新生児肺炎

生まれたばかりの赤ちゃんの小さな体調の変化は、ご家族にとって何よりも大きな関心事ではないでしょうか。特に注意したいのが、生後28日未満の赤ちゃんを襲う「新生児肺炎」です。免疫力が未熟なため重症化しやすく、赤ちゃんの命を脅かすこともある、決して見過ごすことのできない病気です。

ある研究では、ビタミンAが不足している赤ちゃんは新生児肺炎にかかる危険性が約3.2倍にも高まることが示されています。「苦しい」と自分では伝えられない赤ちゃんのため、家族がそのサインにいち早く気づくことが何より重要になります。この記事では、新生児肺炎の症状や原因、治療法まで、大切な命を守るための知識を詳しく解説します。

新生児肺炎の概要

新生児肺炎は、生後28日未満の赤ちゃんがかかる肺の感染症です。 生まれたばかりの赤ちゃんは、体の機能や抵抗力(免疫力)が未熟です。 そのため、肺炎になると呼吸が苦しくなるなど重い状態になりやすいです。

お母さんのお腹の中にいる時や、生まれてくる時に感染するのが主な原因です。 また、赤ちゃんの栄養状態も、病気へのかかりやすさと深く関わります。 複数の研究を分析した報告では、ビタミンAが不足している赤ちゃんは注意が必要です。 ビタミンAが足りている赤ちゃんと比べ、新生児肺炎にかかる危険性が約3.2倍高くなる可能性が示されています。

新生児肺炎の主なポイントは以下の通りです。

  • 対象となる時期
  • 生まれてから28日未満の「新生児」と呼ばれる期間です。
  • 主な原因
  • お母さんから受け継ぐ細菌やウイルスによる感染が中心です。
  • 特徴
  • 体の抵抗力が弱いため、大人に比べて重い症状が出やすくなります。
  • 大切なこと
  • 赤ちゃんの様子の変化に早く気づき、すぐに治療を始めることです。

赤ちゃんは自分で「苦しい」と伝えることができません。 だからこそ、ご家族が普段と違う様子に気づき、すぐに医療機関へ相談することが赤ちゃんの命を守る上で非常に大切になります。

新生児肺炎の種類

新生児肺炎は、症状が出るタイミングによって大きく2つの種類に分けられます。 「早発型(そうはつがた)」と「遅発型(ちはつがた)」という分類です。 いつ発症したかによって感染の原因や場所が異なるため、治療を考える上でとても大切な分類になります。

早発型新生児肺炎

生まれてから72時間(3日)以内に発症する肺炎です。 お母さんのお腹の中にいる時や、生まれてくる時に産道を通ることで感染するケースがほとんどです。 原因となる菌には、B群溶血性連鎖球菌(GBS)や大腸菌などがあります。

遅発型新生児肺炎

生まれてから72時間(3日)が過ぎてから発症する肺炎を指します。 生まれた後の環境で感染することが多く、例えば病院内で他の人から感染すること(院内感染)などが考えられます。

種類

発症するタイミング

主な感染の場所

早発型

生後72時間(3日)以内

お母さんのお腹の中や産道

遅発型

生後72時間(3日)以降

生まれた後の環境(病院など)

新生児肺炎は、赤ちゃんの命にかかわることもある注意が必要な病気です。 インドのある地域で行われた調査では、新生児が亡くなる主な原因の一つとして新生児肺炎が挙げられています。 このことからも、早く発見して適切な治療を始めることがいかに重要かがわかります。

新生児肺炎の原因

新生児肺炎は、細菌やウイルスが赤ちゃんの体に入ることで起こります。 生まれたばかりの赤ちゃんは、体を守る力(免疫力)がまだ弱いためです。 感染するタイミングや場所によって、原因はいくつか考えられます。

主な感染の経路は、次の3つです。

  • 胎内感染
  • お母さんのお腹の中にいる時に、へその緒などを通して感染します。
  • 産道感染
  • 赤ちゃんが生まれてくる時に、産道にいる菌などから感染します。
  • 水平感染
  • 生まれた後に、周りの人や物から感染が広がることです。

原因となる細菌やウイルスには、さまざまな種類があります。

種類

主な病原体の例

細菌

・B群溶血性連鎖球菌(GBS)

・大腸菌

・黄色ブドウ球菌

・クラミジア

ウイルス

・サイトメガロウイルス

・単純ヘルペスウイルス

・RSウイルス

特に多い原因は、B群溶血性連鎖球菌(GBS)という細菌です。 一方で、ウイルスが原因となることもあり、注意が必要なものもあります。 例えばサイトメガロウイルスによる肺炎は、まれではあります。 しかし、肺から出血するなど重い症状につながる可能性が報告されています。

新生児肺炎の症状

生まれたばかりの赤ちゃんは、自分で「苦しい」と伝えることができません。 そのため、ご家族が普段とのささいな違いに気づいてあげることが重要です。 新生児肺炎が疑われる赤ちゃんのサインを、一緒に確認していきましょう。

