バルトリン膿瘍

デリケートゾーンに突然現れる、座るのも歩くのも辛いほどの腫れと激痛。誰にも相談できず、一人で不安な時間を過ごしていませんか?その症状、もしかしたら「バルトリン膿瘍」かもしれません。

バルトリン膿瘍は、特に20代から40代の女性に多く見られる病気です。最初は違和感程度だったものが、数日のうちに急激に悪化し、日常生活に支障をきたすほどの激痛に変わることも少なくありません。恥ずかしさから受診をためらっていると、さらに症状が進行してしまう可能性があります。

この記事では、バルトリン膿瘍がなぜ起こるのか、その原因から具体的な症状、そして再発を防ぐための治療法までを詳しく解説します。つらい痛みから解放されるために、まずはご自身の状態を正しく理解することから始めましょう。

バルトリン膿瘍の概要

女性のデリケートゾーン(外陰部)が急に腫れあがり、座ったり歩いたりするのも辛いほどの痛みが起こる病気です。

外陰部のトラブルは珍しくありませんが、その中でもバルトリン腺が原因となる病気は少なくありません。

私たちの体には、外陰部をうるおす液体をつくる「バルトリン腺」という小さな器官が左右に1つずつあります。

このバルトリン腺の出口が何らかの理由でふさがってしまうと、つくられた液体が外に出られずにたまってしまいます。

液体がたまって袋状にふくれた状態を「バルトリン腺嚢胞(のうほう)」と呼び、この時点では痛みがないこともあります。

しかし、この嚢胞の中に細菌が入りこんで感染すると、中で膿(うみ)がたまり、炎症がひどくなって強い痛みや熱を持つようになります。この状態が「バルトリン膿瘍」です。

段階

状態

主な症状

ステップ1

バルトリン腺の出口がつまる

違和感がある程度

ステップ2

液体がたまり、袋状に腫れる

(バルトリン腺嚢胞)

しこりを感じるが、

痛みは少ないことが多い

ステップ3

細菌が感染し、膿がたまる

(バルトリン膿瘍)

赤く腫れて、

強い痛みや熱を持つ

バルトリン膿瘍は、特に20代から40代の女性によくみられます。

外陰部の腫れには、まれに腫瘍など他の病気が隠れている可能性もあります。自己判断はせずに、気になる症状があれば早めに婦人科を受診することが非常に大切です。

バルトリン膿瘍の種類

バルトリン腺のトラブルは、状態によって大きく2つの段階に分けられます。 細菌がいるかどうかで区別され、症状や治療法も変わってきます。

バルトリン腺嚢胞(のうほう)

バルトリン腺の出口がふさがり、つくられた液体がたまって袋状に腫れた状態です。 この段階では、まだ細菌はいないため「膿(うみ)」にはなっていません。 そのため、痛みはないか、あっても軽い違和感程度なのが特徴です。

バルトリン腺膿瘍(のうよう)

バルトリン腺嚢胞の中に細菌が入りこんで、中で増殖してしまった状態です。 体は細菌と戦うために免疫細胞(白血球)を送り込み、その戦いの結果として膿がたまります。 この膿がたまった袋が膿瘍で、強い炎症を起こし、痛みや熱を持つようになります。

状態

細菌感染

主な症状

バルトリン腺嚢胞

なし

痛みは少ない。

しこりのような腫れ。

バルトリン腺膿瘍

あり

強い痛み、赤み、熱感。

発熱することもある。

膿瘍になると、たまった膿を外に出す治療が必要になることが多いです。 単純に切開して膿を出すだけでは、再発しやすいことがわかっています。 そのため、造袋術(ぞうたいじゅつ)など再発しにくい工夫をした治療法が選ばれますが、どの方法が最も優れているか、専門家の間でもまだ結論は出ていません。

バルトリン膿瘍の原因

バルトリン膿瘍は、2つのステップを経て起こります。 「出口がふさがる」ことと「細菌が入る」ことです。

まず、外陰部をうるおす液体をつくるバルトリン腺の出口が、 何らかの理由でふさがってしまうことから始まります。

出口がふさがるはっきりとした原因は不明なことが多いですが、 以下のようなものがきっかけになると考えられています。

  • 物理的な刺激 出産やケガ、性交渉による内出血などが考えられます。
  • 何らかの炎症 炎症によって腺の管が腫れてしまい、出口をふさぐことがあります。

出口がふさがると、液体がたまって袋状の「嚢胞(のうほう)」ができます。 この袋の中に細菌が入り込むと、膿がたまって「膿瘍」になります。

感染の原因となる細菌は、私たちの身の回りにいるものが多いです。

  • 大腸菌
  • ブドウ球菌
  • 連鎖球菌
  • 淋菌やクラミジア(性感染症の原因菌)

きつい下着で蒸れたり、洗いすぎでデリケートゾーンを守る力が弱まったりすると、 細菌が増えやすい環境になり、感染のリスクが高まります。

ただし、外陰部の腫れや痛みの原因は、バルトリン膿瘍だけではありません。 まれに「壊疽性膿皮症(えそせいのうひしょう)」という皮膚の病気が、 バルトリン膿瘍と間違われることがあります。

実際に、バルトリン膿瘍と診断されて治療を受けたものの、 症状が良くならず、壊疽性膿皮症だったという報告もあります。 自己判断はせず、必ず婦人科などの医療機関で診断を受けることが大切です。

