尿道狭窄症

「最近、おしっこの勢いが弱くなった」「排尿に時間がかかる」…。そんな変化を、単なる年齢のせいだと片付けていませんか?その症状、おしっこの通り道が物理的に狭くなる「尿道狭窄症」かもしれません。生活の質を落とすだけでなく、放置すれば膀胱や腎臓に深刻なダメージを与える危険性も潜んでいます。

意外にも、この病気の原因は尿道にできた「傷あと」です。日本の調査では、原因の半数以上がケガ(外傷)であると報告されており、過去の事故や「自転車で股間を強く打った」といった日常的な出来事が引き金になることも少なくありません。

この記事では、尿道狭窄症の詳しい症状や原因、そして最新の治療法について解説します。ご自身の状態を正しく理解し、大切な体を守るための一歩を踏み出しましょう。

尿道狭窄症の概要

尿道狭窄症は、おしっこの通り道である尿道が狭くなる病気です。 何らかの原因で尿道に傷がつくと、治る過程で硬い組織ができます。 この硬い組織によって、尿道の内側が物理的に狭くなってしまいます。

おしっこが出にくいという症状は、生活の質を大きく下げてしまいます。 しかし、問題はそれだけではありません。 治療せずに放置すると、体に様々な悪影響を及ぼす可能性があります。

尿道狭窄症によって起こりうる主な問題は、以下の通りです。

  • 生活の質(QOL)の低下 トイレの回数が増えたり、排尿に時間がかかったりします。 おしっこをした後もスッキリしない感じ(残尿感)が残ります。
  • 膀胱や腎臓へのダメージ 膀胱は、狭い尿道へ尿を無理に押し出そうとして負担がかかります。 この状態が続くと、膀胱の機能が低下することがあります。 さらに尿が腎臓へ逆流し、腎臓の働きを悪くする危険もあります。
  • 尿路感染症のリスク 膀胱に尿が残ると、中で細菌が繁殖しやすくなります。 その結果、膀胱炎などの尿路感染症を繰り返しやすくなります。

このように、尿道狭窄症は排尿のトラブルだけにとどまりません。 膀胱や腎臓という大切な臓器にも影響を及ぼすため注意が必要です。

尿道狭窄症の種類

尿道狭窄症は、おしっこの通り道である尿道がどこで狭くなるかによって、いくつかの種類に分けられます。 どの部分が狭くなっているかを知ることは、原因を特定し、適切な治療法を選ぶうえで非常に重要です。

尿道を膀胱から体の外へ続く一本の管として考えると、狭くなる場所は主に以下の5つに分類されます。

  • 尿道口・舟状窩(しゅうじょうか)狭窄 おしっこの出口そのものや、そのすぐ内側にある舟のような形をした部分(舟状窩)が狭くなる状態です。
  • 陰茎部(いんけいぶ)尿道狭窄 ペニスの内部を通っている部分の尿道が狭くなります。比較的、体の外に近い部分での狭窄です。
  • 球部(きゅうぶ)尿道狭窄 ペニスの根元から股間のあたり(会陰部)にある尿道が狭くなる状態です。この部分は怪我をしやすい場所でもあります。
  • 後部(こうぶ)尿道狭窄 さらに体の奥深く、骨盤の中にある前立腺の近くを通る尿道が狭くなります。交通事故などの大きな怪我が原因となることがあります。
  • 膀胱頸部(ぼうこうけいぶ)硬化症 尿道と膀胱のつなぎ目にあたる、膀胱の出口部分が硬くなって狭まる状態です。前立腺の手術後などに起こることがあります。

このように、狭くなる場所は体の表面に近い部分から、体の奥深くにある部分まで様々です。 ご自身の症状がどの種類の狭窄によるものなのかを正確に診断し、それに合わせた治療を受けることが大切です。

尿道狭窄症の原因

尿道が狭くなるのは、尿道の壁にできた「傷あと」が原因です。 けがをした後の皮膚が硬くなるように、尿道も傷つくと治る過程で硬い組織(瘢痕組織)ができてしまいます。 この硬い組織が、おしっこの通り道を狭くしてしまうのです。

尿道に傷がつく原因は、一つだけではありません。 日常生活のケガから、病気の治療まで様々なことがきっかけになります。 日本の調査では、ケガ(外傷)が原因の半数以上を占めると報告されています。

尿道狭窄症を引き起こす主な原因は、以下の通りです。

  • ケガ(外傷) 交通事故や高い場所からの転落で骨盤を骨折した際に、尿道が傷つくことがあります。 また、自転車のサドルで股間を強く打つなど、日常生活の中でのケガも原因となりえます。
  • 医療行為(医原性) 病気の治療や検査が、結果的に尿道を傷つけるきっかけになることがあります。 尿道に管を入れる検査や手術、尿道カテーテルの長期的な使用などが挙げられます。 前立腺肥大症や前立腺がんの手術後に起こることもあります。
  • 炎症 尿道炎や性感染症(STI)によって、尿道の粘膜に炎症が起こることがあります。 この炎症が治る過程で、傷あとが残ってしまい、尿道が狭くなることがあります。
  • 生まれつき(先天性) 頻度は高くありませんが、生まれたときから尿道の一部が狭い方もいます。

