小児外陰炎
お子さまがおまたをかゆがったり、赤くなったりして、心配になった経験はありませんか?実は、おまたに症状があるお子さまの約10人に1人が、思春期前の女の子に多い「小児外陰炎」だと報告されています。決して珍しい病気ではないので、まずは保護者の方が落ち着いて対処することが大切です。
なぜこの病気が起こるのかというと、その原因は、大人の体とは違うお子さま特有のデリケートな体のつくりにあります。また、お子さまは不快感をうまく言葉にできないため、「トイレを嫌がる」といったささいな行動が、実は病気の隠れたSOSサインかもしれません。
この記事では、小児外陰炎の詳しい原因から、ご家庭でできるケア、治療法までをわかりやすく解説します。大切なお子さまを不快な症状から守るために、ぜひ最後までお読みください。
小児外陰炎の概要
小児外陰炎(しょうにがいいんえん)は、お子さまのおまたの周り(外陰部)が、赤くなったりかゆくなったりする病気です。特に、思春期を迎える前の女の子によく見られます。
おまたにかゆみなどの症状があるお子さまのうち、約10%がこの病気だと報告されています。決して珍しい病気ではないので、まずは落ち着いてください。
なぜ思春期前の女の子に多いのかというと、体のつくりに理由があります。大人の女性の体とは違う、お子さま特有の3つのポイントをご説明します。
- 皮膚がうすくてデリケート 大人の女性と比べて、おまたの周りの皮膚がまだ薄く、バリア機能も弱いです。そのため、下着の摩擦といった、少しの刺激でも炎症が起きやすくなっています。
- ばい菌から体を守る力が弱い 腟には、体をばい菌から守る「自浄作用」という仕組みが備わっています。しかし、お子さまの体では、この大切な力がまだ十分に発達していません。
- 女性ホルモンが少ない 体をばい菌から守る働きを助ける女性ホルモン(エストロゲン)が、まだ少ししか分泌されていません。そのため、ばい菌が増えやすい環境になっています。
これらの理由から、排便後の拭き方や下着のこすれなど、ささいなことがきっかけで炎症を起こしてしまいます。デリケートな場所のことなので、お子さまが自分から症状を言えないことも少なくありません。「トイレに行くのを嫌がる」などのサインに、周りの大人が気づいてあげることが大切です。
小児外陰炎の種類
ひとことで小児外陰炎といっても、原因はさまざまです。原因を大きく分けると、「ばい菌」が関係しているかどうかで、2つのタイプに分けられます。それぞれ治療法が違うため、原因を見極めることがとても大切です。
ばい菌が原因ではないタイプ(非感染性)
お子さまの肌に合わないものや、物理的な刺激が原因で起こる外陰炎です。アレルギー反応や、こすれによるかぶれなどがこれにあたります。
- 接触皮膚炎(せっしょくひふえん) 石鹸やシャンプー、おむつの素材などが肌に合わず、かぶれてしまう状態です。洗濯で十分にすすぎきれなかった洗剤が原因になることもあります。
- 刺激性皮膚炎(しげきせいひふえん) サイズの合わないきつい下着による摩擦が原因です。他にも、自転車に長く乗ることによる圧迫なども、物理的な刺激となって炎症を起こします。
- アトピー性皮膚炎 もともとアトピー性皮膚炎のお子さまの場合、おまたの周りにも症状が出ることがあります。肌のバリア機能が弱いため、炎症が起こりやすいです。
ばい菌が原因のタイプ(感染性)
細菌やカビ、寄生虫などが外陰部で増えてしまうことで起こる外陰炎です。お子さまはまだ、ばい菌への抵抗力が弱いことが関係しています。
- 細菌性外陰炎 うんちに含まれる大腸菌や、皮膚によくいる黄色ブドウ球菌などが原因です。トイレの後、おしりから前に向かって拭く癖があると起こりやすくなります。
- 真菌性外陰炎(しんきんせい がいいんえん) カンジダというカビの一種が原因で起こります。おむつの中など、ジメジメして蒸れやすい環境で増えやすいという特徴があります。
- 寄生虫によるもの ぎょう虫という寄生虫が、夜に肛門から出てきて卵を産むことがあります。その際におまたの方へ移動して、とても強いかゆみを引き起こします。
小児外陰炎の原因
思春期を迎える前のお子さまのおまたは、大人とは違う特徴を持っています。体のつくりがまだ発達の途中であることに加え、日々のささいな習慣が、炎症の引き金になることがあります。
まず、お子さまの体に備わっている「内的要因」からご説明します。
- 皮膚のバリア機能が弱い 皮膚を丈夫にする女性ホルモン(エストロゲン)の分泌がまだ少ない状態です。そのため、おまたの周りの皮膚が薄く乾燥しやすく、とてもデリケートです。下着がこすれるなどのわずかな刺激でも、炎症が起きやすくなっています。
- 腟を守る力が未熟 大人の腟の中は、良い菌の働き(自浄作用)によって、悪い菌が増えるのを防いでいます。しかし、お子さまの体ではこの自浄作用がまだ十分に働いていません。そのため、腟の中にばい菌が入り込むと、増殖しやすい環境になっています。
- ばい菌が入りやすい体のつくり お子さまは、うんちが出る肛門と、おしっこが出る尿道口や腟の位置がとても近いです。そのため、排便時にうんちに含まれる大腸菌などが、腟の方へ移動しやすい体のつくりをしています。
こうした体の特徴に、日常生活に潜む「外的要因」が加わることで、小児外陰炎は発症しやすくなります。
- 物理的・化学的な刺激 サイズの合わない下着による摩擦や、自転車のサドルによる圧迫。また、肌に合わない石鹸や、十分にすすぎきれていない洗濯洗剤なども刺激になります。
