気胸

突然の胸の痛み、息苦しさ、そして乾いた咳。これらの症状に心当たりはありませんか?もしかしたら、それは肺に穴が開き、空気が漏れてしぼんでしまう「気胸」のサインかもしれません。

気胸は特別な原因がなく起こることが最も多く、特に10代から30代で背の高い、やせ型の男性に頻発します。また、点滴などの医療行為が原因となることもあり、ある研究では処置1000回につき約4.4回の発生が報告されています。

この記事では、気胸の詳しい種類や原因、検査から最新の治療法までを解説します。命に関わることもあるため、正しい知識を身につけ、万が一の時に備えましょう。

気胸の概要

気胸とは、肺に穴が開き、空気が漏れ出てしまう病気です。 漏れ出た空気によって、風船のように膨らんでいた肺がしぼみます。

私たちの肺は、ろっ骨などでできた「胸郭」というカゴの中にあります。 肺と胸郭の間には「胸腔(きょうくう)」という、すき間があります。 通常、この胸腔内の圧力は外の気圧より低く保たれています。 この圧力差のおかげで、肺は自然に膨らんだ状態を維持できるのです。

しかし、肺に穴が開くと、この胸腔に空気が入り込んでしまいます。 その結果、空気が肺を外側から圧迫してしぼませてしまうのです。 これにより、突然の胸の痛みや息苦しさ、咳などの症状が現れます。 気胸は、特別な原因がなく起こる「自然気胸」が最も多いです。 特に10代から30代の若く、背の高いやせ型の男性によく見られます。

また、病気やケガだけでなく医療行為が原因で起こることもあります。 例えば、首や胸の太い血管から点滴を入れる処置がその一つです。 ある研究では、この処置1000回につき約4.4回の気胸が起こると報告されています。 ただし、現在は超音波で体の中を見ながら処置を行うのが一般的です。 超音波を使うことで、気胸が起こるリスクを大幅に減らすことができます。

気胸の種類

気胸は、肺から空気が漏れる原因によっていくつかの種類に分けられます。 ご自身の状態を正しく理解するため、どのような種類があるかを知っておきましょう。

気胸は主に、原因がはっきりしない「自然気胸」と、原因が明らかなものに大別されます。

自然気胸

特別なきっかけがなく、突然発症する気胸です。 これはさらに2つのタイプに分かれます。

  • 原発性自然気胸
  • 肺自体に病気はないものの、肺の表面にできた「ブラ」や「ブレブ」という、風船のような弱い部分が破れて起こります。10代〜30代の若く、背の高いやせ型の男性に多いのが特徴です。
  • 続発性自然気胸
  • 肺気腫や間質性肺炎など、もともと肺に病気がある方が発症する気胸です。原発性より高齢の方に多く、再発しやすい傾向があります。

その他の原因による気胸

原因が比較的はっきりしている気胸を以下にまとめました。

種類

主な原因

外傷性気胸

交通事故や転落などで胸を強く打ち、折れたろっ骨が肺に刺さるなど、ケガによって起こります。

医原性気胸

肺の検査や点滴の処置といった、医療行為が原因で発生することがあります。

月経随伴性気胸

生理の周期に合わせて症状が現れる、女性に見られるまれな気胸です。

これらの気胸が悪化すると「緊張性気胸」という危険な状態になることがあります。 これは漏れた空気が心臓まで圧迫する、命に関わる状態のため緊急の対応が必要です。

もし手術が必要になった場合、最近では患者さんの負担を減らす方法が選ばれます。 例えば、傷が一つで済む単孔式胸腔鏡手術(uVATS)という方法があります。 この方法は、手術後の痛みが少なく、感覚がおかしくなることも少ないとされます。 患者さん中心の考え方から、こうした体への負担が少ない治療法が進歩しています。

気胸の原因

気胸は、肺に穴が開くことで空気が漏れ出てしまう病気です。 では、なぜ肺に穴が開いてしまうのでしょうか。 その原因は人によってさまざまであり、主に4つに分類されます。

  • 自然気胸 特別なきっかけがなく、突然発症する最も一般的なタイプです。 これには、さらに2つの種類があります。
  • 原発性自然気胸 肺自体に病気がない方に起こります。 肺の表面にできた「ブラ」という弱い部分が破れることが原因です。 特に10代から30代の、背が高くやせ型の男性に多く見られます。
  • 続発性自然気胸 肺気腫や間質性肺炎など、もともと肺に病気がある方に起こります。 病気によって肺の組織がもろくなり、穴が開きやすくなっています。
  • 外傷性気胸 交通事故で胸を強く打ったり、ろっ骨が折れたりするなど、 胸へのケガが原因で肺に穴が開くタイプです。
  • 医原性気胸 医療行為が原因となって起こる気胸です。 例えば「中心静脈カテーテル」という、首や胸の太い血管から点滴を入れる処置の際に起こることがあります。 ある研究では、この処置1000回につき約4.4回の気胸が起こると報告されました。 しかし医療現場では、安全性を高める努力が続けられています。 最近は超音波で体の中を見ながら針を進めるのが標準的です。 この方法により、気胸のリスクを約4分の1に減らせることがわかっています。
  • その他の気胸 生まれたばかりの赤ちゃんが、気胸を起こすこともあります。 ヨーロッパの調査では、新生児の診断に肺エコー検査が広く活用されていることが報告されました。 また、女性では月経の周期に合わせて起こる「月経随伴性気胸」というまれなタイプもあります。

