急性扁桃炎

つばを飲み込むのもつらいほどの激しいのどの痛みと、38度を超える高熱。急性扁桃炎は、多くの人が一度は経験する身近な病気ですが、そのつらさは格別です。「またか…」と繰り返す方もいるかもしれません。しかし、その症状を「いつもの風邪」だと軽く考えてはいませんか?

実は、急性扁桃炎は原因によってウイルス性と細菌性に大別され、それぞれ治療法が全く異なります。特に注意が必要なのが、溶連菌などに代表される細菌性の扁桃炎です。これを放置してしまうと、まれにリウマチ熱などの重い合併症につながる危険性も潜んでいます。

この記事では、急性扁桃炎の正しい知識について、原因の見分け方から最適な治療法、再発を防ぐためのポイントまでを詳しく解説します。ご自身やお子さんの大切な体を守るため、ぜひ最後までご覧ください。

急性扁桃炎の概要

急性扁桃炎は、のどの奥にある扁桃が炎症を起こす病気です。 扁桃は、口や鼻から入る細菌やウイルスと最初に戦う、 体を守るための大切な免疫器官のひとつです。

普段は体を守る扁桃ですが、疲れやストレスがたまると、 体の抵抗力が落ちてしまいます。 すると病原体に打ち勝てず、扁桃自体が感染し炎症を起こします。

急性扁桃炎は、特に学童期のお子さんによく見られます。 しかし、大人も含め、あらゆる年齢の人がかかる身近な病気です。 特にお子さんは、まれに重い合併症につながることもあります。 のどの痛みや発熱があれば早めの対応が大切です。

急性扁桃炎について、大切なポイントをまとめました。

  • どんな病気? 免疫を担う扁桃が、細菌やウイルスに感染して急に腫れる病気です。
  • 主な症状は? 強いのどの痛みや、食べ物を飲み込むときの痛み(嚥下痛)が特徴です。
  • 誰がかかりやすい? お子さんに多いですが、どの年齢でもかかり、大人も注意が必要です。
  • うつるの? 原因のウイルスや細菌は、咳やくしゃみなどを通じて人にうつることがあります。

急性扁桃炎はよくある病気ですが、軽く考えずに、 正確な診断のもとで適切な治療を行うことがとても重要です。

急性扁桃炎の種類

急性扁桃炎は、原因やのどの見た目によって、いくつかの種類に分けられます。 原因によって治療法が大きく異なるため、種類を見極めることがとても大切です。

1. 原因による分類 急性扁桃炎は、主にウイルスか細菌のどちらが原因かで分類されます。

  • ウイルス性扁桃炎 急性扁桃炎で最も多いのが、このウイルス性のタイプです。 風邪の原因になるアデノウイルスなどが扁桃に感染して起こります。 ウイルスには抗菌薬(抗生物質)が効きません。 そのため、治療は熱や痛みを和らげる対症療法が中心となります。 しっかり水分をとり、体を休めることが回復への近道です。
  • 細菌性扁桃炎 細菌が原因となるタイプで、特に注意が必要です。 代表的な原因菌は「A群β溶血性レンサ球菌(ようれんきん)」です。 この菌は、まれに急性リウマチ熱などの重い合併症を起こすことがあります。 合併症を防ぐため、抗菌薬による適切な治療が重要になります。 特に学童期のお子さんはかかりやすいため、早めの対応が大切です。

種類

主な原因

特徴

ウイルス性

アデノウイルスなど

・急性扁桃炎で最も多い<br>・抗菌薬は効かない

細菌性

A群β溶血性レンサ球菌など

・抗菌薬による治療が必要<br>・重い合併症に注意が必要

2. 見た目による分類 のどを診察したときの見た目でも、以下のように分けられます。

  • 急性カタル性扁桃炎 扁桃が全体的に赤く腫れている状態です。 炎症の程度としては、比較的軽症な場合が多くみられます。
  • 急性化膿性扁桃炎 扁桃の表面に、白い点々とした膿(うみ)が付いている状態です。 この膿は、細菌やウイルスと戦った白血球の死骸のかたまりです。 急性濾胞(ろほう)性扁桃炎や、急性陰窩(いんか)性扁桃炎とも呼ばれます。

