有痛性外脛骨

足の土踏まずや内くるぶしの下に痛みや腫れがあり、原因不明の症状に悩んでいませんか?有痛性外脛骨は、生まれつき存在する足の余分な骨が、摩擦や圧迫などにより炎症を起こす病気です。特に女性に多く見られる傾向があるとされていますが、スポーツを活発に行う方にも多く発生します。

この記事では、有痛性外脛骨が痛みを生じるメカニズム、症状の種類、適切な検査方法、そして保存療法から手術療法までの治療選択肢を詳しく解説します。

ご自身の足の状態を正しく理解し、専門家と共に痛みのない快適な生活を取り戻すための一歩を踏み出すきっかけとなるでしょう。

有痛性外脛骨の概要

有痛性外脛骨は、足の土踏まず部分にある舟状骨(しゅうじょうこつ)のそばに、生まれつき存在することがある余分な骨に痛みが生じる病気です。この余分な骨は「外脛骨(がいけいこつ)」と呼ばれ、足の内側に小さな突起として見られることがあります。

外脛骨自体が常に痛みを引き起こすわけではありません。しかし、外脛骨に付着する腱や周囲の組織が、体重を支えたり、運動したりする際の繰り返しの摩擦や圧迫、あるいは急な外力によって炎症を起こすことで、痛みが現れます。

特に成長期のお子さんや、活発にスポーツを行う方に多く見られますが、年齢に関わらず発症する可能性があります。また、有痛性外脛骨は女性に多く見られる傾向があるとされています※。

痛みが軽い場合は、まずは保存療法から始めます。具体的には、足への負担を軽減するための靴の調整や、足のアーチをサポートするインソール(足底装具)の使用、炎症を抑える内服薬や外用薬で痛みを和らげることが中心です。

これらの保存療法を続けても痛みが改善しない場合や、日常生活に支障が出るほどの痛みが続く場合には、手術による治療も有効な選択肢となります。手術には大きく分けて二つの方法があります。

・単純切除術: 痛みの原因となっている外脛骨そのものを取り除く手術です。

・キドナー手術: 外脛骨を取り除くとともに、足のアーチを支える重要な腱(後脛骨筋腱)の付着部を移動させ、足のアーチを再建・安定させる手術です。

いずれの手術も、一般的には合併症のリスクが比較的少なく、多くの方が高い満足度を得られる有効な治療法とされています※。

ただし、扁平足や足首が外側に傾いている方(後足部外反)の場合には、手術方法の選択に慎重な検討が必要です。例えば、キドナー手術後に再び痛みが再発し、再手術が必要となるケースや、単純切除術の後には痛みはなくても、かかとを上げる動作が難しくなるケースも報告されています※。現時点では、単純切除術とキドナー手術のどちらが優れているかについて、明確な結論は出ていません※。そのため、医師と十分に相談し、ご自身の足の状態やライフスタイルに最も適した治療法を選ぶことが大切です。

有痛性外脛骨の種類

外脛骨は、その形の違いから3つのタイプに分けられます。ご自身の外脛骨がどのタイプに当てはまるかは、痛みの原因を探り、適切な治療法を選ぶ上で大切な手掛かりとなります。

タイプI(分離型)

タイプIは、舟状骨本体から完全に離れた、小さな骨片として存在します。このタイプは舟状骨と直接つながっていないため、足の動きで互いに摩擦したり、腱(けん)が引っ張られたりすることがほとんどありません。そのため、症状として痛みを感じることはまれです。健康診断や別の目的で受けたレントゲン検査で、偶然見つかるケースが多く、特別な治療が不要な場合がほとんどです。

タイプII(結合型)

タイプIIは、舟状骨本体と線維軟骨(せんいなんこつ)や軟骨で部分的に結合しているタイプです。外脛骨の痛みで受診される方の多くが、このタイプに該当するといえます。この結合部分は、足に体重がかかったり、運動で負荷がかかったりするたびに、骨と骨の間に摩擦が生じやすくなります。さらに、足のアーチを支える大切な筋肉である後脛骨筋(こうけいこつきん)の腱がこの副舟状骨に付着しているため、腱が引っ張られたり圧迫されたりすることで炎症が起き、痛みを引き起こしやすいと考えられます。足の形を調整するカスタムメイドの装具(インソール)を使うと、足にかかる負担が減り、痛みや足裏への圧力を和らげる効果が期待できると報告されています※。特に、足のアーチの角度や高さが改善し、かかとの傾きや舟状骨の突出が減少するといった変化が見られています※。

タイプIII(融合型)

