膀胱損傷

交通事故や転落事故の後、血尿や下腹部の痛みがあり不安に感じていませんか。膀胱損傷は強い外力で起こり、特に鈍的外傷による膀胱破裂は95%以上で骨盤骨折を伴うと報告されています。また、帝王切開などの手術が原因で生じることもあります。

この記事では、膀胱損傷の主な原因や特徴的な症状、損傷の重症度を判断するための検査方法を解説します。カテーテルによる保存的治療から緊急手術が必要なケースまで、損傷の程度に応じた治療法についても詳しく紹介します。

ご自身の症状や状況と照らし合わせることで、膀胱損傷の全体像を把握できます。適切な治療方針を理解し、早期に専門医へ相談するための判断材料としてお役立てください。

膀胱損傷の概要

膀胱損傷とは、外部からの強い衝撃や手術によって、骨盤内にある尿をためる臓器「膀胱」が傷ついてしまう状態です。損傷が起こる主な原因は、大きく「外傷」と「手術」の2つに分けられます。

1. 体の外からの力による損傷(外傷)

下腹部への強い衝撃によって膀胱が傷つくケースで、損傷のタイプによって以下のように分類されます。

・鈍的外傷(だんてきがいしょう)

交通事故や高い場所からの転落、スポーツでの激しい衝突などが原因です。特に、鈍的外傷による膀胱破裂の多くは骨盤骨折を伴うと考えられています。

・穿通性外傷(せんつうせいがいしょう)

刃物で刺されたり、銃で撃たれたりするなど、鋭利なものが体を貫通して膀胱に達するケースです。外傷による膀胱損傷の中では、鈍的外傷に比べて頻度は低いといえます。

2. 手術中に起こる損傷

膀胱は、子宮や大腸など骨盤内のさまざまな臓器と隣接しているため、婦人科や泌尿器科、消化器外科の手術の際に意図せず傷つけてしまうことがあります。

過去の手術や放射線治療による組織の癒着(ゆちゃく)や、大きな腫瘍がある場合は、特に慎重な操作が求められます。

中でも、産科領域では注意が必要なケースがあります。胎盤が子宮の壁に異常に強く付着してしまう「癒着胎盤スペクトラム(PAS)」という状態の妊婦さんが、出血などを理由に緊急で帝王切開を受ける場合です。

ある複数の研究をまとめた報告によると、このようなケースでは、予定された帝王切開に比べて膀胱損傷のリスクが約2.1倍に高まることが示されています※。

膀胱損傷の種類

膀胱損傷は、その傷の深さや状態によって、大きく「挫傷(ざしょう)」と「破裂」の2つに分けられます。

・膀胱挫傷(ぼうこうざしょう)

膀胱の壁そのものは破れていませんが、強い衝撃によって壁の内側で内出血を起こしている状態です。いわば膀胱の「打ち身」のようなもので、破裂に比べると軽度な損傷といえます。

・膀胱破裂(ぼうこうはれつ)

膀胱の壁が完全に裂け、中にたまっていた尿が外へ漏れ出してしまう状態です。尿がどこに漏れるかによって、さらに2つのタイプに分類され、それぞれ緊急性が異なります。

膀胱破裂のタイプと特徴を、下表に整理します。

破裂のタイプ | 概要 | 特徴

腹膜外(ふくまくがい)破裂 | ・膀胱の周りにある骨盤内のスペースに尿が漏れる状態 | ・膀胱破裂の大多数を占める ・交通事故や転落による骨盤骨折を伴うケースがほとんど

腹膜内(ふくまくない)破裂 | ・お腹の中(腹腔)に尿が漏れる状態 | ・漏れた尿が腹膜を刺激し、激しい腹痛を伴う「腹膜炎」を引き起こす危険性がある

これらの損傷は、交通事故のような外傷だけでなく、手術中に意図せず起こることもあります。

例えば、胎盤が子宮に強く癒着する「癒着胎盤スペクトラム(PAS)」の方が、出血などを理由に緊急で帝王切開を受ける場合、予定された手術に比べて膀胱損傷のリスクが約2.1倍に高まることが報告されています※。

