HFrEF

息切れやむくみが続いたり、以前より疲れやすくなったりしていませんか?心臓のポンプ機能が低下した「HFrEF(エイチエフアールイーエフ)」は、自覚症状に乏しく、気づかずに進行する可能性のある心不全の一種です。HFrEFでは、心臓の左室駆出率が40%未満に低下するとされています。

この記事では、HFrEFの概要や原因、症状、診断方法を解説します。さらに、最新の薬物療法やデバイス治療、日々の生活でできる改善策まで、多角的に紹介します。

この記事でHFrEFへの理解を深め、ご自身や大切な方の健康を守るための適切な治療選択や生活改善に役立てられるでしょう。早期の対応が、心臓の機能維持と生活の質の向上につながると考えられています。

HFrEFの概要

HFrEF(エイチエフアールイーエフ)は、心臓のポンプ機能が低下した状態を示す心不全の一種です。「Heart Failure with reduced Ejection Fraction」の頭文字からきており、日本語では「左室駆出率(さしつ・くしゅつりつ)が低下した心不全」と訳されます。心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割を担っていますが、HFrEFではそのポンプの力が弱まり、体が必要とする量の血液を十分に送り出せなくなります。その結果、息切れやむくみといった症状が現れるのです。

HFrEFの診断では、心臓のポンプ機能を示す「左室駆出率」の低下が重要な指標です。左室駆出率とは、心臓の左心室が1回の拍動で送り出す血液量の割合を示す数値で、この数値が低下しているとHFrEFと診断されます。

適切な診断と治療は、HFrEFの進行を抑え、患者さんの生活の質を保つ上で欠かせません。治療法は患者さん一人ひとりの状態によってさまざまですが、もし心房細動などの不整脈が原因で心機能が低下している場合は、カテーテルアブレーションが治療の選択肢の一つとなることがあります。

心房細動を合併するHFrEFの患者さんにおいては、カテーテルアブレーションが心臓のポンプ機能(心室収縮機能)を改善させる可能性があることが示されています。この効果は、カテーテルアブレーションの手法(アブレーション戦略)に関わらず期待できるものです※。

ただし、カテーテルアブレーションにおける特定の追加手技「後壁孤立(POSTERIOR WALL ISOLATION: PWI)」は、持続性心房細動や左室駆出率の回復には寄与しないという研究報告もあります※。そのため、HFrEFに対する初回カテーテルアブレーションで後壁孤立を必ず加えることは、現時点では推奨されないとされています※。

どのような治療が最適かは、患者さん一人ひとりの状態によって異なります。必ず主治医とよく相談し、治療方針を決めるようにしましょう。

HFrEFの種類

HFrEFは、心臓のポンプ機能を示す左室駆出率(LVEF)が40%未満に低下した心不全を指します。この分類は共通していますが、HFrEFの原因や病態は患者さんによってさまざまです。そのため、それぞれの状態に応じた治療が選ばれます。

HFrEFは、次のような多様な側面から分類され、それぞれに合わせたアプローチがとられます。

・基礎疾患による分類: 心筋梗塞、高血圧、弁膜症など、HFrEFを引き起こす元の病気によって治療法が異なります。例えば、虚血性心疾患が原因であれば、カテーテル治療やバイパス手術が検討されることがあります。

・心臓の電気的伝達異常による分類: 心臓の電気信号がうまく伝わらず、心臓全体がバラバラに動いてしまう場合もあります。このようなケースでは、心臓の収縮を同期させる「心臓再同期療法(CRT)」が検討されます。

心臓再同期療法(CRT)の進化

心臓再同期療法(CRT)は、特殊なペースメーカーを用いて心臓の収縮のタイミングを調整し、ポンプ機能を改善する治療法です。このCRTにおいて、近年注目されている新しい手法に「左脚ブランチエリアペーシング(LBBP)」があります。

LBBPは、従来のCRT(両心室ペーシング:BVP)と比較して、より自然な心臓の動きに近い形でペーシングを行うことを目指した治療法です。最新の研究では、LBBPが従来のCRT(BVP)に比べて、以下のような利点を持つ可能性が報告されています※。

