発作性上室性頻拍
突然の激しい動悸や息苦しさ、めまいなどの発作性上室性頻拍の症状に悩まされ、日常生活に不安を感じていませんか。命に関わることは稀ですが、予期せぬ発作は大きなストレスとなるものです。
本記事では、発作性上室性頻拍の症状、原因、検査、そして多様な治療法を解説します。特に、近年開発された自己投与可能な経鼻薬(エトリパミルなど)にも注目。大規模臨床試験「RAPID試験」では、692人が参加し、心拍を速やかに正常に戻す効果が示されているとされています。
この記事を読むことで、発作性上室性頻拍への理解を深め、ご自身に合った治療の選択肢を検討するきっかけになるでしょう。不安を軽減し、安心して日常生活を送るための具体的な道筋が見つかることが期待できます。
発作性上室性頻拍の概要
発作性上室性頻拍(ほっさせいじょうしつせいひんぱく)は、心臓の上室から生じる異常な電気信号が原因で、突然心拍が速くなる不整脈の一種です。この不整脈は、急に始まり、急に終わる発作的な動悸が特徴で、ほとんどの場合は数分から数時間で自然に治まります。
発作中には、以下のような症状が現れる場合があります。
・動悸
・息苦しさ
・めまい
これらの症状は、日常生活に大きな影響を与えることがあります。命の危険に直結することはまれですが、突然の症状は患者さんにとって大きな不安となるものです。
近年、発作性上室性頻拍に対する新たな治療の選択肢として、患者さん自身が医療機関の外で自己投与できる経鼻投与型の薬が開発されています。例えば、エトリパミルという速効性カルシウムチャネル拮抗剤(心臓の異常な電気信号を抑える働きがある薬)は、特に房室結節という部位が関わるタイプの発作性上室性頻拍に対して効果が期待されます。
大規模な研究では、この薬が症状が出た際に自己投与することで、プラセボ(偽薬)と比較して心拍を速やかに正常な状態に戻す効果が優れていることが示されています※。
このアプローチにより、医療機関での緊急の処置(点滴による薬の投与など)の必要性を減らせる可能性があります。自宅や外出先で対応できることで、患者さんの発作時の不安が軽減され、より安心して日常生活を送れるようになることが期待されています。
発作性上室性頻拍の種類
発作性上室性頻拍は、心臓で発生する異常な電気信号の場所や伝わり方によって、いくつかのタイプに分類されます。これらの違いを理解することは、一人ひとりの患者さんに合った適切な治療法を選ぶ上で大切な情報となります。
主な種類は、次のとおりです。
種類 | 特徴
房室結節回帰性頻拍(AVNRT) | 心臓の「房室結節」と呼ばれる、心房と心室の間の電気の通り道で、電気信号が異常にぐるぐるとループしてしまうタイプです。
房室回帰性頻拍(AVRT) | 心房と心室を繋ぐ「副伝導路(ふくでんどうろ)」という、本来はない電気の通り道を介して電気信号が回ってしまうタイプです。副伝導路は、生まれつき持っている心臓の構造の一つです。
心房頻拍(AT) | 心臓の心房内のどこか一部から、異常な電気信号が連続的に発生するタイプです。
これらのタイプのうち、特に房室結節(心房と心室の間の電気の通り道)に依存して発症するタイプは、「房室結節依存性上室性頻拍」と呼ばれます。
近年、この房室結節依存性の発作性上室性頻拍に対して、患者さん自身が症状を感じたときに、ご自宅や外出先でも使える新しい治療薬の開発が進んでいます。その一つが、エトリパミルという経鼻投与型の薬剤です。これは、速効性のあるカルシウムチャネル拮抗剤という種類の薬で、心臓の異常な電気信号を抑える働きがあります。
大規模な臨床試験である「RAPID試験」では、発作時に患者さん自身がこのエトリパミルを鼻から投与する自己治療が検証されました。この試験は、北米とヨーロッパの160か所の医療機関で実施され、2020年10月から2022年7月の間に692人の患者さんが参加しました。その結果、経鼻エトリパミルは、プラセボ(偽薬)と比較して、房室結節依存性の発作性上室性頻拍の心拍を速やかに正常な状態に戻す点で、より優れた効果を示すことが確認されています※。
この自己投与型の薬剤は、非医療機関外でも治療を可能にするため、病院での点滴治療のような緊急の医療介入の必要性を減らせる可能性があります。突然の発作に際しても、患者さんがより安心して対処できるようになることが期待されるアプローチです。
発作性上室性頻拍の原因
発作性上室性頻拍は、心臓の電気信号が異常な経路を伝わることで、心拍が突然速くなる不整脈です。心臓は本来、規則正しい電気信号によって一定のリズムで拍動しています。この電気信号が心房から心室へ正しく伝わることで、全身に血液を送り出すポンプの役割を果たしているのです。しかし、この電気の通り道に異常が生じると、心臓が速く動き続ける頻拍状態となることがあります。
