股関節炎

「歩き始めると足の付け根が痛む」「靴下を履くのがつらい」そんな経験はありませんか。見過ごしがちなその痛みは、体を支える重要な関節に炎症が起きる「股関節炎」のサインかもしれません。

股関節炎は子どもからお年寄りまで誰にでも起こりうる病気です。放置すれば歩行が困難になるなど、生活の質を大きく下げる恐れもあります。しかし、たとえ結核菌などが原因で重症化した場合でも、諦める必要はありません。

近年の研究では、手術などの適切な治療によって生活の質を大幅に改善できることがわかっています。この記事では股関節炎の様々な原因と、あなたの未来の生活を守るための最新治療法について詳しく解説します。

股関節炎の概要

「足の付け根が痛い」「歩くと痛む」と感じることはありませんか。 その痛みは、股関節炎のサインかもしれません。

股関節は、太ももの骨と骨盤をつなぐ大切な関節です。 体を支え、歩く、座る、立つといった動作を滑らかにします。 この部分に炎症が起き、痛みや腫れが生じるのが股関節炎です。 子どもからお年寄りまで、誰にでも起こる可能性があります。

股関節炎になると、主に次のような状態が見られます。

  • 主な症状 足の付け根の痛み、腫れ、熱っぽさを感じます。
  • 痛む場所 股関節だけでなく、太ももや膝に痛みが出ることがあります。
  • 生活への影響 痛みで歩きにくくなったり、あぐらをかけなくなったりします。 また、靴下をはく、足の爪を切るといった動作も難しくなります。

原因は、細菌が関節に入る「感染性」のものと、 はっきりとした原因がわからない「非感染性」のものがあります。

特に、結核菌などが原因で股関節が大きく壊れてしまうこともあります。 しかし、そのような場合でも治療法はあります。 「人工股関節全置換術」という手術で、生活の質を取り戻せます。 生活の質とは、日常生活をどれだけ快適に送れるかという指標です。

近年の研究では、この手術は股関節結核の有効な治療法とされ、 患者さんの生活の質を大幅に改善できることがわかっています。 手術を成功させるには、原因となる感染症の治療がとても重要です。 手術の前後にお薬をしっかり飲むことで、病気の再発を防ぎます。

股関節の痛みを放置せず、早めに専門の医療機関に相談しましょう。

股関節炎の種類

「股関節炎」とひとことで言っても、原因によっていくつかの種類に分けられます。 原因が違えば、治療法や注意点も変わってきます。 代表的な股関節炎の種類を、表で見ていきましょう。

種類

原因は?

誰に多い?

特徴

単純性股関節炎

はっきりしていない

(かぜの後など)

子ども

(3~10歳頃)

・安静にすれば自然に治ることが多い

・比較的、心配の少ないタイプ

化膿性股関節炎

ばいきん(細菌)の感染

赤ちゃんや子ども

・急な高熱と強い痛みがでる

・関節が壊れる前に、急いで治療が必要

結核性股関節炎

けっかく菌の感染

年齢は問わない

・ゆっくりと進行する

・昔と違い、今は良い治療法がある

単純性股関節炎

お子さんが急に足を引きずって歩くようになり、心配して受診されるケースが多いです。 はっきりした原因は不明ですが、かぜをひいた後などに起こることがあります。 安静にしていれば、1~2週間ほどで自然に良くなることがほとんどです。

化膿性股関節炎

黄色ブドウ球菌などの細菌が関節の中に入り、うみがたまってしまう病気です。 急な高熱、激しい痛み、関節の腫れといった症状が特徴です。 関節が壊れてしまう危険があるため、すぐに治療を始める必要があります。

結核性股関節炎

肺の病気で知られる結核菌が、股関節に感染して起こります。 ゆっくりと進行するため気づきにくいですが、重症化すると関節が大きく壊れることがあります。 しかし、最近の研究では、お薬と手術(人工股関節全置換術)を組み合わせることで、患者さんの生活の質を大きく改善できることがわかっています。 この治療は、病気の再発も少なく、良好な結果が報告されています。

股関節炎の原因

股関節が痛くなる原因は、大きく分けて2つあります。 一つは「ばいきん」が関節の中に入ってしまう「感染性」のものです。 もう一つは、はっきりとした原因がわからない「非感染性」のものです。

原因によって治療の仕方が変わるため、原因を特定することが大切です。

ばいきんが原因の場合(感染性)

ばいきんが関節の中に入り込み、炎症を起こすタイプです。 「感染性股関節炎(かんせんせいこかんせつえん)」と呼ばれます。 原因となるばいきんには、次のような種類があります。

  • 黄色ブドウ球菌 けがをした時に皮膚などから入る、最も多い原因菌です。
  • 結核菌 重症化すると関節を大きく壊すことがあるため、注意が必要です。
  • その他 インフルエンザ菌やかぜの原因となるマイコプラズマも原因になります。

これらのばいきんは、けがや手術の際に直接関節に入ることがあります。 また、体の他の場所の感染が、血液に乗って股関節に運ばれることもあります。

特に結核菌が原因の場合、昔は治療が難しい病気でした。 しかし最近の研究では、手術と薬を組み合わせることで、 生活の質を大きく改善できることがわかっています。 手術の前後にお薬をしっかり飲むことが、再発を防ぐ鍵となります。

ばいきん以外の原因の場合(非感染性)

はっきりとした原因がわからない股関節炎もあります。 かぜをひいた後や、軽いけががきっかけで発症することがあります。 アレルギーのような、体の反応が関係しているとも考えられています。

