「急にタマが痛くて腫れてきた…」男性なら誰でも、こんな症状に強い不安を感じるはずです。それは「急性精巣上体炎」という、お子さんからご高齢の方まで誰にでも起こりうる病気かもしれません。
しかし、自己判断で様子を見るのは大変危険です。なぜなら、その症状は一刻を争う緊急手術が必要な「精巣捻転」と酷似しているからです。精巣捻転は治療が遅れると精巣を失う可能性もあるため、両者の区別が非常に重要になります。
この記事では、急性精巣上体炎の正しい知識、原因や治療法、そして最も大切な危険な病気との違いを詳しく解説します。ご自身の体を守るために、まずは症状への理解を深め、適切な対処法を知ることから始めましょう。
急性精巣上体炎の概要
「急にタマが痛くて腫れてきた」 このような症状で、心配になって来院される方は少なくありません。 急性精巣上体炎は、お子さんからご高齢の方まで起こりうる病気です。
精巣の隣には「精巣上体」という、とても大切な部分があります。 精巣で作られた精子を一時的に保管し、成長させる通り道です。 この精巣上体に細菌が入り込み、急な炎症を引き起こします。
炎症が起こると、陰嚢(いんのう)に強い痛みや腫れが生じます。 痛みは陰嚢だけでなく、足の付け根(鼠径部)にまで及ぶことも。 実は、足の付け根の痛みは様々な泌尿器科疾患のサインなのです。
この病気も、時には緊急の対応が必要になることがあります。 特に、症状がよく似た「精巣捻転」との区別が非常に重要です。 精巣捻転は、精巣がねじれて血流が途絶えてしまう病気です。 治療が遅れると精巣を失う可能性もあるため、一刻を争います。
ご自身の判断で様子を見るのは大変危険です。 陰嚢の痛みや腫れに気づいたら、すぐに泌尿器科を受診しましょう。
急性精巣上体炎の種類
ひとくちに急性精巣上体炎といっても、実はいくつかの種類があります。 原因や症状のあらわれ方によって、大きく分類することができます。 ご自身の状態を正しく理解するために、どのような種類があるかを知っておきましょう。
原因による分け方
何が原因で炎症が起きるかによって、主に2つのタイプに分けられます。
- 感染性精巣上体炎 細菌やウイルスが精巣上体に入り込んで起こる、最も多いタイプです。 尿の通り道から細菌が逆流して感染することがほとんどです。 若い方ではクラミジアなどの性感染症が、ご高齢の方では大腸菌が原因となります。
- 非感染性精巣上体炎 細菌やウイルス以外の原因で起こるタイプを指します。 おしっこの逆流による化学的な刺激や、体をぶつけるなどのケガが原因です。 また、体を守るはずの免疫が、誤って自分を攻撃して起こることもあります。
最近の研究では、体の中にあるタンパク質も関係する可能性がわかってきました。 精巣上体で作られる「HE4」というタンパク質があります。 このHE4は、もともと体を外敵から守る「自然免疫」という働きを担っています。 このタンパク質が、精巣上体炎の炎症に関わっている可能性が指摘されています。
症状の経過による分け方
症状があらわれている期間によっても、以下のように分けられます。
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種類
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特徴
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急性精巣上体炎
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突然、強い痛みや腫れ、発熱などの症状があらわれます。
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慢性精巣上体炎
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鈍い痛みが3ヶ月以上続く、または症状を繰り返します。
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急性精巣上体炎は、治療が遅れると慢性化してしまうことがあります。 慢性化すると、長く不快な症状に悩まされることにもなりかねません。 症状に気づいたら、すぐに専門の医療機関を受診することが非常に大切です。
急性精巣上体炎の原因
急性精巣上体炎の主な原因は、細菌がおしっこの出口から侵入することです。 侵入した細菌が、精子の通り道をさかのぼって精巣上体にたどり着き、炎症を起こします。 原因となる細菌は、患者さんの年齢によって種類が異なる傾向があります。
- 若い男性の場合 クラミジアや淋菌といった、性感染症が原因となることが少なくありません。 無症状のことも多いため、気づかないうちに感染している可能性があります。
- ご高齢の男性の場合 前立腺肥大症などでおしっこが出にくくなると、膀胱に細菌が増えがちです。 大腸菌などの細菌が、尿路から精巣上体へ侵入し、炎症を引き起こします。
また、おたふく風邪の原因であるムンプスウイルスのように、ウイルスが原因となることもあります。 さらに、細菌やウイルスがいないのに炎症が起こる「非感染性」のケースも存在します。 おしっこが逆流することによる化学的な刺激や、ケガなどが原因です。
最近の研究では、体の中にあるタンパク質も炎症に関わることがわかってきました。 精巣上体には「HE4」という、体を守る「自然免疫」に関わるタンパク質があります。 このHE4が、精巣上体炎をはじめとする男性の泌尿器の炎症に関与する可能性が指摘されています。
