特に注意が必要なのは、神経のトラブルが進むと痛みを感じにくくなる点です。 体からの「危ないよ」という警報であるはずの痛みが届きにくくなります。 そのため、深い傷や潰瘍(かいよう)ができていても気づかず、発見が遅れがちです。
実際に、社会が混乱し専門的なケアが受けにくい時期に、糖尿病の足病変による入院が増えたという研究報告があります。 一方で、そのような状況でも、専門家が対面で足を丁寧にチェックし続けることで、足を切断するような重症例は増えませんでした。 このことからも、足のささいな変化でも放置せず、早めに専門医へ相談することが、ご自身の足を守るために非常に大切です。
糖尿病足病変の検査・診断
糖尿病の足のトラブルを悪化させないためには、専門家による定期的な検査が欠かせません。 病院では、足に起きている変化の原因や進行度を詳しく調べ、一人ひとりに合った治療計画を立てます。
検査は、決して難しいものではありません。 主に、次の4つのステップで足の状態を丁寧に確認していきます。
1. 足の状態を直接チェック(問診・視診・触診) まず、医師があなたの足を見て、触って、状態を確認します。
- 見る(視診) 皮膚の色や乾燥、爪の形、タコや魚の目、傷がないかを見ます。
- 触る(触診) 足の温かさや冷たさ、脈がきちんと触れるかを確認します。
2. 神経のセンサーをチェック(神経の検査) 神経の働きが鈍っていないかを調べます。 痛みなどを感じるセンサーが正常かを確認する、とても大切な検査です。
- モノフィラメント検査 柔らかいナイロンの糸で足の裏などを触り、感覚を確かめます。
3. 血のめぐりをチェック(血流の検査) 足の先までしっかり血液が届いているかを確認します。 傷の治り具合に大きく影響するため、重要な検査です。
- ABI(足関節上腕血圧比)検査 腕と足首の血圧を同時に測り、その数値を比べる検査です。 痛みはなく、血圧測定と同じように行えます。
4. ばい菌の感染をチェック(感染症の検査) 傷口が赤く腫れている場合、ばい菌の感染を疑います。 骨まで影響が及んでいないか、レントゲンやMRIで詳しく見ることもあります。
社会が混乱した時期でも、専門家による対面での足のケアを続けた病院では、入院は増えたものの、足を切断する重症例は増えなかったという報告があります。 このことからも、定期的な検査で足の異常を早く見つけることが、ご自身の足を守るためにいかに重要かがわかります。 気になることがあれば、自己判断せず、必ず医師に相談しましょう。
糖尿病足病変の治療
糖尿病による足のトラブルの治療は、足を切断から守り、自分らしく歩き続けるためにとても大切です。治療は一つの方法だけでなく、いくつかの方法を組み合わせて総合的に行われます。
治療の基本は、次の3つの柱で進められます。
- 1. ばい菌のコントロール(感染対策) 傷口を清潔に保ち、ばい菌の侵入や増殖を防ぎます。血糖値が高い状態はばい菌が増えやすいため、血糖コントロールも同時にしっかり行います。必要に応じて、ばい菌と戦う抗生物質というお薬も使います。
- 2. 傷への負担をなくす(免荷) 傷や潰瘍に体重がかかると、血の流れが悪くなり、治りがとても遅くなります。そのため、特別な靴や中敷き(インソール)を使ったり、松葉杖や車椅子を使ったりして、傷に負担がかからないようにします。
- 3. 血液の流れをよくする(血行改善) 傷が治るために必要な酸素や栄養を、足のすみずみまで届けることが目的です。動脈硬化で足の血流が悪くなっている場合は、お薬やカテーテルという細い管を使った治療、新しい血の通り道を作る手術(バイパス手術)などで血液の流れを改善します。
これらの治療は、内科、皮膚科、形成外科、血管外科など、様々な専門家がチームとなって行います。近年の研究では、社会が混乱した時期でも、専門家が直接足を診てケアを続けることが、足の切断を防ぐために非常に重要であると報告されています。気になる症状があれば、まずは専門の医療機関に相談することが大切です。