・手術時間の短縮: 従来のCRTよりも、手術にかかる時間が短い傾向があります。

・電気的活動の改善: 心電図のQRS時間(心臓の電気的な興奮の広がりを示す時間)がより短縮され、心臓の電気的な活動が改善されることが示唆されています。

・心機能の回復: 左室駆出率(LVEF)の改善や、左室拡張末期径(心臓が血液を最も多くため込んだ時の大きさ)の縮小など、心臓のポンプ機能や形が良好になる可能性があります。

・再入院・死亡リスクの低減: 心不全による入院や、あらゆる原因による死亡のリスクを低下させる可能性も指摘されています。

ただし、LBBPの長期的な有効性や安全性については、さらなる大規模な臨床研究での検証が求められています。

HFrEFと一口に言っても、その背景にはさまざまな病態や原因が隠されています。左室駆出率という数値だけでなく、患者さん一人ひとりの状態を詳しく評価し、最適な治療法を見つけることが大切です。

HFrEFの主な原因は、心臓のポンプ機能低下を招く心臓自体の病気や、心臓に過度な負担をかける全身の病気に分けられます。単一ではなく、複数の要因が複雑に絡み合い、心臓のポンプ機能低下を引き起こすことがほとんどです。

HFrEFを引き起こす主な原因は、次のとおりです。

・虚血性心疾患

心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患は、心臓の筋肉(心筋)への血液供給が不足することで、心臓のポンプ機能を低下させます。血流不足により心筋の一部が壊死したり、硬くなったりすると、血液を全身に送り出す力が弱まるためです。

・高血圧

長期間にわたる高血圧は、心臓が血液を送り出す際に常に高い圧力に逆らって働くことを強いられます。この状態が続くと、心臓の筋肉には過剰な負担がかかり、次第に心臓が肥大し、ポンプ機能が低下する原因となります。

・糖尿病

糖尿病は、全身の血管にダメージを与えるだけでなく、心臓の血管にも悪影響を及ぼします。さらに、糖尿病が原因で心臓の筋肉自体に異常が生じる「糖尿病性心筋症」もHFrEFの原因になることがわかっています。

・心臓弁膜症

心臓にある4つの弁は、血液が逆流しないように機能しています。しかし、これらの弁が狭くなったり(狭窄症)、完全に閉じなくなったり(閉鎖不全症)すると、心臓は血液を効率よく送り出せなくなります。過剰な負担がかかることで、HFrEFを引き起こす可能性があるといえます。

・心筋症

心筋症は、心臓の筋肉自体に原因不明の異常が生じる病気の総称です。特に「拡張型心筋症」では、心臓が拡大して収縮する力が著しく低下するため、HFrEFの主要な原因の一つと考えられています。

・不整脈

心房細動など、心臓のリズムが乱れる不整脈が慢性的に続くと、心臓は効率的に血液を送り出せなくなります。これにより心臓に負担がかかり続け、最終的にポンプ機能が低下してHFrEFの原因となる場合があります。

・その他の原因

上記以外にも、甲状腺機能の異常や過度なアルコール摂取、特定のウイルス感染、あるいは薬剤の副作用などが心臓に悪影響を及ぼし、HFrEFの原因となることがあります。

HFrEFの原因は、心臓に直接的な問題を引き起こすものだけではありません。近年、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)のような併存疾患が、心臓に大きな負担をかけ、HFrEFの発症や進行に深く関わっていることがわかってきました。OSAの患者さんは、睡眠中に呼吸が一時的に止まることで体内の酸素濃度が低下し、心臓へのストレスが継続的に増大します。このような背景から、HFrEFの治療においては、合併症の管理も重要視されているのです。

特に、SGLT-2阻害薬であるダパグリフロジンは、HFrEFの治療において新たな選択肢として注目されています。最近のDAHOS研究では、HFrEFと中等度以上のOSAを合併する患者さんに対してダパグリフロジンを投与することで、睡眠中の無呼吸・低呼吸の回数を示すAHI(アポネアヒポペア指数)が有意に改善されたと報告されています※。この研究結果は、ダパグリフロジンがHFrEFだけでなく、併存するOSAの管理にも有効である可能性を示唆しており、HFrEFの治療戦略を考える上で重要な情報といえるでしょう。