また、過去に前立腺がんなどで前立腺を摘出する手術を受けた方が、その後、鼠径(そけい)ヘルニアの手術を受ける際などにも、まれに膀胱損傷が起こることがあります※。これは、過去の手術の影響で組織が癒着(ゆちゃく)し、臓器の境界が分かりにくくなることなどが一因です。

膀胱損傷の原因

膀胱損傷の原因は、大きく分けて「体外からの強い衝撃(外傷)」と「手術中の偶発的な損傷(医原性損傷)」の2つです。

外傷の中で最も多いのは、交通事故や高所からの転落といった強い衝撃が下腹部に加わる「鈍的外傷(だんてきがいしょう)」です。鈍的外傷による膀胱破裂では、95%以上で骨盤骨折を伴うと報告されており、いかに強力なエネルギーが加わっているかがわかります。

一方、刃物で刺されたり銃で撃たれたりして膀胱に達する「穿通性外傷(せんつうせいがいしょう)」は、外傷による膀胱損傷全体の10%未満と、頻度は高くありません。

もう一つの主な原因である手術中の損傷は、骨盤内の手術で最も起こりやすい合併症の一つと考えられています。膀胱は子宮や大腸など多くの臓器と隣り合っているため、以下のような手術の際に意図せず傷つけてしまうことがあります。

・婦人科の手術(腹式子宮全摘術、帝王切開など)

・消化器外科の手術(大腸切除術など)

・泌尿器科の手術(経尿道的手術など)

特に、過去の手術や放射線治療で組織の癒着(ゆちゃく)や瘢痕(はんこん)があったり、大きな腫瘍や炎症があったりする場合には、膀胱を損傷するリスクが高まります。

なかでも産科領域では、特に注意が必要なケースが存在します。

それは、胎盤が子宮の壁に異常に強く食い込んでしまう「癒着胎盤スペクトラム(PAS)」という状態の妊婦さんが、緊急で帝王切開を受ける場合です。

予期せぬ出血などを理由に行われる緊急帝王切開は、予定された手術に比べて膀胱を損傷するリスクが約2.1倍に高まることが、複数の研究をまとめた報告で示されています※。

膀胱損傷の症状

膀胱損傷のサインは、ケガの直後に自覚する症状と、手術中に医師が気づく所見の2つのパターンに大別されます。

交通事故や転落などで下腹部を強く打った後に、次のような症状が見られた場合は膀胱損傷を疑います。

・目で見てわかる血尿(肉眼的血尿)

鈍的な外傷による膀胱損傷では、ほぼ全てのケースでこの症状が現れるとされています。

・下腹部(恥骨の上あたり)の痛み

特に、尿がお腹の中に漏れ出す「腹膜内破裂」という状態では、腹膜が刺激されて激しい痛みを伴うことがあります。

・尿意があるのに出せない

損傷によって膀胱がうまく機能しなくなったり、血の塊が尿道を塞いだりすることが原因で起こります。

・下腹部の張り

損傷した部分から膀胱の外へ尿が漏れ出し、お腹にたまることで生じます。

一方、手術中に膀胱を損傷した場合は、術者である医師が以下のような変化に気づくことで判明するのが一般的です。

・手術している場所への尿の漏れ出し

・突然の出血量の増加

・尿道に入れているカテーテルが、手術の傷口からのぞく

特に、胎盤が子宮の壁に異常に強く付着してしまう「癒着胎盤スペクトラム(PAS)」の方が、出血などを理由に緊急で帝王切開を受ける際には注意が必要です。

このようなケースでは、予定されていた帝王切開に比べて、膀胱を損傷するリスクが約2.1倍に高まることが報告されています※。

膀胱損傷の検査・診断

膀胱損傷の診断は、まず損傷を強く疑うことからスタートし、画像検査によって確定診断を下すのが一般的な流れです。

交通事故や転落といった受傷時の状況、そして「血尿」や「尿意があるのに出せない」といった症状は、診断の重要な手がかりとなります。

診断は、主に以下の3つのステップで進められます。

・問診・身体診察

ケガの状況や症状を詳しくお聞きしたうえで、お腹を触って痛みや張りの有無を確認します。骨盤骨折を合併していることも多いため、出血の評価として直腸や、女性の場合は腟の診察も慎重に行います。