急性精巣上体炎の症状
急性精巣上体炎になると、体に様々なサインが現れます。 一番わかりやすいのは、片方の「たまぶくろ」(陰嚢)の急な変化です。 放置すると症状が悪化するため、サインを見逃さないことが大切です。
主な症状セルフチェック
ご自身の状態と見比べ、当てはまるものがないか確認しましょう。
- □ 片方のたまぶくろが赤く腫れている
- □ 触るとやけどのように熱を持っている
- □ 触ったり歩いたりすると激しく痛む
- □ たまぶくろ全体がカチカチに硬い
- □ 足の付け根(鼠径部)や下腹部にズーンと響く痛みがある
- □ 38度以上の高い熱が出ている
- □ 寒気がして体がガタガタと震える
- □ 体が重く、強いだるさを感じる
- □ 尿を出すときに痛みや違和感がある
- □ 尿の出口から膿(うみ)が出ることがある
症状の詳しい解説
痛みは、たまぶくろだけにとどまらないのが特徴です。 足の付け根(鼠径部)や下腹部にまで、鈍く響くように痛みます。
実はこの鼠径部の痛みは、体からの重要な警告サインです。 急性精巣上体炎のほか、緊急手術が必要な病気のサインでもあります。 ご自身の判断で様子を見るのは危険なので、絶対にやめましょう。
また、細菌が体の中で増えると、全身にも症状が広がります。 高い熱や寒気は、体を守る免疫が細菌と戦っている証拠なのです。
これらの症状は、全てが現れるわけではありません。 軽い不快感だけの場合もありますが、一つでも当てはまれば要注意です。 なるべく早く泌尿器科を受診し、専門医の診察を受けてください。
急性精巣上体炎の検査・診断
たまぶくろの痛みや腫れで受診されると、まず原因を突き止めます。 そして、似た症状の病気と見分けるために、いくつか検査を行います。 特に緊急手術が必要な「精巣捻転」との区別は非常に重要です。
はじめに、医師が患部を直接見たり、やさしく触ったりします。 これで、腫れや痛みの場所、熱っぽさの程度などを確認します。 次に、目に見えない原因を探るため、より詳しい検査に進みます。
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検査の種類
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どんなことを調べるの?
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尿検査
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尿の中に炎症を示す白血球や、原因の細菌がいるか調べます。性感染症が疑われる場合は、PCR検査で詳しく確認することもあります。
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血液検査
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体の中でどのくらい炎症が起きているかを数値で確認します。これにより、病気の勢いや重症度を客観的に評価できます。
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これらの検査と並行し、診断で中心的な役割を果たすのが超音波検査です。 超音波検査は痛みや放射線の心配がなく、リアルタイムで体の中を見られます。 精巣上体の腫れや炎症の程度を、画像で詳しく観察できるのです。
さらに、ドップラーという機能で、精巣やまわりの血の流れを確認します。 急性精巣上体炎では血流が増えますが、精巣捻転では血流が途絶えます。 この違いを見分けることで、正確な診断に大きく近づきます。
ほとんどは超音波検査で診断がつきますが、膿がたまるなど重症な場合もあります。 そのような複雑な状態が疑われる際は、MRI検査で詳しく調べることもあります。
急性精巣上体炎の治療
急性精巣上体炎の治療は、原因の細菌をなくすことが基本です。 そのために、抗菌薬(抗生物質)というお薬を使います。 しかし治療の前に、まず一番大切なことがあります。 それは、緊急手術が必要な「精巣捻転」という病気と見分けることです。
精巣捻転の診断では、精巣挙筋反射という体の反応を確認します。 これは太ももの内側をなでると、たまぶくろが持ち上がる反応です。 精巣捻転では、この反射がなくなることが多いと報告されています。 しかし、この反射があるからといって、精巣捻転ではないとは言い切れません。 そのため、専門の医師による慎重な診察と検査が非常に重要になります。
治療の具体的な内容は、症状の重さや原因によって変わります。
- 抗菌薬による治療 原因となっている細菌に合わせて、適切な抗菌薬を処方します。 症状が軽い場合は飲み薬で、高熱など重い場合は入院して点滴で治療します。 症状が良くなっても、処方された薬は必ず最後まで飲み切ってください。
- 症状をやわらげる治療 薬での治療とあわせて、以下のケアを行うと回復を助けます。 ・できるだけ横になって体を休める(安静) ・氷などで腫れて熱い部分を冷やす(冷却) ・痛みが強い場合は痛み止めを使う
治療の開始が遅れると、将来的に問題が起きる可能性があります。 治療によって血の流れが回復しても、後から精巣が小さくなる(萎縮)恐れがあるのです。 これは、血流が一度止まった後、再び流れ込むことで組織が傷つくことがあるためです。 また、膿がたまった場合は、皮膚を切って膿を出す処置が必要になることもあります。 たまぶくろの痛みや腫れに気づいたら、すぐに治療を始めることが大切です。