自己判断はせず、のどに異変を感じたら医療機関を受診してください。

急性扁桃炎の原因

のどが痛くなる急性扁桃炎の犯人は、主にウイルスや細菌です。 実は、急性扁桃炎の原因として最も多いのはウイルスによるものです。 ふだんの風邪やインフルエンザの原因となるウイルスが関係します。

一方で、細菌が原因で起こることもあり、注意が必要です。 特に「A群溶血性レンサ球菌」、通称「溶連菌」は代表的な原因菌です。 ウイルスや細菌が複数同時に感染することもあります。

【急性扁桃炎の主な原因】

  • ウイルス
  • アデノウイルス(プール熱の原因)
  • インフルエンザウイルス
  • EBウイルス(伝染性単核球症の原因)
  • ライノウイルス(鼻かぜの原因)
  • 細菌
  • A群溶血性レンサ球菌(溶連菌)
  • 肺炎球菌
  • 黄色ブドウ球菌

では、なぜウイルスや細菌が体に入ると病気になるのでしょうか。 実は、私たちののどには普段から菌がいますが、元気なときは問題ありません。 体を守る「免疫力」というガードマンが、菌の侵入や増殖を防いでいるからです。

しかし、疲れやストレスでガードマンの力が弱まると、菌に負けてしまいます。 これが、急性扁桃炎が発症する大きな引き金になるのです。

【免疫力が低下する主な要因】

  • 疲れやストレスの蓄積
  • 仕事や勉強の頑張りすぎで、体の抵抗力が落ちてしまいます。
  • 睡眠不足
  • 体を十分に休ませないと、免疫システムがうまく働きません。
  • 空気の乾燥
  • のどの粘膜が乾くと、ウイルスなどを防ぐバリア機能が低下します。

急性扁桃炎は学童期のお子さんに多いですが、どの年齢でもかかります。 原因を正確に診断し、適切な治療につなげることがとても大切です。

急性扁桃炎の症状

急性扁桃炎は、症状が急に強くあらわれるのが特徴です。 特に、のどの症状と、からだ全体の症状が同時に出ることが多いです。 ふだんの風邪とは違う、つらい症状に注意してください。

のどの症状(局所症状)

主な症状は、強いのどの痛みと、ものを飲み込むときの痛みです。 これを嚥下困難(えんげこんなん)と言い、食事もつらくなります。

  • 激しいのどの痛み つばを飲み込むことさえためらうほどの、激しい痛みを感じます。
  • 扁桃の腫れと膿(うみ) のどの奥にある扁桃が赤く大きく腫れあがります。 表面に、白くてブツブツとした膿が付くこともよくあります。
  • 関連する痛みや変化 痛みが耳の方まで響くように感じることがあります。 また、声がこもって、口の中で話しているような話し方になります。

小さなお子さんでは、痛くてうまく伝えられないこともあります。 よだれが普段より多くなったり、食事を嫌がったりするのもサインです。

からだ全体の症状(全身症状)

のどの症状とあわせて、からだ全体にもつらい症状が出ます。

  • 高熱と寒気 38℃以上の高い熱が出て、ゾクゾクするような寒気を感じます。
  • からだの痛みやだるさ 頭痛や、関節・筋肉の痛み、強いだるさを感じます。
  • 首のリンパ節の腫れ あごの下や首のリンパ節が腫れて、触ると痛むことがあります。

特にお子さんは、まれに重い合併症につながる危険性があります。 正確な診断と適切な治療がとても重要になるため、 以下の症状に気づいたら、すぐに医療機関を受診しましょう。

【急性扁桃炎の症状チェックリスト】

  • 38度以上の熱がある
  • 強いのどの痛みがある
  • つばや食べものを飲み込むのがつらい
  • 鏡でのどを見たら、扁桃が赤く腫れている
  • 寒気や体のだるさを感じる
  • 首のリンパ節が腫れて痛い

