肺動脈狭窄
学校の心臓検診でお子さんが「心雑音がある」と指摘され、不安な気持ちを抱えていませんか。その原因の一つに、心臓から肺へ血液を送る血管が狭くなる「肺動脈狭窄」という病気があります。
これは生まれつきの心臓病の中では決して珍しいものではなく、全体の約8〜10%を占めるとされています。軽症の場合は自覚症状がほとんどなく、大人になるまで気づかれないこともあります。しかし、進行すると心臓に大きな負担がかかり、息切れや動悸といったサインが現れることも少なくありません。
この記事では、肺動脈狭窄とはどのような病気なのか、その原因から症状、最新の治療法までを詳しく解説します。ご自身やご家族の健康を守るために、まずは正しい知識を身につけ、不安を解消していきましょう。
肺動脈狭窄の概要
心臓は全身に血液を送るポンプの役目をしています。
その中でも右側のお部屋(右心室)から肺へ血液を送るための血管が「肺動脈」です。
肺動脈狭窄症は、この肺動脈の一部が狭くなってしまう病気です。
血管が狭いと、心臓は普段より強く血液を押し出す必要があります。
この状態が続くと心臓の筋肉が疲れてしまい、だんだんと負担が大きくなります。
生まれつきの心臓病(先天性心疾患)の中では比較的多く、全体の約8〜10%を占めます。
狭さの程度が軽い場合は、症状がなく元気に過ごせることがほとんどです。
そのため、成人になるまで気づかれないことも珍しくありません。
しかし、お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんのうちに診断されることもあります。
例えば、双子の妊娠で起こることがある「双胎間輸血症候群」の赤ちゃんの場合です。
この病気と診断された赤ちゃんの約6%に、肺動脈が狭くなる状態が見られるという報告もあります。
このようなケースでは、胎児のうちに心臓手術を行うことも研究されています。
手術には赤ちゃんの心臓の成長を助ける可能性がある一方で、大きなリスクも伴います。
そのため、手術を行うかどうかは、とても慎重に判断されます。
肺動脈狭窄症のポイントを以下にまとめます。
・どんな病気?
・心臓から肺へ血液を送る血管(肺動脈)が狭くなる病気
・どのくらいの頻度?
・生まれつきの心臓病の約1割を占める
・症状は?
・軽症では症状がないことが多いが、進行すると心臓に負担がかかる
肺動脈狭窄の種類
肺動脈が狭くなる場所は、一つだけではありません。
狭い場所によって、大きく3つの種類に分けられます。
どこが狭くなっているかで治療の方法が変わるため、種類を知ることはとても大切です。
主に、以下の3つの種類に分けられます。
種類 | 狭くなっている場所 | 特徴
肺動脈弁狭窄症 | 肺動脈の入り口にある「弁」 | 血液が逆流しないようにする扉(弁)がうまく開かない状態です。肺動脈狭窄症の中で最も多いタイプになります。
肺動脈弁上部狭窄症 | 肺動脈の「弁」よりも肺に近い部分 | 扉(弁)を通り過ぎた先の血管そのものが細くなっている状態です。
肺動脈弁下部狭窄症 | 肺動脈の「弁」よりも心臓に近い部分 | 心臓の部屋の出口あたりの筋肉が厚くなり、道が狭くなっている状態です。
このほか、肺動脈が枝分かれした先の細い血管が狭くなる場合もあります。
また、これらの場所が複数同時に狭くなっていることも珍しくありません。
これらの多くは生まれつきの病気です。
そのため、お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんのうちに治療が検討されることもあります。
研究によると、胎児のうちに行う手術には良い点と難しい点があるとわかっています。
良い点は、心臓の右側のお部屋の成長を助け、血液の流れをスムーズにする可能性があることです。
一方で、手術は非常に難しく、大きな危険が伴うという難しい点もあります。
そのため、手術を行うかどうかは専門の医師たちが慎重に話し合って決めます。
肺動脈狭窄の原因
肺動脈狭窄のほとんどは、生まれつき心臓に原因がある「先天性」の病気です。
お母さんのお腹の中で赤ちゃんの心臓が形づくられる時に起こります。
心臓から肺へ血液を送るための扉「肺動脈弁」が、うまく作られないことが主な原因です。
具体的には、以下のような状態によって肺動脈が狭くなります。
・弁の枚数の異常
・本来3枚あるはずの弁が、生まれつき少ない状態です。
・弁そのものの異常
・弁が厚く硬くなってしまい、動きが悪くなっている状態です。
・弁の癒着
・弁と弁がくっついてしまい、血液が通る時に十分に開きません。
多くの場合、なぜ弁がうまく作られなかったのか、はっきりした原因は分かりません。
そのため、決してご両親のせいではありませんので、ご自身を責めないでください。
近年、お腹の中の赤ちゃんのうちに手術を行う研究も進んでいます。
この胎児手術は、心臓の右側のお部屋の成長を助ける可能性があるという良い点があります。
しかし、手術は非常に難しく、合併症や命に関わる大きな危険も伴うのが現状です。
そのため、手術を行うかは専門の医師たちが慎重に判断します。
ごくまれに、他の病気が原因で発症することもあります。
例えば、ファロー四徴症など、他の心臓の病気と一緒に見つかることがあります。
また、大人になってからリウマチ熱という感染症や、胸の怪我が原因となる可能性もあります。