このほか、前立腺がんなどに対する放射線治療の影響で、尿道が硬くなることもあります。 このように原因は多岐にわたるため、心当たりがない場合でも注意が必要です。

尿道狭窄症の症状

尿道狭窄症の症状は、おしっこの通り道が狭くなることで起こります。 症状はゆっくりと現れるため、ご自身では変化に気づきにくいことも。 年齢のせいだと考えがちですが、体の異常を知らせるサインかもしれません。

ご自身の状態と比べられるよう、具体的な症状をまとめました。 一つでも当てはまるものがないか、確認してみてください。

【尿道狭窄症のセルフチェックリスト】

  • おしっこをするときの変化 尿の勢いが以前よりも弱くなったと感じる。 尿の線が細くなったり、途中で途切れたりする。 お腹に力を入れないと、おしっこが出にくい。 トイレで排尿を終えるまでに時間がかかる。
  • おしっこが終わった後の変化 排尿後も、まだ尿が残っているような感じがする(残尿感)。 トイレを出た後で、下着に尿が少し漏れてしまうことがある。
  • その他の体のサイン 以前よりもトイレに行く回数が増えた(頻尿)。 急に我慢できないほどの強い尿意を感じることがある。 尿や、男性の場合は精液に血が混じることがある。 膀胱炎などの尿路感染症を何度も繰り返している。

特に注意が必要なのは、「尿閉(にょうへい)」という状態です。 これは、尿意があるのに全くおしっこを出せなくなる深刻な症状です。 下腹部に強い痛みを伴うことが多く、すぐに医療機関での処置が必要です。

尿道狭窄症の検査・診断

尿道狭窄症の診断では、まず問診で症状を詳しくお伺いします。 しかし、おしっこの勢いが弱いといった症状だけでは診断は確定できません。 尿道が「どこで」「どのくらい」狭くなっているのかを正確に知る必要があります。 そのために、いくつかの検査を組み合わせて総合的に判断します。

主な検査方法には、以下のようなものがあります。

  • 尿流量測定(ウロフロメトリー) 機械が内蔵された専用のトイレで、いつも通り排尿するだけの検査です。 尿の勢いや量、排尿にかかる時間などを自動で測定してグラフ化します。 「勢いが弱い」というご自身の感覚を、客観的な数値データで評価できます。
  • 画像検査 尿道の形を画像として写し出し、狭窄の場所や長さを調べます。 – 尿道造影検査 尿道の出口から造影剤という薬を注入しながらレントゲン撮影を行います。 造影剤を使うことで、普通のレントゲンでは見えない尿道の形がはっきりと写ります。 これにより、狭窄の正確な位置や長さを把握できます。 – 超音波(エコー)検査 体の表面から超音波をあてて、尿道とその周りの状態を観察します。 特に、狭窄の原因である硬い組織(瘢痕)の厚みなどを評価するのに役立ちます。
  • 尿道鏡検査 尿道狭窄の診断を確定するために、中心となる重要な検査です。 先端にカメラが付いた細い管(内視鏡)を尿道の中に挿入します。 医師がモニターを通して、尿道の内側を直接目で見て確認します。 狭くなっている場所や粘膜の状態をリアルタイムで観察できるため、診断を確定する上で非常に重要な情報が得られます。

これらの検査結果を総合的に評価し、診断を確定します。 そして、その情報をもとに、患者さん一人ひとりに最適な治療方針を決定していきます。

尿道狭窄症の治療

尿道狭窄症の治療法は、狭窄の場所や長さ、過去の治療歴などを基に決定します。 患者さん一人ひとりの状態に合わせて、最適な方法を選ぶことが大切です。 主な治療法には、以下の3つの選択肢があります。

尿道拡張術(ブジー)

「ブジー」と呼ばれる細い棒状の医療器具を尿道に挿入する方法です。 最初は細い器具から始め、少しずつ太いものに替えながら進めます。 狭くなった部分を物理的に押し広げる、比較的シンプルな治療です。

体への負担が少なく、日帰りや短い入院期間で済むのが利点です。 しかし、効果が一時的で、時間が経つと再び狭くなる可能性があります。 そのため、定期的にこの処置を繰り返す必要がある場合も少なくありません。

内視鏡的尿道切開術

尿道の出口から、先端にカメラが付いた細い管(内視鏡)を挿入します。 医師がモニターで尿道の内側を直接見ながら手術を行います。 狭くなっている部分を、内視鏡の先端についた特殊なメスで切開します。

尿道拡張術で改善が見られない場合などに行われることが多いです。 この治療も体への負担は比較的小さいですが、再発の可能性があります。 特に、狭窄の範囲が長かったり、瘢痕が厚かったりすると再発しやすいです。

尿道形成術

根本的な改善を目指す、より本格的な外科手術です。 狭くなっている部分の尿道を一度切り取り、正常な部分をつなぎ直します。 狭い範囲が広い場合は、口の中の粘膜などを移植することもあります。

ご自身の体の組織を使って、新しい尿道を作り直すのです。 体への負担は大きくなりますが、再発のリスクを大きく減らせます。 何度も再発を繰り返す方や、根治を目指したい方に適した治療法です。

治療法

内容

メリットとデメリット

尿道拡張術

器具で狭い部分を物理的に広げる

・体への負担が少ない

・再発することがある

内視鏡的尿道切開術

内視鏡で狭い部分を切って広げる

・尿道拡張術より効果が期待できる

・再発の可能性がある

尿道形成術

手術で尿道を再建する

・根本的な改善が期待できる

・体への負担が大きい