・逆行性膀胱造影

膀胱損傷の確定診断に不可欠な検査です。尿道から細い管(カテーテル)を膀胱まで挿入し、そこから造影剤を注入してX線撮影を行います。この際、膀胱を十分に膨らませて小さな損傷も見逃さないよう、300mL以上の造影剤を使用するのが一般的です。撮影画像で膀胱の外に造影剤が漏れ出していないかを確認し、損傷の有無と場所、程度を正確に評価します。

・CT検査

骨盤骨折や他の内臓損傷の有無を一度に評価できるため、極めて重要な検査です。特に、鈍的な外傷による膀胱破裂では95%以上で骨盤骨折を伴うとされ、膀胱損傷が単独で起こることはまれです。そのため、CT検査で全身の状態を把握することが、適切な治療方針の決定につながります。

また、ケガだけでなく、手術中に膀胱損傷が判明することもあります。

例えば、過去に前立腺がんの手術を受けた方が鼠径ヘルニアの手術を受ける際に、まれに膀胱損傷が起こることがありました。これは、以前の手術による癒着で組織の境界がわかりにくくなるためですが、近年の研究では、腹腔鏡を用いた低侵襲手術が安全かつ効果的に行える選択肢であることが示されています※。

産科領域でも、特に注意深い観察が求められるケースがあります。胎盤が子宮に異常に強く付着してしまう「癒着胎盤スペクトラム(PAS)」の方が、出血などを理由に緊急で帝王切開を受ける場合です。このような緊急手術では、予定された手術に比べて膀胱損傷のリスクが約2.1倍に高まることが報告されています※。

膀胱損傷の治療

膀胱損傷の治療は、傷の深さや尿の漏れ方によって方針が大きく変わります。基本は、カテーテルで尿を排出し続けて膀胱を休ませる「保存的治療」ですが、損傷が重い場合は穴を塞ぐための「外科手術」が必要です。

治療法の選択基準を、損傷の種類ごとに下表に整理します。

損傷の種類 | 主な治療法 | 治療のポイント

膀胱挫傷 (膀胱の打ち身) | 保存的治療 (カテーテル留置) | ・膀胱を空にして安静に保ち、自然治癒を促す ・通常、血尿がなくなるまでカテーテルを留置する

腹膜外破裂 (軽〜中等度) | 保存的治療 (カテーテル留置) | ・ほとんどのケースでカテーテル治療のみで管理できる ・膀胱を休ませ、傷が自然に塞がるのを待つ

腹膜外破裂 (重度) | 外科手術 | ・カテーテルだけでは治癒が難しい大きな損傷 ・膀胱の出口(膀胱頸部)や直腸、腟にも損傷が及んでいる場合

腹膜内破裂 | 外科手術 | ・尿がお腹の中に漏れ、「腹膜炎」という危険な状態を引き起こすため、緊急手術が必要

穿通性損傷 (刃物や銃など) | 外科手術 | ・他の臓器も損傷している可能性が高く、お腹を開けて全体を確認しながら修復する必要がある

ケガだけでなく、骨盤内の手術中に膀胱損傷が起こることも少なくありません。その場合は、原則として手術中に修復処置が行われます。

特に、産科領域では注意深い対応が求められるケースがあります。胎盤が子宮の壁に異常に深く食い込む「癒着胎盤スペクトラム(PAS)」という状態の方が、出血などを理由に緊急で帝王切開を受ける場合、予定された帝王切開に比べて膀胱を損傷するリスクが約2.1倍に高まることが報告されています※。

また、過去に前立腺がんなどで前立腺を摘出する手術を受けた方が、その後、鼠径(そけい)ヘルニアの手術を受ける際にも、まれに膀胱を傷つけてしまうことがあります。これは、過去の手術の影響で組織が癒着し、臓器の境界が分かりにくくなることが一因と考えられています。ただし、近年では腹腔鏡を用いた手術が安全かつ効果的な選択肢となりうることが示されています※。