肩腱板損傷

服を着替える、髪を洗うといった何気ない動作で肩にズキッとした痛みを感じたり、夜中に痛みで目が覚めたりしていませんか。「また四十肩かな」と見過ごしがちですが、その症状、実は肩の重要な腱が傷つく「肩腱板損傷」かもしれません。

この損傷は、放置すると日常生活や仕事に深刻な影響を及ぼす可能性があります。ある研究報告によれば、手術後に仕事へ復帰できる人は約8割いるものの、職場に戻るまでには平均して約6ヶ月もかかるとされています。

この記事では、肩腱板損傷の原因から自分で気づける症状のサイン、そして最新の治療法までを詳しく解説します。あなたの痛みの原因を正しく理解し、適切な治療への第一歩を踏み出すために、ぜひ参考にしてください。

肩腱板損傷の概要

肩の関節の奥には、「腱板」という組織があります。 これは肩を動かすための大切な4つの筋肉の腱が集まり、 まるで板のようになった部分です。

この腱板が傷ついたり、切れたりする状態を、 肩腱板損傷と呼びます。

肩腱板には、主に次のような重要な役割があります。

  • 腕を上げたり、回したりする
  • 髪を洗う、服を着る、棚の上の物を取るなど、 日常の多くの動作を支えています。
  • 肩の関節を安定させる
  • 腕の骨が肩甲骨から外れないように、 しっかりと固定する役割を担っています。

この腱板が損傷すると、単に肩が痛むだけでなく、 日常生活や仕事に大きな影響が出ることがあります。

ある研究報告によると、腱板損傷の手術を受けた後、 仕事に復帰できる人の割合は約8割とされています。 職場に戻るまでには、平均して約6ヶ月かかるのです。

特に、重い荷物を扱う仕事や腕を頻繁に使う仕事では、 復帰がより難しくなる傾向があることもわかっています。

このように、肩腱板損傷は生活の質に深く関わるため、 痛みや違和感があれば早めに専門医に相談しましょう。

肩腱板損傷の種類

肩腱板損傷とひとことで言っても、その状態は様々です。 損傷は主に、切れ方の「ひどさ」と「場所」で分けられます。 この違いを知ることが、適切な治療への第一歩になります。

損傷のひどさによる分類

  • 部分断裂 筋肉の腱がすり減ったり、一部だけ切れたりした状態です。 まだ完全には切れておらず、腱の一部はつながっています。
  • 完全断裂 腱が完全に切れて、骨から離れてしまった状態です。

損傷した場所による分類 肩腱板は4つの筋肉の腱が集まってできています。 どの腱が損傷したかによって、症状の出方が変わります。 特に、腕を上げる「棘上筋」や、 腕を外にひねる「棘下筋」の損傷が多く見られます。

これらの損傷の種類は、治療法や回復の進み方に影響します。 例えば、リハビリでは運動と専門家の施術を組み合わせると、 痛みの軽減や機能回復に有効である可能性があります。

また、手術後の回復過程も損傷の種類によって変わります。 特に腕をひねる動き(内旋・外旋)の回復には、 時間がかかる傾向があることも報告されています。

さらに、手術後の固定方法も重要です。 ある研究では、新しい固定具を使うことで、 従来の方法より術後の痛みが少なく、 より早く肩を動かせるようになったと報告されています。 このように、損傷の状態に合わせた細やかな対応が大切です。

肩腱板損傷の原因

肩腱板損傷は、ひとつの出来事だけで起こるわけではありません。 年齢による変化という土台に、日々の負担などが重なって発症します。 主な原因は、大きく分けて3つに分類することができます。

1. 年齢による体の変化

年齢を重ねると、肩の腱に栄養を送る血管が少なくなります。 すると腱はもろくなり、ささいなことで傷つきやすくなるのです。 特に50歳代以降の方に多く、四十肩や五十肩と間違われやすいです。

2. 肩の使い過ぎによる負担

仕事やスポーツで、腕を肩より上に上げる動作をくり返すと、 腱が骨とこすれて、少しずつすり減ることがあります。

  • スポーツの例 野球の投球、テニスのサーブ、水泳のクロールなど
  • お仕事の例 重い荷物の上げ下ろし、塗装や剪定(せんてい)作業など

ある研究では、重い荷物を扱う仕事は、 手術後の仕事復帰に影響を与える可能性が示されています。 それだけ肩に大きな負担をかけていると言えるでしょう。

3. 肩への強い衝撃(外傷)

転んで手やひじをついたり、肩を直接ぶつけたりするなど、 一度の強い力で腱が切れてしまうことも「外傷」と呼びます。 特に、日常的によく使う利き腕は負担がかかりやすいです。 利き腕の損傷は回復に影響する場合があることもわかっています。

肩腱板損傷の症状

肩腱板が傷つくと、肩の痛みや動きにくさが現れます。 この症状は、日常生活の質を大きく下げる原因になります。 生活の中で「あれ?」と感じるサインを見逃さないことが大切です。

具体的にどのような症状が現れるのか、確認してみましょう。

こんな症状はありませんか?

