萎縮性腟炎

閉経後の女性の約半数が経験するといわれる、腟の乾燥やかゆみ、痛み。デリケートな悩みだからと、「もう年だから…」と一人で抱え込んでいませんか。その不快な症状は「萎縮性腟炎」かもしれません。

原因は、女性ホルモン「エストロゲン」の減少です。このホルモンが減ることで、腟はうるおいと弾力を失い、さまざまなトラブルを引き起こします。しかし、年齢による変化だと諦める必要はもうありません。

最近では治療法の研究も進み、例えばレーザー治療によって腟の弾力が回復したことが、客観的なデータで証明されるようにもなりました。この記事では、萎縮性腟炎の詳しい原因や症状、最新の治療法までを解説します。ご自身の状態と比べながら、解決のヒントを見つけてください。

萎縮性腟炎の概要

萎縮性腟炎は、閉経後の女性の約半数が経験します。 決して珍しいものではなく、誰にでも起こりうる変化です。

原因は、女性ホルモン「エストロゲン」の減少です。 エストロゲンには、腟の健康を守る大切な働きがあります。

  • 腟の壁を厚く保つ うるおいと弾力を与え、外部の刺激から守ります。
  • 腟内を酸性に保つ 善玉菌を育て、雑菌が増えるのを防ぎます。

しかし、閉経などでエストロゲンが減ると、腟は乾燥します。 壁が薄く弱くなり、弾力も失われてしまうのです。 その結果、かゆみや痛み、性交痛などが起こりやすくなります。

年齢による変化とあきらめる必要はありません。 最近では、治療法の研究も大きく進んでいます。

例えば、レーザー治療で腟の組織の弾力が改善することが、 客観的なデータで示されるようになってきました。

ある研究では、超音波で組織の硬さを測る特殊な検査 (シャーウェーブエラストグラフィー)を用いています。 この検査により、治療後に腟の弾力が回復したことが、 数字として証明されました。

このように、適切なケアや治療で症状は改善できます。 気になる症状があれば、一度専門医に相談しましょう。

萎縮性腟炎の種類

萎縮性腟炎には、医学的にはっきりとした分類はありません。 しかし、現れる症状の組み合わせによって、 いくつかのタイプに分けて考えると分かりやすいです。

ご自身の症状がどのタイプに近いか、一度確認してみましょう。 これらのタイプは、どれか一つだけではなく、 複数が重なって現れることも珍しくありません。

  • 乾燥やかゆみが気になるタイプ 腟のうるおいが不足し、常に乾いた感じやかゆみが出ます。 悪化すると、下着がこすれるだけでヒリヒリ痛むこともあります。
  • 性交のときの痛みがつらいタイプ 腟の壁が薄く硬くなり、弾力を失うことで起こります。 うるおいも減るため、性交時に強い痛みや出血を伴いやすいです。 この痛みが原因で、パートナーとの関係に影響が出る方もいます。
  • トイレが近くなるタイプ 腟と膀胱は場所が近く、どちらも女性ホルモンの影響を受けます。 そのため、頻尿や尿もれなど、膀胱炎と間違えやすい症状が出ます。 抗生物質を飲んでも治りにくい膀胱炎は、これが原因かもしれません。
  • 感染症をくり返すタイプ 腟内を守る善玉菌が減ると、悪い菌が増えやすくなります。 おりものの色が黄色くなったり、嫌なにおいがしたりします。 これは、腟が持つ自分でキレイにする力(自浄作用)の低下が原因です。

お悩みのタイプ

主な症状の例

① 乾燥・不快感タイプ

・腟の中が乾く、かゆい、ヒリヒリする<br>・歩いたり下着がすれたりすると痛い

② 性交痛タイプ

・性交の時に強く痛む、出血する<br>・腟が狭くなったように感じる

③ 排尿トラブルタイプ

・トイレが近い、急に尿意を感じる<br>・くしゃみなどで尿がもれる、排尿時に痛む

④ 感染症併発タイプ

・おりものの色(黄色など)やにおいが変わる<br>・細菌による腟の炎症をくり返す

これらの症状は、最初は一つでも、時間とともに増えることがあります。 例えば、乾燥から始まり、感染症や性交痛につながることも少なくありません。 気になる症状があれば、放置せずに専門の医師に相談してください。

萎縮性腟炎の原因

萎縮性腟炎の最も大きな原因は、女性ホルモンの一種である 「エストロゲン」が少なくなることです。

エストロゲンは、腟の健康を守るための、 まるで「お守り」のような大切な役割を担っています。

  • 腟の壁を厚く、ふかふかに保つ 腟の壁にうるおいと弾力を与え、クッションのように 外部からの刺激(下着のこすれなど)から守ります。
  • 腟内環境を清潔に保つ 善玉菌(ラクトバシラス菌)を元気に育て、 悪い菌が増えるのを防いでくれる働き(自浄作用)があります。

しかし、エストロゲンが減ると、この「お守り」の力が弱まります。 その結果、腟の壁は薄く、乾燥してもろくなってしまいます。 最近の研究では、この変化で腟の弾力が失われることも分かっています。

エストロゲンが減ってしまうのには、いくつかの理由があります。 決して、年齢を重ねた方だけの問題ではありません。

  • 加齢による変化 閉経を迎えると卵巣の働きがゆっくりになり、 エストロゲンの量が大きく減ります。これが最も多い原因です。
  • 手術や治療の影響 卵巣を取り除く手術や、がんの治療(抗がん剤や放射線)も、 ホルモンバランスに影響を与えます。
  • ライフステージの変化 産後や授乳中は、一時的にホルモンの分泌が変わり、 腟が乾燥しやすくなることがあります。
  • 生活習慣や薬の影響 無理なダイエットや強いストレスは、ホルモンバランスを乱します。 また、長期間の低用量ピル服用が影響することもあります。

