胸が「ドキッ」としたり、脈が飛んだりする感覚を経験したことはありませんか。それは「期外収縮」と呼ばれる不整脈の一種で、30歳を過ぎると健康な人でもほとんどの人に現れる身近な現象です。
その多くはストレスや疲れが原因で心配いりませんが、ごくまれに命に関わる病気のサインである可能性も。実際、突然死につながる心停止の原因の約7割は、期外収縮が引き金となりうる危険な不整脈だと報告されています。
この記事では、期外収縮の基本的な知識から、心配のないものと注意すべきものの見分け方、原因や最新の治療法まで詳しく解説します。ご自身の症状と照らし合わせ、不安を安心に変えるための第一歩としてお役立てください。
期外収縮の概要
心臓は「トクン、トクン」と規則正しいリズムで動いています。 期外収縮とは、このリズムが予定より少し早く「キュッ」と縮むことです。 脈が飛んだり、一瞬胸が「ドキッ」としたりするように感じられます。
30歳を過ぎると、健康な人でもほとんどの人にこの現象が見られます。 多くは心配のいらない「生理的なもの」で、治療の必要はありません。 ストレスや寝不足、疲れなどがきっかけで誰にでも起こり得ます。
しかし、まれに心臓の病気が隠れているサインの場合もあります。 例えば、心臓にある弁の形に特徴がある「僧帽弁逸脱症」という病気です。 この病気があると、危険な不整脈につながることがあると指摘されています。
ある研究では、僧帽弁逸脱症の患者さんで不整脈のリスクを調査しました。 その結果、弁の形や心臓のポンプ機能が弱る「心不全」の状態が、 危険な不整脈のリスクと関連することが示唆されています。
ほとんどの期外収縮は心配いりませんが、症状が頻繁な場合は注意が必要です。 強い動悸やめまいなどがあれば、一度専門の医師に相談しましょう。 心臓の状態を調べてもらうことで、安心して毎日を過ごせます。
期外収縮の種類
期外収縮は、予定外の電気がどこから出るかで種類が分かれます。 心臓を2階建ての家だと想像してみてください。 2階からか、1階からか、どちらで電気がショートするかで区別します。
- 心臓の上の部屋である「心房」から異常な電気信号が出るタイプです。
- 健康な人にもよく見られ、ほとんどの場合は心配のいらないものです。
- 心臓の下の部屋である「心室」から異常な電気信号が出るタイプです。
- こちらも多くは治療の必要がない良性のものがほとんどです。
ただし、心室期外収縮の中には、注意が必要なケースがまれにあります。 「心室細動」という、命に関わる危険な不整脈に移行することがあるためです。
心室細動は、心臓がただブルブルとけいれんするだけの状態になります。 全身に血液を送り出すポンプの役割を果たせなくなり、心停止に至ります。 実際に、心停止の原因の約7割は、この心室細動だと報告されています。
特に、とても短い間隔で連続して起こる心室期外収縮は要注意です。 このタイプは心室細動の引き金になるリスクがあることが研究でわかっています。 ほとんどの期外収縮は安全ですが、念のため専門医に相談しましょう。
期外収縮の原因
期外収縮がなぜ起こるのか、その原因は大きく2つに分けられます。 心臓そのものには問題がない場合と、病気が隠れている場合です。
心臓に病気がない場合
健康な心臓でも、日常のちょっとしたことで期外収縮は起こります。 これらは心臓の働きを調整する「自律神経」の乱れが関係します。
- ストレス、疲れ、寝不足などが続くと自律神経が乱れがちです。
- 心臓のアクセルとブレーキの調整がうまくいかなくなり、脈が乱れます。
- カフェインやアルコール、タバコは心臓を刺激する作用があります。
- これらを摂りすぎると、心臓が過敏になり期外収縮が出やすくなります。
心臓や他の病気が原因の場合
期外収縮が、何かの病気のサインとして現れることもあります。 特に心臓の病気が背景にある場合は、注意深く見る必要があります。
- 狭心症や心筋梗塞、心不全、心臓弁膜症などです。
- 特に「僧帽弁逸脱症」という弁の形に特徴がある場合や、
- ポンプ機能が落ちる「心不全」があると、危険な不整脈のリスクが高まります。
- これは研究でも示唆されており、弁の形や心不全が重要な因子とされます。
- ごくまれに、非常に短い間隔で起こる心室期外収縮があります。
- このタイプは「短絡(たんらく)型」と呼ばれ、命に関わる「心室細動」の
- 引き金になる可能性が研究で報告されています。
- 高血圧や甲状腺の病気も原因となりえます。
- 血圧が高いと心臓に負担がかかり、脈が乱れやすくなります。
期外収縮の症状
期外収縮の症状は、人によって感じ方が大きく異なります。 全く何も感じない人もいれば、はっきりと違和感を覚える人もいます。 具体的には、以下のような症状として感じられることが多いです。
- 脈が飛ぶ、一瞬抜ける、止まるように感じます。
- これは心臓が少し早く動いた後、一瞬お休みするためです。
