急性喉頭蓋炎

「ただの風邪」と軽く考えていたのどの痛みが、実は命を脅かす危険な病気のサインかもしれません。急性喉頭蓋炎は、のどの奥にあるフタ(喉頭蓋)が細菌感染などで急激に腫れあがり、空気の通り道を塞いでしまう緊急性の高い病気です。発症すると、短時間で呼吸困難に陥る危険があります。

この病気は特に50代の男性に多く(女性の2〜3倍)、近年では新型コロナウイルスが原因となる珍しいケースも報告されています。ある研究では、コロナが原因の場合、患者の約8割を男性が占め、「声のかすれ」が特徴的な症状として現れることが示唆されています。

つばを飲み込むのもつらいほどの激しい痛みや息苦しさは、決して見過ごしてはならないサインです。この記事では、急性喉頭蓋炎の症状や原因、そして命を守るための治療法について詳しく解説します。ご自身やご家族の万が一に備え、正しい知識を身につけましょう。

急性喉頭蓋炎の概要

急性喉頭蓋炎(きゅうせいこうとうがいえん)は、命に関わることもある緊急性の高い病気です。のどの奥にある「喉頭蓋(こうとうがい)」という部分が、細菌などの感染で急激に腫れあがります。

喉頭蓋は、食事の際に食べ物や飲み物が空気の通り道(気道)へ入るのを防ぐ、フタのような大切な役割を担っています。この部分がひどく腫れると気道を塞いでしまい、短時間で呼吸困難に陥る危険があるのです。

この病気には、次のような特徴があることが知られています。

項目

特徴

かかりやすい性別

男性に多く、女性の2〜3倍といわれています。

かかりやすい年齢

50歳代に発症のピークがあります。

かかりやすい時期

やや夏に多い傾向があると報告されています。

主な原因は細菌感染ですが、近年の研究では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が原因となる珍しいケースも報告されています。この場合、特に男性に多く、特徴的な症状として「嗄声(させい)」と呼ばれる声のかすれが現れることがあります。

突然の激しいのどの痛みや息苦しさを感じた場合は、この病気の可能性も考え、ためらわずに医療機関を受診してください。

急性喉頭蓋炎の種類

急性喉頭蓋炎は、原因によっていくつかの種類に分けられます。 原因となる病原体の種類を知ることは、適切な治療法を選ぶ上で非常に重要です。

主に、以下の2つのタイプに分類されます。

  • 細菌が原因のタイプ かつてはインフルエンザ菌b型(Hib)が主な原因で、特に小さなお子さんに多く見られました。しかし、Hibワクチンの普及により、このタイプは大きく減っています。現在では、肺炎球菌や黄色ブドウ球菌などが原因となることが多くなっています。
  • ウイルスが原因のタイプ 風邪やインフルエンザウイルスへの感染がきっかけで発症することもあります。

また、最近の研究では、新型コロナウイルス(COVID-19)が原因となる珍しいタイプも報告されています。

ある研究報告によると、このタイプは男性に多く(約8割)、特徴的な症状として「嗄声(させい)」と呼ばれる声のかすれが現れることがあります。重症化してひどく息苦しくなると、空気の通り道を確保する処置が通常より難しくなる可能性も指摘されており、特に注意が必要です。

どの種類であっても、のどの奥にある喉頭蓋が急激に腫れて、空気の通り道をふさいでしまう危険があることに変わりはありません。

急性喉頭蓋炎の原因

急性喉頭蓋炎の主な原因は、細菌やウイルスの感染です。 のどは外からの病原体が侵入しやすい場所と言えます。

原因となる病原体には、以下のようなものが知られています。

  • 細菌 肺炎球菌や黄色ブドウ球菌などが原因となります。 以前はインフルエンザ菌b型(Hib)が主でしたが、 Hibワクチンの普及で、この菌が原因のものは減りました。
  • ウイルス 風邪の原因となるウイルスやインフルエンザウイルスが、 発症のきっかけになることがあります。

近年、新型コロナウイルスが原因となる珍しい例も報告されています。 複数の研究をまとめた分析によると、このタイプは男性に多く、 特徴として「嗄声(させい)」という声のかすれが出やすいようです。

また、感染だけでなく、次のような要因があると発症しやすくなります。

  • 体の抵抗力(免疫力)の低下 疲れやストレスで体の防御機能が弱まると、 普段は問題ない菌でも感染しやすくなります。
  • 持病がある 糖尿病、高血圧、肥満などの持病があると、 体の抵抗力が下がり、発症リスクが高まります。
  • 生活習慣 喫煙や過度なアルコール摂取はのどの粘膜を傷つけ、 感染防御の機能を低下させる可能性があります。

これらの要因が重なると、発症のリスクはさらに高まります。

急性喉頭蓋炎の症状

急性喉頭蓋炎の症状は、はじめは風邪と似ています。 しかし、症状が進むスピードが全く異なり、急激に悪化します。 命に関わる危険なサインを見逃さないことが非常に大切です。

