臍ヘルニア

「でべそ」とも呼ばれる、おへそのぽっこりとした膨らみ。単なる見た目の問題だと思っていませんか?実はその多くが「臍ヘルニア」という、お腹の臓器が飛び出す病気です。新生児の約10人に1人が経験すると言われ、大人でも肥満や妊娠をきっかけに発症するなど、誰にでも起こりうる身近な症状なのです。

普段は痛みを感じなくても、放置していると、飛び出した腸が元に戻らなくなり緊急手術が必要になる「嵌頓(かんとん)」という危険な状態に陥る可能性もゼロではありません。治療法は一つではなく、近年の研究では、ヘルニアの穴の大きさが「1cm」を超えるかどうかが、最適な手術法を選ぶ重要な鍵になることが分かってきました。

この記事では、臍ヘルニアの原因から、ご自身やご家族に合った治療法を見つけるための最新情報までを詳しく解説します。正しい知識を得て、不安を解消するためにお役立てください。

臍ヘルニアの概要

「でべそ」として知られる状態の多くは、臍(さい)ヘルニアという病気です。 お腹の中にあるはずの腸などの臓器が、おへその部分から飛び出してしまいます。

私たちの体を守っているお腹の筋肉は、おへその部分が少し弱い構造です。 この筋肉のすき間がうまく閉じないと、お腹に力が入った際に、 腸などがそのすき間から押し出され、おへそがぽっこりと膨らむのです。

この状態は特に赤ちゃんによく見られ、新生児の約10人に1人が経験します。 決して珍しい病気ではないので、過度に心配しすぎる必要はありません。 しかし、大人でも肥満や妊娠などでお腹に圧力がかかり発症することがあります。

治療法は一つではなく、状態を詳しく診察し、適切な方法が選択されます。 近年の研究では、筋肉のすき間の大きさが治療法を選ぶ目安とされています。 例えば、すき間が1cm未満の場合は糸で縫い合わせる方法が、 1cmを超える場合はメッシュという人工シートで補強する方法が良い選択肢です。

  • 状態 お腹の筋肉のすき間から腸などが飛び出し、おへそが膨らむこと。
  • 発生率 新生児の約10人に1人に見られます。
  • 治療の考え方 筋肉のすき間の大きさが1cmを超えるかで、治療法が変わることがあります。

臍ヘルニアの種類

臍ヘルニアは、いつ、どのように起こるかで、いくつかの種類に分けられます。 主に、生まれつきの「先天性」と、大人になってからの「後天性」です。 この分類は、原因や治療方針を考える上で、とても大切な手がかりになります。

赤ちゃんに見られる「先天性臍ヘルニア」

主に赤ちゃんに見られるタイプで、多くの方が「でべそ」と呼ぶ状態です。 お母さんのお腹の中にいた時、栄養をもらっていた穴が完全に閉じないと起こります。

また、新生児のヘルニアには「臍帯(さいたい)ヘルニア」という特殊な状態もあります。 これはお腹の壁自体が生まれつき閉じていない、より専門的な管理が必要な病気です。 治療法もまだ世界中で研究が続けられており、確立された方法はありません。

大人になってから起こる「後天性臍ヘルニア」

成人してから、おへその部分の筋肉が弱くなって発症するタイプです。 お腹の中の圧力(腹圧)が高まることが、主な引き金となります。

  • 肥満
  • 妊娠や出産
  • お腹に水がたまる病気(腹水)
  • 重い物を持ち上げる仕事
  • 慢性的な激しい咳

治療法を決める「大きさ」による分類

ヘルニアの穴(ヘルニア門)の大きさも、治療を考える上で大切な分類です。 近年の多くの研究結果から、穴の大きさが治療法を選ぶ目安になっています。

穴が1cm未満なら糸で縫い合わせる方法が、良い選択肢の一つです。 一方、1cmを超える場合は、再発を防ぐため人工シート(メッシュ)で、 穴を補強する方法が、より優れていると考えられています。

種類

主な対象

主な原因

先天性臍ヘルニア

赤ちゃん

生まれつき筋肉の穴が閉じきっていない

後天性臍ヘルニア

成人

肥満や妊娠などによるお腹の圧力の上昇

臍ヘルニアの原因

臍ヘルニアは、お腹の壁の弱い部分にできた「すきま」から、 お腹の中の臓器が外に飛び出してしまう状態です。 原因は、いつ発症したかによって大きく2つに分けられます。

生まれつきの筋肉の弱さが原因(赤ちゃんの場合)

赤ちゃんがお母さんのお腹にいる間は、 「へその緒」を通して栄養や酸素を受け取っています。 このへその緒が通っていたおへその穴は、 通常、生まれた後に筋肉が発達して自然に閉じていきます。

しかし、筋肉の発達がゆっくりだったり、 穴がうまく閉じきらなかったりすると、すきまが残ります。 赤ちゃんが泣いてお腹に力が入ると、 このすきまから腸が押し出され、おへそが膨らむのです。

特に、以下のような場合に起こりやすい傾向があります。

  • 早産 予定日よりも早く生まれた赤ちゃん
  • 低出生体重児 生まれたときの体重が軽い赤ちゃん

ごくまれですが、遺伝的な要因が関わっている可能性もあります。

大人になってからの生活習慣が原因

大人になってから発症する場合は、腹圧の上昇が主な原因です。 腹圧とは、お腹の中にかかる圧力のことです。 加齢などで弱くなったお腹の筋肉に、 内側から強い圧力がかかり続けることで、穴が開いてしまいます。

  • 腹圧が高まる主な要因
  • 肥満 お腹の中の脂肪(内臓脂肪)が増えるため
  • 妊娠や出産 お腹が大きくなることで圧力がかかります
  • 腹水(ふくすい) 病気などでお腹に水がたまる状態です
  • 慢性的な激しい咳 喘息などで咳が長く続く場合
  • 重い物を持ち上げる習慣 仕事などで頻繁に行う場合

