潰瘍性大腸炎

「またお腹が痛い…」その繰り返す腹痛や下痢、血便は、もしかしたら「潰瘍性大腸炎」という病気のサインかもしれません。大腸の粘膜に原因不明の炎症が続くこの病気は、国の指定難病でありながら、国内の患者数は20万人以上と推定され、決して珍しいものではなくなっています。

この病気は、症状が良くなる「寛解」と、悪化する「再燃」を繰り返すのが大きな特徴です。終わりが見えないように感じられ、不安を抱えている方も少なくないでしょう。

しかし、近年では治療法が大きく進歩し、新しい薬の登場で選択肢も着実に増えています。この記事では、潰瘍性大腸炎の正しい知識から最新の治療法までを詳しく解説します。病気と上手に付き合い、あなたらしい生活を取り戻すための一歩として、ぜひご一読ください。

潰瘍性大腸炎の概要

潰瘍性大腸炎は、大腸の一番内側をおおう粘膜に、 長く続く炎症が起きてしまう病気です。 粘膜がただれたり(びらん)、深くえぐれたり(潰瘍)します。 クローン病と共に「炎症性腸疾患(IBD)」と呼ばれます。

原因がまだはっきり解明されていないため、国の指定難病です。 しかし、国内の患者数は20万人以上いると推定されています。 決して珍しい病気ではなく、誰にでも起こる可能性があります。 特に20代に多いですが、男女でのかかりやすさに差はありません。

この病気の大きな特徴は、症状が落ち着く「寛解(かんかい)」と、 再び悪くなる「再燃(さいねん)」を繰り返すことです。 お休み期間と活動期間が、交互にやってくるイメージです。

完治は難しい病気ですが、治療法は大きく進歩しています。 免疫の働きを整える新しい薬も使えるようになりました。 近年の研究では、これらの薬の有効性や安全性が確かめられ、 治療の選択肢は着実に増えています。

そのため、病気と上手に付き合っていくことが大切です。 適切な治療で良い状態を長く保ち、普通の生活も送れます。

潰瘍性大腸炎の種類

潰瘍性大腸炎は、炎症の場所と強さでタイプ分けされます。 ご自身の病状を正しく知ることが、治療への大切な第一歩です。 病気の「顔つき」は一人ひとり違うため、丁寧に分類します。

炎症が起きている範囲による分類

大腸のどこまで炎症が広がっているかで、主に3つに分かれます。

種類

特徴

直腸炎型

肛門に最も近い「直腸」だけに炎症があるタイプです。

左側大腸炎型

直腸から、お腹の左側の結腸まで炎症が広がっています。

全大腸炎型

直腸から結腸の全体にわたって炎症が広がっています。

症状の重さによる分類

排便の回数や血便の程度、発熱といった体の状態から判断します。 これにより、治療の強さを細かく調整することが可能になります。

  • 軽症
  • 中等症
  • 重症
  • 劇症

この分類は、治療法を決める上でとても重要です。 例えば、軽症から中等症の方向けの研究があります。 腸内環境を整えるプレバイオティクス(1-ケストースなど)で、 症状が和らぐ可能性があると報告されています。

また、中等症から重症の方向けの治療法も進歩しています。 免疫の働きを調整する新しい飲み薬(S1P受容体調節薬など)は、 症状を落ち着かせる効果と、良い状態を保つ効果が期待できます。 安全性についても、これまでの研究で確かめられています。

医師はこれらの分類を基に、一人ひとりに最適な治療を考えます。

潰瘍性大腸炎の原因

潰瘍性大腸炎の「これだ」という原因は、まだわかっていません。 一つの原因ではなく、複数の要因が合わさって起こると考えられます。 主に、次の3つの要因が複雑に関係しているとみられています。

  • 遺伝的な要因 ご家族に同じ病気の方がいると、少し発症しやすくなります。 ただし、親から子へ必ずうつる遺伝病ではありません。 病気になりやすい「体質」が受け継がれる可能性です。
  • 免疫の異常 体を守る「免疫」という仕組みが、勘違いを起こすことです。 本来は体を守るはずの免疫が、自分の大腸を攻撃します。 この勘違いによって、大腸の粘膜に炎症が起きてしまいます。
  • 環境的な要因 食事やストレスなど、生活の中の様々な要因を指します。 特に、食事とストレスとの関係が注目されています。

ある研究では、うつ病を経験した人は発症リスクが高まると報告されました。 心と体は密接につながっており、お互いに影響しあっています。

また、別の研究では食事との関連も示されています。 お肉を食べる量が1日100g増えるごとに、リスクが約38%高まりました。 一方で、牛乳やヨーグルトなどの乳製品は、リスクを下げる可能性も。 食事が腸内環境に影響し、発症のきっかけになるのかもしれません。

潰瘍性大腸炎の症状

潰瘍性大腸炎の症状は、主に2つに分けられます。 大腸の炎症が直接原因となる「お腹の症状」。 そして、その影響が全身に広がる「全身の症状」です。

症状の出方や強さは人それぞれで、個人差が大きいです。 また、症状が落ち着く時期と、悪化する時期を繰り返します。 ご自身の状態をチェックし、早めに相談することが大切です。