このように、HFrEFの原因は多岐にわたります。治療においては、心臓病そのものだけでなく、隠れた併存疾患の評価と管理も不可欠なのです。

HFrEFの症状

HFrEFの症状は、心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなることで現れます。主に以下のようなサインが見られます。

・息切れ: 少し動くだけで息が苦しくなる、階段を上るのがつらいといった症状です。心臓から送り出される血液が滞り、肺に水分がたまりやすくなる「肺うっ血(はいうっけつ)」によって引き起こされると考えられています。特に、横になると息苦しさを感じ、夜中に咳き込んで目が覚めることもあります。

・むくみ: 足首やふくらはぎ、ひどい場合は顔やまぶたにもむくみが出ます。これも、心臓のポンプ機能が低下し、全身の血液がスムーズに循環せず、余分な水分が体内にたまるために起こる現象です。

・疲れやすさ: 全身の臓器や筋肉に酸素や栄養が行き届きにくくなるため、体がだるく、以前よりも疲れを感じやすくなります。集中力の低下や倦怠感として現れることもあります。

・動悸: 心臓が弱ったポンプ機能を補おうと、より強く、速く拍動することで、ドキドキとした動悸を感じることがあります。

・咳や痰: 肺うっ血が進むと、乾いた咳が出やすくなります。肺にたまった水分によって、泡立ったピンク色の痰が出ることがあれば、心不全がかなり進行しているサインかもしれません。

これらの症状は、心臓の左心室の収縮力が低下し、「左室駆出率(LVEF)」が40%未満になることで引き起こされます。HFrEFの患者さんの中には、夜間の睡眠中に一時的に呼吸が止まる「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」を合併している方も少なくありません。

OSAを合併すると、睡眠中に体内の酸素濃度が低下し、心臓にさらなる負担がかかることでHFrEFの症状を悪化させる原因となります。最近の研究では、SGLT-2阻害薬の一つであるダパグリフロジンが、HFrEFと中等度以上のOSAを合併する患者さんにおいて、無呼吸・低呼吸の回数を示す「AHI(アポネアヒポペア指数)」などの睡眠パラメータを改善することが報告されています※。具体的には、睡眠の質に関する指標や、体内の炎症を示すCRP(C反応性タンパク)やIL-6(インターロイキン6)といった炎症因子の減少も認められました※。このことは、OSAの適切な管理がHFrEFの症状緩和や生活の質の向上につながる可能性を示しています。

HFrEFの症状は、日常生活の質を著しく低下させ、入浴や着替えといった普段の行動にも支障をきたすことがあります。症状の感じ方には個人差がありますが、上記のような気になる症状が続く場合は、心不全の専門医がいる医療機関を早めに受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。

HFrEFの検査・診断

HFrEFの検査・診断は、心臓のポンプ機能低下を正確に確認し、患者さん一人ひとりに合った最適な治療へとつなげるための重要なプロセスです。単に心不全の有無だけでなく、その原因や合併症まで深く探ることで、より効果的な治療戦略を立てることが可能になります。

HFrEFと診断するために、主に以下の検査を組み合わせて心臓の状態を詳細に評価します。

検査の種類 | 目的とわかること

心エコー検査 | 心臓の動き、大きさ、弁の機能、血液の流れをリアルタイムで確認する超音波検査です。特に、HFrEFの診断に必須とされる「左室駆出率(LVEF)」を直接測定し、心臓が全身に血液を送り出す力がどの程度低下しているかを具体的に把握できます。

血液検査 | 心臓に負担がかかると分泌される「BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)」や「NT-proBNP」といったホルモンの値を測定します。これらの数値が高いほど、心不全の可能性や重症度が高いと判断される傾向にあります。また、腎機能や肝機能など、全身の状態を把握するためにも行われます。

心電図 | 心臓の電気的な活動を記録し、不整脈の有無や、心筋梗塞の既往、心臓の肥大といった心臓の異常を間接的に確認します。自覚症状がない不整脈の発見にもつながる検査です。

胸部X線検査 | 心臓の拡大(心拡大)や、肺に水がたまっている状態(肺うっ血)がないかを確認します。これらの所見は、心臓のポンプ機能が低下しているサインであり、心不全の程度を評価する上で重要な情報となります。