心臓の電気の異常な流れが原因
発作性上室性頻拍が起こる主な原因は、心臓の電気信号が異常な回路をぐるぐると回り続ける「リエントリー」という現象です。心臓の電気信号は、通常は決まった一本の道を順序よく伝わっていきます。しかし、この電気の通り道に何らかの理由で「迂回路(うかいろ)」ができてしまうと、電気がその迂回路を含んで無限にループし、心臓が速く拍動し続けてしまうと考えられています。
この異常な電気回路が心臓のどの部分にできるかによって、主に次の3つのタイプに分けられます。
・房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)
心房と心室の電気の流れを調整する「房室結節(ぼうしつげっせつ)」という部分に、電気を伝える経路が複数ある場合に起こるタイプです。この複数の経路の間で電気がループすることで頻拍が生じ、発作性上室性頻拍のなかで最も多くみられます。
この房室結節依存性(房室結節が原因となる)の頻拍に対しては、患者さん自身が症状を感じたときに自己投与できる新しい治療薬の開発が進んでいます。これはエトリパミルという経鼻投与型の速効性カルシウムチャネル拮抗剤で、非医療機関外での治療を目的に開発されたものです。
例えば、北米とヨーロッパの160カ所の医療機関で実施された大規模な臨床試験「RAPID試験」では、房室結節依存性の発作性上室性頻拍の患者さん692人のうち、エトリパミル群99人、プラセボ(偽薬)群85人が試験薬を自己投与しました。その結果、経鼻エトリパミルは、症状を誘発させてから自己投与し、必要に応じて再投与する使用方法において、自己投与の範囲内で安全性が確認され、房室結節依存性の発作性上室性頻拍をプラセボと比較して速やかに正常な拍動に戻す効果が優れていることが示されています※。
この自己投与のアプローチは、患者さん自身が自宅や外出先でも対処できるため、病院での点滴による薬の投与といった緊急の医療介入の必要性を減らせる可能性を秘めています。
・房室回帰性頻拍(AVRT)
心房と心室の間に、本来はない「副伝導路(ふくでんどうろ)」という電気の通り道がある場合に起こります。この副伝導路を介して電気が心房と心室の間をぐるぐると行き来することで、頻拍が生じるタイプです。ウォルフ・パーキンソン・ホワイト(WPW)症候群は、このAVRTの一種として知られています。
・心房頻拍(AT)
心臓の心房内のどこかに異常な電気の発生源があったり、心房内で電気がリエントリーを起こしたりする場合に起こるタイプです。
発作を引き起こす誘因について
発作性上室性頻拍の原因となる心臓の電気的な異常は、生まれつき持っている場合もあります。しかし、発作自体は日常のさまざまな要因がきっかけとなり、引き起こされることがあります。発作を誘発しやすい主な要因は、以下のとおりです。
・ストレス、疲労、睡眠不足
心身の過度な負担は、自律神経のバランスを乱し、心臓の電気的な安定性に影響を与える可能性があります。
・カフェインやアルコールの過剰な摂取
これらは心臓に刺激を与え、不整脈を誘発する引き金となることがあります。
・喫煙
タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させ、心臓に負担をかけるため、不整脈のリスクを高める可能性があります。
・甲状腺機能亢進症などの病気
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、心臓の働きが活発になりすぎることで、不整脈が起こりやすくなります。
・特定の薬剤の影響
一部の風邪薬や漢方薬など、薬の種類によっては心臓の電気的な活動に影響を与え、不整脈を誘発するケースもあります。
これらの誘因は、心臓の電気的な安定性を乱し、発作の引き金になる可能性があります。そのため、普段から発作の誘因となるものをできるだけ避けることも、発作の予防につながると考えられます。
発作性上室性頻拍の症状
発作性上室性頻拍の症状は、心臓が突然速く脈打つ動悸を中心に、息苦しさやめまいなど、身体的・精神的な不安を伴うことが特徴です。
この不整脈では、心臓が急に激しく脈打つ動悸が突然に現れ、胸がドキドキする感覚に襲われます。脈拍は、安静時よりもはるかに速くなり、1分間に150回から200回以上に達する場合もあります。このような動悸は、数秒から数分、時には数時間にわたって続くことがあります。
動悸だけでなく、次のような症状も伴うことがあります。