お腹にあらわれる主な症状

特徴的なのは、便に関する異常です。 以下のような症状がないか、確認してみてください。

  • 血便・粘血便(ねんけつべん) 便に血が混じる、または粘液と血液が混ざります。 ドロッとした状態や、ケチャップのようになることも。
  • 下痢 便がゆるくなり、トイレに行く回数が増えます。 重症になると、1日に10回以上になることもあります。
  • 腹痛 お腹がしくしくと痛んだり、けいれんしたりします。 痛みの強さも、軽いものから激しいものまで様々です。
  • しぶり腹 何度も便意を感じるのに、少ししか出ない状態です。 排便後も、すっきりしない感じが残ることがあります。

全身にあらわれる主な症状

大腸の炎症が続くと、体全体にも影響が及んできます。 特に、多くの患者さんが「疲労感」に悩まされます。

近年の多くの研究をまとめた信頼性の高い分析では、 生物学的製剤などの新しい薬による治療が、 つらい疲労感に対して有益な効果を持つと報告されました。

その他にも、以下のような全身症状があらわれることがあります。

  • 発熱
  • 体重の減少
  • 貧血

医師はこれらの症状を客観的に評価するため、 排便回数や血便の有無などを点数化した指標を用います。 これにより、病気の活動性を正確に把握できるのです。

気になる症状があれば、自己判断せずにご相談ください。

潰瘍性大腸炎の検査・診断

潰瘍性大腸炎の診断は、いくつかの情報を組み合わせて慎重に行います。 まず、食中毒のような「感染性腸炎」など、似た症状の病気ではないかを見極めます。 そのために、問診といくつかの検査を組み合わせて総合的に判断します。

診断の第一歩は、患者さんから詳しくお話を聞く「問診」です。 下痢や血便の回数、腹痛の有無といった症状を確認します。 生活習慣、特に食事の内容も診断の重要な手がかりになります。

近年の研究では、お肉を食べる量が多いと病気のリスクが少し高まる可能性が報告されています。 逆に牛乳やヨーグルトなどの乳製品は、リスクを下げるかもしれないと考えられています。 そのため、普段の食事内容も詳しくお伺いすることがあります。

問診の後は、次のような検査で体の中の状態を詳しく調べます。

  • 血液検査 体の中でどのくらい炎症が起きているかを示す「CRP値」や、 出血による貧血が進んでいないかなどを調べます。
  • 便検査 便に血液が混じっていないか、感染症の原因となる細菌などがいないかを確認します。 お腹の症状が、他の原因ではないことを確かめるためです。
  • 大腸内視鏡検査(大腸カメラ) 診断を確定するために非常に重要な検査です。 おしりから細いカメラを入れ、大腸の粘膜を直接観察します。 炎症や潰瘍の広がり、重症度を自分の目で見て評価できます。 同時に、粘膜の組織を少量採取する「生検」も行います。 採取した組織を顕微鏡で詳しく調べ、確定診断につなげます。

これらの検査結果を総合的に判断し、病気のタイプや重症度を評価します。 その上で、一人ひとりに合った治療方針を丁寧に決めていきます。

潰瘍性大腸炎の治療

潰瘍性大腸炎は、完治が難しい病気です。 しかし、治療の目標は、症状がない「寛解」の状態にすることです。 そして、その良い状態をできるだけ長く保つことが大切になります。 治療法は、症状の強さや炎症の範囲によって使い分けられます。

治療の中心は、お薬を使う「薬物療法」です。 病気の状態に合わせて、お薬を段階的に使っていきます。

治療の段階

主な治療薬の種類

目的・特徴

基本治療

5-ASA製剤

炎症を抑える基本の薬。寛解の維持にも使います。

症状が強い時

ステロイド

強い炎症を短期間で抑えるための「火消し役」です。

難治性の場合

免疫調節薬・生物学的製剤・低分子薬など

免疫の働きを調整して、しつこい炎症を抑えます。

最近では、免疫の働きを細かく調整する新しい薬も登場しています。 例えば「S1P受容体調節薬」という飲み薬があります。 複数の研究をまとめた信頼性の高い分析によると、 症状が活発な時期にそれを抑える効果と、 落ち着いた状態を維持する効果の両方が期待できると報告されています。 安全性についても、これまでの研究で確かめられています。

また、生物学的製剤や低分子薬による治療も進歩しています。 お腹の症状だけでなく、多くの患者さんが悩む「だるさ」や「疲れやすさ」。 これらの薬が、つらい疲労感を軽くする効果を持つことも、 信頼性の高い研究で報告されており、生活の質の向上が期待できます。

薬物療法以外にも、次のような治療の選択肢があります。 血液の中から異常な免疫細胞を取り除く「血球成分除去療法」。 薬の効果が見られない重症の場合には「外科手術」も考えられます。

さらに、治療と並行して、腸内環境を整えることも注目されています。 「プレバイオティクス」と呼ばれる食品成分の一種(1-ケストースなど)が、 軽症から中等症の方の症状を和らげるのに役立つ可能性がある、 という研究結果も出てきています。

治療法はさまざまですので、ご自身の状態に合わせて、 医師とよく相談し、最適な治療法を見つけていきましょう。