これらの検査結果を総合的に評価し、左室駆出率(LVEF)が40%未満であると確認された場合にHFrEFと診断されます。しかし、HFrEFの診断は単にLVEFの数値だけで完結するものではありません。HFrEFの患者さんの中には、睡眠中に一時的に呼吸が止まる「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」を合併しているケースも少なくないため、その有無の確認も非常に重要視されています。

OSAを合併している場合、睡眠中の酸素不足が心臓にさらなる負担をかけ、HFrEFの病状を悪化させる一因となる可能性があります。近年では、HFrEFと中等度以上のOSAを合併する患者さんに対して、SGLT-2阻害薬であるダパグリフロジンを投与することで、睡眠中の無呼吸・低呼吸の回数を示す「AHI(アポネアヒポペア指数)」といった睡眠パラメータが有意に改善されたとの報告があります※。AHIの改善は、睡眠の質の向上につながり、心臓への負担軽減も期待できます。さらに、ダパグリフロジンは、CRP(C反応性タンパク)やIL-6(インターロイキン6)といった体内の炎症因子の減少にも寄与する可能性も示唆されています※。これらのことから、HFrEFの診断においては、心臓の状態だけでなく、閉塞性睡眠時無呼吸症候群のような併存疾患を含めた全身状態を詳細に把握し、多角的な視点からアプローチすることが大切です。

HFrEFの治療

HFrEFの治療は、心臓のポンプ機能が低下した状態を安定させ、つらい症状を和らげることを目指します。それだけでなく、心臓病の進行を遅らせ、患者さんがより長く、質の高い生活を送れるようにするためにも欠かせません。HFrEFの治療では、患者さん一人ひとりの病状や体の状態に合わせて、薬による治療、医療機器を用いた治療(デバイス治療)、そして日々の生活習慣の見直しが多角的に行われます。

薬物療法

HFrEFの薬物療法は、心臓への負担を軽減し、心臓の働きをサポートするために複数の薬を組み合わせて用いるのが一般的です。主に、心臓や血管に作用してポンプ機能を助けたり、体内の余分な水分を排出したりする薬が使われます。具体的な薬の種類は次のとおりです。

・レニン・アンジオテンシン系阻害薬(ACE阻害薬やARB): 血管を広げ、心臓が血液を送り出す際の負担を軽くします。

・β遮断薬: 心臓の過剰な働きを抑え、心臓を休ませることで心機能を保護します。

・ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA): 体内の塩分と水分を調整し、心臓への負担を軽減します。

・SGLT2阻害薬: 腎臓からの糖とナトリウムの排出を促し、心臓や腎臓を保護する働きがあります。

これらの薬は、心臓の機能改善や悪化の抑制に貢献しますが、患者さんの状態によっては、さらに特定の症状に特化した薬が追加されることもあります。

SGLT2阻害薬の一つであるダパグリフロジンは、HFrEFの治療において、心機能の改善だけでなく、合併しやすい特定の病状にも有効性を示すことがわかってきました。例えば、HFrEFと同時に閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)を合併している患者さんに対するダパグリフロジンの効果が注目されています。ある研究では、HFrEFと中等度以上のOSAを合併する患者さんにダパグリフロジンを12週間投与したところ、睡眠中の無呼吸・低呼吸の回数を示す「アポネアヒポペア指数(AHI)」が有意に改善されました。さらに、この研究では、酸素脱酸素指数(ODI)や最低酸素飽和度、睡眠中の酸素飽和度が90%未満であった時間、平均酸素飽和度といった睡眠に関するパラメーターも改善が認められています。また、炎症の指標であるCRP(C反応性タンパク)やIL-6(インターロイキン6)のレベルが減少したことも報告されています※。ダパグリフロジンは、OSAの病態生理を抑制する可能性があり、これらの結果は、HFrEF治療においてOSAを合併する患者さんへの新たな選択肢となりうることを示唆しています※。

非薬物療法(デバイス治療など)

薬による治療だけでは効果が不十分な場合や、特定の心臓の状態によっては、医療機器を用いた治療(デバイス治療)が検討されます。

・心臓再同期療法(CRT)

HFrEFの患者さんの中には、心臓の左右の心室がバラバラなタイミングで収縮してしまうことで、ポンプ機能がさらに低下している方がいます。このような場合、「心臓再同期療法(CRT)」というペースメーカー治療が選択肢となります。これは、特殊なペースメーカーを体内に植え込み、心臓の左右の心室に同時に電気刺激を与えることで、心臓の収縮タイミングを同期させ、ポンプ機能を効率よく働かせる治療法です。