急性扁桃炎の検査・診断

のどの痛みや熱で病院へ行くと、まず問診でのどを直接見ます。 急性扁桃炎の診断では、原因がウイルスか細菌かを見極めます。 これが、適切な治療を早く始めるためにとても重要になります。

正確な診断は、つらい症状から回復するための最も大切な一歩です。 診察や検査は、主に以下の手順で進められます。

診察(視診と触診)

医師がライトを使い口の中を観察し、扁桃の状態を確認します。 のどが痛くて口を開けるのもつらいと思いますが、大切な診察です。

  • 扁桃の赤みや腫れの程度 どのくらい炎症が起きているか、客観的に評価します。
  • 膿(うみ)の付着の有無 細菌と戦った証拠である、白い膿があるかを確認します。
  • 首のリンパ節の診察 あごの下や首を触って、リンパ節の腫れや痛みを調べます。

詳しい検査

視診だけでは原因の特定が難しい場合、詳しい検査を行います。 特に、重い合併症を防ぐため、細菌感染を見逃せません。

検査の種類

内容

わかること

迅速抗原検査

長い綿棒でのどの奥をこすり、粘液を調べます。

「A群溶血性レンサ球菌(溶連菌)」という特定の細菌に感染しているか、10分ほどでわかります。

細菌培養検査

採取した検体を検査機関で育て、詳しく調べます。

原因菌の種類や、どの抗菌薬(抗生物質)が有効かを特定できます。結果判明には数日かかります。

血液検査

腕などから採血します。

体の中でどのくらい炎症が起きているかを、白血球の数やCRPという炎症反応の数値で評価します。

これらの検査結果を総合的に判断して、最終的な診断を下します。 原因によって治療法が大きく異なるため、検査は非常に大切です。

急性扁桃炎の治療

急性扁桃炎の治療は、原因と症状の重さで大きく変わります。 治療の目的は、つらい症状を和らげ、原因を取り除き、 まれに起こる重い合併症を防ぐことです。

原因がウイルスか細菌かで、治療法は全く異なります。 自己判断で市販の薬を飲むのではなく、 原因に合った正しい治療を選ぶことがとても大切です。

基本は体を休めること

原因がウイルスでも細菌でも、まずは体を休めることが基本です。 安静にして体力を温存し、自分の免疫力が戦えるようにします。

  • 水分補給 のどが痛くても、脱水を防ぐためこまめに水分をとりましょう。
  • 栄養補給 ゼリーやおかゆなど、のどごしの良い栄養のある食事がおすすめです。
  • 症状を和らげる薬 高熱や強い痛みには、解熱鎮痛薬を使い症状を和らげます。

ウイルスが原因の場合、抗菌薬(抗生物質)は効きません。 そのため、基本的には自分の力で治すのを待ちます。 ハーブなどを使った治療法も研究されていますが、 その効果については、まだはっきりとした結論は出ていません。

細菌が原因の場合の治療

細菌が原因の場合、特に溶連菌が疑われるときは、 抗菌薬(抗生物質)による治療が中心となります。 抗菌薬は、細菌の増殖を抑え、体を助けてくれます。

ここで非常に重要なのが、処方された薬を最後まで飲みきることです。 症状が良くなっても、菌がまだ体内に残っていることがあります。 途中でやめると菌がぶり返し、重い合併症につながる恐れもあります。

何度も繰り返す場合の治療

急性扁桃炎を何度も繰り返す方には、手術も選択肢の一つです。 扁桃そのものを取り除く「扁桃摘出術」という手術があります。 近年の研究では、手術の有効性が示されています。

イギリスで行われた研究では、年に何度も扁桃炎を繰り返す成人が、 手術を受けると、受けない場合に比べて、 のどの痛みに悩まされる日数が大幅に減ることがわかりました。

手術を検討する目安として、以下のような国際的な基準があります。

  • 過去1年間に7回以上、扁桃炎を繰り返している
  • 過去2年間に毎年5回以上、繰り返している
  • 過去3年間に毎年3回以上、繰り返している

どの治療法が最適かは、一人ひとりの症状や状況で異なります。 気になる症状があれば、まずは医師に相談し、 自分に合った治療法を一緒に見つけていきましょう。