・息苦しさや胸の不快感
・めまい、立ちくらみ
・意識が遠のく感覚や失神
発作は予期せぬタイミングで突然始まり、多くの場合、短時間で急に収まります。しかし、突然の症状は患者さんの心に大きな不安をもたらすものです。
こうした急な発作に対して、医療機関の外で患者さん自身が症状を和らげるための新しい治療法が開発されてきています。例えば、経鼻投与型の速効性カルシウムチャネル拮抗剤であるエトリパミルは、房室結節依存性の発作性上室性頻拍に対して効果が期待されます。
北米とヨーロッパの160か所の医療機関で実施された大規模な臨床試験「RAPID試験」では、自己投与されたエトリパミルが、プラセボ(偽薬)と比較して、心拍を速やかに正常な状態に戻す効果が優れていることが確認されています※。この試験には、エトリパミル群から99人、プラセボ群から85人の患者が参加しました。
この新しいアプローチにより、患者さん自身が自宅や外出先で発作に対処できるようになります。病院での点滴治療のような緊急の医療介入の必要性を減らせる可能性があるため、突然の動悸に際しても、以前よりも安心して日常生活を送れるようになることが期待されます。
発作性上室性頻拍の検査・診断
発作性上室性頻拍の検査と診断は、患者さんの症状や心臓の状態を詳しく調べ、一人ひとりに合った適切な治療方針を決めるために行われます。
1. 問診と身体診察
まず、医療機関では患者さんのお話を丁寧に伺うことから始まります。動悸がいつ、どのように始まり、どのくらいの時間続いたのか、他に息苦しさやめまいなどの症状はなかったかなど、発作の状況を詳しく確認します。また、既往歴や服用中の薬なども確認し、心臓の音を聴いたり、脈拍を確認したりして、心臓の状態を把握します。これらの情報は、不整脈の種類を推測し、次の検査へと繋げるための大切な手がかりです。
2. 心電図検査
発作性上室性頻拍の診断において、最も重要なのは心電図検査です。発作が起きている最中に心電図を記録できれば、不整脈の種類を確定できます。しかし、発作は突然始まり、短時間で終わることが多いため、医療機関で心電図を記録するのが難しい場合があります。そのため、以下のような検査方法が用意されています。
・24時間ホルター心電図:小型の心電計を装着し、普段通りの生活をしながら24時間、心電図を記録します。これにより、日常生活の中で現れる不整脈を捉えられる可能性があります。
・携帯型心電計:患者さんご自身で、動悸などの症状が出たときにスイッチを押して心電図を記録する装置です。発作が不定期で、数日に1回程度しか起きない場合などに有用とされます。
3. 電気生理学的検査
さらに詳しい検査が必要な場合や、より根本的な治療法を検討する際には、心臓の電気の流れを詳しく調べる「電気生理学的検査」が検討されることがあります。この検査は、足の付け根などからカテーテルという細い管を心臓内に入れ、心臓のどこから異常な電気信号が発生しているのか、またその信号がどのように伝わっているのかを特定するものです。
この検査によって、不整脈の発生源や、異常な電気回路のタイプが正確に診断できます。特に、発作性上室性頻拍の中でも、心房と心室の間の電気の通り道である「房室結節(ぼうしつげっせつ)」が原因となる「房室結節依存性頻拍」と診断された場合、近年開発が進む新しい治療の選択肢も視野に入ってきます。
例えば、最近の研究では、経鼻投与型の速効性カルシウムチャネル拮抗剤であるエトリパミルが、房室結節依存性の上室性頻拍に対して有効であることが示されています。この薬剤は、心臓の異常な電気信号を抑える働きがあり、患者さん自身が発作時に自宅や外出先で自己投与できることを目指して開発されました。
「RAPID試験」という大規模な臨床試験では、北米とヨーロッパの160か所の医療機関で692人の患者さんが参加しました。この試験の結果、症状が出た際にエトリパミルを鼻から投与し、必要に応じて再投与する使用方法において、プラセボ(偽薬)と比較して、心拍を速やかに正常な状態に戻す効果が優れていることが確認されています※。このような自己投与が可能な治療法は、緊急で医療機関を受診し、点滴などを受ける必要性を減らせる可能性を秘めているといえるでしょう。
発作性上室性頻拍の治療
発作性上室性頻拍の治療は、発作が起きた際に心拍を正常に戻す「急性期治療」と、発作の頻度や重症度を減らす「予防的治療」の二つの柱で進められます。これらの治療法は、患者さんの心臓の状態やライフスタイル、発作の特性に合わせて選択されます。
急性期治療:発作をその場で止める方法
発作が起きてしまった時に、心臓の速い拍動を止めるための治療です。