  • 腕を動かすときの痛み 服を着たり脱いだりする、髪を洗うなどの動作で、 肩の外側にズキッとした痛みを感じることがあります。
  • 夜中に強まる痛み(夜間痛) 寝ているときに痛みで目が覚めてしまうのは、 傷ついた部分で炎症が起きているサインの一つです。
  • 腕の動きの制限 痛みだけでなく、腕が上がりにくくなることがあります。 ある研究報告では、特に腕をひねる動きが、 難しくなることが指摘されています。 – 内旋(ないせん):腕を内にひねる動き エプロンの紐を背中で結ぶ、背中をかく動作が難しい。 – 外旋(がいせん):腕を外にひねる動き 髪を後ろで結ぶ、頭を洗う動作がつらい。
  • 力が入りにくい 腕に力が入りにくくなり、物を落としやすくなります。 コップを持つ、ドアノブを回すなどの動作が困難です。
  • 肩を動かしたときの音 腕を動かすと「ゴリゴリ」「ジャリジャリ」といった、 きしむような音がすることがあります。

これらの症状の出方は、腱の傷の程度によって様々です。 軽い痛みだけの場合もあれば、複数の症状が重なることもあります。 気になるサインがあれば、自分で判断せず専門医に相談しましょう。

肩腱板損傷の検査・診断

肩の痛みの原因が本当に腱板の傷なのかを調べます。 どのくらいひどい状態なのかを知るために、 いくつかの検査を順番に行っていきます。

まず、お医者さんがあなたから症状について詳しく聞きます。 いつから痛むか、どんな動きで痛むかなどを教えてください。 その後、肩や腕を動かして痛みの場所や動きにくさを確認します。 これで、どの部分に問題がありそうか、見当をつけていきます。

次に、特別な機械を使って肩の中の状態を画像で確認します。 これにより、痛みの原因をはっきりとさせることができます。

検査の種類

主な目的

わかりやすい特徴

レントゲン検査

骨の状態を確認します。

腱は写りませんが、骨折など他の病気がないかを見る大事な検査です。

MRI検査

腱や筋肉の状態を見ます。

腱が切れている場所や大きさがはっきりわかります。診断の主役となる検査です。

超音波(エコー)検査

腱の動きをリアルタイムで見ます。

体に負担が少なく、その場で腱がどう動くかを確認できる便利な検査です。

これらの検査結果をもとに、最終的な診断をします。 正確な診断は、あなたに合った治療法を選ぶためにとても大切です。

例えば手術が必要になった場合でも、様々な工夫があります。 ある研究では、手術後の痛みを減らし、 より早く肩を動かせるようになる新しい固定具が報告されています。

また、ご自身の血液の成分(PRP)を使って、 腱の治りを助け、再び切れるリスクを減らす方法も研究されています。 あなたに合った治療計画を一緒に考えていきましょう。

肩腱板損傷の治療

肩腱板が傷ついたときの治療法は、主に2つあります。 手術をしない「保存療法」と、手術で治す「手術療法」です。 あなたの肩の状態や年齢、生活に合わせて最適な方法を選びます。

どちらの治療法を選ぶか、一緒にじっくり考えていきましょう。

1. 保存療法(手術をしない方法)

傷が小さい場合や、ご高齢の方などに選ばれることが多い治療法です。 焦らず、じっくりと肩の機能を取り戻していくことを目指します。

治療の種類

具体的な内容

お薬や注射

飲み薬や湿布で、つらい痛みや炎症を和らげます。痛みが強い場合は、肩の関節に注射をすることもあります。

リハビリ

治療の主役です。専門家と一緒に、肩を動かす範囲を広げたり、周りの筋肉を鍛えたりする運動を行います。

ある研究では、リハビリの際に運動と専門家の施術を組み合わせると、 痛みの改善や機能回復に、より効果的である可能性が示されました。

2. 手術療法(手術で治す方法)

保存療法を続けても良くならない場合や、腱が完全に切れた場合、 また、スポーツに早く復帰したい若い方などに検討される方法です。

最近は、肩に小さな穴を開けて行う「関節鏡視下手術」が主流です。 これはカメラを見ながら行うため、傷が小さく体への負担が少ないです。

手術後の回復には、リハビリがとても重要になります。 ある研究報告によると、手術後すぐに元通りになるわけではなく、 6ヶ月ほどで大きな改善が見られ、約1年かけて回復していきます。 特に、腕をひねる動きは、回復に時間がかかる傾向があります。 焦らず、根気強くリハビリに取り組むことが大切です。

また、手術の効果を高める新しい工夫も研究されています。 自分の血液の成分(PRP)を手術中に使うことで、 術後の痛みを和らげ、再び切れるリスクを下げることが期待されます。