股関節脱臼
「まさか自分が…」股関節の脱臼は、激しいスポーツや事故だけの話だと思っていませんか?実はこのトラブルは、生まれたばかりの赤ちゃんから、ご高齢の方まで、誰の身にも起こりうるのです。
特に女の子の赤ちゃんは、男の子の約9倍も股関節がずれる「発育性股関節形成不全」になりやすいことがわかっています。治療法も進歩していますが、手術には約19%の合併症リスクや、約6%の再手術の可能性も報告されています。
この記事では、年代ごとの原因や見逃せないサイン、そして後悔しないための治療選択について、具体的なデータと共に詳しく解説します。ご自身や大切なご家族を守るための知識を身につけましょう。
股関節脱臼の概要
足の付け根にある股関節は、体を支える大切な部分です。 太ももの骨の丸い先端(大腿骨頭)が、骨盤の受け皿(寛骨臼)にしっかりはまっています。 この骨の先端が、お椀からボールが飛び出すように外れてしまう状態が「股関節脱臼」です。
股関節脱臼は、実はどの年代でも起こる可能性があります。
- 赤ちゃんの場合 生まれつき股関節の形が不安定なことが原因です。 これは「発育性股関節形成不全」と呼ばれます。
- 若い世代の場合 スポーツでの激しい接触や、交通事故のような強い力で外れてしまいます。
- 高齢の方の場合 骨がもろくなっているため、転倒などの比較的弱い力でも脱臼することがあります。
赤ちゃんの股関節の形を整える手術は、機能の改善に効果的です。 例えば「Dega骨切り術」という手術に関する研究報告があります。 多くの研究をまとめた分析によると、この手術によって股関節の形が改善することが確認されました。
しかし、どのような治療にもリスクは伴います。 この手術では、約19%の確率で骨の先端に血液が届きにくくなる合併症が起こることも報告されています。 また、約6%の確率で再手術が必要になる可能性も考慮しなくてはなりません。
治療法は年齢や原因によって様々です。 股関節に痛みや違和感がある場合は、自己判断せず、必ず専門の医療機関に相談してください。
股関節脱臼の種類
股関節脱臼は、その原因によって大きく3つの種類に分けられます。 いつ、どのようにして起こるかで特徴が異なります。
- 発育性股関節形成不全(はついくせいこかんせつけいせいふぜん) 主に赤ちゃんで見られる股関節のずれです。 以前は生まれつきの問題と考えられていました。 しかし現在では、生まれてからの足の動かし方なども影響するとわかっています。 特に女の子(男の子の約9倍)や、逆子で生まれた赤ちゃんに起こりやすいです。 治療では手術が必要なこともあります。 ある研究では、「Dega骨切り術」という手術が、股関節の形を整えるのに有効だと報告されました。 一方で、約19%の確率で骨の先端に血が届きにくくなる合併症や、約6%の確率で再手術の可能性があることも知られています。
- 外傷性股関節脱臼(がいしょうせいこかんせつだっきゅう) 交通事故やスポーツ中の激しい接触などで起こる脱臼です。 健康で丈夫な骨を持つ若い世代に多く見られます。 一方、骨が弱くなっているご高齢の方の場合は、自宅での転倒といった比較的弱い力でも脱臼してしまうことがあります。
- 病的脱臼(びょうてきだっきゅう) 股関節自体に別の病気があり、それが原因で起こる脱臼です。 例えば、細菌の感染などで関節が弱ってしまうことが原因です。 病気によって骨がもろくなり、正常な位置を保てなくなってしまいます。
股関節脱臼の原因
股関節が外れてしまう原因は一つだけではありません。 年齢や体の状態によって、大きく分けて3つのパターンがあります。 それぞれの原因を詳しく見ていきましょう。
1. 赤ちゃんの股関節がうまく育たない場合 (発育性股関節形成不全) 赤ちゃんのときに股関節が不安定になることがあります。 生まれつきだけでなく、生まれてからの発育も影響します。 特に、以下のような赤ちゃんは注意が必要です。
- 女の子である 男の子よりも起こりやすい傾向があります。
- ご家族に股関節の病気の方がいる 遺伝的な要因も関係すると考えられています。
- 逆子で生まれた お腹の中で足が伸びた姿勢になりやすいです。
- 足をまっすぐにする習慣 きついおくるみなどで足を伸ばすと、脱臼しやすくなります。
もし手術が必要になっても、再び脱臼することがあります。 ある研究報告によると、その主な原因は、 手術の際に股関節の周りにある硬くなった組織を、 十分にゆるめきれないことだとされています。
2. 強い力が加わるケガの場合 (外傷性股関節脱臼) 交通事故やスポーツでの転倒など、強い力が原因です。 健康で丈夫な骨でも、大きな衝撃で外れてしまいます。 一方、ご高齢の方は骨がもろくなっているため、 自宅で転ぶといった比較的弱い力でも脱臼することがあります。
3. 病気や手術がきっかけになる場合 関節リウマチなどの病気で関節が弱くなり、脱臼することもあります。 また、股関節の骨折手術後に起こることも少なくありません。 特に、骨盤の受け皿部分(臼蓋)を骨折したご高齢の方の手術では、 残念ながら脱臼が再手術の最も多い原因と報告されています。
股関節脱臼の症状
股関節が外れてしまったとき、体はどのようなサインを出すのでしょうか。 股関節脱臼は、赤ちゃんに起こる場合と大人がケガで起こす場合で、現れる症状が大きく異なります。 それぞれの特徴を知っておくことが、もしもの時の早期発見につながります。
赤ちゃんの場合(発育性股関節形成不全)