1. 迷走神経刺激法(自己でできる応急処置)
まずは、ご自身で試せる方法として「迷走神経刺激法」があります。これは、迷走神経という自律神経を刺激することで、心臓の電気的な活動を一時的に抑制し、心拍を正常に戻すことを試みるものです。
具体的な方法としては、次のものが挙げられます。
・息こらえ: 息を吸い込み、お腹に力を入れて強く息をこらえる
・頸動脈洞マッサージ: 首の横にある頸動脈洞という部分を軽くマッサージする(※医師の指導なしに自己判断で行うのは危険な場合もあるため、事前に医師に相談しましょう)
・顔面冷却: 冷たい水に顔を浸す
これらの方法は、発作の初期段階で有効なことがありますが、効果がない場合や、心臓に別の病気がある場合には推奨されないこともあります。
2. 医療機関での薬物治療
迷走神経刺激法で効果がない場合や、症状が重い場合は、医療機関での治療が必要です。主に、点滴による薬物投与が行われます。
・アデノシン三リン酸(ATP)製剤: 心臓の電気伝導を一時的にブロックし、異常な電気回路をリセットする作用があります。
・ベラパミル、ジルチアゼムなどのカルシウム拮抗薬: 心臓の異常な電気信号の伝達を抑えることで、頻拍を停止させる薬です。
これらの薬剤は、効果が速やかに現れる反面、一時的に血圧が下がったり、胸に不快感が生じたりすることがあります。
3. 新しい自己投与薬の選択肢
発作性上室性頻拍の治療には、近年、患者さん自身が自宅や外出先で発作を止めることができる、新しい選択肢も加わりつつあります。
エトリパミルという経鼻投与型の薬剤は、房室結節(心房と心室の間の電気の通り道)が関わるタイプの頻拍に対して、発作時に速やかに心拍を正常に戻す効果が期待されています。これは、心臓の異常な電気信号を抑える働きを持つ速効性カルシウムチャネル拮抗剤です。この薬は、非医療機関外での、患者さんの要求に応じた治療のために開発されました※。
大規模な臨床試験である「RAPID試験」では、北米とヨーロッパの160か所の医療機関で692人の患者さんが参加しました。2020年10月から2022年7月にかけて行われたこの研究では、エトリパミル群99人、プラセボ(偽薬)群85人の患者さんが、房室結節依存性の発作性上室性頻拍に対して試験薬を自己投与しました※。
その結果、発作時に症状を感じたら、患者さん自身がエトリパミルを鼻から投与し、必要に応じて再投与するというレジメン(治療計画)を用いた場合、自己投与の範囲内で安全性が確認されました。また、この治療法は、プラセボと比較して、房室結節依存性の発作性上室性頻拍を速やかに正常な心拍リズムに転換させる効果が優れていることが示されています※。
この自己投与が可能な新しいアプローチは、患者さんが突然の発作に見舞われた際、医療機関での点滴による薬物投与といった緊急の医療介入の必要性を減らせる可能性があります。自宅や外出先など、どこにいても対処できることは、患者さんの発作への不安を大きく軽減し、より安心して日常生活を送ることにつながると期待されます。
予防的治療:発作を起こりにくくする・根治を目指す方法
発作が頻繁に起こる場合や、日常生活に支障をきたす場合は、発作の予防や根治を目指す治療が検討されます。
1. 薬物療法(内服薬)
発作の頻度を減らしたり、発作が起きても症状を軽くしたりするために、毎日服用する薬があります。主に次のような薬が使われます。
・ベータ遮断薬: 心臓の興奮を抑え、心拍数を安定させます。
・カルシウム拮抗薬: 心臓の電気的な活動を調整し、不整脈の発生を抑えます。
・抗不整脈薬: 心臓の電気伝導に直接作用し、不整脈を抑制します。
これらの薬は、発作を完全に止めるわけではありませんが、発作のリスクを低減するのに役立ちます。
2. カテーテルアブレーション
カテーテルアブレーションは、発作性上室性頻拍の根治が期待できる治療法です。足の付け根などから細い管(カテーテル)を心臓内に入れ、不整脈の原因となっている異常な電気回路を焼き切る(焼灼する)ことで、不整脈の発生を根本から断ちます。
この治療は、薬物療法では効果が不十分な場合や、薬の副作用で悩んでいる場合、あるいは将来的に薬を飲み続けることに抵抗がある場合などに検討されます。成功率は高く、一度治療を受ければ、その後の発作の心配が大きく減る可能性があります。
発作性上室性頻拍の治療は多岐にわたります。それぞれの治療法にはメリットとデメリットがあり、また患者さん一人ひとりの病状やライフスタイルによって最適な選択肢は異なります。医師とよく相談し、ご自身にとって最も適した治療法を見つけることが大切です。