- 不衛生な習慣 トイレの後、おしりから前に向かって拭く癖があると、大腸菌が腟に入りやすくなります。また、汚れた手でおまたを触ってしまうことも原因の一つです。
小児外陰炎の症状
お子さまは、おまたの周りの不快な症状をうまく言葉で伝えられないことが少なくありません。そのため、保護者の方が「いつもと違うサイン」に気づいてあげることが、早期発見の鍵となります。
以下のような症状や様子が見られないか、優しく確認してあげてください。
【お子さまのSOSを見逃さないためのチェックリスト】
- 見た目の変化
- おまたの周りの皮膚が、普段よりも赤くなっていませんか。ひだの内側などが、まだらに赤くなったり、全体的に腫れぼったくなったりします。
- おりものの変化
- パンツに黄色や緑がかった色の、ねばっとしたおりものが付いていませんか。時には、生臭いような、いつもと違うにおいがすることもあります。
- かゆみによる行動
- 無意識におまたに手をやったり、もじもじと足をこすり合わせたりしていませんか。かゆみが強いため、夜中に目を覚ましてしまうこともあります。
- 痛みによる行動
- おしっこがしみて「痛い」と泣いたり、トイレに行くのを嫌がったりしませんか。また、トイレットペーパーで拭くときに痛がるそぶりを見せることもあります。
これらのサインは、お子さまが感じている不快感の表れです。症状が一つだけの場合も、複数が同時に見られる場合もあります。お子さまの様子を注意深く観察し、当てはまる項目があれば早めに医療機関へ相談しましょう。
小児外陰炎の検査・診断
お子さまのデリケートな部分を診察すると聞き、ご心配になるかもしれません。 「痛い検査ではないか」と不安に思うお気持ちは、とてもよくわかります。 小児外陰炎の診断は、お子さまにできるだけ負担をかけないよう、優しく丁寧に行いますのでご安心ください。
まず基本となるのは、詳しいお話をお伺いする「問診」と、目で見て状態を確認する「視診」です。 多くの場合、この2つの診察で原因を特定することができます。
- お話で伺うこと(問診) いつから症状があるか、どんな時にかゆがるか、下着のおりものの色や量など、詳しくお聞きします。
- 目で見て確認すること(視診) 医師がお子さまの外陰部を優しく観察し、赤みや腫れの範囲、ただれの有無、おりものの性状などを確認します。
これらの診察で原因がはっきりしない場合や、細菌による感染が強く疑われる際には、もう少し詳しい検査を行います。
- おりものの検査 細い綿棒でおりものをそっとぬぐい取ります。 どのような種類のばい菌が原因かを特定するために行います。 原因菌がわかれば、それに合ったお薬を選ぶことができます。
- 尿検査 おしっこをする時に痛みが強い場合などに行うことがあります。 膀胱炎(ぼうこうえん)といった、他の病気が隠れていないかを確認します。
これらの結果を総合的に判断し、お子さま一人ひとりの原因に合わせた治療法を決定していきます。
小児外陰炎の治療
小児外陰炎の治療は、原因を取りのぞき、症状を和らげることが基本です。まずはおうちでできるケアを徹底し、症状が改善しない場合や感染が原因の際には、お薬を使った治療を行います。
ステップ1:おうちでできる基本のケア
治療の第一歩は、デリケートな部分への刺激をなくすことです。毎日の生活の中で、以下のポイントを意識してみてください。
- 正しい洗い方をマスターする おふろではゴシゴシこすらず、手で優しく洗いましょう。 石鹸の使いすぎは、肌を守る良い菌まで洗い流してしまいます。 お湯で流すだけでも十分きれいになるので、石鹸は必要な時だけ使いましょう。 入浴後は、清潔なタオルで軽く押さえるように水分を拭き取ります。 おまたをしっかり乾かすことが、ばい菌が増えるのを防ぐコツです。
- 下着や服装を見直す 肌に優しく、汗を吸いやすい綿素材の下着を選びましょう。 しめつけの強いズボンは避け、風通しの良い服装を心がけてください。 洗濯洗剤が残らないよう、すすぎは普段よりもしっかり行いましょう。 肌に合わない場合は、洗剤の種類を変えてみるのも有効な場合があります。
- トイレの習慣を身につける うんちに含まれるばい菌が前につかないよう、注意が必要です。 トイレットペーパーは必ず「前から後ろ」に向かって拭きましょう。 これは、お子さまが一人でトイレに行けるようになったら、ぜひ教えてあげてほしい大切な習慣です。
ステップ2:クリニックで行うお薬の治療
おうちでのケアを続けても症状が良くならない場合や、ばい菌が原因と診断された場合は、お薬による治療が必要です。
- 塗り薬(外用薬) かゆみや赤みが強い時には、炎症を抑える塗り薬を使います。 ばい菌の種類に合わせて、抗生物質(細菌を倒す薬)や抗真菌薬(カビを倒す薬)の入った塗り薬が処方されることもあります。
- 飲み薬(内服薬) 症状が広い範囲に及んでいたり、塗り薬だけでは効果が不十分だったりする場合に使います。 原因となっているばい菌に合わせた抗生物質などを服用します。
お薬は、医師の指示通りに決められた期間、きちんと使い切ることが非常に重要です。症状が少し良くなったからといって自己判断でやめてしまうと、ばい菌がぶり返してしまうことがあります。
症状が改善しない、または悪化するようであれば、様子を見ずに早めに小児科や皮膚科、婦人科を受診してください。