このように原因が異なると、ヘルニアの穴の大きさも変わってきます。 近年の研究では、穴の大きさが1cmを超える場合は再発を防ぐため、 人工シート(メッシュ)で補強する手術が良いとされています。

臍ヘルニアの症状

臍ヘルニアの最も分かりやすい症状は、おへそのぽっこりとした膨らみです。 いわゆる「でべそ」と呼ばれる状態で、見た目で気づくことがほとんどです。 この膨らみは、体の状態によって大きさが変わるのが特徴です。

立っている時や、お腹に力が入った時に大きくなります。 赤ちゃんが泣いたり、大人が咳をしたり、いきんだりした時が分かりやすいです。 反対に、仰向けに寝てリラックスすると、自然に引っ込むことがよくあります。

普段の症状チェックリスト

普段のヘルニアは、以下のような状態です。

  • おへその膨らみ おへそがぽっこりと丸く膨らんでいます。
  • 柔らかい感触 膨らみを指で優しく押すと、グジュグジュとした感触でへこみます。
  • 痛みがない ほとんどの場合、痛みを感じることはありません。

注意が必要な危険なサイン

通常は痛みがありませんが、次のような症状は危険なサインです。 飛び出した腸が筋肉の穴で締め付けられ、血が通わなくなる、 「嵌頓(かんとん)」という状態の可能性があります。

  • 嵌頓(かんとん)のサイン
  • おへその膨らみが急に硬くなった
  • 指で押しても戻らなくなった
  • 激しい腹痛や吐き気、嘔吐がある
  • おへそが赤紫色に腫れている

嵌頓は、腸がダメージを受ける緊急事態のため、すぐに手術が必要です。 これらの症状が一つでもあれば、夜間でもためらわず医療機関を受診してください。

また、成人の場合、肥満が原因でヘルニアになることがあります。 ある研究では、肥満の指標であるBMIが30以上だと、 手術後の傷口のトラブルが約6.5倍に増えると報告されています。 症状に気づいたら、悪化する前に医師へ相談することが大切です。

臍ヘルニアの検査・診断

おへそのぽっこりした膨らみに気づいたら、病院で相談することが第一歩です。 検査や診断は、ほとんど痛みを伴うことはないので、安心してください。 主に医師が直接見て、触ることで行われます。

診察では、次のような点を丁寧に確認していきます。

  • おへその状態(視診) 大きさや形、色などを目で見て詳しく観察します。
  • さわった感触(触診) 膨らみが柔らかいか、硬いかを確認します。 指で押した時に、お腹の中にすっと戻るかも大切なポイントです。
  • お腹に力を入れた時の変化 立ったり咳をしたりして、お腹に力が入った時に、 膨らみがどう変わるかを見て、ヘルニアの状態を把握します。

多くは見た目と触った感じで診断がつきますが、 より詳しくお腹の中の状態を知るために、画像検査を行うこともあります。

  • 超音波(エコー)検査 体に害のない超音波を使い、お腹の中の様子を画面に映し出します。 ヘルニアの穴から何が飛び出しているかなどを調べることができます。
  • CT検査 体を輪切りにしたような詳しい画像を撮影します。 ヘルニアの穴の正確な大きさや、周りとの関係を立体的に把握できます。

これらの検査でヘルニアの穴の大きさを正確に測ることが、とても重要です。 近年の多くの研究報告を分析した結果、穴の大きさが1cmを超えるかで、 手術の方法を変える方が再発が少ないことが分かっています。 自分に合った治療法を選ぶためにも、まずは正確な診断を受けましょう。

臍ヘルニアの治療

臍ヘルニアの治療法は、年齢や状態によって大きく異なります。 主に「経過観察」「圧迫療法」「手術」の3つの選択肢があり、 それぞれの特徴を理解して、最適な方法を選ぶことが大切です。

赤ちゃんの場合の治療法

赤ちゃんの臍ヘルニアは、体の成長に伴って自然に治ることが多いです。 約9割は2歳ごろまでに治るといわれているため、 基本的には慌てず「経過観察」を行うのが一般的です。

しかし、最近では、よりきれいに治すことを目指す治療も行われます。

  • 圧迫療法 専用のスポンジなどで、おへその膨らみを優しく押さえる方法です。 皮膚が伸びてしまうのを防ぎ、治りを早める効果が期待できます。 特に生まれて間もない時期に始めると、効果が高いとされています。

手術が必要になるケース

以下のような場合は、自然に治るのが難しいため手術が検討されます。

  • 2歳を過ぎてもヘルニアが残っている場合
  • ヘルニアの穴が大きく、自然に閉じるのが難しい場合
  • 大人の臍ヘルニアの場合(大人は自然治癒せず、嵌頓のリスクがあるため)

手術の方法:穴の大きさで変わる

手術の目的は、筋肉にできた穴(ヘルニア門)をしっかりふさぐことです。 どの手術方法が良いかは、穴の大きさによって変わることが、 近年の多くの研究結果から分かっています。

手術方法

特徴

どんなときに選ばれる?

糸で縫う方法

筋肉の穴を直接、医療用の糸で縫い合わせます。

穴の大きさが1cm未満の比較的小さなヘルニア。

シートで補強する方法

人工のシート(メッシュ)で穴を覆い、補強します。

穴が1cmより大きく、再発を防ぎたい場合。

また、お腹のたるみを取る美容目的の手術と同時に、 臍ヘルニアを安全に治療することも可能です。 どの治療法が最適か、一人ひとりの状態に合わせて判断しますので、 まずは専門の医師へ相談しましょう。