赤ちゃんは「痛い」と自分で伝えることができません。 そのため、ご家族が日頃の様子から変化に気づくことが何よりも重要になります。 おむつ替えなどの際に、以下のサインがないか確認してみましょう。
- 足の開き具合の違い おむつを替えるときなどに、片方の足の開きが硬い、または左右で開き方に差があるように感じます。
- しわの左右差 太ももやおしりの皮膚のしわの数や深さが、左右で違って見えます。これは骨の位置がずれているサインです。
- 足の見た目の長さ あお向けで両ひざを立てたときに、ひざの高さが左右で違うように見えます。
これらのサインは、乳児健診で指摘されることも多いです。 もし見逃されると、歩き始めるのが遅れたり、歩き方が不安定になったりすることがあります。
大人の場合(主にケガによる脱臼)
大人の股関節脱臼は、交通事故や転倒など強い力が加わって起こります。 そのため、症状は非常に激しく、誰が見ても異常だとわかることがほとんどです。
- 耐えがたいほどの激しい痛み 股関節に激痛が走り、立つことはもちろん、じっとしているのもつらい状態になります。
- 足を全く動かせなくなる 痛みのためだけでなく、関節が正常な位置にないため、自分の意思で足を動かすことができません。
- 見た目の大きな変化 足が内側や外側にねじれたような不自然な方向を向いたままになります。脱臼した側の足が短く見えるのも特徴です。
- 足のしびれ 脱臼した骨の先端が近くにある太い神経(坐骨神経)を圧迫すると、足にしびれや麻痺が起こることがあります。
また、人工股関節の手術を受けた後に、再び脱臼が起こることもあります。 以前は脱臼を防ぐため、日常生活で多くの動作制限が指導されていました。
しかし、近年では少しずつ考え方が変わってきています。 8,800人以上の患者さんを対象とした複数の研究をまとめた分析では、驚くべき結果が報告されました。 手術後に特別な予防策を講じなくても、脱臼が起こるリスクに大きな差はない可能性が示されたのです。 ただし、これは「予防が全く不要」ということではありません。 ご自身の状態に合わせて、担当の医師とよく相談し、適切なアドバイスを守ることが大切です。
股関節脱臼の検査・診断
股関節の脱臼が疑われる場合、まずはお話を聞きます。 そして、体を直接見て触って、股関節の状態を確認します。 その後に、骨の状態を詳しく見るための画像検査に進みます。 これらの検査を組み合わせ、正確な診断を下すことが重要です。
主な検査方法は、以下のとおりです。
- 問診・身体診察 いつ、どのようにしてケガをしたのかを詳しくお聞きします。 足の長さや向きに左右差はないかなどを確認します。 特に赤ちゃんの股関節は、定期健診でのチェックが大切です。 早期発見が、その後の赤ちゃんの健やかな成長につながります。
- X線(レントゲン)検査 骨の状態を詳しく見るための、基本となる画像検査です。 骨が完全に外れているか、骨折がないかを正確に判断できます。 赤ちゃんの「発育性股関節形成不全」の診断にも重要です。 骨盤の受け皿の角度「臼蓋指数」を測り、治療効果を見ます。 ある研究では、「Dega骨切り術」という手術によって、 この角度が大きく改善したことが報告されています。 このように、治療がうまくいっているかの確認にも使います。
- 超音波(エコー)検査 主に赤ちゃんの股関節を診断する際に活躍する検査です。 X線と違い放射線を使わないため、体に優しく安全です。 まだ骨になっていない、柔らかい軟骨の状態も観察できます。
- CT検査 交通事故など、強い力で脱臼したときに行われる検査です。 複雑な骨折が疑われる場合に、骨を立体的に観察します。 X線よりも詳しく骨の状態がわかるため、 治療方針を決める上でとても重要な情報となります。
股関節脱臼の治療
股関節が外れてしまったときの治療法は、原因や年齢によって大きく異なります。 大きく分けると「手術をしない方法」と「手術をする方法」の2つがあります。 どちらの方法が最適か、専門の医師が慎重に判断します。
手術をしない方法(保存的治療)
骨折がなく、ケガで脱臼した場合や、赤ちゃんの股関節の問題に対して行います。
- 手で元に戻す(徒手整復術) 痛み止めや筋肉をゆるめる薬を使い、医師が手で骨をそっと元の位置に戻します。
- 特別なベルトを使う(装具療法) 主に赤ちゃんの「発育性股関節形成不全」で使われる方法です。 リーメンビューゲルという専用のベルトで、股関節が自然に正しい位置に収まるように促します。
手術をする方法(外科的治療)
保存的治療で治らない場合や、骨折を伴う場合、脱臼を繰り返す場合に行われます。
- 骨の形を整える手術(骨切り術) 骨盤の骨の形に問題がある場合、骨の一部を切って形を整え、股関節を安定させます。 「Dega骨切り術」という手術は、股関節の機能を改善するのに有効です。 しかし、約19%の確率で骨の先端に血が届きにくくなる合併症や、約6%の確率で再手術が必要になる可能性も報告されています。
- 人工の関節を入れる手術 ご高齢の方で骨折を伴う脱臼の場合に行われることがあります。 骨折の治療と同時に、人工の股関節に置き換える手術です。 この手術の後、約4.4%の確率で再び脱臼が起こるという報告もあります。
一度目の手術でうまくいかなかった場合、再手術は技術的に難しくなります。 再脱臼の主な原因は、股関節の周りにある硬くなった組織を十分にゆるめきれないこととされています。 再手術では、骨の先端に血が届かなくなる深刻な合併症の発生率が高いという報告もあり、最初の治療が非常に重要です。