バルトリン膿瘍の症状

バルトリン膿瘍の症状は、炎症の強さによってさまざまです。 膿が少ししかたまっていない軽い段階では、ほとんど症状を感じないこともあります。 しかし、膿が増えて炎症がひどくなると、外陰部を中心に非常につらい症状があらわれます。

最も特徴的な症状は、外陰部の片側がピンポン玉のように赤く腫れあがり、強い痛みが出ることです。 はじめは小さなしこりのような違和感だけだったものが、数日のうちに急激に悪化することも珍しくありません。

ご自身の状態と見比べるための、具体的な症状のチェックリストです。

【主な症状のチェックリスト】

  • 外陰部の腫れと痛み
  • 腟の入り口の横あたりが片側だけ赤く腫れている
  • 腫れている部分に熱があり、ズキズキと脈打つように痛む
  • 日常生活への影響
  • 歩いたり、椅子に座ったりするだけで激しい痛みを感じる
  • 下着がこすれるだけで、びりっとした痛みが走る
  • 排尿や排便の際に、痛みでいきむのがつらい
  • 全身にあらわれる症状
  • 体が細菌と戦っているサインとして、38℃前後の熱が出ることがある
  • 腫れている部分が自然に破れて、膿が出てくることもある

症状が進行すると、歩くことさえ困難になるほどの激痛に変わります。 「恥ずかしい」と受診をためらわずに、気になる症状があればすぐに婦人科を受診することが何よりも大切です。

バルトリン膿瘍の検査・診断

外陰部に痛みや腫れを感じた際は、早めに婦人科を受診しましょう。 バルトリン膿瘍の診断は、特別な検査をすることは少なく、ほとんどの場合、医師の診察によって判断できます。

診察は、主に以下の流れで行われます。

  • 問診 患者さんから症状について詳しくお話をうかがいます。 いつから症状があるか、痛みの強さ、過去に同じ経験があるかなど、 診断や治療方針を決めるための大切な情報となります。
  • 視診・触診 医師が患部の状態を直接目で見て、やさしく触って確認します。 腫れの大きさや硬さ、赤み、熱を持っているかなどを調べます。 この診察だけで、バルトリン膿瘍だとわかることがほとんどです。

基本的にはこの診察で診断がつきますが、より詳しく調べることもあります。 まれに血液の中に細菌が広がる「敗血症」のような重い合併症を防ぐため、 迅速な診断と治療の開始が非常に重要だからです。

検査の種類

どんなことを調べるの?

細菌培養検査

膿を少し取って、原因となっている細菌の種類を特定します。

どの抗生物質が効くかを選ぶために重要で、特に再発を繰り返す場合に行われます。

超音波検査

体の中を見る機械(エコー)を使って、膿の袋の大きさや

正確な位置を画像で詳しく確認することがあります。

生検

ごくまれですが、悪性の腫瘍など他の病気が疑われる場合に、

組織の一部を採って顕微鏡で詳しく調べます。

外陰部の腫れには、他の病気が隠れている可能性もゼロではありません。 自己判断で放置せず、まずは専門の医師に相談することが大切です。

バルトリン膿瘍の治療

バルトリン膿瘍の治療目標は2つあります。 まず「今あるつらい痛みを早く取り除くこと」です。 そして「今後、同じ症状をくり返さないようにすること」です。

症状が軽い場合はお薬で様子を見ることもあります。 しかし、膿がたまって痛みが強い場合は、膿を外に出す処置が必要です。 放置すると、まれに細菌が血液に入りこむ「敗血症」という重い合併症につながる危険もあるため、早めの治療がとても大切です。

お薬で様子を見る方法(保存的治療)

症状がまだ軽い初期の段階では、お薬を使った治療が中心になります。 日常生活でのつらさを和らげながら、体の力で治るのを待ちます。

  • 抗生物質 細菌が増えるのを防ぐための飲み薬です。 原因となっている細菌に合わせたお薬が処方されます。
  • 消炎鎮痛剤 ズキズキする痛みや熱を持った腫れをやわらげるお薬です。

処置で膿を出す方法(外科的治療)

お薬だけでは改善しない場合や、痛みが非常に強い場合には、 たまった膿を外に出す外科的な処置が必要になります。

どの治療法が最も優れているかについては、専門家の間でもまだ一致した意見はありませんが、主に以下の方法がとられます。

治療法

どんなことをするの?

特徴

切開排膿術

皮膚を小さく切って、たまった膿を出します。

・痛みがすぐに楽になるのが利点です。

・しかし、切った場所がすぐに閉じてしまい、

再発しやすいため、最初の治療としては

不十分なことがあります。

Wordカテーテル

留置術

膿を出した後、小さな風船のついた管を数週間入れておきます。

・新しい膿の出口が自然に作られるのを助け、

再発を防ぎます。

・外来で部分的な麻酔(局所麻酔)で

行うことができます。

造袋術

(ぞうたいじゅつ)

膿の袋の壁を外側の皮膚に縫い合わせて、膿がたまらないように常に開いた出口を作ります。

・再発を何度もくり返す場合に

選ばれることが多い方法です。

最近の複数の研究をまとめた報告によると、Wordカテーテル留置術と造袋術の再発率には、大きな違いはないとされています。 どちらも再発を防ぐための有効な治療法と考えられており、患者さんの状態に合わせて最適な方法が選ばれます。

バルトリン膿瘍は急に強い痛みに襲われるつらい病気です。 我慢せずに、できるだけ早く婦人科を受診し、医師とよく相談して治療法を決めていきましょう。