小児がん

「がんは大人だけの病気」だと思っていませんか。実は、子どもでもがんになることがあります。日本では毎年2,000人から3,000人、およそ子ども10,000人に1人のお子さんが「小児がん」と診断されており、決して他人事ではない、身近な病気の一つなのです。

突然の告知に、「何がいけなかったのだろう」とご自身を責めてしまうかもしれません。しかし、小児がんの原因は生活習慣ではなく、誰のせいでもありません。医療の進歩で約8割が治る時代になりましたが、大人のがんとは特徴が大きく異なります。この記事では、小児がんの正しい知識と最新の治療法について詳しく解説します。

小児がんの概要

「がん」と聞くと、大人だけの病気だと思うかもしれません。 しかし、子どもでもがんになることがあります。 15歳未満の子どもにできるがんを「小児がん」と呼びます。

日本では毎年2,000人から3,000人のお子さんが診断されます。 これは、子ども約10,000人のうち1人がかかる計算です。 決して他人事ではない、身近な病気の一つといえます。

小児がんは、大人がかかるがんとは少し違う特徴があります。

項目

小児がん

大人がん

原因

生まれつきや成長の過程で、細胞に異常が起きることが多いです。

食事やタバコなどの生活習慣が関係することが多いです。

進行の速さ

進行が速いことが多いです。

比較的ゆっくり進むことが多いです。

治療の効果

お薬(抗がん剤)や放射線治療が効きやすい傾向にあります。

がんの種類によって様々です。

できる場所

血液や骨など、体の奥深くにできることが多いです。

胃や肺など、体の表面を覆う細胞にできることが多いです。

最近の医療の進歩で、小児がんの約8割は治る時代になりました。 しかし、治療が終わった後も安心というわけではありません。 体の疲れやすさや心の問題など、様々な影響が残ることがあります。

そのため、治療中から治療後にかけてのリハビリがとても大切です。 ある研究では、長期的なケアや疲れやすさへの対策、心のケアには 高いレベルの科学的根拠(エビデンス)があるとされています。 専門家が長期的に見守る体制を整えることが重要です。

小児がんの種類

「小児がん」とひとことで言っても、実はたくさんの種類があります。 体のどこにできるかや、がん細胞の性質によって分類されます。 そして、がんの種類が違うと、治療の方法も大きく変わります。

子どもがかかるがんで特に多いのは、以下の3つです。

  • 白血病(はっけつびょう) 血液をつくる工場である「骨髄」の細胞ががんになる病気です。
  • 脳腫瘍(のうしゅよう) ものを考えたり体を動かしたりする「脳」にがんができます。
  • 悪性リンパ腫(あくせいりんぱしゅ) 体をばい菌から守る「リンパ球」という細胞ががんになります。

この3つで小児がん全体の半分以上を占めていると言われています。 ほかにも、お母さんのお腹の中にいる時の細胞が原因となる、 赤ちゃんや小さい子どもに特有のがんもあります。

主な小児がんの種類

どんな病気?

白血病

血液のがん。小児がんで最も多いです。

脳腫瘍

脳にできる固形のがん。白血病の次に多いです。

悪性リンパ腫

免疫に関わるリンパ組織のがんです。

神経芽腫(しんけいがしゅ)

神経になるはずだった細胞から発生します。

腎芽腫(じんがしゅ)

腎臓になるはずだった細胞から発生します。

がんの種類によって治療で使うお薬も変わってきます。 お薬の中には、がんを治す一方で、体のほかの部分へ 影響をおよぼすものもあります。 ある研究では、特定のお薬が甲状腺の働きに影響を与える 可能性が報告されています。

また、治療を安全に進めるためのサポート体制はとても重要です。 しかし、住んでいる国や地域の医療体制によって、 その内容に差があることも課題として指摘されています。 実際、所得が低い国や地域ほど、治療による合併症で亡くなる 子どもの割合が高いという研究結果もあります。

小児がんの原因

お子さんががんと診断された時、多くの親御さんは自分を責めてしまうかもしれません。 「何がいけなかったのだろう」と考えるのは、自然なことです。 しかし、小児がんの原因は誰のせいでもありません。

大人がかかるがんとは違い、食事や運動などの生活習慣はほとんど関係ありません。 小児がんの多くは、お母さんのお腹の中で体が作られる過程で起こる、 細胞のわずかな異常がもとになっていると考えられています。

体の部分になるはずだった細胞が、生まれた後も残ってしまうことがあります。 そして、何かのきっかけでがん細胞に変わってしまうのです。

がんの種類

原因として考えられていること

神経芽腫

神経になるはずの細胞が、生まれた後も残ってしまうこと

腎芽腫

腎臓になるはずの細胞が、生まれた後も残ってしまうこと

網膜芽腫

目の網膜になるはずの細胞が残ってしまうこと

お子さんの病気について、親御さんがたくさんの情報を求めるのは当然です。 ある研究では、お父さんとお母さんでは心配になる点が少し違うと報告されています。 例えばお父さんは、治療がどう進むか、お子さんの気持ちはどうなるか、 といった点をより心配する傾向があるようです。