肺動脈狭窄の症状
肺動脈狭窄の症状は、血管がどのくらい狭いか(重症度)で大きく変わります。
軽症の場合はほとんど症状がなく、多くの方が大人になるまで気づきません。
学校の心臓検診などで、心臓の雑音をきっかけに見つかることもよくあります。
しかし、血管の狭さが進むと、心臓の右側のお部屋(右心室)に負担がかかります。
右心室が一生懸命に血液を送り出そうと頑張りすぎることで、様々なサインが現れます。
年齢ごとの主な症状
体の成長や活動量が増えるにつれて、症状の現れ方も変わってきます。
お子さんの様子で気になることがないか、チェックしてみましょう。
□ 赤ちゃんの頃(新生児・乳児期)
重症の場合、生まれてすぐに症状が出ることがあります。
お母さんのお腹の中にいる時から、心臓の成長に影響が出ている場合もあります。
・呼吸の異常
・呼吸が速かったり、息をするのが苦しそうに見えたりします。
・顔色や体の色の変化
・血液中の酸素が足りなくなり、唇や爪が青紫色っぽくなります(チアノーゼ)。
・哺乳や成長の問題
・ミルクを飲む力が弱く、体重がなかなか増えません。
・元気がない
・いつもぐったりしていて、あまり泣かないこともあります。
□ 大きくなってから(幼児期・学童期以降)
体を動かす機会が増えることで、心臓への負担が大きくなり症状が出やすくなります。
・運動時の変化
・お友達と同じように走ると、すぐに息切れしたり、ひどく疲れたりします。
・胸の症状
・胸がドキドキする(動悸)と感じたり、胸の痛みを訴えたりします。
・意識の問題
・立ちくらみやめまいを起こしたり、ひどい場合は気を失ったりする(失神)こともあります。
これらの症状は、心臓が「助けて!」と送っている大切なサインかもしれません。
少しでも気になる症状があれば、自己判断せずに専門の医療機関へご相談ください。
肺動脈狭窄の検査・診断
肺動脈狭窄は、学校の健康診断などで見つかることが少なくありません。
お医者さんが聴診器を胸に当てて「心雑音」を指摘されるのがきっかけです。
心雑音とは、心臓の血液が流れる時に出る、普段とは違う音のことです。
診断を確定し、血管の狭さの程度を調べるために、いくつかの検査を行います。
痛くない検査がほとんどなので、安心して受けてくださいね。
・聴診
・医師が聴診器を使い、心臓の音を詳しく聞き取ります。
・狭い血管を血液が無理やり通る時の「ザーザー」という音が特徴です。
・胸部X線検査
・体の中を写すレントゲン写真で、心臓の大きさや形を調べます。
・頑張りすぎている心臓は、普通より大きく写ることがあります。
・心電図検査
・胸や手足にシールを貼り、心臓が動く電気信号を記録します。
・心臓の右側のお部屋(右心室)への負担の大きさがわかります。
・心臓超音波検査(心エコー)
・診断のために最も大切な検査です。
・超音波で心臓の動きをリアルタイムで観察し、詳しく評価します。
・弁の形や動き、狭くなっている場所と程度
・血液の流れの速さや、逆流していないか
・右心室の壁の厚さ(心臓の負担の度合い)
・心臓カテーテル検査
・より詳しい情報が必要な時に行います。
・腕や足の付け根から細い管を心臓まで進め、中の圧力を直接測ります。
最近では、お母さんのお腹にいる赤ちゃんのうちに診断されることもあります。
研究によると、胎児のうちに治療を行うことで心臓の成長を助ける可能性があります。
しかし、この手術は非常に難しく、高いリスクも伴うため慎重な判断が必要です。
肺動脈狭窄の治療
肺動脈狭窄の治療は、血管の狭さの程度や症状などをみて決まります。
一人ひとりの心臓の状態に合わせて、最適な方法を選んでいきます。
主な治療の選択肢は、以下の通りです。
治療法 | どんな人が対象? | 治療の目的
経過観察 | 症状がなく、狭さも軽い場合 | 心臓の状態が悪化しないか定期的に確認する
薬物療法 | 心不全の症状(息切れなど)がある場合 | 心臓の負担を軽くし、症状を和らげる
カテーテル治療 | 狭さが中等症〜重症の場合 | 体の中から風船で血管を広げ、血液の流れを良くする
外科手術 | カテーテル治療が難しい場合など | 弁の形を整えたり、取り替えたりして狭さを治す
経過観察と薬物療法
狭さが軽く症状もない場合は、すぐに治療はせず様子を見ることが多いです。
ただし、定期的に検査を受けて心臓の状態を確認することがとても大切です。
息切れなどの症状がある場合は、心臓の負担を減らすお薬を使うこともあります。
カテーテル治療
現在の中心的な治療は、カテーテルという細い管を使った方法です。
足の付け根の血管から、先に風船がついた管を心臓まで進めます。
そして狭くなった場所で風船をふくらませ、内側から血管を押し広げます。
この方法は体への負担が少なく、回復が早いのが大きな特徴です。
外科手術と胎児治療
カテーテル治療が難しい場合は、外科手術で弁の形を整えます。
また最近では、お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんへの治療も研究されています。
研究によると、この胎児手術は心臓の右側のお部屋の成長を助ける可能性があります。
しかし、手術は非常に難しく、高い合併症のリスクも伴うのが現状です。
そのため、専門の医師たちがいる特別な病院で慎重に判断されます。









