急性腹症

「うっ、おなかが痛い…」突然、我慢できないほどの腹痛に襲われた経験はありませんか?「いつもの腹痛だろう」と軽く考えてしまうその痛み、実は命に関わる病気が隠れている体からの重大なSOSサイン、「急性腹症」かもしれません。

急性腹症は特定の病名ではなく、緊急治療が必要な状態を示す”合言葉”です。その原因として非常に多い急性虫垂炎(もうちょう)は、人が一生のうちに経験する可能性が7〜12%もあると報告されています。これは決して他人事ではない、身近な状態といえるでしょう。

この記事では、その痛みの正体は何か、虫垂炎以外にどんな危険な病気が潜んでいるのかを詳しく解説します。自己判断で様子を見てしまう前に、まずはこの記事で正しい知識を身につけ、万が一の時に備えましょう。

急性腹症の概要

「うっ、おなかが痛い…」急に我慢できないほどの腹痛。 もしかしたら、それは体からの大事なSOSサインかもしれません。 「いつもの腹痛だろう」と軽く考えず、注意が必要です。

「急性腹症」は、なにか一つの病気の名前ではありません。 急激に始まったおなかの痛みで、すぐに病院での手当てが 必要な病気が隠れている可能性を指す「合言葉」です。

急性腹症の原因で非常に多いのが、急性虫垂炎です。 いわゆる「もうちょう」として知られています。 ある研究では、人が一生のうちに急性虫垂炎を経験する 可能性は7〜12%もあると報告されています。

これは100人いれば7人から12人が経験する計算になります。 決して他人事ではない、身近な状態といえるでしょう。

急性腹症のポイントを以下にまとめます。

  • どんな状態? 急に始まり、じっとしていられないほどの強い腹痛。
  • 原因は? おなかの中の臓器のトラブルが多いです。 しかし、心臓の病気など、おなか以外の場所に 原因があることもあります。
  • 一番大切なことは? 命に関わる病気のサインかもしれないため、 様子を見ずに、すぐに医療機関へ相談することです。

このように、急な強い腹痛を感じた際には、 自己判断はせず、すぐに専門家に相談することが重要です。

急性腹症の種類

「急性腹症」と一口にいっても、原因となる病気は様々です。 おなかの中にある臓器のトラブルが原因のことが多いですが、 実は、おなか以外の場所に原因が隠れていることもあります。

急性腹症を引き起こす可能性のある病気は、多岐にわたります。 ここでは代表的なものをいくつかご紹介します。

病気の種類

主な特徴

急性虫垂炎

・いわゆる「もうちょう」のことで、急性腹症で最も多い原因の一つです。<br>・人が一生のうちに経験する可能性は7〜12%と報告されています。

尿管結石

・脇腹から下腹部にかけて、じっとしていられないほどの激痛が特徴です。<br>・脱水などがきっかけで起こり、消化器以外の代表的な原因です。

腸閉塞・腸のねじれ

・腸がふさがったりねじれたりする病気です。<br>・激しい腹痛や吐き気、おなかの張りを引き起こします。

消化管穿孔

・胃や腸に穴が開いてしまう状態です。<br>・突然の激しい痛みとともに、おなか全体が硬くなるのが特徴です。

婦人科系の病気

・女性の場合、子宮外妊娠や卵巣の病気が原因になることもあります。

特殊な状況の病気

・妊娠中に起こる非常に珍しい血管の病気など、<br> 診断が難しいものも急性腹症の原因となりえます。

これらはあくまで一部です。 他にも胆嚢炎や膵炎、血管の病気など多くの原因があります。 痛みの原因によって治療法は大きく異なるため、 自己判断せず、速やかに医療機関を受診することが重要です。

急性腹症の原因

急にお腹が痛くなる「急性腹症」は、様々な病気が原因です。 原因の多くはお腹の中の臓器にありますが、 全く別の場所の病気が原因のこともあり、注意が必要です。

専門家による正確な診断が、とても大切になります。

【お腹の臓器が原因となる主な病気】

  • 消化管の病気 急性虫垂炎(もうちょう)や、胃や腸に穴が開く病気、 腸がふさがってしまう腸閉塞などがあります。
  • 肝臓・胆のう・すい臓の病気 胆石による発作や、胆のう炎、すい炎などです。 食事の後に痛みが強くなることもあります。
  • 泌尿器の病気 代表的なのが尿管結石です。 脇腹から下腹部にかけ、突然の激痛が特徴です。 じっとできず、動き回ってしまうほどの痛みが出ます。
  • 血管の病気 お腹の太い血管にこぶができて破裂する病気など、 命に直結する危険な状態も含まれます。
  • 婦人科の病気 女性の場合、子宮外妊娠や、 卵巣がねじれる病気なども原因となりえます。