この病気のサインとなる、特徴的な症状を以下にまとめました。

  • のどの激しい痛み 食事はもちろん、自分のつばを飲み込むことさえつらくなる、 焼け付くような強い痛みが特徴です。
  • 声の変化 口の中に何かを含んだような、こもった声になります。 また、「嗄声(させい)」と呼ばれる声がすれもよく見られます。 複数の研究を分析した報告によると、新型コロナウイルスが原因の場合、 この嗄声が典型的な症状の一つである可能性が示されています。
  • 飲み込みにくさ(嚥下困難) のどの奥にあるフタ(喉頭蓋)がひどく腫れあがるため、 食べ物や飲み物がうまく飲み込めなくなります。 ひどくなると、飲み込めない唾液が口からあふれ出ます。
  • 息苦しさ(呼吸困難) 最も注意すべき、命に関わる危険な症状です。 腫れた喉頭蓋が空気の通り道をふさぎ始めると、 息を吸う時に「ヒューヒュー」という音がすることがあります。
  • 急な高熱 細菌などが原因の急な炎症のため、 38度以上の高熱が突然出ることが多いです。

これらの症状、特に息苦しさを少しでも感じた場合は、 気道が完全にふさがってしまう危険が迫っています。 ためらわずに救急車を呼ぶか、夜間でもすぐに医療機関を受診してください。

急性喉頭蓋炎の検査・診断

急性喉頭蓋炎は、症状が急激に進むため、診断は時間との勝負です。 命を守るために、迅速かつ正確にのどの状態を調べる必要があります。 風邪だと思っていても、この病気が疑われる場合は緊急で検査を行います。

診断の中心となるのは、のどの奥を直接観察する検査です。

  • 喉頭ファイバー検査(内視鏡検査) 鼻の穴から鉛筆の芯ほどの細いカメラを入れます。 そして、空気の通り道のフタである「喉頭蓋」を直接見ます。 この病気では、喉頭蓋が真っ赤にパンパンに腫れているのが特徴です。 この検査で、診断をほぼ確定させることができます。

さらに、病気の重さや原因を詳しく調べるために、他の検査も行います。

  • 画像検査 首のレントゲン検査では、腫れた喉頭蓋が親指のように見えます。 これは「親指サイン(サムサイン)」と呼ばれる特徴的な所見です。 CT検査では、腫れの広がりをより立体的に詳しく評価できます。
  • 血液検査 体の中でどれくらい強い炎症が起きているかを数値で確認します。 また、原因となっている細菌を特定する手がかりも得られます。

最近では、新型コロナウイルスが原因となる可能性も考えなくてはなりません。 複数の報告をまとめた研究では、この場合、男性に多く(約8割)、 「声のかすれ(嗄声)」が典型的な症状として現れることが示されています。 これらの検査結果を総合的に判断し、すぐに治療方針を決定します。

急性喉頭蓋炎の治療

急性喉頭蓋炎は、空気の通り道をふさいでしまう病気です。 命に関わるため、治療は時間との勝負になります。 最も大切なのは、窒息を防ぐための「気道の確保」です。 そのため、診断されたら基本的には入院して治療を始めます。

治療の柱は、主に次の2つです。

  • 腫れを抑え、呼吸を楽にする治療
  • 原因となっている細菌などを退治する治療

これらの治療を同時に、そして迅速に進めていく必要があります。

治療の目的

治療法

内容

腫れを抑え、呼吸を楽にする

薬物療法

喉頭蓋の強い腫れを抑えるステロイド薬を点滴します。また、腫れをひかせる薬を霧状にして吸い込む治療も行います。

酸素投与

呼吸が苦しい場合、マスクなどを使って体の中に十分な酸素を送り込みます。

原因を取り除く

抗菌薬(抗生物質)

ほとんどの原因は細菌感染です。そのため、原因菌に効果のある抗菌薬を点滴で投与します。

これらの治療で改善が見られない場合や、 来院した時点で窒息の危険が非常に高いと判断された場合。 その際は、ただちに気道を確保するための緊急処置を行います。

主な処置は、「気管挿管」や「気管切開」です。 気管挿管は、口や鼻から気管までチューブを入れる方法です。 気管切開は、首の前の皮膚を小さく切り、直接気管にチューブを入れます。

特に、新型コロナウイルスが原因の急性喉頭蓋炎では、 重い呼吸困難がある場合、気管挿管が難しいとの報告もあります。 そのため、より確実に気道を確保できる気管切開が選択されることがあります。

治療が順調に進めば4〜5日ほどで改善に向かいます。 しかし、重症の場合は2週間程度の入院が必要になることもあります。 のどの激しい痛みや息苦しさを感じたら、すぐに医療機関を受診してください。