処女膜裂傷

「初めての性体験では必ず出血する」——。そんな話を聞いて、不安に感じている方もいるかもしれません。しかし、それは医学的には正しくない情報です。処女膜には顔つきや身長と同じように大きな個人差があり、その状態だけで性経験の有無を判断することはできません。

処女膜が傷つく原因は性的なことだけではなく、激しいスポーツや転倒などの事故でも起こり得ます。また、約2,000人に1人の割合で見られる「処女膜閉鎖症」のように、生まれつきの個性によるトラブルも存在します。多くの誤解や俗説が、かえって不安を煽っているのです。

この記事では、デリケートで誰にも相談しにくい「処女膜裂傷」について、その原因から症状、正しい対処法までを詳しく解説します。ご自身の体を正しく理解し、不要な心配から解放されるための一歩にしてください。

処女膜裂傷の概要

処女膜裂傷を知るには、まず「処女膜」がどんなものかを知ることが大切です。 処女膜は、腟(ちつ)という、体のとても大切な場所の入り口にある、うすい粘膜のヒダです。

この膜は、まだ体が未熟な少女期に、ばい菌などが腟の中に入るのを防ぐ役割があると考えられています。 体の成長とともに、その必要性は少しずつ変わっていきます。

処女膜の形や厚さ、硬さには、顔つきや身長と同じように、とても大きな個人差があります。 みんなが違うのが当たり前なので、他の人と比べる必要はまったくありません。

処女膜の個人差

具体的な例

形

三日月や輪っかのような形、ヒダがたくさんある形などさまざまです。

穴の大きさ

生理の血が出るための穴が、もともと大きい人もいれば小さい人もいます。

硬さ・伸びやすさ

とてもやわらかく伸びやすい人もいれば、少し硬く伸びにくい人もいます。

「処女膜裂傷」とは、この一人ひとり違う処女膜が、何らかの理由で裂けたり傷ついたりすることです。 原因は性的なことだけに限らず、激しいスポーツや転倒などの事故で起こることもあります。

そのため、処女膜の状態だけで性的な経験があるかどうかを判断することは、医学的にはできません。 多くの誤解がある部分ですが、正しい知識を持つことがとても重要です。

処女膜裂傷の種類

処女膜裂傷とひとことで言っても、傷の深さや広がりはさまざまです。 軽いかすり傷のようなものから、治療が必要な深い傷まであります。

また、傷とは少し違いますが、生まれつきの処女膜の個性によって、 体にトラブルが起こることもあります。 どのような種類があるのか、詳しく見ていきましょう。

傷の深さによる違い

処女膜につく傷は、その深さによって大きく2つに分けられます。

  • 軽い傷 処女膜の表面が、少しだけ切れてしまう状態です。 出血もごくわずかだったり、痛みも軽かったりすることがほとんどです。 多くの場合、特別な治療をしなくても自然に治っていきます。
  • 深い傷 赤ちゃんを産むときや、乱暴な性的なことなどが原因で起こります。 傷が処女膜だけでなく、その奥にある腟の壁や、 外側の皮膚まで広がってしまうことがあります。 出血が多くなったり、痛みが強くなったりするため、 病院で縫い合わせるなどの治療が必要になる場合があります。

処女膜の個性によるトラブル

生まれつきの処女膜の形や硬さが原因で、体に不調が出ることがあります。 これらは裂傷とは異なりますが、知っておくことが大切です。

状態の名前

どのような状態か

処女膜強靭症(しょじょまくきょうじんしょう)

生まれつき処女膜が厚くて硬かったり、伸びにくかったりする状態です。性的なことの時に強い痛みや出血の原因になることがあります。

処女膜閉鎖症(しょじょまくへいさしょう)

生理の血が出るための穴がなく、処女膜が完全に閉じている状態です。約2,000人に1人の割合で見られます。初潮がきても血が外に出られず、お腹が痛くなります。

これらの状態は、ご自身で判断することが難しいものです。 痛みや出血、生理のことで気になることがあれば、 一人で悩まずに、婦人科や産婦人科で相談することが大切です。

処女膜裂傷の原因

処女膜裂傷は、腟の入り口にある処女膜に無理な力がかかって起こります。 最も多い原因は、赤ちゃんを産むことや初めての性的なことです。 これらは腟が大きく広げられるため、処女膜が伸びて傷つきやすくなります。

しかし、原因は性的なことだけではありません。 日常生活の中でも、処女膜裂傷が起こる可能性は十分にあります。

  • 激しい運動 自転車や乗馬、体操などで股(また)を大きく開いたり、 強く圧迫されたりしたときに起こることがあります。
  • 事故やケガ 転んでしまったり、どこかにぶつかったりして、 股間を強く打ったときにも傷つくことがあります。

また、裂傷の起こりやすさは、生まれ持った処女膜の個性と深く関係しています。 顔つきが一人ひとり違うように、処女膜の硬さや伸びやすさも人それぞれです。

もともとの処女膜の状態

傷つきやすさの特徴

やわらかく、伸びやすいタイプ

腟が広がっても傷つきにくく、初めての性的なことでも出血しない場合も珍しくありません。

硬く、伸びにくいタイプ

(処女膜強靭症)