タイプIIIは、外脛骨が舟状骨本体と完全に一体化し、もともと舟状骨の一部であったかのように融合しているタイプです。このため、骨同士の摩擦や腱の引っ張られすぎによる炎症が起きにくく、痛みなどの症状が出ることはほとんどありません。こちらもタイプIと同様に、ご本人が外脛骨の存在に気づかないまま、別の目的で受けたレントゲン検査で偶発的に見つかることがほとんどです。

このように、外脛骨のタイプによって痛みの出やすさや、どのような治療が効果的かがある程度わかります。もし、足の土踏まずあたりや内くるぶしの下に痛みや腫れを感じる場合は、ご自身の外脛骨がどのタイプなのかを知るためにも、一度整形外科を受診し、医師にご相談ください。

有痛性外脛骨の原因

有痛性外脛骨は、足の内側に存在する「外脛骨」が、いくつかの原因によって痛みを引き起こす状態です。外脛骨そのものが痛みの直接的な引き金となることはまれですが、足にかかる負担や構造的な特徴が合わさることで、外脛骨やその周囲の組織に炎症が起こり、痛みが生じます。主な原因は次のとおりです。

副骨の存在と不安定性

足の内側にある舟状骨(しゅうじょうこつ)のそばには、生まれつき「外脛骨」という余分な骨が存在していることがあります。これは、お母さんのお腹の中にいるときに、骨が成長する過程で舟状骨と完全に結合しなかったことで発生します。外脛骨は、舟状骨と繊維性の組織や軟骨でつながっている場合があります。この連結が不完全であったり、不安定であったりすると、足に体重がかかったり、動いたりするたびに、本来結合しているべき部分に摩擦やずれが生じます。この繰り返しが、外脛骨や周囲の組織に炎症を引き起こし、痛みにつながるのです。

後脛骨筋腱(こうけいこつきんけん)の牽引力

足の土踏まずを支える重要な役割を担うのが、足首の内側から土踏まずにかけて走る「後脛骨筋腱(こうけいこつきんけん)」です。この腱は、外脛骨に付着していることがあります。歩いたり、走ったりするたびに、後脛骨筋が収縮してこの腱を引っ張ります。その力が繰り返し外脛骨に加わることで、腱と骨の付着部に過度なストレスがかかります。特に運動量が多い場合や、足に負担がかかる姿勢が続くと、この牽引力が炎症を引き起こし、痛みを発生させる原因となります。

足の形の変化(扁平足など)

足のアーチが低くなる「扁平足(へんぺいそく)」があると、足にかかる負担のバランスが崩れ、有痛性外脛骨の痛みを悪化させる可能性があります。扁平足では、足の内側が地面に近づくため、特に足の内側への負担が増加します。これにより、足のアーチを支えようと後脛骨筋腱にかかる負担が大きくなり、外脛骨への牽引力も強まる傾向があります。結果として、外脛骨とその周辺組織に炎症が起こりやすくなり、痛みが慢性化する原因にもなりえます※。この負担を軽減するために、足の形に合わせたカスタムメイドのインソール(足底装具)が有効な場合もあります。インソールは、足のアーチを適切にサポートし、かかとの傾きや舟状骨の突出を減らすことで、外脛骨への圧力を和らげ、痛みを改善する効果が期待できると報告されています※。

外部からの物理的な刺激

日常的に履く靴による圧迫や摩擦も、外脛骨に直接的な刺激を与え、痛みを引き起こすことがあります。特に、足の内側に外脛骨が突出している場合、足に合わない靴や、足の内側が擦れやすいデザインの靴を履き続けると、その突出部分に繰り返し刺激が加わります。これが原因で、外脛骨とその周囲の皮膚や軟部組織に炎症が起こり、痛みが生じやすくなります。靴選びは、有痛性外脛骨の症状を管理する上で重要なポイントの一つです。

性差

有痛性外脛骨は、男性よりも女性に多く見られる傾向があると報告されています※。この性差の具体的な理由はまだ明確になっていませんが、女性の骨格構造、靭帯(じんたい)の柔軟性、あるいは筋肉のつき方などが影響している可能性が考えられます。例えば、女性は男性に比べて関節の柔軟性が高い傾向があり、それが足のアーチの安定性にも影響を与える場合があります。

有痛性外脛骨の症状

有痛性外脛骨では、足の内側の痛みを中心に、さまざまな具体的な症状が現れることが一般的です。この痛みは、足の土踏まずにある余分な骨「外脛骨」と、その周囲に付着する腱や組織との摩擦、あるいは圧迫によって炎症が引き起こされることで生じます。

特に、足の土踏まずを構成する「内側縦アーチ」の崩壊が痛みの原因となることが指摘されています。このアーチの不安定性が有痛性外脛骨の症状を悪化させる一因となるのです。