このように、気胸の原因は一つではありません。 ご自身の状態を正しく知ることが、適切な治療への第一歩となります。

気胸の症状

気胸が起こると、体にさまざまなサインが現れます。 肺から漏れた空気が、肺そのものを外側から圧迫するために起こるのです。 代表的な症状は、突然始まる胸の痛みや息苦しさ、そして乾いた咳です。

具体的には、以下のような症状に注意してください。

  • 突然の胸の痛み 肺に穴が開く瞬間に、鋭い痛みを感じることがあります。 深呼吸をしたり、咳をしたりすると痛みが響くのが特徴です。
  • 息苦しさ(呼吸困難) 肺がしぼむため、一度に吸える空気の量が減ってしまいます。 そのため、呼吸が浅く速くなり、息苦しさを感じます。
  • 乾いた咳 しぼんだ肺が胸の中で刺激となり、コンコンと乾いた咳が出ます。
  • 肩や鎖骨まわりの痛み 胸の痛みが、肩や首の付け根にまで広がることがあります。

これらの症状の強さは、肺がしぼんだ程度によって変わります。 軽症の場合は、安静にしているだけで自然に良くなることもあります。 しかし、症状の感じ方には個人差があるため、自己判断は危険です。 特に、自分で症状を訴えられない新生児では注意が必要です。 ヨーロッパの研究では、新生児の急な容体悪化の評価の一つとして、 肺エコー検査が気胸の診断に役立つことが報告されています。

特に「緊張性気胸」という状態には、最大限の注意が必要です。 これは漏れた空気が心臓まで圧迫する、命に関わる緊急事態です。 顔色が悪くなる、冷や汗をかく、血圧が下がるなどの症状があれば、 迷わず救急車を呼ぶか、すぐに医療機関を受診してください。

気胸の検査・診断

急な胸の痛みや息苦しさで病院に行くと、まず肺の状態を調べます。 肺は直接目で見えないため、画像で中の様子を確認する検査が必要です。

一般的に、まずは胸部X線(レントゲン)検査を行います。 この検査では、肺の外側に空気が漏れてたまっていないかを確認します。 また、漏れた空気によって肺がどのくらいしぼんでいるかもわかります。

さらに詳しく調べる必要がある場合は、CT検査を行うこともあります。 CT検査は体を輪切りにしたような、とても詳細な画像が得られます。 レントゲンでは見つけにくい小さな気胸の発見に役立ちます。 気胸の原因となる「ブラ」という肺の弱い部分も鮮明に映し出します。

これらの画像検査で、肺と胸壁の間に空気が確認されると気胸と診断されます。

診断の技術は日々進歩しており、新しい方法も研究されています。

  • AI(人工知能)による診断支援 たくさんのレントゲン写真を学習したAIが、気胸を見つける手助けをします。 ある研究では、AIによる診断支援が非常に高い精度を示したと報告されました。 医師の診断をサポートし、より正確な診断につながることが期待されています。
  • 超音波(エコー)検査 ベッドサイドですぐに肺の状態をリアルタイムで観察できる検査です。 新しい超音波技術の研究も進められています。 将来、気胸の詳しい状態をその場で把握するために役立つ可能性があります。

このように、いくつかの検査を組み合わせて正確に診断します。 その結果をもとに、一人ひとりに合った治療方針が決められます。

気胸の治療

気胸の治療は、しぼんでしまった肺を元通りに広げることが目的です。 そして、空気漏れの原因となっている肺の穴をしっかりふさぎます。 どの治療法を選ぶかは、肺のしぼみ具合や症状によって決まります。

治療法は、主に3つのステップに分けられます。

肺のしぼみ具合

主な治療法

内容

軽度

安静療法

肺の穴が自然にふさがるのを待ちます。漏れた空気は体に吸収されます。

中等度〜重度

胸腔ドレナージ

胸からチューブを入れ、肺の外にたまった空気を抜いて肺を広げます。

再発を繰り返す場合など

手術

空気漏れの原因となっている肺の弱い部分を切除し、穴をふさぎます。

安静療法

肺のしぼみが軽く、症状も落ち着いている場合は安静が第一です。 体の自然な力で、肺の小さな穴がふさがるのを待ちます。

胸腔ドレナージ

肺が多くしぼんでいる場合は、胸の脇から細い管を入れます。 この管を通して、肺を圧迫している空気を体の外へ抜きます。 こうすることで、しぼんでいた肺が再びきれいに広がります。

手術

何度も気胸を繰り返す場合や、空気漏れが止まらない場合は手術を検討します。 最近の手術は、患者さんの体への負担をできるだけ軽くする方法が中心です。 胸に小さな穴を一つだけ開ける「単孔式胸腔鏡手術」がその代表です。 この方法は、手術後の痛みが少なく、感覚がおかしくなりにくいとされます。 患者さん中心の考え方から、こうした優しい治療法が選ばれるようになっています。 また、治療中に肺の状態をリアルタイムで詳しく見るための超音波技術など、 より安全で確実な治療を目指した新しい研究も進んでいます。