大切なのは、わからないことや不安なことを一人で抱え込まないことです。 心配な点はご家庭によっても違いますので、ぜひ担当の医師に相談してください。

小児がんの症状

小児がんの症状は、はじめは風邪やケガとよく似ています。 そのため、がんのサインだと気づくのが難しいことがあります。 しかし、「いつもと何かが違う」というご家族の気づきが、 病気を早く見つけるための大切なきっかけになります。

お子さんの体や様子に、次のような変化がないか確認してみましょう。

お子さんの体調チェックリスト

  • □ 原因がわからない熱が続いている ばい菌をやっつける血液の細胞が、うまく働けていないサインかもしれません。
  • □ 顔色が悪く、ぐったりして元気がない 血液のがんなどで、酸素を運ぶ「赤血球」が作れなくなっている可能性があります。
  • □ ぶつけていないのに青あざができやすい 血を止める働きを持つ「血小板」が減っているサインかもしれません。
  • □ 頭痛や吐き気が続く(特に朝方にひどい) 脳にできた腫瘍(しゅよう)が原因で、頭の中の圧力が高まっているサインです。
  • □ 首やわきの下などに、痛みのないしこりがある 体を守るリンパ節が、がん細胞によって腫れているのかもしれません。
  • □ お腹が張って、固いものが触れる感じがする 腎臓や肝臓、神経の細胞からできたがんの固まりかもしれません。
  • □ 写真を撮ると、片方の目が白く光って見える 目の奥にある網膜にがんができる「網膜芽腫」という病気のサインです。

お子さんの体のことだけでなく、心の変化も重要なサインです。 ある研究によると、お子さんのがんに対して親御さんが抱く心配事は、 お母さんとお父さんで少し違う傾向があると報告されています。

治療が始まると、お薬の影響でつらい口内炎ができることもあります。 口内炎の予防法も研究されていますが、確立された方法はまだありません。 気になる症状があれば、どんな小さなことでもかかりつけ医に相談してください。

小児がんの検査・診断

小児がんが疑われるとき、病気の正体を正確に知るための検査をします。 がんの種類や場所、体のどこまで広がっているかを詳しく調べるためです。 この情報をもとに、お子さん一人ひとりに最も効果的な治療計画を立てます。

主な検査には、次のようなものがあります。

  • 血液検査・尿検査 血液や尿の成分を分析し、がん細胞が体に与えている影響や、 全身の健康状態をチェックします。 白血病など血液のがんの診断では特に重要な検査です。
  • 画像検査 体の内部を写真のように写し出し、がんがどこに隠れているか、 どのくらいの大きさかなどを確認します。 超音波(エコー)やCT、MRIといった機械を使います。
  • 生検・骨髄検査 がんが疑われる部分の組織や、血液をつくる骨髄の液を少し取ります。 そして、顕微鏡で詳しく観察してがんの種類を確定します。 治療法を決めるうえで欠かせない、とても大切な検査です。

これらの検査は、お子さんにとって不安や痛みを伴うことがあります。 そのため、眠くなるお薬(麻酔)を使うなど、負担を減らす工夫をします。

最近では、検査のつらさを和らげるための新しい試みも進んでいます。 例えば、仮想現実(VR)の映像に集中してもらうことで、 検査への恐怖心や痛みを軽減する研究が行われています。 複数の研究結果を分析した報告によると、VRは患者さんを映像に没入させ、 治療に伴う痛みを効果的に和らげる可能性があるとされています。

小児がんの治療

小児がんの治療は、お子さん一人ひとりの状態に合わせて行います。 がんを直接やっつける「攻めの治療」と、治療を乗り切るための 「守りの治療」を組み合わせるのが基本です。

治療の進歩により、小児がんの約8割は治る時代になりました。 これは、色々な治療法をチームで力を合わせて行うおかげです。

攻めの治療:がんを直接やっつける方法

がんを直接攻撃する方法には、主に3つの柱があります。 がんの種類や場所によって、これらの治療法を使い分けます。

治療法

どんなことをするの?

手術療法

がんのかたまりを、メスを使って直接体から切り取ります。

薬物療法

抗がん剤などのお薬を使い、全身に広がったがん細胞を攻撃します。

放射線治療

がんがある場所に特殊な光をあてて、がん細胞を壊します。

守りの治療:つらい治療を乗り切るためのサポート

攻めの治療と同時に、お子さんの心と体を守るサポートも重要です。 これを「支持療法(しじりょうほう)」と呼びます。

  • リハビリテーション 治療で体力が落ちないように、早い段階から運動などを始めます。 ある研究では、体だけでなく心のケアも含めた長期的なサポートが、 とても大切だと高いレベルの科学的根拠をもって報告されています。
  • 副作用への対策 お薬の影響で、つらい口内炎ができることがあります。 口内炎を予防するために「亜鉛」という栄養素が効くかどうかの 研究も行われましたが、残念ながら効果はまだはっきりしていません。 このように、副作用を軽くするための研究が世界中で進んでいます。
  • 痛みや不安の軽減 治療は、お子さんにとって大きな不安や痛みを伴います。 最近では、VR(バーチャルリアリティ)の映像に集中してもらうことで、 注射などへの恐怖心を和らげる方法も研究されています。

質の高い支持療法を受けられる日本の環境は、とても恵まれています。 世界では、国の経済状況によって治療による合併症で亡くなる 子どもの割合が高いという研究結果もあります。 安全な治療には、手厚いサポートが不可欠なのです。