カスタムメイドの足底装具(インソール)を用いることで、このアーチの崩壊を改善し、痛みを大きく和らげられる可能性があります。実際に、プロアスリート54名を対象とした研究では、カスタムメイド装具の使用により、足のアーチの角度や高さが改善し、かかとの傾きや舟状骨(しゅうじょうこつ)の突出が減少したと報告されています※。さらに、足裏にかかる圧力の分布も改善され、痛みの程度を示すVASスコア(視覚的アナログ尺度)も有意に低下したことが確認されており、従来のインソールよりも迅速かつ効果的な痛みの緩和が期待できる可能性が示唆されています※。

有痛性外脛骨で現れる具体的な症状は、次のとおりです。

・足の内側の痛み

・痛む場所: 足首のやや下、ちょうど土踏まずの少し前方、舟状骨という骨の付着部付近です。

・痛みの特徴: 安静時は感じなくても、指で押すと痛みがあることが特徴です。歩いたり走ったりする運動中や、立ち仕事が続く際に痛みが増す傾向にあります。これは、足に体重がかかることで外脛骨や周囲の腱、組織に繰り返し摩擦や圧迫が生じ、炎症が悪化するためと考えられます。

・靴との摩擦: 特に、足の内側に外脛骨が突出している場合、靴の縁が当たって痛みを感じることもあります。

・腫れや赤み

痛む部分に炎症が起きていると、患部が熱っぽく感じられたり、腫れたり、赤みが出たりすることがあります。

・骨の突出

有痛性外脛骨は、足の内側に生まれつき存在する余分な骨です。痛みがある場合、足の土踏まずから少し前方、内くるぶしの下あたりに、周囲よりも目立つ膨らみが見られたり、触れると硬い骨の塊として感じられたりすることがあります。これは、外脛骨が舟状骨と完全に融合せず、独立した骨として存在しているためです。

・歩行時の違和感

痛みが強まると、足に体重がかかるたびに痛むため、歩き方がぎこちなくなったり、無意識のうちに痛みをかばうような歩き方になったりすることがあります。これにより、運動を控えざるを得なくなるケースも少なくありません。

症状の程度は個人差が大きく、軽い痛みで済むこともあれば、日常生活に大きな支障をきたすほど強く出ることもあります。特に、スポーツ活動をするお子さんや、足に負担がかかるお仕事をされている方では、症状が悪化しやすい傾向があるといえます。足の内側の痛みや違和感が続く場合は、自己判断せずに整形外科を受診し、専門医に相談することが早期解決への第一歩となります。

有痛性外脛骨の検査・診断

有痛性外脛骨の診断は、患者さんのお話を詳しく伺う問診と、医師による足の状態の確認(身体診察)、そして画像検査によって総合的に行われます。

問診と身体診察

まずは、医師が患者さんから現在の症状やこれまでの経過について詳しくお話を伺います。特に、次のような点が診断の重要な手掛かりとなります。

・痛みの場所: 足のどの部分が、どのような種類の痛みなのか。

・痛みのきっかけ: いつから、どのような状況で痛み始めたのか。スポーツ活動や特定の動作が関連しているか。

・症状の経過: 痛みの強さや頻度の変化、日常生活への影響。

次に、医師は患者さんの足を直接見て触って確認します。

・視診・触診: 足の形、外脛骨の突出の有無、赤みや腫れ(炎症の兆候)がないかを確認します。外脛骨が突出している部分を指で押してみて、痛みが誘発されるか(圧痛)も確認する場合があります。

画像検査

画像検査は、外脛骨の状態や周囲の組織に異常がないかを客観的に評価するために不可欠です。主に次の2種類の検査が行われます。

1. レントゲン検査

・足の土踏まずにある舟状骨(しゅうじょうこつ)のそばに、外脛骨がどのような形で存在しているかを確認できます。

・足全体の骨の並びや、足のアーチ(土踏まず)の状態も評価できます。

・特に、足に体重がかかった状態(荷重時)でレントゲンを撮影することで、足のアーチの崩れ(扁平足など)の有無や程度を、より正確に評価できます。

・この情報から、有痛性外脛骨をタイプI、タイプII、タイプIIIのいずれかに分類し、痛みの原因を推測する重要な手がかりとなります。

2. MRI検査

・レントゲン検査では骨の状態しか分かりませんが、MRI検査では外脛骨の周囲にある軟骨や腱、筋肉といった軟らかい組織の状態を詳しく観察できます。

・特に、外脛骨と舟状骨との結合部分に炎症が起きているか、足のアーアーチを支える大切な後脛骨筋腱(こうけいこつきんけん)に損傷や炎症がないかを確認するのに役立ちます。