近年、このCRTにおいて「左脚ブランチエリアペーシング(LBBP)」という新しい方法が注目されています。LBBPは、従来のCRT(両心室ペーシング:BVP)よりも、心臓が本来持っている電気の伝わり方(伝導系)に近い形で刺激を送ることで、より自然な心臓の動きを再現しようとするものです。複数の研究をまとめたメタアナリシスでは、LBBPが従来のBVPと比較して、以下のような利点をもつ可能性が示されています。

・手術時間の短縮: 従来のCRTよりも手術にかかる時間が短い傾向があります※。

・電気的活動の改善: 心電図上のQRS時間(心臓の電気的な興奮の広がりを示す時間)がより短縮され、心臓の電気的な活動が改善されることが示唆されています※。

・心機能の回復: 左室駆出率(LVEF)の改善や、左室拡張末期径(心臓が血液を最も多くため込んだ時の大きさ)の縮小など、心臓のポンプ機能や形が良好になる可能性があります※。

・再入院・死亡リスクの低減: 心不全による入院や、あらゆる原因による死亡のリスクを低下させる可能性も指摘されています※。

ただし、LBBPの長期的な有効性や安全性については、今後のさらなる大規模な臨床研究での検証が求められています※。

・カテーテルアブレーション

HFrEFの患者さんは、心臓のリズムが乱れる心房細動などの不整脈を合併することが少なくありません。不整脈が心臓のポンプ機能をさらに悪化させる場合、カテーテルアブレーションという治療法が検討されることがあります。これは、カテーテル(細い管)を血管から心臓に入れ、不整脈の原因となっている心臓の異常な電気信号の発生源や伝導路を焼灼(しょうしゃく)することで、不整脈を治療するものです。

特に、持続性心房細動とHFrEFを持つ患者さんに対する初回カテーテルアブレーションでは、心臓の後壁(こうへき)を電気的に隔離する「後壁孤立(POSTERIOR WALL ISOLATION: PWI)」という追加の手技が行われることがありました。しかし、ある研究報告では、HFrEFの患者さんに対して初回カテーテルアブレーションを行う際にPWIを追加しても、心房細動の再発率の改善や心臓の収縮機能(左室駆出率: LVEF)の回復には寄与しないことが示されています※。このため、HFrEFに対する初回カテーテルアブレーションにおいて、PWIの一貫した追加は、現時点では推奨されないという見解も示されています※。

生活習慣の改善

HFrEFの治療では、医療的な介入だけでなく、日々の生活習慣の見直しも非常に重要です。自己管理をしっかり行うことで、症状の安定や心臓への負担軽減につながります。主治医や管理栄養士からの指導のもと、次の点に注意して生活習慣を改善していきましょう。

・塩分制限: 体内の水分量を増やし、むくみや血圧の上昇を招き、心臓に過度な負担をかけるため、塩分摂取量を控えることが大切です。

・水分管理: 心臓の負担を軽減し、肺に水がたまる「肺うっ血(はいうっけつ)」やむくみの悪化を防ぐため、医師から指示された1日の水分摂取量を守りましょう。

・適度な運動: 心機能の維持や全身の体力向上につながります。無理のない範囲で、主治医と相談しながらウォーキングなどの運動を取り入れることが推奨されます。

・禁煙・節酒: 喫煙や過度な飲酒は心臓病のリスクを高め、HFrEFを悪化させる要因となるため、原則として禁煙し、飲酒は控える必要があります。

・体重管理: 過度な肥満は心臓にさらなる負担をかけるため、適正体重を維持することが重要です。

・睡眠: 心臓の回復を促し、身体のコンディションを整える上で、質の良い十分な睡眠は不可欠です。特に、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)はHFrEFの悪化要因となるため、早期に発見し治療に取り組むことが心臓への負担を軽減します。

これらの治療法を複合的に行うことで、HFrEFの症状を安定させ、より快適な日常生活を送ることが期待できます。不明な点や不安なことがあれば、必ず主治医に相談し、適切な治療計画を立ててもらいましょう。