このように、萎縮性腟炎はさまざまな年代の女性に起こりうるのです。

萎縮性腟炎の症状

女性ホルモン(エストロゲン)が減ると、腟はうるおいを失います。 腟を守るバリア機能が弱まり、さまざまなサインが現れます。 生活の質にも関わるため、どんな症状があるか知ることが大切です。

ご自身の状態と比べながら、チェックしてみましょう。 一つでも当てはまれば、それは体からの大切なサインかもしれません。

【不快感に関するサイン】

  • 腟の中が乾く 常に乾燥している感じや、ヒリヒリとした熱っぽさを感じます。
  • かゆみや痛み 腟やその周りがむずがゆく、悪化すると痛みに変わります。 腟の壁が薄くなるため、下着がこすれるだけで痛むこともあります。

【痛みや出血に関するサイン】

  • 性交のときの痛み(性交痛) うるおいが不足し、腟の弾力も失われるために起こります。 多くの方が悩む代表的な症状で、治療効果の目安にもなります。
  • 性交のあとの出血 薄くなった腟の壁が、わずかな刺激で傷つきやすくなるためです。
  • 内診やタンポン使用時の痛み 腟全体が硬く、狭くなったように感じて痛みが出やすくなります。

【排尿やおりもののサイン】

  • トイレのトラブル 腟と膀胱は近いため、頻尿や尿もれなどが起こりやすくなります。 排尿時に痛みを感じるなど、膀胱炎と間違われることもあります。
  • おりものの変化 腟内を清潔に保つ力(自浄作用)が弱まり、菌が増えやすくなります。 その結果、おりものが黄色っぽくなったり、嫌なにおいがしたりします。

萎縮性腟炎の検査・診断

萎縮性腟炎が疑われるとき、医師はいくつかの方法で診断します。 患者さんの不安を取り除き、正しい治療につなげるためです。 診断は、主にお話を聞く「問診」と、直接状態を見る「内診」が中心です。

まず、医師は患者さんが感じている症状を詳しくお聞きします。 これは、診断のためのとても大切な手がかりになります。

  • 問診で確認すること どんな症状がありますか?(例:腟の乾燥、かゆみ、性交痛など) 症状はいつから始まりましたか? 閉経の時期や、他の病気の治療歴などもお伺いします。

次に行うのが、腟鏡(ちつきょう)という器具を使った内診です。 医師が直接、腟の中の状態を見て、変化を確かめます。 健康な状態と比べることで、診断の精度が高まります。

  • 内診で見るポイント ・腟の壁が薄くなっていないか ・腟のひだが少なく、平らになっていないか ・炎症による赤みや、小さな出血がないか

これらの診察に加え、必要に応じてさらに詳しい検査を行います。 他の病気の可能性がないかを確認したり、治療の効果を客観的に評価したりするためです。

検査の種類

この検査で何がわかるの?

おりものの検査

かゆみの原因が、カンジダなど他の菌ではないかを確認します。

腟のpH測定

腟内を守る酸性のバランスが、崩れていないかを調べます。

超音波検査

治療で腟の弾力が回復したか、客観的な数字で評価できます。

がん検査

不正な出血がある場合、他の病気でないことを確かめます。

特に超音波で組織の硬さを測る「シャーウェーブエラストグラフィー」は、 治療効果を客観的に評価できる新しい方法として注目されています。 ある研究では、レーザー治療後に腟の弾力が改善したことが、 この検査によって数字として証明されました。

これらの問診や内診、検査の結果を総合的に判断し、診断を確定します。

萎縮性腟炎の治療

萎縮性腟炎のつらい症状は、治療で和らげることができます。 生活の質を取り戻すため、様々な選択肢があります。 治療法は一つではなく、あなたの状態や希望に合わせて選びます。

女性ホルモンを補う治療

減ってしまった女性ホルモン「エストロゲン」を補う方法です。 腟のうるおいを取り戻し、バリア機能を高めることを目指します。

  • 局所療法(腟の中に入れるお薬) エストロゲンを含むお薬を、直接腟の中に入れます。 足りなくなったホルモンをピンポイントで補給する方法です。 全身への影響が少なく、腟の乾燥やかゆみに直接働きます。
  • 全身投与(飲み薬や貼り薬) ほてりやのぼせなど、腟以外の更年期症状も強い場合に選びます。 飲み薬や貼り薬で、体全体にホルモンを補給します。

新しい選択肢としてのレーザー治療

近年、治療の選択肢としてレーザー治療も行われています。 腟の壁に特殊なレーザーを当て、組織の生まれ変わりを助けます。 これにより、腟本来が持つ厚みや弾力を取り戻すことを目指します。

ある研究では、このレーザー治療の効果が客観的に示されました。 「シャーウェーブエラストグラフィー」という特殊な超音波検査で、 組織の硬さ(弾力)を数字として測ることができます。 この検査により、治療後に腟の弾力が回復したと証明されました。

その他の治療法

ホルモンを使わない方法や、症状に合わせた治療もあります。

治療法

こんなお悩みがあるときに使います

保湿剤・潤滑ゼリー

・ホルモンを使わずに、まず乾燥や性交痛を和らげたい

漢方薬

・体全体のバランスを整えながら、症状を改善したい

抗菌薬

・おりものの変化など、細菌による炎症を伴っている

どの治療法が最適かは、一人ひとり異なります。 まずは医師に相談し、自分に合った治療計画を立てましょう。