・強い炎症が痛みの原因となっている部位を特定するために、必要に応じて行われます。

足底圧分布の評価

足の機能的な状態をより詳しく把握するために、歩行時の足裏にかかる圧力の分布(足底圧分布)を専用の機器で測定することがあります。この検査は、外脛骨の有無だけでなく、足が地面に着地する際のバランスや、足のアーチがどのように機能しているかを知る上で有用です。

特に、カスタムメイドの足底装具(インソール)を用いた治療を検討する場合に役立つ情報が得られます。扁平足などで足のアーチが崩れていると、足の内側に過度な負担がかかり、外脛骨へのストレスが増大する可能性があります。

足底圧分布を評価することで、以下のような足の状態を詳細に分析し、個々の患者さんに最適な装具を設計するための参考にできます※。

・足のアーチの角度や高さ

・かかとの傾き(外反の有無)

・舟状骨の突出具合

・足裏の特定部位への圧力集中

実際に、舟状骨副骨症候群(有痛性外脛骨)を持つアスリートを対象とした研究では、カスタムメイド装具の使用により、足の形態が改善し、足底圧の分布が正常に近づくことで、痛みが有意に軽減したことが報告されています※。

これらの検査結果を総合的に判断し、医師が最終的な診断を行い、一人ひとりの患者さんに合った治療方針を提案します。

有痛性外脛骨の治療

有痛性外脛骨の治療は、まず保存療法から始まります。足の痛みが軽い場合や、初めて症状を自覚した際には、まず保存療法を検討します。しかし、保存療法を続けても痛みが改善しない場合や、日常生活に支障が出るほどの痛みが続く場合には、手術による治療を考えることがあります。

保存療法

有痛性外脛骨の症状が軽い、あるいは発症して間もない時期には、足への負担を和らげ、痛みの軽減を目指す保存療法を第一に考えます。具体的な方法は、次のとおりです。

・安静の確保: 患部に過度な負担をかけないよう、運動量を調整したり、一時的に活動を控えたりします。

・靴の選び方: 足に合わない靴は、外脛骨に直接的な圧迫や摩擦を引き起こし、症状を悪化させる原因となります。足の形に合った、ゆとりのある靴を選ぶことが大切です。

・足底板(インソール)の使用: 足のアーチを適切にサポートし、外脛骨への負担を分散させるカスタムメイドのインソール(足底装具)は、痛みを和らげる効果が期待できます。特に、扁平足の傾向がある方には有効な場合があります。

・薬物療法: 炎症を抑えるための内服薬(非ステロイド性抗炎症薬など)や外用薬(湿布や塗り薬)を用いて、痛みを軽減します。

これらの保存療法で症状が改善しない場合、あるいは痛みが生活に大きく影響する場合は、手術による治療を検討することになります※。

手術療法

保存療法を続けても痛みが改善せず、日常生活や運動に大きな支障をきたす場合には、手術による根本的な治療を検討します。有痛性外脛骨に対する主な手術方法は、以下の二つです。

1. キッドナー法

・痛みの原因となっている外脛骨を取り除くとともに、足のアーチを支える重要な筋肉である後脛骨筋腱(こうけいこつきんけん)の付着部を正しい位置に移動させ、足のアーチを再建・安定させる手術です。

・この方法は、臨床的な症状の改善だけでなく、画像診断上でも良好な結果を示すことが多く、さまざまなタイプの有痛性外脛骨に対する推奨術式の一つとされています※。有痛性外脛骨に対する外科的治療の中で最も多く実施されており、全体の約52%を占めるという報告もあります※。

2. 単純切除術

・痛みの原因となっている外脛骨そのものを取り除く手術です。後脛骨筋腱の処理は行いません。

どちらの手術も、合併症のリスクは比較的低く、多くの方が痛みの改善を実感し、高い満足度が得られる有効な治療法とされています※。

注意が必要なケース

一方で、一部の術式では注意が必要です。関節固定術、関節制動術、経皮的ドリル術といった他の手術方法では、骨がうまくつかない癒合不全や合併症のリスクが高い傾向が見られます。そのため、長期的な予後を考慮すると、あまり推奨されないことがあります※。

また、足の形状によっては、手術方法の選択に慎重な検討が求められるケースもあります。例えば、扁平足や、足首の後ろ部分が外側に傾いている(後足部外反)方の場合、キッドナー法の手術後に症状が再発し、再手術が必要となる可能性も報告されています。さらに、単純切除術を受けた後、痛みはなくなったものの、かかとを上げる動作が難しくなる方もいるため、術式を選ぶ際はこれらの点を考慮する必要があります※。

現時点では、単純切除術とキッドナー手術のどちらがより優れているかについて、明確な結論は出ていません※。

ご自身の足の状態やライフスタイルに最も適した治療法を見つけるためには、整形外科専門医と十分に相談し、治療のメリットとデメリットを納得いくまで理解することが大切です。