【お腹以外の場所が原因となることも】

心筋梗塞のような心臓の病気が、お腹の痛みとして 感じられることもあります。

また、非常にまれですが、妊娠中に副腎という臓器の 血管が詰まる病気が原因になることも報告されています。 これは診断がとても難しく、専門家が注意深く調べることで 初めてわかるようなケースです。

このように原因は多岐にわたるため、 自己判断はせずに医療機関を受診することが重要です。

急性腹症の症状

「うっ、おなかが痛い!」といっても、その痛み方は様々です。 急性腹症では、痛みの「感じかた」や「場所」、そして 「痛み以外のサイン」が、原因を探るための大事なヒントになります。

【痛みの感じかたに注目しよう】

痛みの感じかたには、大きく2つのタイプがあります。 この違いは、病気の種類を見分ける上でとても重要です。

  • じっとしていた方が楽な痛み 体を動かすと痛みが響くため、背中を丸めて お腹を抱えるようにして、じっとしていたくなります。 これはお腹の中で炎症が広がっているサインかもしれません。
  • じっとしていられない、動き回るほどの痛み 痛みの波が押し寄せ、転げまわるほどの激痛です。

急性腹症の検査・診断

急な激しい腹痛で病院を訪れると、医師は原因を突き止めるため、 いくつかの検査を素早く行います。 まるで探偵のように、様々な手がかりを集めていくのです。 ここでは、主な検査について小学生にもわかるように解説します。

  • お話を聞き、お腹を触る(問診・身体診察) まずは「いつから」「どこが」「どんな風に」痛むのかなど、 詳しくお話を聞きます。 次にお腹を優しく押したり、聴診器で音を聞いたりして、 お腹の中の異常を探ります。
  • 血液検査 腕から少しだけ血液を採って、体の中の状態を調べます。 炎症の強さや、ばい菌と戦う「白血球」の数を見ます。
    特に、急性腹症で多い虫垂炎(もうちょう)では、 「未熟顆粒球(みじゅくかりゅうきゅう)」という、 いわば“赤ちゃんの白血球”の割合が重要なヒントになります。 ある研究では、この割合が高いと、虫垂炎が重症化している 可能性が高いことが報告されています。 このような専門的なデータも参考に、正確な診断を目指します。
  • 画像検査 お腹の中を写真に撮って、目で見て確認する検査です。 痛みの原因や場所によって、いくつかの種類を使い分けます。

検査の種類

特徴

腹部超音波(エコー)

体に負担の少ない検査で、胆石や虫垂炎などの診断に役立ちます。

レントゲン(X線)

腸がふさがっている「腸閉塞」などを見つけるのに役立ちます。

CT検査

体を輪切りにしたような詳しい画像で、痛みの原因を特定するのに非常に有効です。

  • 最近では「デュアルレイヤーCT」という、より性能の良い 新しい種類のCTも使われるようになっています。 このCTは、従来の機械より少ない放射線の量で、 より詳しく体の内部を調べられるという長所があります。 診断の精度を高めながら、患者さんの体への負担を 軽くすることにつながる技術です。

急性腹症の治療

急なお腹の痛みの治療は、原因によって全く異なります。 そのため、まずは検査で原因を正確に突き止めることが第一歩です。 治療は、原因や患者さんの体の状態に合わせて選ばれますが、 大きく「手術をしない治療」と「手術をする治療」に分けられます。

治療の種類

具体的な内容

手術をしない治療<br>(保存的治療)

・点滴で水分や栄養を補給する<br>・痛み止めや吐き気止めなどのお薬で症状を和らげる<br>・ばい菌と戦うお薬(抗生物質)を使う

手術による治療

・病気の原因となっている部分を取り除く、または修復する<br>・お腹の中にたまった膿などをきれいにする

例えば、急性腹症の原因として多い「尿管結石」を例に見てみましょう。 まずは痛み止めのお薬や点滴で、つらい痛みを和らげます。 石の大きさが5mm以下であれば、自然に体の外へ出ることが多いです。

しかし、石が7mmを超える場合や、4〜6週間たっても動かない場合は、 積極的な治療が必要になることがあります。 体の外から衝撃波をあてて石を砕く方法(ESWL)や、 細いカメラを尿管に入れてレーザーで石を壊す手術などがあります。 特に、腎臓がばい菌に感染し膿がたまる状態は命に関わるため、 緊急で管を入れて膿を出す処置が必要になることもあります。

もう一つの代表的な原因である虫垂炎(もうちょう)の場合、 手術が必要となることが多いです。 最近では、体に優しい「腹腔鏡(ふくくうきょう)手術」が主流です。 お腹に数カ所の小さな穴を開け、そこから器具を入れて手術します。 傷が小さく、体への負担が少ないという利点があります。

このように、治療法は原因によって大きく異なります。 自己判断で様子を見ることはせず、急な強い腹痛を感じたら、 すぐに医療機関を受診してください。