少しの力でも傷つきやすく、強い痛みや多めの出血を伴うことがあります。

このように、処女膜が傷つくかどうかは、原因だけでなく本人の体の個性も影響します。 「初めての時は必ず血が出る」というのは、医学的には正しくありません。

もし、とても強い力がかかってしまった場合は注意が必要です。 処女膜だけでなく、その奥にある腟の壁まで傷が深くなることもあります。 その場合は出血が多くなるため、すぐに病院での手当てが必要になります。

処女膜裂傷の症状

処女膜が傷ついた時のサインは、主に「出血」と「痛み」の2つです。 しかし、その程度は人によって全く違い、症状に気づかない人もいます。 ほとんどは軽い症状ですぐに治るので、まずは落ち着くことが大切です。

多くの場合、症状は一時的で、特別な手当てをしなくても自然に治ります。 具体的には、以下のような軽い症状であることがほとんどです。

  • 出血 下着に少し血がついたり、トイレットペーパーで拭いた時に、 にじむ程度であることが多いです。出血はすぐに止まります。
  • 痛み チクッとしたり、少しジンジンしたりするような軽い痛みです。 この痛みも、時間が経つと自然に消えていくことが一般的です。

このように、症状はごく軽いことが多く、心配しすぎる必要はありません。

しかし、ごくまれに注意が必要なケースもあります。 傷が処女膜だけでなく、その奥にある腟の壁まで深く達してしまった場合です。 次のような症状があれば、すぐに病院へ行きましょう。

すぐに病院へ行くべき症状

なぜ注意が必要か

生理の時よりも血の量が多い

処女膜より奥の、血管が多い部分が傷ついている可能性があります。

サラサラした血がなかなか止まらない

我慢できないほど強い痛みが続く

めまい、冷や汗、吐き気がする

出血量が多く、体が貧血の状態になっているサインかもしれません。

これらの症状は、体が送っている「助けて」のサインです。 一人で悩まず、おうちの人に相談して、婦人科を受診してください。

処女膜裂傷の検査・診断

処女膜が傷ついたかもしれないと思ったら、とても不安になりますよね。 まずは婦人科や産婦人科で相談することが、ご自身の体を守るために大切です。 病院へ行くのは勇気がいることですが、体が出しているサインを見逃さないでください。 検査の目的は、傷の状態を正しく知り、手当てが必要かどうかを判断することです。

検査は、主に2つのステップで行われます。 特別な機械を使うような難しい検査はほとんどないので、安心してください。

  1. お話を聞くこと(問診:もんしん)
  2. 実際に見せていただくこと(内診:ないしん)

はじめに、お医者さんが症状についていくつか質問をします(問診)。 これは、正しい診断をするための、とても大切な手がかりになります。 恥ずかしがらずに、できるだけ正直に教えてくださいね。

  • どんな症状がありますか? いつから出血や痛みがあるのか、詳しく聞きます。
  • 出血の量はどのくらいですか? 下着に少しつく程度か、生理のように多いかなどです。
  • きっかけは何かありましたか? スポーツや転んだことなど、思い当たることがあれば伝えてください。

次に、内診台という特別な椅子に座って、傷の状態を直接確認します(内診)。 プライバシーを守るためにカーテンがあったり、タオルをかけたりします。

検査の種類

どのような検査か

視診(ししん)

お医者さんが目で見て、傷の場所や大きさ、深さ、出血しているかどうかを確認します。

触診(しょくしん)

必要があれば、指でそっと触れて、傷が奥の腟の壁まで広がっていないかを確かめます。

これらの診察で得た情報を元に、傷の程度を判断します。 そして、そのまま様子を見て大丈夫か、お薬や手当てが必要かを決めていきます。 気になることは、何でも質問してください。

処女膜裂傷の治療

処女膜についた傷は、軽いかすり傷程度であれば特別な手当ては必要ありません。 多くの場合、体自身が持つ治す力(自然治癒力)によって自然に治っていきます。 出血や痛みも一時的なもので、安静に過ごすことでおさまることがほとんどです。

しかし、傷の深さや場所によっては、病院での手当てが必要になる場合があります。 ご自身の判断で「このくらい大丈夫」と決めつけずに、以下のようなサインがあれば、 ためらわずに婦人科を受診してください。

  • 病院での手当てが必要なサイン
  • 出血が止まらない サラサラした血が出続けている状態です。
  • 出血の量が多い 生理の時よりも多いと感じる場合は、注意が必要です。
  • 我慢できないほど痛みが強い ズキズキとした痛みが続いている状態です。

これらの症状は、傷が処女膜だけでなく、奥の血管が多い部分に達している可能性があります。

病院では、まず傷の状態を丁寧に確認し、あなたに合った最適な手当てを行います。 主な手当てには、以下のようなものがあります。

手当ての種類

どのような手当てか

止血処置(しけつしょち)

出血が続いている場合に行います。きれいなガーゼで傷を押さえたり、小さな電気メスで血管を焼いて血を止めたりします。

縫合処置(ほうごうしょち)

傷が深い、または大きい場合に行います。傷口を糸で縫い合わせることで、早くきれいに治すことができます。

このような手当てをする際は、痛みを全く感じないように麻酔を使います。 歯の治療で使うような部分的な麻酔(局所麻酔)が一般的です。 もし傷がとても大きい場合は、眠っている間に処置が終わる全身麻酔を検討します。

大切なのは、心配な症状を放置しないことです。 医師の診察を受ければ、適切な手当てを受けられ、安心して過ごせるようになります。