お子さん、特に5歳から7歳くらいの男の子に多い、 「単純性股関節炎」もこのタイプに含まれます。 安静にしていれば自然に良くなることがほとんどです。

股関節炎の症状

股関節炎のサインは、主に「痛み」と「動きにくさ」です。 これらの症状は、病気の原因や炎症の程度によって変わってきます。 どのような症状があるか、具体的に見ていきましょう。

主な症状:痛みと動きにくさ

股関節炎の最も代表的な症状は、足の付け根あたりに感じる痛みです。 じっとしていても痛むこともあれば、体重をかけた時に痛みが強くなることもあります。 また、股関節が悪いのに太ももや膝が痛むことがあります。 これは「放散痛(ほうさんつう)」といい、痛みの信号が神経を伝わって広がるために起こります。

関節の炎症が強くなると、関節の動きも悪くなります。 日常生活の中で、次のような動作がしにくくなったら注意が必要です。

  • あぐらをかく 脚を外に開く動作が痛くてできない。
  • 靴下をはく・足の爪を切る 股関節を深く曲げることが難しい。
  • 脚をスムーズに動かす 脚を開いたり閉じたりする動きが制限される。

その他の注意すべきサイン

小さなお子さんの場合、痛みを言葉でうまく伝えられないことがあります。 「急に歩かなくなった」「脚を動かすのを嫌がる」といった行動の変化が、病気のサインになることがありますので、注意深く観察してあげてください。 また、細菌が原因の化膿性股関節炎などでは、関節の症状に加えて、発熱や体のだるさといった全身の症状が出ることもあります。

症状を放置してしまうと、関節の破壊が進み、歩行が困難になるなど生活の質(QOL)が大きく下がる恐れがあります。 しかし、たとえ重症化しても、近年の研究では手術などの適切な治療で生活の質を大きく改善できることがわかっています。 気になる症状があれば、自己判断せず早めに医療機関を受診しましょう。

股関節炎の検査・診断

股関節の痛みの原因を突き止めるため、いくつかの検査を行います。 まるで探偵が犯人を捜すように、ヒントを集めていくのです。 まずはお話を聞く「問診」と、医師が直接足を動かす診察から始めます。

痛みの原因を探るための検査

診察で得た情報をもとに、より詳しく調べるための検査に進みます。 原因によって治療法が全く違うため、これらの検査はとても重要です。

検査の種類

この検査でわかること

画像検査

レントゲン検査:骨の形や関節のすき間を見て、骨に異常がないかを確認する基本の検査です。

MRI検査:骨だけでなく、筋肉や軟骨など、レントゲンに映らない部分を詳しく見ることができます。

超音波(エコー)検査:関節に水(関節液)が溜まっていないか、リアルタイムで観察します。

血液検査

体の中でどれくらい炎症が起きているか(CRPなど)を調べます。ばいきんが原因の「化膿性股関節炎」では、この数値が高くなります。

関節液検査

股関節に注射をして、関節に溜まった液体を少しだけ抜き取ります。この液体を調べれば、ばいきんがいるかどうかを直接確認できます。

正確な診断が未来の生活を守る

これらの検査結果を総合的に判断し、股関節炎のタイプを診断します。 もし「結核菌」が原因で関節が大きく壊れていたとしても、治療法はあります。

近年の研究では、手術(人工股関節全置換術)が有効とされています。 この手術は、患者さんの生活の質(QOL)を大きく改善できることがわかっています。 手術を成功させるには、原因菌に合わせたお薬をしっかり飲むことが非常に大切です。 正確な診断こそが、適切な治療への第一歩となるのです。

股関節炎の治療

股関節炎の治療は、原因や症状の重さによって方法が大きく異なります。 安静や薬で様子を見る「保存療法」と、手術を行う「外科的治療」が中心です。 原因を正確に突き止め、それに合った治療法を選ぶことが非常に大切です。

種類別の主な治療法

股関節炎の代表的な種類ごとに、治療法を見ていきましょう。 それぞれの特徴に合わせたアプローチが必要になります。

種類

主な治療法

ポイント

単純性股関節炎

・安静にする

・痛み止めの薬

股関節に負担をかけないことが一番の治療です。

1~2週間休むと自然に良くなることがほとんどです。

化膿性股関節炎

・抗菌薬(抗生物質)

・手術(関節の洗浄)

原因のばいきんを倒す薬をすぐに使います。

関節に溜まったうみを、手術で洗い流します。

ばいきんが原因の「化膿性股関節炎」は、急いで治療を始める必要があります。 関節がばいきんによって壊されてしまうのを、防がなければならないからです。

関節の破壊が進んだ場合の治療

結核菌などが原因で関節がひどく壊れてしまった場合も、治療法はあります。 「人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)」という手術です。 これは、傷んだ股関節を金属などでできた人工の関節に入れ替える方法です。

この手術によって痛みが和らぎ、歩く機能が改善するなど、 日常生活の快適さ(生活の質:QOL)の向上が期待できます。 近年の研究では、この手術は股関節結核の有効な治療法とされています。

手術を成功させるには、原因の感染症に対する治療が非常に重要です。 特に結核が原因の場合、手術の前後で長期間、複数の薬を飲む必要があります。 お薬をしっかり続けることが、病気の再発を防ぎ、手術の良い結果を得る鍵です。 この治療法は、患者さんの生活を大きく改善できると報告されています。

どの治療法を選ぶかは、検査の結果をもとに医師が総合的に判断します。 股関節の痛みが続く場合は、早めに専門の医療機関を受診してください。