- 「ドクン」と一回だけ、ひときわ大きな脈を感じることもあります。
- お休みの後に、たまった血液を力強く送り出すために起こります。
- 胸のあたりが「ウッ」と一瞬つまるような圧迫感があります。
- 心臓がひっくり返るような、一瞬浮き上がるような感覚を訴える方もいます。
- のどが押されるような、つまったような違和感として感じることもあります。
- 体を動かしている時よりも、静かに座っている時の方が症状に気づきやすいです。
ほとんどの期外収縮は、このように一時的な症状で心配はいりません。 しかし、ごくまれに危険な不整脈のサインである可能性も忘れてはいけません。 特に「心室細動」という、命に関わる不整脈につながることがあります。
心室細動は、心臓がただブルブルとけいれんするだけの状態です。 全身に血液を送るポンプの役割を果たせなくなり、突然死に至ることもあります。 ある報告では、心停止の原因の約7割がこの心室細動だとされています。
大切なのは、ご自身で感じる症状の強さと医学的な危険度は必ずしも一致しないことです。 気になる症状があれば自己判断せず、専門の医師に相談し、心臓の状態を調べてもらいましょう。
期外収縮の検査・診断
健康診断で期外収縮を指摘されても、その多くは心配いりません。 実際に詳しく調べると、約95%は治療の必要がないものです。 しかし、まれに心臓の病気が隠れている可能性も否定できません。 まずは検査でご自身の心臓の状態を正しく知ることが大切です。
期外収縮の診断では、主に以下の検査で治療が必要か判断します。
- 心電図検査 心臓が動く時に出す弱い電気信号を記録し、脈の乱れを見ます。
- ホルター心電図(24時間心電図) 小さな機械を体につけ、一日中の心臓の動きをすべて記録します。 どんな時に、どのくらい脈が乱れるのかを詳しく調べられます。
- 運動負荷心電図 体を動かしながら心電図をとり、脈の乱れがどう変化するか見ます。 運動中に危険な不整脈が出ないかを確認する大切な検査です。
- 心臓超音波(エコー)検査 心臓の形や、血液を送り出すポンプの働きに問題がないか調べます。
これらの検査で危険なタイプと判断された場合は、治療を考えます。 お薬で改善しない場合、「カテーテルアブレーション」も選択肢です。 これは不整脈の原因となっている部分を直接治療する方法です。
この治療を安全かつ効果的に行うには、より精密な検査が重要です。 不整脈の原因となる異常な電気の発生場所を、正確に特定します。 最近の研究では、この発生場所と心臓を養う大切な血管との 位置関係などを詳しく調べることが、治療の成功率を高めると分かっています。
症状の強さだけで自己判断せず、まずは専門医にご相談ください。 検査で心臓の状態を確かめることが、安心した生活への第一歩です。
期外収縮の治療
期外収縮が見つかっても、全員が治療を必要とするわけではありません。 心臓に他の病気がなく、症状も軽ければ治療はせずに様子を見ます。 まずはご自身の生活習慣を見直すことから始めていきましょう。
生活習慣の改善(セルフケア)
治療の第一歩は、期外収縮の引き金になる習慣を減らすことです。 自律神経のバランスを整え、心臓への余計な刺激を避けましょう。
- ストレスや疲れをためない 心と体をしっかり休ませることが、心臓をいたわる基本です。
- 十分な睡眠をとる 寝不足は自律神経の乱れに直結し、脈の乱れを招きやすくなります。
- カフェインやアルコールを控える これらは心臓を興奮させる作用があるため、摂取を控えめにしましょう。
- 禁煙を心がける タバコも心臓に負担をかける大きな要因の一つです。
医学的に治療の必要がない場合でも、年に1回は検査を受けると安心です。
お薬での治療(薬物療法)
症状が強い場合や、期外収縮の数が多く心臓に負担がかかる場合は、 お薬を使って症状を和らげる治療(薬物療法)を考えます。 お薬は脈の乱れを抑えるもので、根本的に治すものではありません。
- 抗不整脈薬 脈の乱れそのものを直接整えるお薬です。 お子さんの期外収縮を対象としたある研究では、 フレカイニドというお薬がメトプロロールという別のお薬より、 期外収縮を減らす効果が高かったと報告されています。 しかし、効果には個人差があることも分かっています。
- 精神安定剤 ストレスや不安が強い場合に、症状を和らげる目的で使うことがあります。
カテーテル治療(カテーテルアブレーション)
お薬の効果が十分でない場合などに検討される、より積極的な治療です。 足の付け根などから細い管を心臓まで入れ、不整脈の原因となる部分を 高周波で焼き固めることで、期外収縮そのものを起きにくくします。
この治療の成功には、原因の場所を正確に見つけることがとても大切です。 最近の研究では、心臓の血管などとの位置関係を詳しく調べることで、 より効果的な治療の場所を予測する試みが進んでいます。 この治療により、期外収縮が大幅に減り、お薬が不要になることもあります。