【赤ちゃんの様子のチェックリスト】

  • 呼吸のようす
  • 呼吸が速い(1分間に60回以上)
  • 安静時の呼吸がいつもより明らかに速く、浅い場合は注意が必要です。
  • 呼吸がときどき止まる(無呼吸)
  • 数秒間、呼吸が止まってしまうことがあります。
  • うなり声を出す
  • 息を吐くたびに「うーん」とうなるのは、肺を広げようと頑張っているサインです。
  • 胸やお腹がペコペコへこむ(陥没呼吸)
  • 息を吸う時に、胸の中央や肋骨の下がへこむのは、呼吸が苦しい証拠です。
  • 小鼻をヒクヒクさせる(鼻翼呼吸)
  • 鼻の穴を一生懸命に広げて、少しでも多くの空気を取り込もうとしています。
  • 顔色が悪くなる(チアノーゼ)
  • 唇や手足の先が青紫色になるのは、血液中の酸素が足りていない危険なサインです。
  • からだ全体のようす
  • おっぱいやミルクを飲まない
  • 飲む力が弱かったり、すぐに疲れて飲むのをやめてしまったりします。
  • 元気がない・ぐったりしている
  • いつもより活気がなく、泣き声にも力がない状態です。
  • 体温の異常(発熱または低体温)
  • 熱が出るだけでなく、逆に体温が36.5度よりも低くなることもあります。
  • そのほかの症状
  • 鼻づまり
  • 肺炎の最初の症状として、鼻づまりだけが見られることもあります。
  • 嘔吐やお腹の張り
  • まれな症状として
  • サイトメガロウイルスなどの感染では、突然、口や鼻から出血することもあります。
  • これは肺で出血が起きている可能性を示す、非常に危険な状態です。

これらの症状が複数当てはまる場合は、すぐに医療機関へ相談してください。

新生児肺炎の検査・診断

赤ちゃんに新生児肺炎が疑われる場合、原因や体の状態を正確に知るために、いくつかの検査を行います。 症状と検査結果をパズルのように組み合わせ、総合的に判断して診断を確定します。

主に行われる検査は以下のとおりです。

  • 胸部レントゲン検査
  • 肺の状態を画像で確認する検査です。
  • 肺炎が起きていると、炎症によって肺に白い影がうつることがあります。
  • 影の広がりや場所から、病気の重さを見極める重要な手がかりになります。
  • 血液検査
  • 赤ちゃんから少量の血液を採って詳しく調べます。
  • 体の中で炎症が起きているか、その強さを数値(CRPなど)で確認します。
  • 全身に酸素が十分に行き渡っているかを評価するためにも大切な検査です。
  • 原因を特定する検査
  • 血液や、のど・鼻からとった粘液、尿などを調べます。
  • 肺炎の原因となっている細菌やウイルスを特定することが目的です。
  • 原因がわかれば、その病原体に効果的なお薬を選ぶことにつながります。

これらの検査に加えて、近年では肺の超音波(エコー)検査も診断に役立ちます。 超音波検査は放射線を使わないため赤ちゃんへの負担が少なく、ベッドのそばで安全に行えるという利点があります。 ある研究では、肺の超音波検査が新生児肺炎の診断において96.8%と、非常に高い精度を示したことが報告されています。 この結果からも、診断の信頼性を高める上で重要な役割をはたしていることがわかります。

新生児肺炎の治療

新生児肺炎の治療は、まさに時間との勝負です。 赤ちゃんの小さな体に負担をかけないよう、慎重に進められます。 治療の大きな柱は3つあります。 悪い菌をやっつける「薬物療法」、呼吸を楽にする「呼吸管理」、そして体全体の力を支える「全身管理」です。

薬物療法

病気の原因となっている細菌やウイルスを退治するためにお薬を使います。 赤ちゃんは急に状態が悪くなることがあるため、原因がはっきりする前から効果が期待できるお薬で治療を始めます。

  • 細菌が原因のとき
  • 抗菌薬(こうきんやく)という、細菌をやっつけるお薬を点滴で使います。
  • 口から飲むより、点滴の方が早く確実にお薬が体に届くからです。
  • ウイルスが原因のとき
  • ウイルスに効くお薬を使うこともありますが、基本は赤ちゃんの回復力の手助けです。
  • 赤ちゃん自身がウイルスに勝てるように、体を支える治療が中心になります。

呼吸管理

肺炎になると、肺の働きが弱まり、呼吸が苦しくなります。 体が酸素不足にならないよう、呼吸を助ける治療を行います。

  • 酸素投与
  • 鼻につけた細いチューブなどから、濃い酸素を吸わせてあげます。
  • これで、少ない呼吸でも十分な酸素を体に取り込めるようになります。
  • 人工呼吸器
  • 自分の力で呼吸するのが難しいくらい重い症状の時に使います。
  • 機械が呼吸の代わりをすることで、肺を休ませてあげるのが目的です。

全身状態の管理

お薬と呼吸の治療と同時に、体全体の力を保つことも非常に大切です。 赤ちゃんが病気と戦うためのエネルギーを補給します。

点滴で水分や栄養を補い、体力の回復を助けます。 ミルクを飲む力がない赤ちゃんでも、栄養をしっかりとることができます。

また、近年の研究ではビタミンAの重要性もわかってきました。 複数の研究を分析した報告では、ビタミンAの補充が新生児の呼吸器疾患に効果的な治療法である可能性が示されています。 ビタミンAは、体の抵抗力を支える働きがあるため、肺炎の治療を助けると考えられています。

新生児肺炎は、生まれつきの声帯の病気など、他の病気と一緒に見つかることもあります。 その場合は、肺炎だけでなく、もともとの病気の治療も同時に進めることが重要です。